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移転工事中に設置されていた大田区立六郷図書館仮庁舎

旧・六郷図書館から現・六郷図書館への移転工事で休館した際、2016年4月23日から2018年11月14日まで臨時に設置されていた仮校舎です。「仮」だからと侮るなかれ、書架や座席もあり、小規模図書館と言える仮庁舎です。
以下は、移転工事中に設置されていた大田区立六郷図書館仮庁舎の訪問記です。

移転工事中に設置されていた大田区立六郷図書館仮庁舎 訪問記

last visit:2016/04/27
§ 仮庁舎の場所

六郷図書館仮庁舎は、鉄道駅としては京急本線の雑色駅と六郷土手駅の中間付近、改築工事に入る前の旧・六郷図書館の裏にあります(両駅からの道のりはこちら)。六郷図書館の改築は、併設されている六郷保育園とともに隣にある公園に移築され、旧・六郷図書館・保育園の建物があるところを公園として整備しなおすという大規模なものですが、その公園に接するもう一つの区の施設として大田区本庁舎六郷分室があり、そこを六郷図書館が改築工事中の仮庁舎にしています。

隣接する公園に図書館・保育園を移設し、古い建物を壊して公園にするという部分だけでも段階的ですが、図書館・保育園の移設に関しても、先に保育園部分を建て、その後に図書館部分を増築するという段階的な建て方をしており、仮庁舎がオープンした時点で保育園部分は既に建っています。ふだん六郷図書館を使う人は、仮庁舎に来るたびに気にして見ていれば、徐々に増設される様子を垣間見ることができるかもしれません。

§ 図書館内の様子

上に書いたように、この仮庁舎は工事中の仮住まい用に臨時で建てた建物ではなく、もともと本庁舎の分室として使っていた建物なので、図書館の仮庁舎とは思えないほど広いです。図書館が長期休館中の仮施設というと、その多くは小さな部屋を確保して予約受取・返却・利用者登録などの業務を行うだけ、つまり図書館のカウンターだけを持ってきたような施設なのですが、六郷図書館仮庁舎は小規模な図書館といった様子。大田区にはありませんが、他の自治体だと「○○図書館分室」という存在の小規模な図書館があり、六郷図書館仮庁舎もそんな雰囲気の施設です。

建物入口を入ると、まず新聞・雑誌コーナーがあり、その先にカウンターがあります。新聞・雑誌コーナーやカウンターの左手には児童エリアがあり、左奥一帯が一般書架、一般書架の入口付近にはCDコーナーもあります。座席はさすがに少なく、机席は一般用が4席、児童用が12席あるのみ。また、建物は3階建てですが、図書館施設として利用者が入れるのは1階だけです。ただ、「どこが何のエリア」と区分けされていること自体が、「仮施設」というより「小規模図書館」に近いことを表しています。

書籍・新聞・雑誌・CDなどの資料が並んでいて、閲覧や貸出ができるだけでなく、図書館で行っていたサービスのうち移転できるものはこの仮庁舎に持ってきています。CDは試聴機で聴くことができますし、ネット閲覧やデータベース閲覧ができるPCもある。更に、六郷図書館にあった大田区公衆無線LAN 「OTA CITY FREE Wi-Fi 」のルーターも持ってきているので、利用することができます(利用には登録が必要)。また、子ども向けのおはなし会も開催されます。

§ 児童エリア

児童エリアは、広さとしては旧・六郷図書館の2/3程度でしょうか。仕切りで囲まれており、子どもが多少声をあげても一般エリアにいる人たちの耳を直撃しないようになっています。靴を脱いで絵本を広げられるスペースはありませんが、棚と棚の間が広くて本が探しやすいです。

絵本は、日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にして、タイトルの五十音順に並んでいます。絵本棚の上には外国語絵本も150冊ほどあり、これはおそらく六郷図書館の外国語絵本全てを仮庁舎に持ってきています(ページ下の図書館データに、何語絵本が何冊という外国語絵本の内訳を調べて記載していますが、改築前と冊数がほぼ同じなので)。児童読み物は、日本人作家の作品と外国人作家の作品に分けて、著者姓名五十音順に並んでいます。

ちしきの本は絵本・読み物と比べるとやや冊数が少ないですが、おそらく限られた仮庁舎の収納冊数のなか、中身を見て好みで選ぶ要素が強い絵本・読み物を多めにして、タイトルや抄録など検索機で見られる情報でも選びやすいちしきの本を少なめにしているのではないかと思います。

これは子どもだけでなく大人にも通じることですが、せっかくなので、書架で直接手に取れる本が減った機会に、検索機での本探しの腕を上げたり、職員さんに本探しの相談をする「レファレンス」を活用するのもいいと思います。読みたい本が決まっておらず、「○○に関する本があったら読みたい」というとき、利用している図書館の該当の棚を見て、いい本が見つかったら読む、見つからなかったらあきらめて終わり、という人も多いでしょう。でも、そんなとき、検索機やレファレンスを活用すれば区内の他館の本も含めた本探しができる。検索機で出てきた情報だけで自分の求めている本かどうか判断するのはコツがいりますし、職員さんへの相談も訊ね方によって答えが変わる、そうした技を身につければ図書館をより上手に活用できます。

§ 一般書架

一般書架も、きちんとした図書館と比べたらやはり冊数が少ないですが、各ジャンルの本を揃えています。小説は文庫本や単行本だけでなく池波正太郎・司馬遼太郎・松本清張の全集もある、視力が弱い方のための大活字本もある、辞書や世界大百科事典もあるというラインナップで、「仮施設だから利用の多い本だけ並べる」というよりは「きちんとした図書館に近い資料を揃える」という考えで仮庁舎に持ってくる本を選んでいるのを感じます。

本の並べ方などは六郷図書館と同じで、日本の小説は著者姓名五十音順に並んでいます。但し、複数作家による共著はタイトルをとって五十音順の並びのなかに入れられます。例えば、日明恩(タチモリ メグミ)が書いた本の隣に、7人の作家による『タッグ 私の相棒』(タッグ ワタシノアイボウ)という本が並び、その隣に建倉圭介(タテクラ ケイスケ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国小説は、国別分類などせずに「外国小説」でひとまとめにして、著者姓名五十音順です。

「007 情報科学」に分類されているパソコン関連の本を、「547 電気通信」に分類されるインターネット関連の本とまとめてみられるように、「007」の本を「547」の隣に置いているのも六郷図書館と同様です。また、漫画を内容によって児童エリア(『ヒカルの碁』『ドラゴンボール』など)と中高生コーナー(『陰陽師』『きょうの猫村さん』など)に分けているのも六郷図書館と同様。棚にある本の冊数は限られているけど、そうした分類はこれまで通りなので、六郷図書館を利用してきた方は違和感なく本が探せると思います。

§ 改築中の図書館サービスのあり方

最初に書いたように、六郷図書館仮庁舎は長期休館中の臨時施設にしては広くて、開架の冊数も多いです。私は2005年にこのサイトを始め、長期休館中に設置された臨時施設もほとんど見てきており、カウンターだけでなく本棚もあった臨時施設については「今はない図書館」というコンテンツに残していますが、六郷図書館仮庁舎は私が見てきた中で最も広くて冊数が多いです。

ただ、これをもって大田区が長期休館中の図書館サービスを頑張っていると判断していいかというと疑問も残ります。六郷図書館の前に長期休館していた下丸子図書館の改修工事のときも、広くて居心地のいい仮庁舎を設置してくれていましたが、旧・入新井図書館が2005年6月30日に移築のため長期休館に入ってから2011年3月30日に現在の入新井図書館がオープンするまでは長きに渡って仮庁舎もなく、図書館を求めた地域住民の皆さんが自主的に鷲神社内に私設図書館を作り、それを行政が後追いするかたちでおおとり図書館として大田区立図書館の資料を予約受取・返却できるようにしました。その経緯はおおとり図書館訪問記に書いたのでぜひ読んで欲しいのですが、地域住民の方々を焦点にしてこの経緯を読むと図書館愛があるいい話であるものの、大田区行政の在り方という視点でこの経緯を読むと、約6年に及ぶ長期休館への対応が不十分だったと言わざるを得ません。

その後に長期休館した下丸子図書館と六郷図書館の場合、どちらも近くにタイミングよく空いた区の施設があったことで広い仮庁舎を設置できましたが、そうした区施設がない場合、他区のように民間の建物に間借りしてでも臨時施設を設置するのか、それとも入新井図書館のときのように臨時施設を設置せずに済ますつもりなのか。下丸子図書館と六郷図書館の例をもって、大田区は長期休館時も図書館サービスをしっかりしてくれるようになったと断言するのはまだ早いようにも感じます。

東京23区は、比較的前から図書館の整備が進んでいるほうで、今では図書館の新設より、建物の老朽化などによる改築・移築のほうが多いです。そのなかでも大田区は1970年代から80年代にかけて建てられた図書館が多く、これからもそれらの図書館が順に工事を行い長期休館することが予想されます。度重なる図書館工事の経験が、長期休館中の図書館サービスの向上に繋がることを願っています。