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渋谷区立中央図書館

渋谷区立中央図書館 訪問記

last visit:2015/05/08

渋谷区立中央図書館は、2010年5月22日に移転オープンした、渋谷区の中心館。原宿という賑やかな場所にあるので、人込みの中を歩いて図書館に辿り着けたときはホッとします(笑)。渋谷区立図書館では唯一ネット閲覧PCを設置している図書館で、オンラインデータベースも各種利用できます。

§ 図書館の場所

渋谷区中央図書館は原宿駅や明治神宮前駅の近くにある図書館。位置としては東郷神社の北になりますが、私からのアドバイスとしては竹下通り・明治通りなど混雑した道を通らないこと。距離としては、原宿駅から行くなら竹下通り、副都心線明治神宮前駅から行くなら明治通りを通ったほうが短いですが、日時によっては通行人の数が半端でないので、所要時間としてはそれを避けて行った方が確実に早いです。図書館に辿りつく前に人混みで疲れないよう、ルート選択してください(笑)。

ちなみに、現在の中央図書館は2010年5月22日に移転した建物で、それ以前は東郷記念館和楽殿隣の杜になっている場所にありました。昔の中央図書館をご存知の方は、建物があとかたもなくなっている現在の光景をみたらびっくりするかも。現在、東郷神社の敷地になっているようなので、元々東郷神社の土地を借りて旧・中央図書館を建てていたのではないかと思います。図書館が建っていた場所に神木が植えられているというのはあまりみたことがなく、初めて見たときは呆然としてしまいましたが、今は植え替えから時がたち、緑が土にすっかりなじんでいい雰囲気です。

§ 図書館内の様子

渋谷区立中央図書館は上から見て長方形のシンプルな建物です。各階の配置は、1階が総合カウンター、児童コーナー、喫茶休憩コーナー。2階が新聞・雑誌コーナー、展示室、レファレンスコーナー、対面朗読室、カセット点字図書室。3,4階が一般書架で、5階には集会室、会議室、喫煙コーナーがあります。

閲覧席は主に3,4階の西側窓際に集中しており、渋谷区民だけが利用できる指定席の「区民席」、利用者カードを持つ人が利用できる指定席の「キャレル席」、誰でも利用できる「自由席」に分かれています。区民席とキャレル席を利用する際は、1階入口入って左のカウンターで、空いている席の中から好きな席を選んで申し込んでの利用になります。図書館の座席のうち、持参パソコンを利用できるのは2階のレファレンスコーナー内の4席と、4階の西側(階段・エレベーターからみて右側)にある席のみ。2階の座席には電源がありますが、4階の座席には電源はありません。指定席も自由席も人気があってすぐ埋まるので、利用したい方は早めに行くことをお薦めします。

§ 児童コーナー

1階の入口を入って右の一帯が児童コーナー。総合カウンター付近から児童コーナーに入ると、手前右に児童雑誌コーナー、右の窓際に沿って絵本の並ぶ靴脱ぎスペースがあります。中央から左にかけては、児童書架が並んでいます。

窓際の靴脱ぎコーナーは、パンフレット曰く「ひょうたん型」の、曲線からなるコーナー。この靴脱ぎコーナー、床暖房完備だそうです。一番奥の1/4円状のエリアは、仕切りで囲えばおはなし会の会場になります。このエリアは一部障子になっており、日本の昔話のおはなし会なんかも合いそうです。

絵本は、日本のおはなしと外国のおはなしを一緒にして、おはなしの作者の著者姓名五十音順に並んでいます。厳密には、苗字が「あ」ではじまる日本人作家がつくった絵本→苗字が「ア」ではじまるで外国人作家がつくった絵本→苗字が「い」ではじまる日本人作家がつくった絵本…といった具合に、日本人による絵本と外国人による絵本が交互に並ぶ方式です。児童読み物は、日本人作家、中国人作家、英米人作家…と国・地域別にわけたうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。

棚を見て目につくのは英語の絵本・児童読み物の多さ。4階にある一般書架の英語図書も充実していますが、児童コーナーも負けず劣らず英語の本がたくさんあります。渋谷区は23区で港区に次いでアメリカ人が多く住んでいる区で、図書館にもそれが現れています。

§ 2階の様子

階段・エレベーターで2階にあがると、フロア向かって左にあるのが新聞・雑誌コーナー。座席が少なく、特に机席が4席しかないので、新聞を広げて読もうとしても埋まっている可能性があります。椅子席も隣と近いですが、うまく譲り合って使いたいところです。

通路を挟んだ新聞・雑誌コーナーの対面には、展示コーナーがあります。ガラスケースに展示品を入れる(=展示品に手を触れられないタイプ)のコーナーなので、貴重資料も展示できますね。展示内容は期間によって入れ替えていますが、ときにはスペース全体を活用できていないときも。せっかくのスペースですので、ぜひいろんな資料を見せて欲しいです。

2階の通路を奥へ進むと、突き当たりにレファレンスコーナーがあります。レファレンスカウンターの前には、コピーやパソコンがずらり。コピーは3台、パソコンは全部で7台あり、パソコンではネット閲覧ができるほか、オンラインデータベースなどを閲覧することができます。データベースは「ヨミダス歴史館」「聞蔵Ⅱビジュアル」「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」「Japan Knowledge」「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー」「D1-Low.com」「WEBLINK 地方公共団体総覧」が利用できますが、全てのパソコンでこれらが利用できるのではなく、それぞれ使用できるデータベースが違うので、申し込む際に確認してください。

レファレンスコーナーから右に折り返した一帯は参考室で、辞典・事典類がずらっと並んでいます。中央図書館で、一番人が少なく、静かな区画でもあります(笑)。私自身もついついネット検索を多用して、辞典類を開くことが少なくなっていますが、両方の良さをうまく活用すれば調べた内容ももっと深いものになるはず。活用法を身につけたいところです。

§ 一般書架

一般書架は3階と4階に分かれています。日本十進分類法の00-から58-までが4階、59-から99-が3階というシンプルな分け方。その他、小説と文庫本は3階の一番奥、中高生コーナーと地域資料は3階の手前左に、英語の図書と旅行ガイドは4階手前左にあります。

棚を見ていて感じるのは、古い資料の多さ。渋谷区立中央図書館は、2010年5月の移転時から実際の蔵書数より施設としての収蔵可能冊数34万冊ばかりを強調しており、実際の蔵書数は2016年現在の図書館公式HPの中央図書館の説明によると約28万です。この数字と実際の棚の様子から察するに、利用の少ない本を閉架に収納するということをそれほどしておらず、蔵書の多くを開架にしていると思われます。

移転当初は、この状態が「建物は新しいのに資料は古臭いものばかり」という印象を与えていましたが、渋谷区立中央図書館がそういう図書館だと受け入れてしまうと、それを活用する利用もありだと思います。実際、書棚の間をぶらぶら歩いていると、一時期流行ったけど今はあまり読まれない小説・エッセイなど他の図書館では書庫に入ってしまうような本が次々に見つかります。なので、本を通じて昭和の気分に浸りたくなったときには、渋谷区立中央図書館に行けば琴線に触れる本がたくさん見つかること請け合い。効率重視の現代に疲れている若い人にも、古い本との出会いで違う価値観に触れて欲しいです。

3階の階段・エレベーターから書架に入ってすぐ左には「ファッションコーナー」があります。なぜファッションコーナーがあるかは、中央図書館から明治通りや竹下通りへ出ればすぐわかりますよね。ファッションの拠点・原宿に近いことから設けられたコーナーです。ただ、最新のファッションがわかるコーナーかというとそういう様子ではなく、古い資料や体系的にまとめた本なども多く、ファッションの歴史を見るのに適しているコーナーといった様子です。ファッション誌のバックナンバーも多く、「Cancam」「Seventeen」といった若い女性向けの雑誌から、「MEN'S CLUB」「LEON」のような男性ファッション誌、「VOGUE Paris」のような外国のファッション誌もあります。が、これらはどれも中央図書館でもともと所蔵している雑誌なので、ファッション誌だけ保存期間を長くしているだけという気も。素人考えですが、地元のショップに協力していただいてショップの情報を閲覧できるようにするなどして、独自のファッションコーナーへと発展したら面白いのではと思います。

3階のファッションコーナーの奥にある地域資料も、渋谷区の中心館だけあって充実しています。雑誌『散歩の達人』『Hanako』『Oz magazine』の渋谷区の街をとりあげた号のバックナンバーもあるし、「ハチ公」という項目もあるんですよ。渋谷区立中央図書館がハチ公に関連する新聞記事を集めた「ハチ公ファイル」のほか、『いとしの犬 ハチ』『ハチ公物語』といった市販の本もたくさんあり、ハチ公の本がこんなに出版されていること自体がいかにハチ公が親しまれているかの表れだなあと実感します。

3階奥の小説・エッセイの棚で困ってしまうのは、複数の著者による小説集・エッセイ集の請求記号が本によってまちまちなこと。奥付の著者名のところに最初に書かれた著者の先頭2文字をとっていることもあれば、書名の先頭2文字をとっていることもあり、一定ではないのです。例えば、8人の著者による小説集『靴に恋して』は、奥付の著者の先頭である谷村志穂さんから「タニ」という請求記号ですが、6人の著者による小説集『パリよ、こんにちは』は書名から「パリ」という請求記号になっている。小説エッセイは請求記号の五十音順に並んでいますが、複数の著者による小説集・エッセイ集は置き場所として2箇所可能性があるかたちです。これでは書名も著者もわかっていたとしても検索機で調べてどちらの請求記号が振られているのかを調べないと場所が特定できません。図書館の本は一定のルールに従って並んでいることで探せるというのが基本中の基本なのですから、しっかり統一してほしいです。

4階の外国語図書は英語の資料がとても充実しています。同じ英語で書かれた本でも、日本について英語で書かれた本は「YJ」、英米で発行された原書は「YF」で分類されています。小説についても、日本の小説を英訳したものは「YJ」になるし、英米文学の原書は「YF」へと分かれています。こうした分類をしているのは珍しいですが、日本の情報を英語で読みたいのか、英米の現地の情報が知りたいのか、状況によって探す棚が絞れるのでとても便利だと思います。英米で発行された一般書もかなり多く、英語で書かれた旅行ガイドなども各国のものがあります。小説以外の英語の原書を図書館で借りたい人には都内で一番お薦めできます。

そういえば、英語を話せる職員さんも常駐しているようで、1階総合カウンターには英語ができる職員がいるから必要なときは呼んでくださいとの表示があります。日本語ができないけど日本の図書館で英語の図書を利用したいという方はぜひ渋谷区中央図書館へ…と日本語で書いてもしょうがないのですが、もし周りにそうした方がいたらぜひ渋谷区中央図書館に連れて行ってさしあげてください。

§ 喫茶・休憩スペース

長文になってしまったので一息入れましょう、ということで休憩場所のご紹介です。1階の入口入った左奥が喫茶・休憩スペースになっており、飲料自販機もあります。以前はここで飲食販売もしていたのですが、今は営業を終了し販売カウンターのみが残っているのが寂しげな雰囲気になってしまっています。

休憩スペースにはテラスもあり、天気がよければ、屋外でも飲食・休憩ができます。目の前の高台の上が原宿外苑中学の校庭なので、時間帯によっては部活動の様子が聞こえることもあります。この辺は賑わっている原宿のそばとは思えないほどひっそりとした雰囲気で、のんびりできますよ。

§ 教育センター

これまで図書館の様子を綴ってきましたが、渋谷区中央図書館内には区の教育業務の一部を担う部屋もあります。4階のお手洗い向かって右にある教育センターがそれで、渋谷区教育センターの業務のうち、調査研究部と教育相談部をここで行っているとのこと。一般向けというよりは、教育関係者向けの施設のようですね。

教育センターの部屋は、平日の10:00~18:00までしか開いていませんが、部屋入口の手前右にある棚は中央図書館が開いている時間ならいつでも見ることができ、教育用図書と教科書がたくさん並んでいます。教科書は、小・中学校のものは渋谷区立小・中学校で使っている・使っていたもの、高校教科書はいろんな出版社が出している教科書が並んでいます。私のように、学校を卒業してから何年もたち、子どももいないとなると、教科書なんて見ることがないので、たまにこうして図書館で手に取ると自分達の時代との差を感じます(笑)。

§ レファレンス機能が充実している中心館…かな?

渋谷区には、学校図書館と公共図書館を一体的に運営している臨川みんなの図書館、「美術館図録コーナー」を設けた西原図書館、児童資料に特化した笹塚こども図書館、渋谷区で唯一DVDを所蔵している本町図書館などがあり、単に中心館が大きくて地域館が小さいという図書館組織ではなく、各館が個性を持って運営されているスタイルになっています。

そうした組織体のなかでの渋谷区立中央図書館を考えると、オンラインデータベースなどのレファレンス機能や障害者サービス、27万冊ほどの蔵書数を備えた、調べものや読書相談にも応えられる図書館というところでしょうか。

ただ、実際に館内を巡ると閲覧席では図書館資料とは無関係な自習をしている人も多く、せっかくの図書館が活かされていない気もして残念に思います。たくさんの本に触れられる図書館から、そうしたたくさんの本の中から探している本が見つかる図書館へと発展させるには、図書館の方々に工夫を凝らしていくだけでなく、私たち利用者もたくさん使って要望を出したりして、利用者と図書館職員が両輪となって図書館を育てていく必要があるようにも思います。

中央図書館の建物入口の手前左には、開いた本の上に亀とうさぎが乗っている像があり、「絶えざる歩み、うさぎに優る」という言葉が掲げられています。ぜひとも、その言葉のような絶えざる歩みで、より充実した中央図書館へと発展して欲しいです。

渋谷区立中央図書館 データ

住所東京都渋谷区神宮前1-4-1 →Google Mapで見る
Tel03-3403-2591
開館時間
火~土曜9:00~21:00
日・月曜、祝休日9:00~18:00
定休日第1月曜・第3木曜(祝休日にあたる場合は開館し、直後の平日を休館)
12月29日~1月3日
最寄駅 JR山手線 原宿駅から徒歩6分
東京メトロ千代田線副都心線 明治神宮前駅から徒歩9分
東京メトロ副都心線 北参道駅から徒歩11分
駐輪場建物手前に駐輪場あり
また、図書館の駐輪場ではありませんが、図書館の対面にバイク駐輪場17台分あり。30分100円、当日最大600円。
駐車場一般用駐車場なし。建物手前右に障害者用駐車場1台分あり。
所蔵資料
図書所蔵数285,888冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
なしなしなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト図書館入口向かって右の壁面にブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機1階にICタグ式自動貸出機3台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PC2階のレファレンスコーナーにネット閲覧PC7台あり。利用は1回1時間、次の利用者がいなければ延長可能。
持参PC利用
  • 2階のパソコン利用席(4席)で持参PCの使用可能。電源あり。利用は9:00~10:50、11:00~12:50、13:00~14:50、15:00~16:50、17:00~18:50、19:00~20:50の時間帯制(日・月曜・祝日は閉館時刻に応じて早く終了)。
  • 4階西側の閲覧席(自由席と区民席)で持参PCの使用可能。電源なし。
LAN接続
  • 館内用無線LANの利用可能
  • 館内や公式サイトには明記されていませんが、au Wi-Fi SPOTWi2 300ご利用可能エリアに渋谷区立中央図書館が登録されており、館内にいると各Wi-Fiの電波が入ります
飲食設備等
  • 1階の喫茶休憩スペース(室内にテーブル席14席、屋外テラスにテーブル席4席、椅子12席)で飲食可能。喫茶休憩スペースには飲料自販機3台あり。
  • 館内では座席着席時の蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)からの飲料摂取はOK
その他設備
  • コインロッカーが1階に16個、3階10個、4階10個あり(但し、2016/12/27現在、このうちの1階の3個、3階の1個が使用不可)。使用時に100円玉を入れますが、使用後に戻ってきます。3,4階のものより、1階のほうが高さのあるタイプです。
  • 図書館を出て右手に回り込んだ建物脇に喫煙スペースあり