閉鎖前の大田区おおとり図書館
おおとり図書館は、神社の境内で大田区立図書館資料の予約受取ができるという珍しい施設で、旧・入新井図書館が移転のため休館した際、住民の方々のボランティアで運営していました。現在の入新井図書館の移転開館に伴い、2011年3月29日を最後に閉鎖されました。
以下は、閉鎖前の大田区おおとり図書館の訪問記です。
閉鎖前の大田区おおとり図書館 訪問記
おおとり図書館は、大田区立図書館の資料の予約受取ができる施設なのですが、大田区の施設ではないという、とても珍しい図書館です。
ことの始まりは、大森駅に近い図書館である旧・入新井図書館が、移築のために2005(平成17)年7月1日から長期休館に入ったこと。図書館が長期休館に伴う臨時窓口等を用意しなかったので、この付近の方は急に図書館利用が不便になってしまったんですね。そこで、地域の人達がどうしたかというと、何と旧・入新井図書館の除籍蔵書を譲り受け、寄贈本を募りながら、鷲神社内に私設図書館を作ったんです。これ、すごい情熱ですよね。その後、大田区立図書館が2008(平成20)年4月1日からネット予約をできるようになったのに伴い、受取先として鷲神社内のおおとり図書館が指定できるようになったんです。
上記の経緯、私は私設図書館だった時期に関しては新聞の記事(東京新聞2005(平成17)年8月24日朝刊 東京版 27頁)で読んだことがあるだけで、実際の様子は見たことがないんです。私が行った2009(平成21)年4月9日時点には、書架などはもうありませんでした。たぶん、大田区立図書館の資料が受け取れるようになったことで、私設図書館の役目は終えてしまったのでしょう。もし、その頃の様子をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひお話を聞かせてください。
そんな経緯を持つこの施設、名前こそ「おおとり図書館」となっておりますが、実際には鷲神社の社務所で大田区立図書館の予約資料を受け取れるということなのです。神社でこんなことができるなんてかなり珍しい。もしかしたら全国でここだけかもしれませんね。
仕組みとしても特殊で、この施設は大田区立図書館ではないから、おおとり図書館に配送される前に既に貸出手続きがされているのです。その代わり、普通なら貸出期間が2週間のところ、おおとり図書館から借りる場合は3週間借りられます。取り置き期間は1週間なので、取り置き期限ギリギリに資料を取りに行けば、他館での貸出と同様2週間の貸出となる。取り置き去れてすぐ取りに行けば3週間借りられる、ということなのです。
予約受取はできるけど、予約受付はできないし、返却も(たぶん)できないという施設も珍しいです。おおとり図書館には貸出・返却手続のできる端末がないし、あくまでも利用者に貸し出されている状態になっている資料を一時的に預かっているだけ、という位置付けなんでしょうね。
さて、私もネット予約でおおとり図書館を受取館に指定し、訪問しました。鷲神社は大森駅の南南東辺り。大森駅東口を出て、駅前ロータリー向こうの西友の右に伸びる道を進んで、五叉路になっている交差点で右に行き、少し歩いたところにあります。小さい敷地の東、西、南の三方向に入口があり、敷地の北側に本殿があって、本殿向かって右に社務所があり、そこで資料を受け取れます。
社務所を覗いても誰も見えなかったので、「すみませ~ん」と声をかけると、神社の方が出てきます。その方に図書館カードを差し出すと、奥の戸棚から大きな布袋を持ってきてくださって、その中から予約した本を出してくれます。利用者側が受領書に受取年月日と名前を書くと、手続きは終了。
おおとり図書館の面白いところは、図書館の臨時窓口機能を限定的に果たしているとはいえ、本来は神社の社務所なので、窓口の脇におみくじが置いてあるんです。その名も「幸せを呼ぶ 天然石おみくじ」、百円也。これはひくしかないと思って、手続きが終わった後にひかせてもらったら、何と大吉!おみくじには名前の通り天然石がついていて、私がひいたものには金運と心願成就をもたらす虎目石が入っていました。今もお財布の中にしっかり入っています(笑)。
おおとり図書館は地域の方の図書館への情熱を感じる施設ですが、その一方、地域の方のご協力に頼って図書館がサービスを怠っている印象も否めません。他の区の図書館が長期休館をする場合は、仮事務所を用意するなり、近隣の区の施設を使うなりして、臨時窓口を用意する場合が多いですから。入新井図書館の移設も当初の予定より遅れていますし…。まあ、複合施設内に移転する予定なので、移設の遅れに関しては図書館だけの都合で遅れているわけではないのかもしれませんが、大田区立図書館さんにはもう少し頑張ってもらいたいところです。
変わった施設ですが、上手に使えば大田区立図書館で借りるより長く借りられますし、おみくじも引けるし、楽しい施設ですよね(笑)。入新井図書館が完成したら、おおとり図書館もなくなってしまうと思うので、大田区立図書館の利用者の方は、ぜひ今のうちにこの面白い施設を受取館にしてみてくださいね!