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大田区立六郷図書館

大田区立六郷図書館 訪問記

last visit:2018/12/28

大田区立六郷図書館は、東京23区の図書館の中で最南端の図書館です。移設工事を経て、2018年12月14日にリニューアル開館しました。その移設工事は、旧館と隣接していた公園と場所を入れ替えるかたちのユニークなものでした。

§ 図書館の場所

六郷図書館は、京急本線の六郷土手駅と雑色駅の中間付近にあります。六郷土手駅は、すぐそばを流れる多摩川を越えれば川崎市という場所。その近くにある六郷図書館は、23区の公立図書館のなかで最も南にある図書館です。

初めて六郷図書館に行ったときは、せっかくだから水の流れる風景をと思い、多摩川土手を歩いてみたのですが、この辺は土手から川面が見えないくらい河川敷が広いんです。予想していた景色でなかったのは残念ですが、これぞ川の下流という風景とも言えます。野球場がいくつもあるので休日は賑わっており、それを眺めながらの散歩もいいものです。

さて、この六郷図書館、1972年に開館した旧・六郷図書館が2016年3月31日を最後に休館し、移築工事をして、2018年12月14日から現在の六郷図書館が開館しています。移築前の旧・六郷図書館は六郷保育園との複合施設で、今の六郷図書館向かって右隣の、現在は公園設営工事中の区画にあり、今の六郷図書館があったところには昔は公園がありました。六郷保育園は、図書館の裏手の、ここも昔は公園だった敷地に移設済み。つまり、図書館・保育園と公園を入れ替えるかたちで、建物をリニューアルしたんです。この先、公園が完成すれば、全ての工事が完了ということになる。公園ができるのが楽しみです。

§ 図書館の様子
大田区立六郷図書館

移設後の新しい六郷図書館は3階建てです。1階が新聞・雑誌コーナーと児童エリア。2階が一般書架、CD・DVDコーナー、休憩コーナー。3階が自習もできる閲覧室と多目的室です。カウンターは1,2階にあり、本の貸出はどちらでもできますが、利用登録・図書館カード更新・予約受取・CDやDVDの貸出は、1階カウンターでのみ受け付けています。

この説明を読んでわかるように、1階が子ども中心、2階が大人中心、3階が机に座って読書や勉強をする人中心と、わかりやすいフロア構成になっています。移築前の六郷図書館は同じフロアでも互いに行き来できない区画があったりして、迷路のようで楽しい面もあるけど、使い勝手の悪い構造でした。今の六郷図書館は、面白味が特にない分、シンプルでわかりやすい。日常的に利用する人にとっては、かなり使いやすくなったと思います。

§ 1階の新聞・雑誌コーナー、児童エリア

1階は、入口を入って右手前にカウンターがあり、カウンターの前の一帯が児童エリア、入口から見てカウンターよりさらに右の区画が新聞・雑誌コーナーという配置です。新聞・雑誌コーナーには、CD・カセット(閉架で所蔵)・DVDの試聴機もありますし、奥には対面朗読室が設置されています。また、入口入って左には検索機が1台、ネット閲覧PCも1台あります。

CD・DVDの試聴機が1階にあるのに、CDやDVDの棚が2階にあるのがやや不便。2階のCD・DVDの棚には、盗難防止のためにケースのみが置いてあります。試聴したい場合は、棚から聞きたいCD・観たいDVDのケースを取って1階のカウンターに持っていけば、職員さんがバックヤードからCD・DVDを取ってきてくれ、CDは1回60分、DVDは1回1タイトルの試聴ができます。

新聞・雑誌コーナーはソファ席のみで机席がなく、新聞を広げて読むときには不便です。雑誌ラックは、図書館によくある、いくつものボックスに分かれているタイプの棚で、ボックスの扉に雑誌の最新号を、ボックスの中にバックナンバーを置くようになっているのですが、サイズの大きい雑誌が多いこのご時世に、半分以上のボックスがB5サイズ(週刊文春などの週刊誌サイズ)以下の雑誌に適したサイズです。なので、サイズが大きい雑誌のバックナンバーの一部は、ページを綴じている辺を手前ではなく上にして入れており、折れたり曲がったりしやすい収納になってしまっている。図書館の新聞・雑誌の状況を知らない人が発注したのかと思うような設備です。

今からの大きい変更は現実的に無理だと分かったうえで、どうだったら使いやすい図書館になったかを考察してみると、雑誌ラックはもっと大きな雑誌が入るものにするのはもちろんのこと、更に、2階のCD・DVDコーナーと1階の新聞・雑誌コーナーを入れ替えて、CD・DVDの棚と試聴機が近くにあり、新聞・雑誌コーナーに新聞が広げられる机がある状態にすればよかったように思います。2階にもカウンターがあるので、最新号をカウンターに置いている雑誌は、2階のカウンターに最新号を置けばいい。大田区には旧・六郷図書館より前に建設された館があと2館(大田図書館馬込図書館)あり、図書館の改築・移築も続くと思われるので、今後の新図書館で利用者の動きや資料の保存を考えた配置になってくれたらと願います。

不便さばかり挙げてしまいましたが、1階のメインである児童エリアは広々としています。カウンターに近い側には本棚が、奥には靴を脱いであがる「おはなしコーナー」があり、おはなし会がないときには自由に入って過ごせます。紙芝居と絵本の一部(「こどものとも」など)がおはなしコーナーの中にあり、それ以外の絵本はおはなしコーナーの外にあるので、おはなし会の最中でも絵本を探して借りることができます。

絵本は、内容によって赤ちゃん向け絵本・外国語絵本・昔話絵本・創作絵本に分かれていますが、創作絵本が更にサイズによって4つに分かれています。ラベルの色を、サイズが小さい方から、黒・赤・黄・灰色と分けているのですが、検索機で調べてもどの絵本が何色に分類されているかがわからない。サイズで4段階に分けることで、棚の収納効率は上がったかもしれませんが、見たい絵本が決まっているときに探すのが大変な分類になってしまっています。

これが読みたいという絵本があるときには、検索機で六郷図書館にあるのを確認するだけでなく、検索結果の「大きさ」も確認するといいです。私が調べたかぎりでは、概ね、絵本の高さが15cm以下なら黒、16~22cm程度なら赤、23~27cm程度なら黄、28cm以上なら灰色、と分類されているようです。検索機で見られる本の情報のなかにある「大きさ」の数字(「22×33cm」のように掛け算になっている場合は×の前の数字)で分類を判断してください。

細かい分類の話になってしまいましたが、児童エリアの床の一部に動物の足跡が描かれているなど、可愛らしい仕掛けもあります。また、私は移設後の六郷図書館が正式にオープンする1日前の2018年12月13日に行われた内覧会(誰でも内覧可能)にも行ったのですが、そのとき、子どものいるママさんが歓声を上げていたのが授乳室とこどもトイレ。どちらも、おはなしコーナーの前にあるのですが、職員さんがママの皆さんにこどもトイレを案内していた際には「可愛い~」の歓声が上がっていました。私は、それを聞いてから見にいくのが何だか野次馬っぽく思えて、見逃してしまいました(笑)。

授乳室は、2018年12月13日現在、大田区立図書館では入新井図書館浜竹図書館とこの六郷図書館にしかありません。オムツ交換台は、授乳室のなかはもちろん、各階の誰でもトイレの中にも設置されています。赤ちゃん連れの方には出先でオムツ交換・授乳できる場所として覚えてもらい、図書館も一緒に利用して欲しいです。

§ 2階の一般書架

2階は本棚がずらっと並ぶフロアです。階段・エレベーターで2階に着くと、右先にカウンターがあり、カウンターの前に中高生コーナー、カウンターの裏手にCD・DVDコーナーと検索機、カウンターの奥から左一帯が一般書架という配置です。棚にある視聴覚資料はCD・DVDのみですが、書庫にカセットがあるほか、CD・DVDも棚にあるもので全てではありません。書庫にどんなものがあるかは、CD・DVDの棚の上にあるファイルで見ることができます。

階段・エレベーターからみて右手前の隅には、飲料自販機がある休憩コーナーがあり、テーブルで持ち込み飲食ができるほか、携帯電話用ブースで電話をすることができます。図書館にいるときに携帯電話が鳴った場合、他の図書館では図書館の外に出て話すことになりますが、六郷図書館ではこの電話用ブースに入って話すことができます。

2階の机席は、階段・エレベーターとは反対側の壁沿いとCD・DVDコーナーに、合わせて26席あります。全ての机席に電源が設置されていて、持参PCを使用することができます。そのうち、CD・DVDコーナーにある6席は、キーボードをしまえるモニター台のように、天板の15cmほど上に板が渡されている2段構成の机です。CD・DVDコーナーの隣には事典類の棚があるので、ときどき辞典を参照しながら何かを本を読むときなど、複数の本を使うときにこの机が使えそうです。

本棚を見ていて面白かったのが、代本板があること。書庫にある本のうちの一部について、書棚に代本板が置いてあり、読みたい場合は代本板をカウンターに持っていくと本物の本を持ってきてくれます。現在は、検索機で資料情報を印刷すれば同じことができるし、収納スペースに困っている図書館の方が多いので、本棚のスペースを食う代本板を使うことは少ない。六郷図書館はリニューアルしたばかりで棚に余裕があるので、前から使っていた代本板をそのまま使っているのでしょう。見つけたときは「懐かしいものを見た」という気分になりました。不要な本に表紙のコピーをくるむかたちで代本板を作っているようで、一見本当の本に見えますし、持ってみても本のような重さがあります。

§ 3階の閲覧室

3階は、閲覧室、多目的室、事務室があるフロア。多目的室は、大田区立図書館では、図書館イベントをする設備というよりも、非営利の区民団体やサークルに貸す設備として位置付けられています。24席分の机があり、読書会のように図書館と関係のある行事を行う場合は無料で貸出しています。

閲覧室は、左右の壁に向かうかたちで机がならぶほか、部屋の中央に、片側3人掛け向かい合って6人掛けになる机が2つ、片側1人掛け向かい合って2人掛けの大きい机が2つあります。この「2人掛けの大きい机」は、2人掛けにしては妙に大きく、かつ、机の脚が中央に1本だけという、図書館の閲覧席としてはなかなか見ないタイプのもので、実はこれ、高さが変えられる机なんです。六郷図書館では、この机2つを車椅子優先席としています。内覧会の際に、高さを変える様子を職員さんに見せていただき、いろいろ新しい製品が出るものだと感心しました。壁沿いの各机席にテーブルライトが設置されているのも嬉しいです。3階の閲覧席は持参PC使用不可で、持参PCを使いたい場合は2階の席を使うことになります。

§ これからどんな図書館に?

移設オープンしたばかりの六郷図書館の印象は、ただただ「新しくてきれいな図書館」という感じ。強いていえば、児童エリアの地域資料の棚の上に飾られた鳶凧が、六郷らしさを表しているでしょうか。

でも、この児童向け地域資料は、子どもには難しいと思える資料も入れてどうにか地域資料コーナーとして成り立たせているような状態で、鳶凧に興味を持って棚に来てみても肝心の資料が充実していないのが残念です。その一方で、2階の一般書架の地域資料に、『新大田区の民話と昔話』『六郷子ども風土記』など、児童に適している本がある。地域資料は、他の棚以上に、書店などでは得にくい情報が得られる、図書館ならではの資料なので、必要とする利用者に届くよう分類して欲しいです。

そういったことも含めて、新しい六郷図書館がこれから利用され、要望や意見が寄せられて、いい図書館に育っていけばと思います。隣の公園が完成した頃に、また行ってみようと思います。

大田区立六郷図書館 データ

住所東京都大田区南六郷3-10-3 →Google Mapで見る
Tel03-3732-4445
開館時間9:00~19:00
※1月4日は、10:00~19:00
定休日第3木曜(祝日は開館し、翌日を休館)
12月29日~1月3日
最寄駅 京急本線 六郷土手駅から徒歩13分
京急本線 雑色駅から徒歩14分
駐輪場建物南東側(建物入口向かって右方)に駐輪場あり
駐車場一般用駐車場はなし。建物入口向かって左に障害者用駐車場1台分あり。
所蔵資料
図書所蔵数96,047冊(2023/03/31現在、出典『令和5年度 大田の図書館』)
CD所蔵数5,283点(2023/03/31現在、出典『令和5年度 大田の図書館』)
カセット所蔵数90点(2023/03/31現在、出典『令和5年度 大田の図書館』)
DVD所蔵数327点(2023/03/31現在、出典『令和5年度 大田の図書館』)
ビデオ所蔵数54点(2023/03/31現在、出典『令和5年度 大田の図書館』)
設備
ブックポスト建物入口向かって左の壁面にブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備1階カウンター向かって左に、CD視聴機1台、CD・カセット1台あり。1回60分まで。
映像視聴設備1階カウンター向かって左に、DVD視聴機1台あり。1回1作品まで。
ネット閲覧PC1階入口入って左に、ネット閲覧PC1台あり。利用は1回30分。
持参PC利用2階の机席(26席)で持参PCの使用可能。電源あり。
LAN接続館内で大田区公衆無線LAN「Ota_City_Free_Wi-Fi_01」(暗号化なし)の利用可能。1回60分のネット接続可能。利用にはメールアドレスとパスワードの登録が必要です。詳しくは図書館へお問い合わせください。
飲食設備等
  • 2階休憩コーナー(テーブル12席)で飲食可能。飲料自販機2台あり
  • 蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)の飲料に限り、館内での摂取可能。
その他設備2階の休憩コーナー内に携帯電話ブースあり