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移転前の旧・渋谷区立中央図書館

旧・渋谷区立中央図書館は2010年3月31日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の中央図書館が2010年5月22日に移転開館しました。

以下は、移転前の旧・渋谷区立中央図書館の訪問記です。

移転前の旧・渋谷区立中央図書館 訪問記

last visit:2010/03/23
§ 図書館の場所

渋谷区立中央図書館へ行くのに一番近いのは、JR原宿駅の竹下口。竹下口を出て、信号を渡ってから左に進み、東郷神社の案内が出たら、それに従って歩いて、東郷神社に辿り着いたら左に進む、というのが一番近い行き方かな。

ただ、それだと路地をくねくねと進むかたちで、ちょっとわかりにくいんです。初めて行くときは、竹下口を左に行ったら、大通りの道なりにしばらく歩いて、「成長の家」と原宿外苑中学校の間の坂を下っていく、という道の方がわかりやすいと思います。

渋谷区立中央図書館に行くなら、この東郷神社や東郷記念館への道も、行きか帰りにぜひ通ってみてください。外から眺める東郷記念館の庭は素敵ですよ~。突き抜けて明治通りに出ると、急に賑やかになる、その対比が面白いです。

§ 図書館内の様子

渋谷区立中央図書館は、地下1階から4階までの施設。ちょっと長くなりますが、ずらずら書きますね(笑)。

まず、1階が児童コーナーと新聞コーナー。2階にはカウンター、検索機、参考図書、雑誌コーナー、家事関連本、日本文学。旅行ガイドと図書分類290番台「日本地理」に関する本も2階です。3階は、外国文学、外国語図書、中高生コーナー、地域資料。図書分類の700番台から900番台にあたる「スポーツ」「芸術」「言語」も3階。日本の小説の文庫は2階ですが、それ以外の文庫は3階です。4階は閲覧席で、地下1階は食堂です。

で、この地下1階から4階までの各階とは別に、「書庫」があるんです。書庫は天井が低くて、建物の2階から3階にかけて、3層になっています。2階・中3階・3階という3層になっているといえば、わかりやすいでしょうか。上の配置で挙がらなかった、000~280、300~600番台は、この「書庫」にあります。

§ 1階の新聞コーナー・児童コーナー

1階の入口入ってすぐ左の新聞コーナーは、「新聞コーナー」というよりは、「図書館ロビーに新聞が置いてある」という印象を受けるのは私だけでしょうか(笑)。椅子もあるのですが、新聞書見台の高さが立って利用する位置に合わせてあり、実際このコーナーにいる人の多くは立っています。

国内の主要新聞はもちろんのこと、この場所柄だと外国人の利用も多いのでしょうか、英字新聞も『Japan Times』『International Herald Tribune The Asahi Shimbun』『The Daily Yomiuri』と3紙所蔵しています。

新聞コーナーの更に左の一画が児童コーナー。新聞コーナーから児童コーナーに入る扉もあるし、外から直接児童コーナーに入れる入口もあります。土足厳禁なので、入口で靴を脱ぐのですが、児童コーナーの床が板張りで、靴下で歩くと絨毯とはまた違った気持ちよさがあります。

児童コーナーの中は、ぬいぐるみ類は少なめですが、その代わりに(?)壁の上に絵本の紹介がたくさん貼ってあります。表紙をカラーコピーしたものの下にタイトル・著者名とあらすじが書いてあって、装飾兼おすすめ絵本紹介という感じでしょうか。分類ラベルも貼ってあるので、この絵本紹介で読みたくなったものを児童が自分で棚で探すことで、図書分類のしくみもわかるようになるかもしれませんね。

§ 2階の書架

2階に上がると、階段を上がった正面にカウンターがあります。カウンターの裏にあたる部屋が参考図書コーナーで、カウンター向かって左が日本小説の部屋、カウンター向かって右が雑誌コーナー、旅行ガイド、家事関連本、日本地理。

日本小説の部屋は、名前の通り、古事記・日本書紀から現代小説にいたるまで、全集も含めて日本の小説がずらっと揃っています。こういう部屋って結構珍しいように思います。というのも、現代の小説が利用が多いのに対し、全集や古い日本文学は利用が少ないので、むしろ外国小説も日本の小説も含めて現代小説でひとまとめに置くパターンの方が多いんです。また、収納の都合で、ジャンルに関わらず、文庫は文庫用の棚にひとまとめというパターンも多い。

その点、渋谷区立中央図書館の日本小説の部屋は、文庫も単行本も全集も古文も、日本の小説は全て揃っているのです(但し、文学に関する本は、3階の外国文学の部屋になります)。この部屋にいると、日本文学に浸かっているような気がして、妙に気分が高まります(笑)。

カウンター左の、家事関連本・旅行ガイド・日本地理があるエリアは、利用が多い本をまとめて置いたのだと思うのですが、特に290番台の日本地理だけが突如ここにあるのが、慣れるまではわかりにくいです。4階まであるフロアと、3層ある書庫を使っての配架なので、いろいろとご苦労があるのでしょうね。利用者としては、とにかく自分がよく利用するジャンルの場所を覚えていくしかないかもしれません。

§ 3階の書架

3階は、階段あがって正面に、日本の小説以外の文庫が並んでいます。その文庫エリアの左に入ると外国小説・外国語図書・中高生コーナー、文庫エリアの右が地域資料コーナー、文庫エリアの奥が図書分類の700~900番台。この左・奥・右の区画は、中でつながっています。

外国小説エリアに入って右にある外国語図書は、冊数が多い!言語としては英語だけですが、小説はもちろん、日本の地理・歴史に関する英語本など、英語を勉強している日本人というよりは、在日外国人向けと思われる本が多いです。図書館の本を通じて、日本にいる外国人の方々に、日本をより知ってもらえたら嬉しいですね。

そうした大人向けの英語本だけでなく、英語の絵本や、児童向けの英語の読みものなどもあります。児童向けの英語の読みものは、日本の中高生コーナーの棚の隣にあるので、英語に興味のある中高生が簡単な英語の読みものにチャレンジするのもありですね。

奥の「芸術」や「スポーツ」棚は、広くて見やすいです。というか、それ以外のジャンルが置かれている「書庫」が狭すぎるというのが正しいか(笑)。壁には絵画が飾られていて、荘厳な雰囲気さえ感じます。「書庫」が"裏"なら、こちらは"表"という感じでしょうか(笑)。

§ 3層の書庫

さっきからやたらと「狭い」といっている書庫ですが、こちらはこちらで「本に囲まれている」感が感じられて楽しいです。明るくて広い新刊書店より、本がぎっしりある古本屋の方がお好きな方などは、この「書庫」が気に入るのではないかと思います。

古くに建てられた図書館には、建てられた当時は職員さんしか入れない書庫として使っていた部分を、後に開架式が広まったのに応じて開架へ変更したところも多く、渋谷区立中央図書館の3層の書庫もそうかと思っていたのですが、この図書館の開館当時から利用していたという方からいただいたメールによると、開館当時から開架だったそうです。その方もこの本に囲まれた空間を堪能したと聞き、最近流行の開放的で明るい書架もいいけど、こういうひっそりとした書架もいいんだよなあという思いが高まりました。

§ 4階の閲覧席

4階は閲覧席が並ぶフロア。資料としては、新聞縮刷版だけが置いてあります。閲覧席は、区民席・社会人席・自由席と細かく分かれており、区民席と社会人席はカウンターで利用券をもらう必要があります。ただ、区民席は17時以降は自由席となります。

大きい机の両側に数人が向かい合って座るかたちで、向かい合う人との間には仕切りがありますが、隣の人との仕切りはないタイプ。一人分のスペースは、狭くもなく広くもない、適度な大きさといったところ。場所柄からして、夏休みや受験シーズン前は、席取り競争率が激しそうな気がします。

§ 地下の食堂

地下は何だかのんびりした空間。階段を下りると、すぐ右に石庭があります。殺風景な中に石庭が突如存在するので、和みの場所というよりは、謎の空間という感じです(笑)。

和みといえば、中央図書館の入口前には小さい池があります。ここには亀がいて、見ていると気持ちがの~んびりしてきます。実際、この池の周りには行き帰りの寄り道や休憩なんかで、ぼーっと池を眺めている方が多いですね。中央図書館に行くの際にはぜひこの池も楽しんでください。

石庭の先にある食堂は、食べ物を注文することもできるし、持参してきたものを食べることもできます。私は、300円のラーメンを食べたことがありますが、こうした食堂で一般的な程度の量だったので、かなり安いといえると思います。

この食堂については、以前面白い投書を見たことがあるんです。中央図書館の階段の、2階と3階の間の踊り場に、図書館への投書とその回答が掲示してあるんですね。以前そこに「食堂の職員がののしりあって仕事を全然しないので困っている」との投書があったんです。"ののしりあう"って、一体…。「注意をして改善した」とあったのですが、ちょっとこの目でその様子を見てみたかったなぁと(笑)。ちなみに、私が食堂を利用したときは、残念ながら(?)職員さん同士仲良く働いていらっしゃいました。

§ 古さが心地よい図書館

渋谷区立中央図書館は、いい意味でも悪い意味でも古い施設で、入るとタイムスリップしたような気がします。まるで、平成から昭和に戻ったような(笑)。明るすぎない「まったり」感は、せかせかしている社会に疲れた人のオアシスになるのでは。個人的には、新しくてきれいな空間ばかりじゃなくて、こういう時代に取り残されたような空間も必要だと思うんですよね(注:褒め言葉に聞こえないかもしれないけど、褒めてます)。

よく考えてみれば、この辺りは、次から次へとリニューアルされるファッションビルがあるかと思えば、明治神宮や東郷神社などの変わらない施設もあるという、新旧が混在している不思議な土地。渋谷区立中央図書館も、この土地だからこそ、この雰囲気を維持してこれたのかも。疲れた現代人にお薦めしたい図書館です(笑)。