ボードゲーム(2018年5月27日)
visit:2018/05/27
港区立赤坂図書館のボードゲームイベントに参加してきました。赤坂図書館は2ヵ月に1度ペースでボードゲームイベントを開催していて、現在、東京都内の図書館で最もボードゲームイベントの頻度が高い図書館です。この日の会話で、一昨年からボードゲームイベントを開催していたという話が出たので、おそらく東京都内で最初にボードゲームイベントをした図書館でもあるかもしれません。ただ、2018年5月13日の江戸川区立東葛西図書館でのボードゲームイベントの際、「去年、葛西図書館で開催したのが最初のボードゲームイベントではないか」という話も聞いたので、いつかそれぞれの正確な日付を調べてみたいです。
2ヵ月に1度ペースで開催しているだけあり、会場には13個ものボードゲームが用意されていました。具体的には、「カタン スタンダード版」「ガイスター」「インカの黄金」「ワンス・アポン・ア・タイム 日本語版 基本セット」「ごきぶりポーカー」「ブロックス」「コンタクト・ゲーム」「テレストレーション」「Splendor 宝石の煌き」「ファウナ」「ZITTERNIX」「新・キング・オブ・トーキョー」「VIVATOPO」。これらは、イベント用にどこかから借りたものではなく、赤坂図書館で購入したものだそうで、今後の赤坂図書館のボードゲームに行けば常に会場にあると思っていいでしょう。
私は、この日で図書館のボードゲームに参加したのがまだ6回目ですが、このラインナップは過去6回の中でも、ジャンルが最も多岐に渡っていると感じます。スタンダードな陣取りゲームの「カタン」も押さえつつ、物語を作る「ワンス・アポン・ア・タイム」、生物に関する知識がじわりと効く「ファウナ」、お絵描き伝言ゲーム「テレストレーション」、プレイヤー同士の駆け引きが楽しい「ごきぶりポーカー」と、いろいろな種類のボードゲームが揃っています。3月の回に参加した際、同じメンバーでいろいろなゲームをしたのですが、求められる要素が違うのでゲームごとに強い人が違うのが興味深かったです。
会場は赤坂図書館の多目的ホールで、12時から16時までの間、出入り自由でボードゲームが楽しめます。私が着いたのは13時頃で、会場にいる4人がカタンをプレイ中。実は、3月の回に参加したとき、15時を過ぎてからカタンをやってみたいと言ったところ、時間がかかるボードゲームだから今日はもう無理だろうと言われ、ならば次回に、という話をしていたんです。そのときに、12時から来ると自ら宣言した気もするのですが、家を出る際にだらだらとしていて出遅れてしまった…。
カタンの様子をしばらく見てから、職員さん2人と一緒に3人で「ワンス・アポン・ア・タイム」をしました。各プレイヤーに、結末が書かれたカード1枚と、キーワードが書かれた手札を複数枚(枚数はプレイヤー数によって変わる)を配ってゲームがスタート。プレイヤーは手札にあるキーワードを使って物語を作り、最終的に自分の持つ結末に持っていくよう競います。
これが、やってみると思っている以上に難しく、自分には物語を作る才能がないことを実感。このゲームでは、他のプレイヤーに割り込まれるまでは、そのとき話しているプレイヤーがずっと物語を作り続ける(どうしても続けられなければパスも可能)のですが、話が続かなくて<誰か割り込んで!>という気分になるくらい。でも、小説やドラマが好きな身としては上手くなりたいゲームで、またやってみたいです。たぶん、このゲームは、生真面目さより、適当さというか、こじつけ力のようなものがある人が強いと思います。
ワンス・アポン・ア・タイムの3回目のプレイ中にカタンが終わり、カタンをしていた人が2人ずつ別々のゲームをしていたのですが、せっかくだから皆でできるゲームをしようとなり、6人で「人狼ゲーム」をしました。あれ、会場にあったボードゲームの中に人狼はなかったはず、と思った人もいるでしょうが、参加者の一人が私物のボードゲームをいくつか持ってきてくださったんです。確か、1ゲーム目はカードを使って「人狼が1人、残りが村人」、2ゲーム目はアプリを使って「人狼1人、占い師1人、残りが村人」の設定でプレイしたんだったかな。ゲーム自体も面白かったし、ほとんどの人が人狼ゲームをした経験がなく、最初は遠慮深げに疑っていたのが、段々遠慮なく疑いをかけていくという変化も面白かったです。
そして、この後に「レジスタンス:アヴァロン」という、こちらも人狼を持ってきてくださった方の私物のゲームをしたのですが、ここまでは大人だけでプレイしていたところに、小学生(たぶん低学年)が参戦。ゲームとしては、配られたカードによって青軍と赤軍に割り振られたプレイヤーが皆、青軍の振りをしてそれぞれの目的を果たす内容です。
最初は難しいだろうということで、図書館職員さんと小学生の子が2人で1プレイヤーとして相談しながら遊ぶことに。「他の人に見られないように自分のカードを見て」というアドバイスに、部屋の隅に隠れてからカードを見たり、ルールそっちのけでカードに書かれたキャラクターの格好良さを判定したりと、子どもらしい振る舞いをしていた男の子ですが、大人の振る舞いを見て、段々他のプレイヤーを疑うことを覚えていく様子が面白い。プレイしていくうちにそのゲームのコツや振舞い方を理解していく点では、大人も子どもも一緒ですが、それを表情や言葉に出している子どもを見ると、大人が心の中でしていることを可視化している感じなんです。
最終的には、その男の子のお兄ちゃん(たぶん小学生)も参戦。慣れてきた弟くんは、プレイ前にプレイヤー1人1人に「赤はお前だ!」と指差して反応を見るという、大人では思いつかない戦略を披露するほど、<他のプレイヤーの振る舞いを見て推理する>ことを理解していました。結果的に、小学生の二人は(能力を持たない)平の青軍しか割り振られなかったのですが、赤軍(=騙す側)になったときにどう振る舞うか見てみたかったなあ。
そんな感じで、ゲームそのものに加えて、子どもの発想も楽しんでいるうちに、イベント終了時間を迎えてしまいました。今回も、たっぷり楽しませていただき、私物のボードゲームを持ってきてくださったHさん、その他ご一緒した皆さま、赤坂図書館の職員さん、ありがとうございました。
人狼をし始めるところで「せっかくだから皆でできるゲームをしようとなり」と書きましたが、私がいた時間に限って言えば、上に書いたのが会場にいたほぼ全員です(ほかに、並んでいるボードゲームを見るだけで帰ってしまった人が少々いたくらい)。プレイヤーには図書館職員さんも含まれているので、来場者としては10人弱ほど。のんびりした雰囲気のなか、じっくりボードゲームが楽しめます。
私が参加したなかでは、板橋区立赤塚図書館や練馬区立関町図書館(どちらも、住宅地の中にある図書館)で行われたボードゲームイベントなどは大盛況過ぎて、選択の余地なく、人数に余裕のあって区切りがいいゲームに入れてもらうしかない時間帯もありました。もちろん、スタッフさんは種類・難易度やタイミング的に入れそうなゲームに案内してくれますが、ちょうどいいものがなければ、好みや難易度がその人にあまり合わないものに入ることになる場合もあります。
その点、ここはもっとのんびりした雰囲気で、だからこそそのときのメンバーでちょうどいいボードゲームができ、はじめてボードゲームをする人にはおすすめです。個人的な思いを率直に言うと、今ののんびりじっくりプレイできる雰囲気がとてもいいので、ここで紹介することで参加者が増え過ぎて欲しくないと思うくらい。今後の開催予定は、当サイトの東京都の公立図書館でのボードゲームイベント開催予定まとめに掲載しているので、ボードゲームをやってみたいけど、どんなゲームがあるのか全くわからないという人も遠慮なくいらしてください。
ここからは、私の中での「図書館でボードゲームをする目的・意義は?」の考察になるので、ご興味ない人は読まなくていいと思います。私は、図書館でのボードゲーム開催が増えているけど、ボードゲームを図書館で行う意味があるのかなとやや懐疑的な気持ちで、それを考察すべく、今年の3月から都内の図書館のボードゲームイベントに参加するようになりました。
ときどき「外国の図書館で行われている」という説明にならない説明をされることがありますが(だったら、外国で行われている悪い慣習も真似するのか。「他でも行われている」は理由にはなりません)、そんな主体性のない説明ではなく、目的や意義を知りたいと思って参加しています。
ここで話の流れを変えますが、このボードゲームの1週間前に、東久留米市立中央図書館で開催された「ひとハコ図書館」というイベントに、ひとハコ館長として出展したんです(これについては、あらためて体験記を書く予定)。そのひとハコ館長同士の懇親会で、読書とは何かという話になって、「読書とは世界を読むことだ」「その意味では、ボードゲームは極めて読書的な行為である」とおっしゃった方がいたんです。
例えば、物語を読む際は、その物語世界を理解し、ときに感情移入をして読み解いていきます。これと、ボードゲームのルールを理解し、プレイする感覚は確かに似ています。本に書かれた物語を読む行為は、誰かが既に作ったストーリーをトレースすることですが、ボードゲームの場合、設定こそ決められたルールに従いますが、どういうストーリーが繰り広げられるかはプレイヤーが作っていくわけです。
また、物語に限らず、他人の手による文章を読むという行為は、単に字面を読み取るだけでなく、書き手の意図を読み取る行為であり、この意味ではボードゲームで他のプレイヤーの意図を読み取るのも同じことです。「書を読む」ことが「読書」ですが、「読む」という行為なら本に限ったことではありません。図書館にも、文字からなる本だけでなく、写真集などのビジュアル本や、CD、DVDも所蔵しており、そうしたものの一つとしてボードゲームがあってもいいのでは。今の私は、そのように考えるようになってきています。
その点では、今のように図書館イベントでボードゲームを楽しむだけでなく、貸出があってもいいと思います(返却時のパーツ紛失チェックが大変そうですが)。実際、かるたを所蔵して貸出できる図書館は多いですし、木製のおもちゃを多数所蔵している北区立東十条図書館のようなところもあります。欲を言えば、館内閲覧にあたるような、プレイしたい人がいつでも図書館でプレイできる仕組みになれば尚いいですが、ルールの問題だけでなく、そういうことができるスペースがあるかどうかという施設の造りにも依るでしょう。
もう一つ、これも先週の東久留米市立中央図書館で、元々司書として市の図書館で働いてきて、今は市の公民館に異動しているという方とお話したのですが、「公民館には図書館でも使えるノウハウがある。早く図書館に戻ってそのノウハウを使いたい」「公民館図書室があったり、図書館に集会室があるなど、図書館と公民館には重なっている部分もあるが、司書の専門性を持ってすれば、公民館ではできないことが図書館でできる」ということをおっしゃっていたんです。具体的なアイデアなどは聞かなかったのですが、その考えで行くと、図書館でのボードゲームイベントも、単にボードゲームを楽しむだけでない、図書館ならではのプラスアルファの要素を付け足せるのかもしれません。
ただ、この点で、私が参加してきた中では、せいぜいボードゲームに関係ある本を会場に置いてあるのを見た程度で、私も具体的にアイデアを持っているわけではありません。司書の専門性を活かしたボードゲームイベント…この調子であちこちに参加していけば、いつか目にすることができる日が来るでしょうか。
最後に、これは今日「人狼ゲーム」をしたことで感じたことですが、もし地域のコミュニティの場とするのが目的であれば、まずは「人狼ゲーム」や、この場にはなかったけど「犯人は踊る」のような、プレイヤーの名前を呼び合うゲームを最初にすると、コミュニケーションが生まれやすいように思います。
赤坂図書館のボードゲームもそうですし、他の図書館のボードゲームでもそうですが、会場に入るとまず名前(ニックネーム)を書いた紙を胸につけるなどして、参加者同士がコミュニケーションできるようにしています。でも、現実的に、ボードに向かうゲームだと、名前を呼び合うことなくプレイできてしまうし、呼ぶとしても、赤いコマを使っている人を呼ぶのに「赤の人」などで済んでしまいます。もちろん、コミュニティ作りが目的でないのならそれでもいいと思いますが、もしそういう目的があるなら、最初に名前を呼びあうゲームをすると、その後にボードに向かうゲームをしても自然に名前で呼び合うかたちになります。
こんなかたちで、今回もいろいろ得たものがありましたが、私の「図書館でボードゲームをする目的・意義は?」という考察は、まだ固まっていません。これからも参加しながら考えていこうと思います。