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新宿区立中央図書館区役所内分室

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新宿区立中央図書館区役所内分室 訪問記

last visit:2024/12/26
日本有数の繁華街・歌舞伎町の中にある図書館分室

新宿区には、図書館条例で設置された図書館の分室である、なのに新宿区立図書館のカードは使えない謎の施設・中央図書館区役所内分室があります。新宿区役所本庁舎は歌舞伎町1丁目、新宿東宝ビルと花園神社の真ん中辺り、出張所などではなく自治体本庁舎がこんな繁華街の中にあるというのも珍しいのでは。

東京の図書館周りをする中でも新宿区は、歌舞伎町のような繁華街あり、新大久保のようなコリアンタウンあり、落合や神楽坂辺りの閑静な住宅街あり、学生街の早稲田・高田馬場あり、と多様性があってとても面白い。そんな新宿区の行政を取り扱う本庁舎をここにしたか、とあらためて新宿の面白さを感じます。

靖国通り沿いに面して小さな第一分庁舎があり、そこから区役所通りを進んだ隣が大きな本庁舎、その本庁舎に入って左に折り返した位置にある一画が区政情報センターです。新宿区立図書館ウェブサイトの「図書館関連施設」ページでは「区政情報センター(中央図書館区役所内分室・行政資料コーナー)」という書き方をしているので、「区政情報センターの中に中央図書館区役所内分室と行政資料コーナーがある」という位置づけになるのでしょうか。開館時間は区役所窓口と同様に平日8時半から17時までで、仕事をしている社会人にとって図書館としてはちょっと利用しづらいです。

入口付近に窓口があり、中に入ると中央に4人掛けの机、その左右に本棚が並んでいます。誰でも自由に入れる分室なのですが、雰囲気としては保管庫に机を置いて資料を読めるようにしているという感じの素っ気なさです。一般に配布するパンフレット類のストック置き場としても使われている感じ。私が行った限りでは、机に数人利用者がいたときもあれば、私以外誰もいなかったときもあり、ぼちぼち利用されているといったところかな。

並んでいる資料の大部分は行政資料、そこに事典類などの図書館らしい資料や読み物的な地域資料を足して、雑誌や新聞も少々加えてみましたというラインナップです。新聞は朝日・毎日・読売・東京・産経・日経新聞・スポーツニッポンと主要紙が一通り、雑誌は「東京人」「エコノミスト」「プレジデント」といった一般誌、「図書」「書斎の窓」といった出版社のPR誌、「区政会館だより」「月刊シルバー人材センター」といった行政施設らしい雑誌などが並んでいます。

行政資料って読み物的な本と違ってこれを調べようという目的がないとなかなか手に取らないので、図書館巡りの一環として来た私としては入ったはいいがさてどうしようと最初戸惑いましたが、棚を見ていると新宿区区民意識調査とか新宿区が行っている文化事業に関する資料など興味深いものがあり、いろいろ読みふけってしまう。

また、ここで新宿の昔の写真などが多数掲載されている本を見ていると「新宿の中心で新宿の本を読んでいる」感じで何だか面白い。客観的に見て私は新宿区役所の片隅で本を広げているだけ、でも脳内ではタイムトリップをしているような気分になってきて。区政情報センターとなっているエリアに仕切りなどはないので、「何番の番号札をお持ちの方は何番窓口までお越しください」に始まる区役所の窓口周りの音が耳に入ってくるんです。それが「新宿という街の中で本を読んでいる」気分にさせてくれます。

この分室で新宿区立図書館の図書館カードは使えないのですが、別途この分室だけの利用登録をすれば貸出可能の資料を借りることもできます。このサイトを始めた当初に江東区民である私も利用登録をしたことがあり、登録条件は新宿区立図書館と同様に、新宿区に在住・在学・在勤の人、または、東京都に在住の人だったはずです。

どうしてここに図書館が?

そのように立地としては面白い、でも他の新宿区立図書館とは別管理である図書館がなぜ存在するのか首をかしげたくもなりますが、これは歌舞伎町という地域を抱えた新宿区の風紀対策としての工夫なのです。この分室が開設されたのは1985(昭和60)年1月26日で、その頃の新聞を見ると以下のような記事が掲載されています。

ポルノ退治に図書館開館

東京新宿区歌舞伎町の新宿区役所一階ロビーに二十六日ミニ図書館が開設された。

区立中央図書館分室で蔵書はわずか三千冊。来月施行される新風営法に図書館、学校、病院などの公共施設の半径二百メートルでは、新たにのぞき部屋などのポルノ産業を開けないという禁止規定があるため、それを逆手にとってポルノ産業進出を食い止めようとする作戦。

(以下、略)

毎日新聞 1985年(昭和60年)1月27日(日曜日)社会面

この記事と同じページにグリコ・森永事件の犯人から新聞社に送られた18通目の挑戦状が掲載されていて、そうかその頃かと気付かされたのですが、この時期に風営法が改正されて、それまで「図書館などの半径200m以内で個室付浴場業を新たに営んでは駄目」だったのが、「図書館などの半径200m以内で風俗関連営業を新たに営んでは駄目」と対象が広がった。これを区役所の周囲にも適用させるべく、図書館分館を区役所内に設置した、というわけです。現在では、東京都暴力団排除条例によって、図書館などの半径200m以内での新たな暴力団事務所設置も禁止されています。

ここ最近の新宿立図書館の年報を見ると蔵書数は5000冊程なので、最初はもっと小さいコーナーだったのでしょう。新宿区立図書館のカードを使って貸出したり予約受取ができたりすれば便利ですが、設置からそろそろ40年になろうとする現在もそのための設備はなし。ある意味潔いくらいの「風営法適用だけを狙った図書館」ということか。

新宿区立図書館条例できちんと定められていながら、新宿区立図書館ウェブサイトでは図書館一覧の中には入らず、「図書館関連施設」の方で紹介されているという謎状態の裏にはこんな経緯があるのです。

区役所新庁舎、この分室はどうなる

さて、この新宿区役所本庁舎ですが、1966年竣工なのでもう少しで築60年、老朽化対策だけでなくサービス向上も目的とする新庁舎が検討されています。まだ検討段階ですが、今と同じ場所での建て直し案だけでなく、別の場所での移転案も選択肢に入れているよう。新宿区ウェブサイトの「庁舎のあり方検討」ページを見る限り、移転する場合の最も有力な候補地は花園神社北隣の新宿区役所第二分庁舎・新宿区保健所・吉本興行東京本部がある場所で、移転することになったとしても利用者感覚ではこの付近であることには変わりなさそうです。

ただ、風営法適用を狙うという点では、この200m東への移転が「半径200m」の適用範囲に大きく影響します。現在の区役所だと、北は風林会館、西は歌舞伎町一番街辺りまでが「半径200m」に入ります。この法律に適用させるためにこの場所に区役所を建てたのではないかというくらい、「半径200m」の中に店舗が乱立する歌舞伎町が入ります。

これが、第二分庁舎のあるところに図書館分室も移転した場合、現在の本庁舎や風林会館が半径200mの西端あたり、北がラブホテルとマンションが混在するエリア、南から西にかけて伊勢丹や丸井が入るかたちになります。「半径200m」に取り締まるまでもない大型商業施設や神社、四谷警察署花園交番(交番なのに敷地面積が新宿区役所本庁舎と同じくらいある)が入ってしまうというのはもったいないというか、イレギュラーな図書館を設置する意味が半減してしまう。

新宿区ウェブサイトの「本庁舎整備検討調査業務委託」ページにある資料では移転した場合の本庁舎・第一分庁舎の跡地活用まで検討されていて、商業施設&宿泊施設の案が有力な気配が強いのですが、そのテナントの一つとして図書館分室を入れれば移転後も今の「半径200m」を維持することはできる。でも、商業・宿泊施設案が有力なのは高い賃料を得られて財政に貢献できるという面が大きいので、図書館分室なんかを作って収益を減らすようなことはしないだろうなあ。そうなると、本庁舎移転とともにこの分室もなくなってしまうかもしれません。

そのように、図書館ができて、もしかしたらこの先なくなるかも、ということ自体が地域の歴史で、それを資料として残していくのが図書館です。この先の区役所、この先の歌舞伎町、この先の新宿区立図書館がどうなるか、これからも図書館巡りをしながら見ていきたいです。

<新宿区立中央図書館区役所内分室さんぽ記事>

新宿区立中央図書館区役所内分室 データ

住所東京都新宿区歌舞伎町1-4-1 新宿区役所本庁舎1階 →Google Mapで見る
Tel03-5273-4182
開館時間8:30~17:00
定休日土・日曜・祝日・振替休日
12月29日~1月3日
最寄駅
東京メトロ丸ノ内線 新宿三丁目駅から徒歩6分
東京メトロ丸ノ内線 新宿駅から徒歩7分
東京メトロ副都心線 新宿三丁目駅から徒歩7分
都営大江戸線 新宿西口駅から徒歩7分
西武新宿線 西武新宿駅から徒歩8分
都営新宿線 新宿三丁目駅から徒歩10分
小田急小田原線京王線 新宿駅から徒歩11分
都営新宿線都営大江戸線京王新線 新宿駅から徒歩14分
駐輪場区役所本庁舎南側に駐輪場あり
2024/12/28に現地訪問にて確認
駐車場新宿区役所地下2階に、一般用駐車場17台分、障害者用駐車場1台分あり
2024/12/25に新宿区ウェブサイトにて確認
所蔵資料
図書所蔵数5,160冊
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
CD所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
カセット所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
レコード所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
DVD所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』、団体用貸出DVDは中央図書館の所蔵数に加算
ビデオ所蔵数なし
2023/03/31現在、出典『しんじゅくの図書館2023』
設備
ブックポストなし
2024/12/26に現地訪問にて確認
自動貸出機なし
2024/12/26に現地訪問にて確認
自動返却機なし
2024/12/26に現地訪問にて確認
セルフ予約受取なし
2024/12/26に現地訪問にて確認
図書の除菌なし
2024/12/26に現地訪問にて確認
ネット閲覧PCネット閲覧PC1台あり。1回30分。但し、職員さん曰く、古いPCで反応もすごく遅い、とのことです。
2024/12/26に現地訪問にて確認