ミステリ企画「的場郁賢のクイズな日常」など、クイズ企画いろいろ
visit:2017/07/28
江戸川区立図書館のティーンズ向け広報誌「PATTER PATTER PAPER」40号を見ていたら、2017年に開催するティーンズ向けイベントがたくさん紹介されていました。夏に限らず、江戸川区立図書館はティーンズ向けの展示やイベントに力を入れているし、この広報誌も面白くてお薦め。で、紹介されていた夏のティーンズ向け企画の一つ、江戸川区立東部図書館の謎解き企画「的場郁賢のクイズな日常」に挑戦してきました。
謎解きイベントである、ということしかわからないまま、とりあえず東部図書館2階のティーンズコーナー(図書館内の階段のそば)に行ってみると、考え込んでいる男性が表紙になった冊子が問題1から4まで4冊あります。各冊子では推理クイズが出題され、問題1の答えは問題2に掲載、問題2の答えは問題3に掲載…と続いて、問題4の答えだけは2階カウンターに行くともらえるかたちです。謎解きといっても、館内にヒントが隠れていたりするタイプではなく、問題文と推理力だけで解くタイプ。制限時間がなく、自分のタイミングで解けたと思ったら次へ進めるので、ちょうど夏休みで図書館に来ている中高生にとって気分転換になる企画です。
ティーンズ向けとはいえ、誰でも挑戦できるので、さっそく私も挑戦。例えば1問紹介すると、「毎月22日はショートケーキの日。これは何故だろう。」。知識は必要とせず、推理力で解ける問題なので、ぜひ考えてみてください。1冊ずつ答えを考えて進んでいき、最後の問題も自分なりに答えを出してカウンターに答えをもらいに行ったら無事正解。職員さんに答えを告げる必要はないので、間違えていたら恥ずかしいと気後れすることは無用です。回答をもらいに行くと、最後の問題の回答とともに、A5クリアホルダーをプレゼントしてもらえます。
難易度はやや易しい寄りの中程度というところでしょうか。ティーンズ向け展示でミステリ小説を展示している横で問題を配布しているので、謎解きが主体というよりは、頭を推理モードにしてミステリ小説を借りてみませんかという、展示のサブ企画のようなかたちです。2017年7月21日から8月27日まで配布しているので、ご興味ある方はぜひ挑戦してみてください。
私はこの「的場郁賢のクイズな日常」目当てで東部図書館に来たのですが、児童エリアに寄ってみたらこちらでもクイズ企画をしていました。
まず一つは、「ぱたぶー海外旅行に行く!」という、館内を巡って解く国旗クイズ。児童エリアの棚などに、番号とどこかの国の国旗の組み合わせが、全部で15個貼ってあります。それらを全て見つけて、解答用紙に何番の国旗がどこの国のものかを解く問題で、知識だけで解けるか、国旗が描かれた本を見つけて調べながら解くかは、挑戦者次第。こちらも制限時間などはなく、建物入口入って左(図書館エリアのゲートを通る手前)などで配布している解答用紙を自由にとってスタート、解けたと思ったところで1階カウンターに行けば答えをもらえます。実施期間などは特に書いていませんでしたが、おそらくこちらも夏休み期間の企画だと思います。
個人的には、ティーンズ向けの推理クイズより、こちらの方が難しかったです。推理クイズは頭をひねれば答えをだせるけど、国旗の方は知らなかったらどんなに頭をひねってもわからない。特に横3色や縦3色の国旗はたくさんあって、どの色の組み合わせがどの国なのか、知識がごちゃ混ぜになっているし。でも、調べるために国旗が載っている本を見ると、出題されていない国の国旗もついでに見て、勉強になりますね(そこで、覚えた気になっても、3日後にはもう忘れてるんですけど…)。
ついでにもう一つ、期間限定ではなく、常設で配布している「とうぶとしょかんクイズ」もご紹介します。こちらは、蔵書数やデザインイメージなど、東部図書館に関するクイズを出題しています。東部図書館をよく利用している大人でも、あらためて「東部図書館には何冊くらいの本があるでしょう」と言われると考え込んでしまうのでは。こちらも、建物入口入って左(図書館エリアのゲートを通る手前)で問題編と解答編を配布しています。
さて、そうやって東部図書館の館内企画を一通り楽しんで帰宅した後、ふと思ったんです。ティーンズ向けミステリ企画に登場した「的場郁賢」というキャラクターは何者なのかと。こうした図書館イベントで使われるキャラクターは、大抵はその図書館のキャラクター。例えば、児童コーナーの国旗クイズに登場している「ぱたぶー」は、まさに東部図書館のキャラクターです。東部図書館のティーンズ向け広報誌には4人のキャラクターが描かれていますが、彼らは「的場郁賢」のようなきちんとした姓名はついていなかったはず。一体何者なんだろうとネット検索してみたところ…
北区が毎年募集している内田康夫ミステリ文学賞の、第15回(2017年)の受賞者さんのペンネームが的場郁賢さんだという記事が見つかるではないですか。問題用紙に「僕の名前は、的場郁賢。東部図書館と関わりのある推理作家だ」というセリフがあることと合わせると、的場郁賢さんは東部図書館の…ってこと?これはぜひ受賞作品を読んでみなければ。受賞作品は月刊ジェイ・ノベルの2017年4月号に収録されているので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。
そして、もしそうだとすれば、これからまた東部図書館で謎解き企画を開催してくれるのではという期待も俄然高まります。東部図書館は、2013年10月27日に参加型謎解きイベント「ミステリークエスト~東部図書館からの脱出~」を開催していて、これは私が把握している限り、都内の公立図書館で最初に開催された参加型謎解きイベントです。ただ、近年の東部図書館はこの種のイベントの開催が途絶えており、毎年連続して開催している江戸川区立松江図書館と比べると、謎解きイベント開催面ではやや見劣りしている状態。でも、的場郁賢さんの力を借りられれば、楽しい謎解きイベントが開催できるのでは。
最近の東部図書館の企画を考えると、謎解きイベントの種類にも期待したいところ。私は、図書館で謎解きイベントをするなら、決まった日時の限られた時間のなかで謎を解く形式(公演型)ではなく、ある程度幅のある期間内に開館している図書館の中を回って謎を解く形式(周遊型)の方が、図書館で開催する意義を活かせると思っています。東部図書館ならそちらの形式を開催してくれるのではと。
周遊型の方がいいと思う理由は、第一にそちらの方が絶対的に多くの参加人数を集められること。決まった日時だとその日に都合がつかない人は参加できないし、イベントとしての募集人数も限られてしまいます。一方、謎解きイベントは図書館側が来て欲しいけどなかなか来てくれない中高生も呼べるイベントで、会期中いつでも参加できる形式なら、友達の口コミで広がる可能性があり、実際、立川市上砂図書館の「ミステリークエスト」を担当している職員さんとお話したときには、会期後半になるほど口コミが広まって参加人数が増えたとおっしゃっていました。
第二に、仕掛けられた謎を求めて館内を巡る企画は、いつもはあまり行かない棚やフロアに行かされることで、知らなかった本やサービスに出会える機会になりえるのですが、制限時間内に謎を解く形式だと、謎以外のものに注目している時間がなくなります。街中で行われる周遊型謎解きイベントも、謎解きついでにそのスポットに立ち寄ってもらうことを狙っていて、図書館でも同じ効果が見込めるのに、公演型だとその効果が薄れてしまう。謎解きしながら面白い本を見つけたら、そこで開いてみたり借りたりできるやり方のほうが、本来の図書館サービスの利用につながるやり方だと思います。
それをなぜ東部図書館に期待するかというと、東部図書館では「ミステリークエスト~東部図書館からの脱出~」以降は、簡単な児童向け謎解き企画を周遊型で行っているので、それを発展させれば本格的周遊型謎解きイベントを開催できるのではと思うんです。例えば、2014年度の冬に実施した「ミステリーブック かくされたざいほうをさがせ!!」もそうだし、今回の「ぱたぶー海外旅行に行く!」も謎解きというより知識問題だけど周遊型。この実績を活かして、ぜひ本格的な周遊型謎解きイベントを開催して欲しいです。
気が付いたら、今回の東部図書館のイベントの話と同じくらいの分量で、私の要望をつらつら書いてしまいました。要望はともかく、上で紹介した3つのクイズ企画は、読書とは違う体験ができるので、読書や調べ物に疲れたときの気分転換にもよし、図書館に来る習慣がないお子さんを図書館に誘うきっかけにしてもよし。普段は別の図書館を使っている江戸川区民の方も、これを機会に東部図書館に足を延ばしてみてください。