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世田谷区立世田谷図書館

世田谷区立世田谷図書館 訪問記

last visit:2016/09/12

世田谷区立世田谷図書館は、2016(平成28)年9月1日から世田谷合同庁舎1階に移設オープンしました。世田谷区で初めての座席確保システム、雑誌コーナーに流れるBGMなど、新しいサービスが導入されています。

§ 図書館の場所

世田谷図書館の最寄り駅は、東急世田谷線の松陰神社前駅。駅からの道のりはこちらに書きましたが、世田谷区役所から南へ250mと言えば、大体の位置が伝わるでしょうか。世田谷税務署、世田谷都税事務所、東京法務局世田谷出張所、世田谷保健福祉センターとの合同庁舎で、建設通信新聞の記事によると、国・都・区という三者の施設の合築はこれが初めてなのだそう。区役所のそばに税務署・都税事務所・法務局がまとまっているのは、起業や遺産相続などでさまざまな手続き・届出が必要なときにかなり便利。私の地域もそうなって欲しいと羨ましくなります。

施設から離れて周囲の環境に目を向けると、最寄り駅の名前にもなっている松陰神社は合同庁舎から北東へ350mの位置。現在の場所に移転する前の世田谷図書館は駅から図書館への道のり途中に松陰神社前を通るかたちで、その頃に比べたら神社からは離れてしまいましたが、時間があるときにお散歩がてらお参りするのにちょうどいい距離です。

また、世田谷区役所の北には国士舘大学のキャンパスがあり、道路を挟んで世田谷区役所の北隣に位置する建物が国士舘大学の中央図書館です。こちらの資料を使った学術研究・調査を利用目的とする人なら、国士舘大学の学生ではなくとも国士舘大学図書館の公開利用制度を活用して利用できます。世田谷図書館自体はそれほど大きくありませんが、周囲の施設も合わせて利用の幅が広げられる環境にあります。

§ 図書館内の様子

世田谷図書館は合同庁舎の1階、建物入口を入ってすぐ右の一画が世田谷図書館のエリアとなっています。世田谷図書館の中は奥へ長く続く長方形状のわかりやすい空間で、入口入って右に新書・文庫、左に新聞・雑誌コーナー、CD、地域資料があり、この入口左の一帯を「けやきの閲覧室」と名付けています。更に進むと左にカウンター、右に児童エリアで、児童エリアの一番奥には大きな「おはなしのへや」があります。そして一番奥の一帯が一般書架です。

机席は文庫・新書コーナーから児童エリアにわたる窓際と、一般書架の窓際にそれぞれ一繋ぎで並んでおり、利用する際にはカウンター近くの閲覧席利用受付端末で座席を確保する仕組みです。こうした座席確保システムは図書館が新設・移設などされる際に少しずつ導入が進んでいますが、世田谷区立図書館では世田谷図書館が初めての導入です。

もう一つ新しい試みが、新聞・雑誌コーナーのBGM。自然の中にいるような音を流しており、私が2016年9月12日(月曜)の夕方に行ったときは虫の音でした。職員さんに聞いてみると1日を3つの時間帯に分けて音を入れ替えており、流れる音は白神山地で録音したものだそうです。通りかかったくらいでは気が付かない、でも席について新聞・雑誌を読んでいると、あ、虫の音だ…と気付くくらいの音量で流れており、ゆったりした気分になれます。流れる音は季節によっても変えるそうなので、今後も楽しみ。ちなみに、この空間を「けやきの閲覧室」と名付けたのは、世田谷区の区木がけやきであることに由来するそうです。

その他にも、広い「おはなしのへや」、授乳やおむつ交換ができる「赤ちゃん室」などがあり、子どもから大人まで利用できる設備が整っています。近くを通る東急世田谷線は都電荒川線とともに都内で現存する唯二つの路面電車の一つ、そんな場所の図書館だということを合わせても、慌ただしさとは少し距離を置いてゆっくり読書を楽しめる気がします。

§ 児童エリア

児童エリアは、文庫新書コーナー、中高生コーナーと一続きになっており、あまり子ども子どもした雰囲気ではありません。ただ、児童エリアの奥に、透明な仕切りで他とは区切られた空間になっている大きな「おはなしのへや」があるので、静かにできない年頃のお子さんもそちらを使えば静けさを求める利用者に迷惑をかけることなく利用できます。

創作絵本は、おはなしのへやの周囲ぐるりの棚に並んでおり、日本人作家の作品も外国人作家の作品も合わせて、赤ちゃん絵本とそれ以外に分けて、絵を描いた人の頭文字の五十音順に並んでいます。児童向け読物は、日本人作家と外国人作家にわけて、著者姓名五十音順に並んでいます。

おはなしのへやの手前はテーブルやソファを集めたラウンジになっており、時間帯によって用途が変わる仕組みになっています。具体的には、平日9時から14時までと土日祝日の9時から17時を、親子や保護者の憩いの場である「子育てラウンジ」、平日の14時から17時までを「子どもラウンジ」、全曜日の17時から21時までを10代から20代優先の「若者ラウンジ」という区分けをするそう。

現実的には、対してわざわざこんなことを決めなくても、学校がある時間帯の児童エリアは未就学児を連れての利用が多く、学校が終わった時間から子どもの利用が増えるのが当然。おそらく、雑誌コーナーにしかソファ席がないなか、座席だけのために児童エリアの席を利用する人で本来の児童エリア利用者が利用しにくくなることを防ぐのが目的ではないかと思います。

実際、ラウンジにある2つのテーブル席(座席数にして8席)が埋まっていたら、子どもも大人に混じって窓際に席を利用することになり、小さい子は気後れしてしまうかもしれません。世田谷図書館のラウンジに限りませんが、テーブルを使いたい感じの小さい子がいたらテーブルでなくてもいい人は譲るなど、お互い配慮して利用したいものです。

§ 謎の空間「せたがやラボ」

一般書架の手前側の一画には「せたがやラボ」という、透明な仕切りに囲まれた空間があります。世田谷図書館のパンフレットによると「暮らしや仕事の課題や悩みの解決支援コーナー」だそうですが、なぜわざわざこんな空間を設けているのか謎です。本来は図書館自体がそういう空間のはず。

具体的に何があるのかというと、認知症に関する本とともに「世田谷区認知症在宅生活サポートセンター構想」に関する資料がおいてある「認知症関連コーナー」という棚があったり、世田谷区に関する資料をひとまとめにファイルしたものや、商用データベースを使った調べ物の紹介のファイルがあります。

この「商用データベースを使ったご紹介」は全く説明がないけどいいファイルで、例として公文教育研究会とドトールというよく知られている企業を取り上げて、商用データベースを使ってそれらの企業を調べてわかることをファイリングしています。会社情報や財務状況などでビジネス面だけでなく、新聞記事検索でニュースやできごとを見ていけば、消費者としても有益な情報が得られることがよくわかります。

データベースは利用できる図書館が多い割には実際の利用が少ない資料の一つで、こうして利用例を示すことはとてもいいと思います。でも、そのデータベースは世田谷図書館では使えません(世田谷区でデータベースが使えるのは、中央図書館経堂図書館のみ)。このファイルだけポンと置いてあるのは、何だかその気にさせて使わせてもらえない、じらせ商法にあったような気分です(笑)。

館内のなかでもここだけ取ってつけたような空間で、置いてある資料を見るに職員さんも持て余しているのではないかと想像してしまいます。すぐそばが料理・裁縫などの家事関連本(=棚からあれこれ手に取って読み比べるという利用が多い本)ということもあり、仕切りを外して閲覧席として利用できるようにした方がいいように思います。

§ 一般書架

一般書架は、通路に対して左側が文学、哲学、家事関連本、医学、右側がそれ以外という配置です。一般書架が図書館エリアの一番奥、文庫・新書が図書館エリアの最も手前側にあるため、図書の形態を問わず内容で本を選びたいときには、図書館エリアの端から端まで見ないといけないのが不便ですが、何がどこにあるかはわかりやすい配置だと思います。

窓際の閲覧席の利用をもう少し詳しく説明すると、カウンター近くの座席利用受付端末に世田谷区立図書館のカードを読み込ませて座席を確保し、1回の利用が2時間、1日最大6時間利用できます。私が2016年9月12日に行ったときには、座席はかなり埋まっているものの、予約で埋まっているほどでもないので、利用を延長して引き続き座席を利用している人も多かったです。

窓際の各座席には電源があり、パンフレットには文庫新書側の閲覧席にのみ持参パソコン利用可の説明がありますが、実際には奥の閲覧席でも持参パソコンを利用している人がいました。ちなみに、世田谷図書館を含めた世田谷区立図書館で、ドコモwifi、ソフトバンクwifi、フレッツスポットが利用できます。

世田谷図書館ならではの資料で、場所としては一般書架エリアではなく、新聞・雑誌がある「けやきの閲覧室」になりますが、幕末維新コーナーがあります。吉田松陰に関する本はもちろん、坂本龍馬、高杉晋作、勝海舟、山本容堂など、幕末維新の人物の本が揃っていますし、「小説」「歴史」「伝記」という分類がされているので、物語を楽しみたい人も史実を調べたい人も求めている本が探しやすいです。

§ 区内障害者施設製品の販売も

カウンター向かって右には、世田谷区内の障害者施設で作られた製品が並んでおり、気に入ったものを購入することができます。これらの製品は、世田谷区図書館のカウンター業務だけを行う図書館カウンター三軒茶屋図書館カウンター二子玉川では既に販売していましたが、きちんとした図書館で販売するのは世田谷図書館が初めて。とてもいい事業だと思うので、この勢いで他の世田谷区立図書館にも広がってほしいです。

並んでいるのはブックカバーや絵葉書などで、どんな製品があるのかはこちらのページからカタログを閲覧できますが、販売する場所によって扱っていないものがあったり、逆にカタログに載っていないけど販売しているものもあるので、ぜひ足を運んでみてください。私の個人的なお薦めは、詩集『深煎り珈琲をどうぞ 1杯目』や「幻聴妄想かるた」などのアート作品なのですが、私が行ったときには残念ながらありませんでした。が、今後販売する商品の入れ替えもあるでしょう。普段の図書館利用の際に、どんな商品があるのかぜひ覗いてみてください。

§ 安住の地となるか

さて、この世田谷図書館、施設としては2016(平成28)年9月1日からオープンしたばかりで新しい図書館なのですが、実は世田谷区にできた最初の図書館。最初は東京都立世田谷図書館として1946(昭和21)年5月に創設され、1947(昭和22)年4月に名称は都立のまま、管理運営が世田谷区に委任され、その後1950(昭和25)年に世田谷区に移管されました。

しかしこの後、何度も場所を移して放浪することになります。世田谷区の図書館年表によると、創設時は世田谷区立若林小学校校舎内、1955(昭和30)年に東京都立明正高校旧校舎へと移転し、1960(昭和35)年には世田谷区民会館へと移転、1984(昭和59)年に民間の建物(現在の一つ前の世田谷図書館)へ移転し、2016年9月1日から現在の場所に移転、というわけで、引っ越しの数は合わせて4回。

この移転の歴史の中でもなぜこんな運命にと思わせるのは、学校や民間の建物の間借り状態からの移転はいろいろな都合で仕方ないにしても、世田谷区民会館から移転したことではないでしょうか。間借りではなく区民会館を計画していたときから図書館が入るものとして設計された、なのにそこからも移転することになってしまう世田谷図書館の悲しき?運命。ちなみに、現在の状態は、東京国税局(世田谷税務署)が管理する建物に、世田谷区が賃料を払って入居している状態です。そろそろ永住の地として落ち着いてもいいように思いますが、さてどうなるか。

ただ、移転によって、座席利用システムやBGMなど、世田谷区立図書館での新しい試みを導入することになった面もあります。利用者の評価によって今後の他館への導入も決まるだろうから、ふだん他の図書館を使っている人にもぜひ利用してみて欲しいです。

世田谷区立世田谷図書館 データ

住所東京都世田谷区若林4-22-13 世田谷合同庁舎1階 →Google Mapで見る
Tel03-3419-1911
開館時間
火~土曜9:00~21:00
日・月曜、祝休日9:00~20:00
1月4日・12月28日9:00~17:00
定休日第2木曜
12月29日~1月3日
最寄駅 東急世田谷線 松陰神社前駅から徒歩3分
東急世田谷線 世田谷駅から徒歩6分
東急世田谷線 上町駅から徒歩11分
東急世田谷線 宮の坂駅から徒歩15分
東急世田谷線 若林駅から徒歩15分
駐輪場建物入口向かって右に駐輪場あり
駐車場一般用駐車場はなし、建物入口向かって左に障害者用駐車場あり(建物地下に駐車場がありますが、図書館来館者用ではありません)
所蔵資料
図書所蔵数100,481冊(2021/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和3年度版』※団体貸出センターの図書数は中央図書館の図書数に加算
音声資料
CDカセットレコード
ありなしなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物入口向かって右の壁面にブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機ICタグ式自動貸出機が2台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用にぎわいの閲覧席( 16席)と奥の閲覧席( 21席)で持参PCの利用可能。電源あり。座席の利用には、座席利用端末での利用手続きが必要です。
LAN接続館内に「docomo wifi」「ソフトバンク wifi」「フレッツスポット」のアクセスポイントあり
飲食設備等蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)からの飲料摂取はOK
その他設備館内用ブックカート・館内用バッグあり