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移転前の旧・世田谷区立世田谷図書館

旧・世田谷図書館は2014年5月19日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の世田谷図書館が2016年9月1日に移転開館しました。

以下は、移転前の旧・世田谷区立世田谷図書館の訪問記です。

移転前の旧・世田谷区立世田谷図書館 訪問記

last visit:2013/08/03
§ 図書館の場所

世田谷図書館の最寄り駅は東急世田谷線の松陰神社前駅。駅のホームから三軒茶屋方面の出口へ出て左へ進みます。200mほど行くと左先に松陰神社が現れるので、その手前の道へ左折すると、二つ目の路地の入口に「世田谷図書館」とお腹に書いてある眼鏡をかけた猫の看板があります。その看板で左折した突き当りの白い建物が世田谷図書館の入っている建物で、図書館入口は向かって右の公園側にあります。

この図書館脇の小さな公園は、地下水を組み上げる手押しポンプなどもあって、素朴な感じがいいんです。ゴールデンウィーク頃に行くと、公園から世田谷図書館の入口にかけて藤棚が咲いている様子も楽しめますよ。また、この場所が最も盛り上がるのは、何といっても10月後半の松陰神社の幕末維新祭り。駅近くの商店街から神社へとたくさんの出店が並ぶほか、幕末の志士に扮した人たちによるパレードがあったりして、毎年盛り上がりっています。私も人気志士投票に参加したりして楽しみました。歴史好きの方は、ぜひこの時期にいらしてください。

§ 図書館内の様子

建物は3階までありますが、普段利用者が入れるのは1階だけ。2階には図書館事務所などがあるほか、子ども向けおはなし会などが2階の会議室で行われます。3階は図書館とは別の入口から入るかたちの一般の住居。お住まいの方は、さぞかし世田谷図書館を活用しているのでは。

長方形の図書館エリアの短い辺から入るようになっていて、入ってすぐ右に児童コーナー、通路を進んだ左に新聞コーナーがあります。通路を抜けた先が、右にカウンター、左にCDの棚、そのさらに左に雑誌コーナーがあるという配置で、奥一帯に一般書架が並んでいます。閲覧机席は、一般書架の左側の窓際に並んでいます。

§ 児童コーナー

入口の右に児童コーナーと書きましたが、一度カウンターのある辺りまで行かないと児童コーナーに入れなくて、入口からはしばらく通路なんですね。その通路と児童コーナーの仕切りに、「おもしろかった本一言コーナー」や毎月の貸出ランキング・予約ランキングなどが掲示されています。「おもしろかった本一言コーナー」はお子さんが面白かった本について投稿したものをたくさん貼ってあるコーナーで、単に投稿された用紙を貼ってあるだけでなく、紹介された本の資料詳細票(検索機で検索したときの詳細を印刷したもの)も添えて貼ってあります。投稿した子どもにとっては、単に貼りっぱなしにしているよりも自分の紹介の後押しをしてくれている感じで嬉しいですね。実際に読んでみようと思ったときも、正確な書名や書誌番号、請求記号がちゃんとわかります。

児童コーナー内は、棚上に絵本が表紙を見せてたくさん並んでいる賑やかな空間。絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類されています。児童読み物は、日本人作家と外国人作家を別々にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。

児童コーナーを彩るのは、職員さんが作った立体切り紙やモビールです。これらの作品のそばにはその作品の作り方がわかる本の資料詳細票が添えてあるので、自分で作りたい場合はその本を借りて作ることもできますよ。中でも特に見て欲しいのが、妖怪の立体切り紙。とても可愛いです!

§ 一般書架

一般書架は、比較的狭い面積の区画に本がぎっしり並んでいる印象です。背の高い本棚の一番上の段までしっかり使っているのはもちろん、各段の高さも切り詰めている感じ。文庫本や全集が並ぶ段など、その段に並ぶ本の高さが全て同じところは、特にぎりぎり本が入る高さにしてあります。面積が小さい分、こうした工夫で蔵書数を増やしている様子です。

日本の読み物は、小説もエッセイも一緒にして、著者姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後にまとめられています。外国の小説は、国別分類はされておらず、“外国文学”でひとまとめにして、日本の小説と同様に、著者名の姓名による五十音順。日本の小説と同様に、複数作家による作品集は「ン」に分類されますが、「ン」で始まる作家名もあるというのが、外国小説の分類の面白いところです。

ハーレクイーンも多く、「イマージュ」「シルエットロマンス」「ディザイア」「ロマンス」「ヒストリカル」の各シリーズが、シリーズの番号順に並んでいます。こうしたハーレクイーンや文庫本が多いのも、面積が小さい中で蔵書数を増やす工夫なのかもしれません。

また、パソコン関連の本が並ぶ「007 情報科学」はユニークで、発行年度で分類されているのです。このジャンルには、WordやExcelなどの使い方の本やパソコン・情報処理に関する新書なども入るのですが、こうした目まぐるしく進化するジャンルの本を発行年度で分類するというのは面白いです。最新の情報を知りたいなら発行年度の新しい本を読めばいいし、少し前に発行された本の中でどの本が未来を正しく予見していたかを検証するのも面白そう。ほかに「332 経済史・事情・経済体制」も発行年度での分類を取り入れています。

§ 地域にちなんだ資料

世田谷図書館では、一般書架とCD棚の間付近に、地域にちなんだ特設コーナーを設置しています。世田谷図書館が建つ地域といえば、何といっても松陰神社!また、700mほど北西にある豪徳寺には井伊直弼のお墓もあります。なので、特設コーナーのテーマも、もちろん幕末維新。

幕末維新コーナーを見ると、「吉田松陰」「小説」「伝記」「歴史」という分類で、幕末関連の本が並んでいます。「小説」や「伝記」には、坂本龍馬、高杉晋作など、吉田松陰以外の幕末維新の人物に関する本もたくさん。小説と伝記を分けてくれているので、史実と空想の世界をそれぞれ楽しめますね。

この一般向けの幕末維新コーナーのほかに、児童コーナー内にも幕末維新コーナーがあります。児童コーナーのテーブルそばの柱(「おえかきけいじばん」のある柱)の足元にあり、児童向けの読み物や歴史まんがなどが並んでいます。児童向けの読み物って、子どもが読むのはもちろんのこと、大人が短時間で歴史をおさらいしたいときなどにも使えるんですよね。歴史ドラマを見始める前に人物関係を確認したいときなど、ぜひご利用ください。

また、豪徳寺はもともと武蔵吉良氏が開いたお寺で、世田谷図書館の周辺には世田谷城址公園や勝国寺など、武蔵吉良氏によるお寺がたくさんあるんですね。それを世田谷図書館が『世田谷城と吉良氏』というファイルにまとめて、地域資料の棚で所蔵しています。青いファイルで、この資料は世田谷図書館にしかありません。このほか『ボロ市の歴史』など、今の世田谷につながる資料もたくさんあるので、行政資料と一緒に並ぶこうした資料もぜひお見逃しなく。

§ 世田谷区で最初の図書館

世田谷図書館は、今でこそこじんまりとした地域図書館ですが、世田谷区立図書館の中で一番最初にできた図書館です。元々は東京都立世田谷図書館として1946(昭和21)年5月に創設された図書館が、1947(昭和22)年4月に名称は都立のまま、管理運営が世田谷区に委任され、その後1950(昭和25)年に世田谷区に移管されたのがこの世田谷区立世田谷図書館。

世田谷区の図書館年表によると、創設時は世田谷区立若林小学校校舎内にあったのが、1955(昭和30)年に東京都立明正高校旧校舎へと移転し、1960(昭和35)年には世田谷区民会館へと移転、1984(昭和59)年に現在地へと移転していて、引越しの多さもすごい!図書館だけの独立した建物として設立されることなく、別の建物に入居するかたちが続いてしまったのが引っ越しの多さの理由でしょうか。

松陰神社や豪徳寺などの古くからある寺社に負けないくらい、といっては大げさですが(笑)、世田谷図書館自体も歴史ある図書館という訳です。歴史散歩の立ち寄り先として、幕末関連資料も揃っている世田谷図書館にも、ぜひ訪れてください!

移転前の旧・世田谷区立世田谷図書館 特集・行事・図書館だより感想記

―2012年4月10日から30日までの企画
世田谷区世田谷図書館で2012年4月10日から30日まで開催している「世田谷図書館周辺今昔クイズ」。小学生対象のイベントですが、大人にとってもなかなか難しい問題です。ぜひ親子でチャレンジしてください!