移転前の旧・目黒区立大橋図書館
旧・大橋図書館は2013年1月31日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の大橋図書館が2013年2月12日に移転開館しました。
以下は、移転前の旧・目黒区立大橋図書館の訪問記です。
移転前の旧・目黒区立大橋図書館 訪問記
大橋図書館は池尻大橋駅から徒歩5分。駅改札を出て左先の北口に出て、階段を上がった向きのまま国号246号を渋谷に向かって歩きます。200mほど先の「大橋病院入口」交差点で左折し、坂を上がる途中に白い建物の大橋図書館が右側にあらわれます。
大橋という地名は目黒川にかかっていた橋を由来としているそうですが、現在は大橋から上流が暗渠化されて地表は目黒川緑道として整備されているので、川にかかる橋というイメージが湧きません。大橋図書館から国道246号を挟んだ南側には大橋ジャンクション、すぐ東で246号と山手通りが立体交差しているので、“道路が交わる地点”というイメージが強いです。大橋図書館の北には、東京都立駒場高校、筑波大学附属駒場高校、駒場東邦高校、日本工業大学駒場高校と多数の高校があり、更に北に東京大学キャンパスがあるという学校の多い地区でもあります。
大橋図書館は斜面に建てられていて、坂の途中にある駐車場・駐輪場が1階で、坂上の路面から入ったフロアが2階というかたちです。建物の中には大橋老人いこいの家という区の施設もあり、図書館があるのは3,4階。配置は、3階が児童コーナー、CD、中高生コーナー、家事関連本、旅行ガイド、語学、文学。4階が新聞・雑誌コーナーとその他の一般書架というかたちです。
図書館が発行している資料などによると、目黒区では八雲中央図書館(3,020㎡)に次いで広い図書館という数字になっていますが、実際に入ってみると目黒区民センター図書館(1,339㎡)や守屋図書館(1,282㎡)などより大橋図書館(1,417㎡)の方が狭いように感じます。この面積は事務所や閉架部分なども含めた数字なので、利用者が入れる部分だけでいうと違ってくるのでしょう。座席も中高生コーナー含めて机席が20席と少ないです。閲覧向きというよりは貸出向きの図書館といえそうです。
3階のカウンター前に広がる児童コーナーは、カウンターに近い辺りが児童読み物やちしきの本。カウンターからみて右奥に絵本コーナーがあり、その左には中高生コーナーがあります。児童用の背の低い本棚に本がぎっしりと詰まっています。
絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類されています。児童読み物も、日本人作家と外国人作家を一緒にして、タイトルの頭文字で分類されています。外国語で書かれた絵本も多く、絵本の棚の上段に一般的な外国語絵本が並んでいるほか、赤ちゃん絵本の棚にも小さな外国語絵本が並んでいます。
大橋図書館では、絵本や紙芝居のほかに布絵本や布おもちゃも貸出しています。赤ちゃん絵本の棚上に、布絵本やぬいぐるみ・お手玉の写真の入ったカードがあり、それをカウンターに持っていくと借りられる仕組みで、本と同様に2週間借りられます。ぬいぐるみも一般的なぬいぐるみではなく、マジックテープでたくさんのネズミがつながるようになっていたり、たくさんの魚が糸でつながっていたりと、手遊び要素のあるぬいぐるみです。
中高生コーナーの左隣には、出版社で分類された漫画が多数並んでいます。目黒区は「この本はこの図書館の蔵書」という方法で管理しておらず、最後に返却された館の棚に戻すという方法で管理しているので、複数巻に渡る漫画は全館が大橋図書館にあるとは限らず、途中の巻だけ目黒区内の別の図書館の棚にある場合もあります。いいところなのに続きがない!と思ったら、図書館の検索・予約機能を使ってしっかり続きを読んでくださいね。
一般書架は、3階の左側一帯と4階全体に分かれています。どちらも背の高い棚が多くて棚同士の間隔も広くないので、ぎっしり感を感じる書棚です。
日本の小説・エッセイは一緒にして、頭文字ごとに、まず主要な著者の本を姓名五十音順に著者名見出しをつけて並べて、その後にその他の著者の本をひとまとめにしています。たとえば、小説・エッセイの「の」のところをみると、「野上弥生子」「野坂昭如」「野沢尚」「乃南アサ」「法月綸太郎」という見出しが並び、それ以外の頭文字が“の”の著者は「の その他の作家」に並べられています。複数の作家による作品集は、「918」という分類で小説・エッセイの並びの最後にまとめられていますね。外国の小説は、「中国小説」「英米小説」「ドイツ小説」といったかたちで国・地域別に分けたうえで、日本の小説と同様に頭文字ごとに主要作家、その他と並んでいます。
視聴覚資料としては、3階カウンター向かって左の絵本コーナーに近いあたりにCDがあります。利用者が見る棚にはCDジャケットのコピーを薄いシートに入れたものが並んでおり、借りたいCDのシートをカウンターに持っていくとそのCDが借りられる仕組みです。
4階の雑誌の棚はかなり探しづらいです。多くの図書館の雑誌棚は、最新号には保護カバーをつけて表紙を見せて並べたりして、どれが最新号かというのを一目でわかるようにしていますが、大橋図書館の場合は保護カバーはつけているものの、最新号もバックナンバーも一緒に棚に差してあるので、この図書館にはどんな雑誌があるのかがわかりにくい。その上、先にも書いたような目黒区立図書館の蔵書管理によって、雑誌のバックナンバーも最後に返却された館の棚に戻されるので、バックナンバーがあるからといって最新号もあるとは限りません。
できればわかりやすい一覧表を掲示するなどして欲しいところですが、現状では館内検索機を使えばこの図書館にどの雑誌の最新号があるかがわかります。検索機トップページの上部メニューにある「所蔵資料一覧 雑誌タイトル一覧」から「雑誌タイトル一覧」を選び、【集計条件】の「所蔵館」を大橋図書館にして集計をクリックすれば、大橋図書館で最新号が見られる雑誌の一覧が現れます(但し、昔は購入していたけど現在は購入を停止した雑誌も表示されるので、読みたい雑誌のタイトルをクリックして、最新号が現在のものになっているか確認したほうがいいです)。
4階の新聞・雑誌コーナーの右奥には外国語図書もあります。英語が多数ですが、中国語やハングルの図書もときどき紛れているというかたちで、小説のほか、哲学・歴史・医学・芸術といった一般書も多数並んでいます。ビジュアル本や薄い文庫本もあるので、英語に堪能な人だけでなく、英語を勉強し始めている人も使える棚だと思います。
現在の基準で考えてしまうといろいろと使い勝手の悪い面も多い大橋図書館ですが、目黒区立図書館としては2番目に開設された図書館で、それまで守屋図書館1館で運営されていた目黒区立図書館が地区ごとに図書館を設置する展開を見せた第一歩の図書館なんです。目黒区で最初にできた守屋図書館の開館が1952(昭和27)年4月、それに対して大橋図書館の設立が1970(昭和45)年、それからは1974(昭和49)年6月に緑が丘図書館、同年8月に目黒区民センター図書館といったように次々と地域館が開設されるのですが、大橋図書館がその第一歩だったんですね。
『目黒区の図書館 50年のあゆみ』という資料によると、「閲覧室がないことや近くに都営住宅や公務員住宅があるという地域性もあって、「こどもとお母さん」中心の図書館であったが、駒場地区に多くの学校があることから近年は中高生の利用が多くなってきている」とのこと。何でも開館当時は、貸出冊数における児童図書の割合は6割にも達したそうです。現在の大橋図書館の貸出冊数における児童図書の割合を『平成23年度 東京都公立図書館調査』の数字をもとに計算すると2割、目黒区立図書館全体で同じ割合を計算しても2割弱なので、いかに開館当時の大橋図書館の児童利用が多かったかがわかります。
この古い建物が、そうした利用者の移り変わり、ひいては町の移り変わりを見てきたと思うと、感慨深いものがあります。それに、大橋図書館って設備自体は古いけど、本棚を見ていると面白そうな本がどんどん目に飛び込んでくるんですよね。また、一般書架が2フロアに分かれていたりして探しにくい効用なのか、職員さんに本の場所を訊くと、単に探している本の場所を教えてくれるだけではなく、図書館での並び方や検索機の記号の意味なども丁寧に教えてくれます。図書館システムが導入される前から開設されている図書館の歴史がそうした雰囲気を作っているのかも。探している本が見つからなかったらどうぞ気軽に職員さんに聞いて、ぜひ図書館資料を活用してください。