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目黒区立守屋図書館

目黒区立守屋図書館 訪問記

last visit:2018/12/07

目黒区立守屋図書館は、祐天寺駅と学芸大学駅の間にある図書館。守屋善兵衛氏の宅地と住居を由来とするこの図書館は、23区立図書館で唯一の、人名を冠する図書館です。

§ 図書館の場所

守屋図書館は、東急東横線の祐天寺駅と学芸大学駅の中間よりやや祐天寺駅寄りにあります。この辺りは小さな路地で構成された住宅街で、どちらの駅から行っても路地をくねくね縫うような道のり。お洒落なイメージのある東急東横線沿いとは思えないような雰囲気もありますが(笑)、静かな通りの先に図書館があるというのはいいものです。後述するように守屋図書館は目黒区立図書館のスタートとなった図書館なのですが、たくさんの人がこうして図書館に向かって歩いたのかもなあと想像してしまいます。

§ 図書館内の様子

守屋図書館は地下1階から地上2階までの建物です。他の施設との併設ではなく図書館だけで一つの建物で、8館ある目黒区立図書館のうち図書館単体の建物は、ここと洗足図書館のみ。ホールや公民館と併設の図書館の場合、一か所でいろいろ楽しめるメリットがありますが、人の出入りが多くなり落ち着かない面もある。その点、守屋図書館はじっくり本を読みに来る人中心の落ち着いた雰囲気です。模様ガラスで気づきにくいのですが、建物入口の2つ目の自動ドアには招き猫が描かれていて、来館者を招く装飾もひっそりとしています。

守屋図書館は、2002年9月に八雲中央図書館ができるまで目黒区の中心館でした。目黒図書館友の会ではその歴史を踏まえて、会報の名前を「もりやくも」としています。この流れで行くと、もし数十年くらい後に中央館を新しくするときが来たら、「も」で始まる名前の図書館にして、「もりやくも~」と繋がるようにしないといけないですね(笑)。「守屋」と「八雲」は互いに相手の末尾の文字で始まっているので、この2つを順にバージョンアップするかたちで新・中央館にしていけば…と空想が膨らんでしまいます。

各階の配置は、1階が新聞・雑誌、CD、地域資料、参考図書(辞典類)、漫画、日本の小説、旅行ガイド、大活字本。2階が児童コーナー、中高生コーナー、家事関連本。それ以外の一般書架が地下1階です。カウンターのある1階は人が行き来する空間、それに対して閲覧机の多い地下1階はじっくり本を読む空間という雰囲気です。

§ 1階の様子

守屋図書館は、上から見ると横長の長方形で、長い辺の真ん中に入口がついているかたちです。入口を入ると、右にカウンターがあり、カウンターの更に右に旅行ガイド、大活字本、地域資料、参考図書。入口入って左側は、手前に新聞・雑誌コーナーがあり、奥に漫画、CD、日本の小説・エッセイが並んでいるという配置です。

図書館としては珍しいのが、文庫の棚がないこと。目黒区立図書館は全てそうなのですが、文庫版の棚、新書版の棚といった本のサイズによってまとめられた棚がなく、単行本も文庫本も一緒にして、ジャンルで分かれた書架に納められています。サイズにばらつきのある本を一緒にしてしまうと収納効率は悪くなりますが、小説・エッセイなどで「○○さんの本が読みたい」と著者で本を探しているときには、書籍の形態によらず同じ著者の本が一箇所に集まっていて便利です。

日本の小説・エッセイは一緒にして、頭文字ごとに、まず主要な著者の本を姓名五十音順に著者名見出しをつけて並べて、その後にその他の著者の本をひとまとめにしています。たとえば、小説・エッセイの「の」のところをみると、「野上弥生子」「野坂昭如」「野崎六助」「野沢尚」「野中柊」「乃南アサ」「法月綸太郎」と見出しが並び、それ以外の頭文字が“の”の著者はその後の「の」の見出しに並べられています。複数の作家による作品集は、奥の壁際の棚にまとめられています。

また、作家の研究本も小説・エッセイの棚に作家名で分類されています。だから、「夏目漱石」や「村上春樹」などの著名な作家の棚を見ると、単行本・文庫本に関わらず小説作品・エッセイが一緒に並んでいる上に、その作家について別の人が書いた本も一堂に会しています。同じ本でも文庫化の際にはあとがきや解説が追加されていたりしますし、好きな作家についていろんな面を知りたいというときに楽しめる配架方法ですね。

小説・エッセイがあるエリアには、大人の胸下くらいの高さに板が渡してあり、立ち飲みカウンターならぬ、立ち読みカウンターとして本を読んでいる人をよく見かけます。こういうテーブルは図書館では少ないですが、最近は健康面などを考えてスタンディングデスクを取り入れるオフィスもあるくらい。個人的にはこのような「立って読むためのカウンター」が図書館でも増えていいように思います。守屋図書館に来たときには、ぜひ試してみてください。

漫画は、1冊ずつ閲覧・貸出できるものが多数あるほか、何巻かごとにセットで管理しているものもあります。セット管理しているものは、漫画の棚の側面にカードがあり、それをカウンターに持っていって閲覧・貸出する仕組みです。本をたくさん借りたときには、図書館入口の二つの自動ドアの間のエリアに自由に利用できる紙袋があるので、そちらをどうぞ。

1階で残念なのが、入口からみて右側の壁上に、花があふれる中に天使がいるステンドグラス。本棚の転倒防止の補強材で、せっかくのステンドグラスが見えづらくなっています。おそらく、地震対策として、後から補強材を付け足したのでしょう。デザイン的には残念ですが、建てられた頃はそこまで地震対策を考えていなかったのが、現在は対策をされているという、公共施設の地震対策の流れが表れているともいえる部分です。

§ 地下1階の様子

地下1階は…と話を移す前に、1階から地下1階までの階段の話を。1階から数段階段を降りた左の壁に四角い穴を開けたようなかたちで展示コーナーが設置されています。人が通るところなので立ち止まってじっくり見るのが憚られる、背が低い人は取りづらいと、あまりいい設置場所ではないように思いますが、本が並んでいると何か面白そうな本はないかとやはり見てしまう。通るたびに、何とも微妙な場所だよなあ…と思うのは私だけでしょうか。

地下1階に着くと、フロア一帯に書架がずらっと並ぶなか、中央付近と西側窓際に閲覧席が並ぶ静かな空間です。細長い地下庭があるので、地下でありながらも窓がある造りが開放感あって居心地がいいです。思えば、現在の中央館である八雲中央図書館も、地下庭園がある構造。建物としては目黒区立図書館の中で一番新しい、2013年に移設された大橋図書館も、9階の図書館エリアから大橋ジャンクション上の人工庭園へ出られるようになっていますし、目黒区立図書館は図書館が何階にあろうと庭と繋げようとする傾向があるのかもしれません(笑)。

自然科学や人文科学などが並ぶ地下1階の書架も、1階の日本の小説と同様に、文庫・新書・単行本が全て一緒にジャンル別に分類されています。中でも、外国の小説は文庫本の比率が高いので、デッドスペースが多すぎると感じるくらいゆったりしています。ただ、ハーレクインだけは、それでひとまとめにしています。

階段・エレベーターからみて左奥にある外国語図書は冊数が多く、英語が中心ですが、中国語・ハングル・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語の本もあります。特に英語は、小説だけでなく、自然科学や社会科学の本も並んでいます。中高生向けの本も多く、英語に堪能でない人でも、絵を手掛かりにして読めそうな本を見つけることができます。

外国語図書を多く有している図書館では、外国語図書は外国語図書コーナー、邦訳された外国の小説は小説コーナーと、離れた場所に置かれていることが多いのですが、守屋図書館は外国小説が並ぶエリアの壁沿いが外国語図書コーナーという配置で両者が近接しているんです。語学を勉強している人は、原書と邦訳本を一緒に借りてみるという楽しみ方もできますね。そのうち英語の勉強をし直したいと思いながら先延ばしにしている私ですが(笑)、こういう配置をみるとやる気がそそられます。

§ 2階の様子

2階は、面積にして3/4ほどが児童コーナーで、残りの1/4が中高生コーナーと家事関連本です。エレベーター・階段から見て、左端が中高生コーナーと家事関連本で、そこから右へ向かって児童向けちしきの本、児童読み物、右端に靴脱ぎスペースがあり、その周囲に絵本が並ぶという配置です。家事関連本コーナーは2~3人もいると自由に移動しづらいくらいの小ささですが、2階の主役は児童に譲って、大人は少し我慢しながら利用するいうところでしょうか。

目黒区立図書館は、図書館のなかでは児童読み物・絵本の分類がざっくりしているほうです。絵本も児童読み物も、日本人作家の作品と外国人作家の作品を分けずに一緒にしていますし、絵本作家がお話をつくった「創作絵本」と桃太郎・鶴の恩返しなどを絵本にした「昔話絵本」を分けることもしていない。赤ちゃん向け絵本とそれ以外の絵本は分けていますが、児童読み物を対象年齢で分けることもしていない。「小学校1年生向けの読み物を読みたい」のような目的を手っ取り早く満たすには不便ですが、本を実際に開いて確かめて選ぶ習慣が身につきます。

また、布絵本や布のおもちゃも貸出しています。靴脱ぎスペース向かって左の壁に、貸出できるおもちゃのサンプル写真が入った透明ポケットがあります。借りる場合は、借りたい布絵本・布おもちゃの写真をカウンターに持っていけばOK。指人形などの素朴なおもちゃが楽しめます。

§ 守屋善兵衛氏

以上、現在の守屋図書館の様子を書いてきましたが、この図書館の起源となっているのが、守屋善兵衛氏。台湾日日新報社や満州日日新聞社の社長を歴任してきた守屋氏が亡くなった後、遺族から目黒区へ宅地と住居が寄贈され、それがこの守屋図書館になったんです。今の建物は寄贈された住居そのものではありませんが、旧守屋邸の模型が図書館入口入ってすぐ左にあり、それを見ると立派な洋館だったことがうかがえます。

目黒区立八雲中央図書館が発行した『目黒区の図書館 50年のあゆみ』によると、寄贈されたこの建物・宅地は、当初は「守屋記念館」として、集会施設として開設されたのだそう。それが、区内初の図書館に生まれ変わったのが、1952(昭和27)年4月のこと。その後、増築や改築を何度か経て、現在の姿になりました。

目黒区立図書館の地域資料にも、『守屋善兵衛追悼録』『守屋善兵衛著述集録』など守屋氏に関する本があります。読んでみると、ドイツ語の勉強をしていた方のようで、医学論文の訳などが著述集に収められています。中には、森林太郎(鴎外)が口述したものを、守屋亦堂(善兵衛)が筆記した論文もあります。

守屋氏のことが知りたい人は1階の地域資料コーナーをどうぞ、と言いたいところですが、目黒区立図書館の資料の管理は保管する館を決めないやり方で、守屋図書館にあるとは限りません。図書館では、「この本は○○図書館の所蔵」と決めて、別の図書館で返却されたら所蔵館に戻すやり方を取ることが多いのですが、目黒区立図書館ではその本が一番最後に返却された館の本棚に収められるやり方を取っています。守屋氏に関する資料に限りませんが、目黒区立図書館では他の図書館以上に、棚を見るだけで本探しを止めずに、検索・予約機能を使うことが重要です。

守屋図書館ができるまでは、集会場の一画に図書室的施設がある程度だったそうで、この守屋氏の邸宅がなかったら、目黒区の図書館の歴史ももう少し遅れてスタートしたかもしれません。しかも、2002年9月に八雲中央図書館ができるまで目黒区の中央館として活躍していたのですから、スタートを切っただけでなく役割も大きかった。23区の公立図書館の中で、唯一人名を冠しているのも、守屋氏への感謝の表れだと思います。

何も知らなければ地域館の一つに過ぎない、でも、そんな歴史のある図書館だと踏まえると、見る眼が少し変わってくる。今見える姿だけでなく、昔の建物やそこで過ごしていた人の様子を想像してしまう図書館です。

目黒区立守屋図書館 データ

住所東京都目黒区五本木2-20-15 →Google Mapで見る
Tel03-3711-7465
開館時間
火~土曜9:00~19:00
日曜、祝日、12月28日9:00~17:00
定休日月曜(祝日の場合は開館し、翌日休館。但し、5月の連休が月曜に重なる時は、連休明けの平日を休館)
12月29日~1月4日
最寄駅 東急東横線 祐天寺駅から徒歩9分
東急東横線 学芸大学駅から徒歩11分
駐輪場建物入口向かって左側に駐輪場あり。バイクは駐輪場の中の手前右のエリアに駐輪してくださいとのこと。
駐車場一般用駐車場なし。建物入口向かって右に障害者用駐車場2台分あり。
所蔵資料
図書所蔵数144,707冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
あり朗読カセットのみありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物入口向かって右の壁面にブックポストあり。開館中に使用してもいいですが、翌開館日の開館時刻前に返却手続きをすることをご了承ください。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用1階・地下1階の閲覧机で持参PCの使用可能。地下の机席のうち18席に電源あり。
LAN接続
  • 館内や公式サイトには明記されていませんが、ソフトバンクWi-Fiスポットに守屋図書館が登録されており、各フロアでWi-Fiの電波が入ります
  • 館内や公式サイトには明記されていませんが、docomo Wi-Fiサービスエリアに守屋図書館が登録されており、1階のカウンター周辺・2階のカウンター真上にあたる付近でWi-Fiの電波が入ります
飲食設備等なし