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閉館前の渋谷区立渋谷図書館

渋谷図書館は、修理に多額の費用・時間が発生する空調設備故障を抱えて図書館としての運営が難しいことが判明し、2021年8月15日を最後に書架エリアへの立ち入りが禁止になりました。その後、窓口業務のみの渋谷図書館サービススポットとして2021年9月17日から業務を行った経、閉館しました。

以下は、閉館前の渋谷区立渋谷図書館の訪問記です。

閉館前の渋谷区立渋谷図書館 訪問記

last visit:2015/04/10
§ 図書館の場所

渋谷図書館は、渋谷駅と恵比寿駅の真ん中辺からやや東、実践女子学園や國學院大學の近くにある図書館です。どちらかというと恵比寿駅より渋谷駅のほうが近いです。

渋谷図書館は、1階入口の門が坂に面しており、坂をあがっていくと図書館2階に直接入れる入口に辿りつきます。この構造からもわかるように、この辺は明治通りから上るかたちになっている傾斜地です。渋谷駅の最寄図書館であるこもれび大和田図書館がある文化総合センター大和田も斜面に建っていますし、渋谷は地名の通りに「谷」にあるということを実感します。

§ 図書館内の様子

渋谷図書館は地下1階から2階まである建物で、地下1階と地上1階が一般書架、2階が児童フロアです。地下には休憩室もあります。カウンターは1階と2階にありますが、2階の児童フロアは17時で閉まってしまいます。古い建物でバリアフリー面がやや弱く、エレベーターがないので各階への移動は階段で行き来しないといけません。この階段の構造が面白くて、1階から2階へ上がるにも地下へ降りるにもぐるっと回り込みながら上下するような構造なんです。

というのも、建物自体が各フロアおなじ形の単純な構造ではなく、2階が一番小さくて、1階は入口から見て右手前に区画が伸びている、地下は入口から見て右先に区画が伸びているという、各階がずれているようなユニークな構造なんですね。デザイン的にも何だか面白いし、この「ずれ」のおかげで2階はもちろん1階の一部にも天窓があるし、地下の窓際からも外の明かりが入ってきます。ぜひ、階段を何度も昇り降りして(笑)、ユニークな構造を楽しんでください。

§ 一般書架

地下1階と地上1階に分かれている一般書架ですが、地上1階のほうが本棚が多く、地下は奥の半分ほどに閲覧机がずらっと並んでいます。ジャンルでいうと、総記、芸術、地域資料などが地下にあり、それ以外の大部分の図書とCDが地上1階です。また、雑誌は地上1階、新聞は地下1階と分かれています。検索機が1階にしかないので、地下のジャンルについて検索機で調べた本を手に取って、また違うキーワードで検索して…と繰り返したいときに、いちいち地上に上がらないといけないのがちょっと不便。願わくば地下にも検索機を1台おいて欲しいところですが、現状はないので検索機を使うときにある程度まとめて検索しておきたいところです。

背の高い書棚の上から下までぎっしり本が並んでいるのですが、書棚同士の間隔が広いせいかあまり圧迫感は感じません。書棚を見て気付いたのは、一部の本が帯ごとブッカー(透明の保護コーティング)をかけられているんです。単行本の内容、たとえば小説の場合あらすじなどは帯の部分に書いてあることが多く、帯が外されると本の情報がかなり減るんですよね。その点で帯と一緒にブッカーをかけてくれると、本選びの際の手掛かりとして使えます。

日本人の書いた読みものは、小説も随筆も一緒にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に、五十音順の並びに入れられています。例えば、梅原猛(ウメハラ タケシ)が書いたの本の隣に、7人の作家による『運命の剣 のきばしら』(ウンメイノケンノキバシラ)という本が並び、その隣に永六輔(エイ ロクスケ)が書いた本がある、といった具合になります。外国の小説は、「東洋文学」「英米文学」「ドイツ文学」等の国・地域別に分類された上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

この辺りの図書館ならではという点を感じたのが、雑誌コーナー。一般の雑誌に加えて、『国学院雑誌』『国学院大学報』、青山学院大学図書館報である『AGULI』など、渋谷近辺の大学発行の雑誌も置いているんです。大学って在校生以外にはなかなか敷居が高いものですが、こうした発行物から大学を知るというのも面白いですね。

書棚を見ていて思うに、願わくば医学の棚や家事関連の棚はもう少し分類を細かくしてくれるといいなと思います。特に料理の棚は、内容による分類ではなく著者名の五十音順に並んでいるので、例えば「お菓子の本が読みたい」と思ったときにもまとまっているわけではなく、たくさんの料理本の中に点在している状態です。内容別分類をしてくれている図書館は年々増えているので、ぜひ渋谷図書館でも採用して欲しいと思います。

§ 児童フロア

2階の児童フロアは全体が靴を脱いであがる区画になっています。外から2階に直接入れる入口から入ると、入った正面にカウンターがあり、カウンターの左に書架が広がっています。書架のうち奥側が児童読み物やちしきの本で、手前側に絵本があります。絵本エリアの壁には、山や田畑が広がる中に牛や汽車がいる絵がタイルで描かれていて、大きな壁画の前にいると楽しい気分になってきます。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類されていますが、著名な絵本作家(日本人作家ではせなけいこさんや五味太郎さん、外国人作家ではエリック・カールやモーリス・センダックなど)は作家でまとめて棚の上に並べているので、あるはずの場所になかったらそちらも探してみてください。児童読みものは日本人作家のおはなしと外国人作家のおはなしを別にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。ちしきの本や児童読み物が並ぶ辺りは棚と棚の間隔が子どもサイズで、大人にはやや見づらいところもあります。

窓際にちかい机席のまわりには、渋谷区立図書館が選んだ「しぶやおすすめの本50」に入っている本がずらっと並んでいます。また、カウンター向かって左の棚には、大人が読むための「こどもの本に関する本」もたくさんあるので、読み聞かせに関する本を読みたいかたや子どもの本を選ぶポイントなどが知りたいかたはそちらもどうぞ。

児童フロアは子どもだけが利用する区画ではなく、仕事帰りに子どもに読み聞かせる本を借りたりする大人や、子どもに関わる仕事をしている大人も利用することを考えると、2階が17時で閉まってしまうのは残念で、ぜひ図書館全体の閉館時間に合わせて利用できるようにして欲しいところ。ただ、一般書架とは別フロアなので、赤ちゃんが泣いてしまったり、お子さんが少しくらい騒いだりしてもわりと大丈夫だというのはメリットです。楽しい空間の中での読み聞かせなど、ぜひ楽しんでください。

§ 落ち着いてじっくり読書や調べものができる場所

道のりのところで書いたように、渋谷駅と恵比寿駅の中間辺りにある静かな場所にあり、実践女子学園や國學院大學の学生にとっては学校にきたついでに寄れるかもしれないけど、多くの人にとっては図書館だけを目的にわざわざ来ることになる場所です。そのせいか、蔵書数の多さに対して来館者数は少なく、蔵書数が中央図書館本町図書館についで渋谷区で3番目に多いのに、来館者数でいうと6番目にまで下がってしまいます(『平成23年度 東京都公立図書館調査』より)。

でもこれって裏を返せば、人の出入りが少なく静かな中でじっくり集中して読書や調べものをしやすい図書館ということでもありますよね。渋谷駅だとこもれび大和田図書館の方が近いので、返却と予約受取が中心の人はそちらを利用するところ、渋谷図書館までわざわざ来る人は、実際に本棚を見て本を選びたい人や机席でじっくり過ごすことに重きを置く人が多いと思います。

賑やかな渋谷駅周辺から少し離れた知的空間で読書を楽しめる渋谷図書館。遊びばかりではなく、学びの場としての渋谷もぜひ楽しみましょう。

閉館前の渋谷区立渋谷図書館 特集・行事・図書館だより感想記

―2015年4月10日から31日までの企画
子ども読書週間を中心に渋谷区立図書館各館で実施されている「春の図書館フェア」の一企画として、テーマに沿った本を中身がわからないよう袋に入れた状態で貸し出す「本の福袋」が行われています。子ども用と大人用があるので、私も借りてみました。