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閉館前の渋谷区立渋谷図書館サービススポット

渋谷区立渋谷図書館サービススポットは、渋谷図書館が修理に多額の費用・時間が発生する空調設備故障を抱えて図書館としての運営が難しいことがわかった後、2021年9月17日から2022年3月31日まで<少しだけ書架がある図書館窓口業務施設>として運営していた施設です。その後、この図書館サービススポットがなくなった代わりの施設として、白根図書サービススポットが2022年4月26日に開館しました。

以下は、閉館前の渋谷区立渋谷図書館サービススポットの訪問記です。

閉館前の渋谷区立渋谷図書館サービススポット 訪問記

last visit:2021/11/20
§ サービススポットの場所

渋谷図書館サービススポットは、渋谷駅と恵比寿駅の真ん中辺からやや東、実践女子学園や國學院大學の近くにある図書館です。どちらかというと恵比寿駅より渋谷駅のほうが近いですが、渋谷駅からでも15分ほど歩き、かつ、坂を上る必要があるルートをとることになる。その分、渋谷の喧騒を離れた文教地域の趣がある場所です。

傾斜がある場所に建てられた渋谷図書館は、傾斜の下側が1階の正面入口に、傾斜の上側が2階の児童エリアに直接繋がるような、立地を活かした造りになっていました。もしかしたら、それが設備故障の修理に多額の費用と時間が必要になってしまう要因になっているのかもしれません。現在は、2階入口は閉鎖されており、1階入口だけが開いています。

§ サービススポット内の様子

渋谷図書館1階は、入口入ってすぐに雑誌エリアがあり、更に進むとカウンターがあって、カウンター周囲に、検索機・自動貸出機、CDコーナー、参考図書コーナーがあり、その奥に書架がある、という配置でした。それが、空調設備の故障で館内の暑さへの対応ができなくなり、2021年8月16日から9月16日まで休館、この間調査をしたところ、改修に多額の費用と時間がかかることが判明し、2021年9月17日からは、窓口業務を中心とした「渋谷図書館サービススポット」として運営しています。

サービススポットになってから行ってみると、上に書いた1階の配置の、書架エリアから先が立入不可となっています。つまり、書架には入れませんが、CDコーナーは利用者が棚を見て選ぶことが可能、雑誌も閲覧可能。新聞も、私が渋谷図書館に最後に行った時点では地下にありましたが、現在は1階に置いてあり、閲覧可能です。

座席は、参考図書エリアの座席が使用可能ですが、新型コロナ感染対策を続けている今、使えるのは数席だけです。コピー機もあるので、雑誌の最新号のようなコピーできない資料でなければ、コピーすることができます。検索機も使えますが、渋谷図書館に在庫中となっている本を読みたい場合は、予約→確保連絡が来てから貸出、という手続きをすることになります。サービススポットでない渋谷区立図書館と同様に、自動貸出機や図書除菌機もあります。

書籍などの棚も、全くないわけではありません。入口を入った正面には「ミニこども室」というコーナーがあり、渋谷区教育委員会が選んだしぶやおすすめの本50に入っている絵本や読み物、他にも人気児童読み物シリーズなどが並んでいます。一般向けでは、特集コーナーが立ち入り可能エリアにあり、渋谷図書館の蔵書を使った特集コーナーから本を手に取って選ぶことができます。

また、利用者が見ることができる書棚がほとんどない分、「今日返却された本」コーナーの存在が大きいです。「今日返却された本」というのは、返却された本のうち、その図書館の棚に戻すべき本を仮置きするコーナーで、職員さんは、本が返却されるたびにあるべき棚に戻すより、そういう本を溜めておいて、ある程度溜まってからまとめて本棚に戻すほうが効率的なので、このようなコーナーがある。つまり、ここにある本は、次の予約が入っているほどの人気本ではないが、今読んでみようと思った人が少なくとも1人はいた本ということ。図書館で面白い本を見つけるコツとして、このコーナーをチェックする人も多いです。このサービススポットは見ることができる書棚が少ないため、私も普段に増してじっくり見てしまいました。

これらに加えて、リサイクル本(図書館の蔵書から除籍されて、利用者がもらってもよい本)や古本交換コーナー(利用者が不要本を持ち寄り、自由にもらっていける)もあるし、公共的な施設・活動のチラシ・パンフレット類も多数あるので、「図書館」と思って来るとがっかりするかもしれませんが、「図書館サービススポット」と思って来れば、想像よりも読めるものがたくさんある!という印象になるかも。初めて行く人は、少なめの期待で行ってください(笑)。

§ 棚が見えるのに入れないのはもどかしい、ですが…

冒頭で「広い書庫を備えたミニミニ図書館」と書きましたが、途中にも書いたように、渋谷図書館在庫中の本、つまり、この建物の立入不可エリアにある本は、一度予約手続きをしないと利用できません。そのように在庫資料の利用にも制限があるせいか、渋谷図書館サービススポットではレファレンスも行っていません。それ以外の窓口業務、貸出、予約貸出、予約受付、返却、利用者登録・更新などは、図書館と同じように行っています。

渋谷区にはありませんが、他の自治体で、図書館ではない場所を予約受取場所として指定できるサービスを行っているところがあります。そのように、図書館ではない場所で図書館の本が借りられるようなパターンならば、ある程度サービスが限られていても仕方がないと思える。でも、渋谷図書館サービススポットは、立入禁止の衝立ごしにすぐそばに棚があるのが見えるので、何とももどかしい気分になってしまいます。

一方、長期休館の際の臨時窓口に一般的なパターンともちょっと違うのが面白いところ。図書館が工事などで長期的に書架立入不可・窓口業務のみとなる場合は、その間その図書館の蔵書を利用不可とするケースがほとんどです。本格的な工事の場合は、蔵書を箱詰めにして別の場所に移動してしまうので、その間はシステム的に予約もできないようにしてしまうのですが、渋谷図書館サービススポットの蔵書はその状態とも違う。利用できないわけではないけど、すぐには利用できない、という、もやもや感を起こさせる状態なのです(笑)。

ただ、渋谷図書館の造りを考えると、改修に多額の費用と時間が必要だというのもわかります。渋谷区立図書館からのお知らせには「老朽化のため改修には多額の費用と時間を要することが判明」としか書いていませんが、私の想像では、渋谷図書館の造りも、改修に多額の費用・時間がかかる要因となっているように思うのです。

先に、傾斜のある立地を活かした造りだと書きましたが、渋谷図書館って、上方向だけでなく横方向にもずれがあるような構造で…螺旋階段のようと言えばイメージしやすいでしょうか。地下1階から地上2階まである建物なのですが、上階と下階の上下関係が真っすぐではなくちょっと横にずれている構造なんです。普通の階段も上段と下段では垂直方向・水平方向ともにずれていますが、普通の階段はそのずれが直線的なのに対し、螺旋階段は非直線的ですよね。渋谷図書館の構造もそんな感じで、場所によっては建物外壁と斜面上の路面というか崖状の地面との隙間が十分にないところがあるなど、素人考えですがメンテナンス性が低そうに見える。だから、そうした複雑な構造に関わるような改修の場合、通常より費用も時間もかかるだろうと想像できる。

改修に多額の費用と時間がかかると判明し、ならば一度解体して建て直すか、いっそ別の場所に移設するとなるか。これからどうなるのかはわかりませんが、どちらの方法もすぐには取れないだろうから、しばらくはこの状態が続くのでしょう。学校に囲まれたいい雰囲気の場所にある図書館サービススポット、ぜひ活用してください。