移転前の旧・渋谷区立笹塚図書館
旧・笹塚図書館は2015年3月15日を最後に移転のための休館に入りました。その後、現在の笹塚図書館が2015年4月1日に移転開館しました。
以下は、移転前の旧・渋谷区立笹塚図書館の訪問記です。
移転前の旧・渋谷区立笹塚図書館 訪問記
笹塚図書館は笹塚駅から歩いて数分のところにあります。笹塚は、駅の周りや甲州街道を越えた北側に商店街や飲食店がいろいろあって、ぶらぶら歩くのに面白い場所ですよね。おしゃれなレストランがあるかと思えば、昔ながらの商店もあって。ただ、そういう街の常として道幅が狭く、笹塚図書館のある通りも狭い割には車の通りもそれなりにあります。子どもさんが来館するときには車に注意してください。
笹塚図書館は3階建てで、1階が児童フロアと車椅子用閲覧室、2階が一般書架、3階が読書室です。貸出・返却カウンターは1階と2階にありますが、児童の利用が少ない時間帯は1階カウンターは閉まっています。
古い建物で、エレベーターはありません。だからこそ、車椅子用閲覧室が1階にあるんでしょうね。自動貸出機は2階にあるので、1階カウンターが閉まっているときに児童コーナーの資料を借りるときには、わざわざ2階にあがらないといけません。使い勝手で劣ることがあるのは古い建物なので仕方がない点もありますが、だからこそ1階にも自動貸出機を置くなど、後から付け加えた設備でカバーしてくれるといいなと思います。
まず、1階の児童フロアの入口を入ろうとすると、扉の重さにびっくりします。ガラス製の手動の引き戸なのですが、大人の私でも重いので、小さい子どもは開けられないんじゃないかな。左の車椅子用閲覧室へは自動ドアで入ることができ、車椅子用閲覧室と児童フロアを結ぶドアは開けっ放しにしているようなので、子どもさんはそちらからどうぞ。
児童フロアに入ると、左にカウンターがあり、奥に向かって本棚が並んでいます。カウンターの左手前にある車椅子用閲覧室は、児童室からも入れるし、外から直接入ることもできます。車椅子用閲覧室には児童向け図鑑などもあるので、児童エリアとは別の部屋というよりは、児童エリアの延長のような雰囲気です。
絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類されています。児童読みものは日本人作家のおはなしと外国人作家のおはなしを別にして、著者姓名の五十音順ですね。手前右の棚には木製のジグソーパズルなどもあるので、子どもが本に飽きてしまったら、それらのおもちゃで遊んだりもできます。
渋谷区立図書館には犬のキャラクター・ハチがいて(公式HPでも青い蝶ネクタイをして赤い本を持っている姿が見られます)、笹塚図書館の児童フロアでは、ちしきの本の分類の看板をハチが持って示してくれています。また、絵本や物語のうち、渋谷区立図書館お薦めの本(しぶやおすすめの本50)には、ハチのシールがついています。窓際に「しぶやおすすめの本50」がまとまっていますが、それ以外の書棚にもハチのシールがついた本がちらほらあるので、特に読みたい本が決まっていないときはぜひ参考にしてみてくださいね。
児童向け以外の資料は全て2階にあります。2,3階に上がる際は、1階の入口には入らず、向かって右にある階段を上がって、外から直接2階へ上がるかたちです。2階は、フロアとしては「L」字型の区画で、「L」字の右下の端にカウンターがあり、カウンターの前に延びている区画に新聞・雑誌、CD、文庫があり、突き当たりが中高生コーナーで、そこから右に曲がった一帯に一般書架が広がっています。
一般書架は棚の高さがかなりあり、一番上まで本がぎっしり並んでいます。一番上の棚は、文学全集や加除式法令集など、比較的利用の少ない本が置かれていますが、これらの本は比較的重い本であることも事実。一番上にある本を取り出すのが難しいときには、無理せずに職員さんに取ってもらうよう頼みましょう。
日本の小説はエッセイと一緒になって、著者名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に、五十音順の並びに入れられています。例えば、堀川アサコ(ホリカワ アサコ)が書いたの本の隣に、18人の作家による『本からはじまる物語』(ホンカラハジマルモノガタリ)という本が並び、その隣に本所次郎(ホンショ ジロウ)が書いた本がある、といった具合になります。外国の小説は、国や地域で分類することなく、外国の小説でひとまとまりにしたうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。
書棚は見出しが少なくて、本を探すのにやや不便。例えば、数学、天文学、生物学、医学などが含まれる4類の自然科学の棚には、「490 医学」という見出ししかありません。図書館の分類に詳しくない人でも、自分が探しているような本がどこからどこまでの間にあるのかわかりやすいよう、もっと見出しをつけてくれると嬉しいです。他の棚を見ると、歴史の棚などはたくさん見出しがついていて探しやすいので、これを書架全体に広げて欲しいです。
2階にはほとんど机席がないので、じっくり本を読みたい場合は3階の読書室へどうぞ。書棚は全くなく、机と椅子だけが並ぶ部屋に72席分のテーブル席があります。それぞれのテーブルには小さな植物が置いてあり、さりげなく心をなごませてくれます。
渋谷区は、2010年に中央図書館の移設オープン、こもれび大和田図書館のオープン、西原図書館のリニューアル、また建物として新しくはないけど、笹塚こども図書館のオープンと、2010年の新館ラッシュが飛びぬけていて、それらの新しい図書館に目が向きがちですが、古い図書館も味があっていいですよね。バリアフリーの点ではよくないけど、高い段までぎっしり詰まった書棚は、「本に囲まれている」感が味わえます。本好きの方の中には、今どきの開放的な書架より、こうした空間の方が好きな方も少なくないです。
味わいという意味で書き記しておきたいのは、2階カウンターの天井に掲げられている「一列に並んで下さい」という筆文字。たぶん、職員さんの手書きだと思うのですが、掲示物をパソコンで作るのが当たり前となってしまった今、妙に心に訴えかけてきます。書店でも店員さんの手書きPOPが目を惹きますよね。あんな感じで、書いた人の思いが伝わってきます。閉館前の忙しい時間帯などに並びがごちゃごちゃになって、どうかお願いしますと書いたかなと想像したりして。
耐震性などの要因もあって、古い雰囲気をもった図書館はこれからもどんどんリニューアルされていってしまいます。まだ昭和の雰囲気が残っている笹塚図書館も、ぜひ今のうちに堪能してください。