改修休館中の港区立台場区民センター図書室仮施設
港区立台場区民センター図書室が2022年11月8日から2024年2月28日まで大規模改修工事で休館していた間、お台場レインボー公園に仮施設が設置されていました。窓口だけの小さな施設を想像して行ったら、小さいけど書棚や閲覧席もあり、知る人ぞ知るミニ図書館という雰囲気でした。今はリニューアルされた台場図書館が開館しています。
以下は、改修休館中の港区立台場区民センター図書室仮施設の訪問記です。
改修休館中の港区立台場区民センター図書室仮施設 訪問記
港区の台場区民センターは2022年度から2023年度にかけて大規模工事を行っています。この中には図書室があり、港区立図書館のカードを使って貸出や予約をできるのですが、そこも2022年11月から工事のために使えなくなっている。その代わりに、2022年11月8日からお台場レインボー公園に仮施設を設置して業務を行っているというので、サイクリングがてら行ってみました。
私は窓口だけの小さな建物を想像していたのですが、お台場レインボー公園に着いても、それらしきものはなし。ただ、公園の奥に2階建ての横に長い地味な色の建物がある。見ると、その建物の塀に「←台場区民センター図書室」という看板があったので、この長い建物に隠れているところに小さな建物があるのかなと、頑なに小さな建物にこだわって進んでいったらそんなものはなく、長い建物の左端が図書室の仮施設でした。図書室の仮施設と、同時に大規模工事を行っている台場保育園の仮施設を合わせて一つの建物にしたそうで、想像以上の大きさです。
中に入ると、すぐ右に図書館のカウンターがあり、左にある仕切りの向こう側にも入れそうな雰囲気。どうも窓口だけの施設ではないようだと奥へ入ってみると、絵本を中心として本棚が並んでいます。更に2階へ行く階段もあり、上がってみると閲覧室がある。お手洗いも、1階に多機能トイレ、2階に男性用・女性用のトイレがあり、しっかり滞在できる施設で驚きました。
注意すべきは、閉館時刻の後や休館日などの閉まっている間の返却ポストがないこと。借りたものは仮施設が開いている時間に返しに行く必要があります。
仮施設での運営が始まった当初は閉館時刻の後や休館日などの閉まっている間の返却ポストがありませんでしたが、2023年7月10日から台場区民センターのブックポストが使えるようになりました。改修中の台場区民センターの新しい図書館はまだ使えませんが、ブックポストだけ先行して使えるというわけです。私は2023年12月にそのお知らせを見て台場区民センターまで行ってみたのですが、まだ入れないこの先でどんな図書館が造られているのかなと期待が高まりました。
全体を見渡した後、あらためて1階の書架へ。こういった仮施設の本棚は、絵本などタイトルだけでは選びにくい本をなるべく多く揃えて、予約機能を使える大人向けの本は少しだけ、というかたちが多いです。この仮施設も同様で、ざっと数えたところ(本当に数えました。暇人か 笑)、絵本が約2800冊、児童書が約230冊、一般書が約500冊。
数字を挙げただけでも児童書の少なさが際立ちますが、ラインナップも学習漫画、かいけつゾロリ、ムーミンの読みものに数冊プラスした程度の、かなり限られた品揃えです。仮施設の棚に限りがあるのは仕方がないので、子どもたちが検索機を使った本探し・予約を使いこなすきっかけになることを願います。
一方、絵本は充実していて、英語の絵本もいくつか並んでいます。それに、一般的な図書館であれば絵本と児童読み物がそれぞれの棚に収まってしまうところ、そのように場所を分けるほどの広さではないことを活かしてムーミンの絵本とムーミンの読み物を並べて置いていて、目を引きます。私自身、大人になってからムーミンの物語は読んでいないけど、この機会に読んでみようかな。
一般書架は、小説を中心にそれ以外のジャンルも含めた300冊弱を収めた棚があるほか、雑誌ラックの横に旅行ガイド本200冊強が並ぶ高い棚が1つ、それと、絵本の棚に絵本の選び方に関する本が並んでいるので全てです。2022年11月8日からの仮施設の限られた棚に、一般書全体の半分弱を占める冊数の旅行ガイド本を並べているのは、新型コロナ感染が収まってきて旅行需要が増えることを予想してなのか、または、実際の旅行に行きづらい分旅行ガイドを見て楽しむという利用もあるのかもしれません。
階段で2階へ上がると、まず関係者以外立ち入り禁止の事務室への扉が目に入るので、利用者が使える場所はないのかなと思ってしまったのですが、奥へ進むと閲覧室があります。仮施設ながら1,2階を行き来できるエレベーターもあります。
閲覧席は壁を向くようにして7つの机席があるのみ。1階にもパイプ椅子が2つあるだけですが、仮施設なのでそんなものでしょう。前に平日12時頃に来たときに閲覧室に1人しかいなかったので、平日15時過ぎである今回もそんなものだろうと、のんびり過ごすつもりで雑誌を手に来てみたら、ほぼ満席でびっくり。私が席に着いて10分後に残りの席も全て埋まったくらい、地域の人に利用されているんですね。
思えば、臨海副都心は今や高層住宅がたくさんあるのに、図書館施設としては台場区民センター図書室しかない。更に、比較的近い場所にある江東区立東雲図書館も2023年6月1日から改修工事による休館に入った(こちらは休館中の仮施設も臨時窓口もなし)。台場区民センター図書室も東雲図書館も工事をしている間に通常開館している図書館の中でこの辺から一番近い江東区立豊洲図書館は、蔵書や設備が充実しているとはいえ、江東区で来館者数1位を誇る図書館で座席確保が難しい。この仮施設は、そんな図書館欠乏地域における図書館欠乏期間の一筋の光明…と言ったら大袈裟か。
そんなことを考えているうちに空席もできて、自分のペースで雑誌を見る時間を過ごせました。時間帯にもよるでしょうが、待てども待てども満席が解消されないというほどではなさそうです。このように今は図書館過疎状態となっている臨海副都心地域ですが、台場区民センターの大規模工事を経た2024年4月1日には「港区の施設の中にある図書室」から港区立図書館の1つにバージョンアップした「台場図書館」が開館する予定。更に、その少し前、2024年3月には有明スポーツセンター7階に(仮称)江東区立有明こども図書館を新設する予定もあります。それぞれどんな図書館になるか楽しみです。
図書館巡りを楽しむ身としては、このように本が少ない仮施設は見どころが少ない面がありますが、その限られた中で出会った本には大きな図書館で出会ったときよりも何だか縁を感じてしまいます。この仮施設では、華文ミステリとして気になってはいたけど表紙の漫画的イラストが好みではなくて読まずにいた『文学少女対数学少女』を見つけ、これも縁だと思って読みました。限られた冊数の中で見つけると、「気になる」くらいだった本が「読む」に変わるんです。
旅行ガイドの棚の右下には、ベイエリアとしてのお台場に関する本や、台場を作った江川太郎左衛門に関する本など、台場ゆかりの本もあります。その中の1冊『江川太郎左衛門の生涯』は、検索してみたら港区立図書館でも唯一台場区民センター図書室だけが所蔵する本で、これを冊数の限られた仮施設に置いてあることにお台場にある図書館施設としての矜持を感じます。
もう一つの一般書架の棚上では、『「しあわせな空間」をつくろう。』という本を展示していました。ブックスタンドには「ここから歩いて5分、乃村工藝社さんの本です!(中略)そんな本です。遊びに呼んでくれないかな…」という職員さんのメッセージ入り。そう、仮施設があるお台場レインボー公園を出て左へまっすぐ進めば乃村工藝社さんの本社があります。実物大ガンダムやジブリパーク、北海道ボールパークなど、話題になるスポットに関わった人たちを取材した本です。
このメッセージを見て思ったのですが、「遊びに呼んでくれないかな…」なんて夢見るだけじゃなくて、図書館だよりを作って取材すればいいのに!この本の紹介に繋がる記事としても、地域を調べた資料記事としても充分成立するし、公共施設からの取材依頼なら承諾してくれる可能性は高いと思います。まずは台場図書館開館を機に図書館だよりを作って、地域の住民と企業を繋げる企画をして…何だか私が勝手に盛り上がってしまっていますが、仮施設を運営する中で溜まったアイデアが台場図書館で花開くのを楽しみにしています。