図書貸出可能冊数ランキング
東京都内の区市町村立図書館を、図書を借りる際の貸出冊数上限の多さでランキングした結果です。
情報のソースは、各自治体の図書館公式ウェブサイト(図書館公式ウェブサイトがない自治体は、自治体公式ウェブサイト、あるいは、自治体の例規集)。八王子市立図書館が2024年10月1日から貸出可能冊数を変更したことを受けて、2024年10月3日にあらためて各自治体の登録条件を確認しなおした結果が以下の表です。
順位 | 貸出可能 図書数 | 自治体 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1位 | 読める範囲で何冊でも |
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4位 | 45冊 |
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5位 | 30冊 |
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12位 | 20冊 |
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23位 | 15冊 |
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30位 | 12冊 |
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33位 | 10冊 |
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53位 | 5冊 |
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58位 | 3冊 |
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「読める範囲で何冊でも」のところを除いた56自治体の貸出可能冊数の平均を計算すると、15.1冊になります。
利用者にとって嬉しいのは、何といっても1位を占める「読める範囲で何冊でも」でしょう。だからといってこのルールを濫用していいというわけではなく、制限なしの図書館では利用案内などにも「読める範囲で」といった言葉を添えて、適切な貸出冊数を促しています。まあ、そもそも本は重くて嵩張るものなので、無闇に借りようとしても持って帰れる量に限度がありますね(笑)。
ランキング表としては、貸出可能冊数が多いほど上位となるスタイルにしましたが、「自分が借りられる冊数が多い」ということは、「他の利用者が借りられる冊数も多い」、つまり、借りようと思っても別の誰かが借りている可能性も高まるということにもなり、貸出冊数が多ければ多いほどいいという単純なものでもないように思います。だからこそ、制限があろうがなかろうが読める範囲で借りて、利用者皆が図書館を便利に使えるようにしたいものです。
また、貸出冊数は回転率にも影響するのではないかと思います。たとえば、週に5冊ペースで本を読む人がいるとします。この人が2週間で20冊借りられる図書館を使うとしたら、2週間に1度図書館に行って10冊ずつ借りて返すという利用をするでしょう。この人が2週間で5冊しか借りられない図書館を使うとしたら、1週間に1度5冊ずつ借りて返すという利用をすることになります。単純計算ですが、貸出できる冊数が少ないと、読み終わるのが早くなり、本を返すのも早くなるわけです。
これは、利用者個人の視点で見ると「一度にたくさん借りられないので、何度も行かないといけない」ということになりますが、全体の本の動きをみると本の回転が速くなるという利点もあります。実際、忙しい世の中、そうそう図書館ばかり行っていられないので、大抵の人はそのとき借りた本を一度に返そうとしますよね。10冊借りた本のうち翌日1冊読み終わったとしても、10冊目を読み終わるまでは返さない。でも、特に人気の本などは、借りた人が早く返してくれれば、待っている人の手元に来るのが早くなり、予約待ち人数も早く消化できる。貸出可能冊数が少ないと、こうした回転率が高まる可能性もあります。
この件を考えるのに着目すべきアンケート結果があります。多摩市立図書館では、2020年5月31日まで「多摩市在住・在勤・在学の登録者は、貸出点数に制限なし(但し、うち視聴覚資料は5点まで)」だったのを、2020年6月1日から「多摩市在住・在勤・在学の登録者は、図書・雑誌・視聴覚資料合わせて45点まで(うち視聴覚資料は5点まで)」に変更したのですが、それに先立って、利用者にアンケートを取りました。その結果がこちらなのですが、制限なしのままがよいと答えた人は20%弱、制限があっていいと答えた人の理由には「多くの人が図書館の本を利用できる冊数になると思うから」「人気のある本の回転率をあげるため」など、1人が多くの本をまとめて借りることの負の面にも考えを巡らせた内容が挙がっています。
少し大げさな話かもしれませんが、私は、図書館は本を読むといった基本的な図書館サービスを利用できるところであると同時に、"公共"とは何かを体験するところでもあると思っています。誰かの私物ではなく、「みんなのものである」とは何なのか。貸出冊数という切り口一つとっても、自治体や市民の考えが反映されているように思います。