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推理作家・的場郁賢の謎解きツアー

―2018年7月24日から8月26日までのイベント
visit:2018/08/06
§ 開館中の図書館を巡る謎解き企画

江戸川区立東部図書館が、夏休み企画として2018年7月24日から8月26日まで実施している「推理作家・的場郁賢の謎解きツアー」に挑戦してきました。ツアーと言っても、他の利用者と一緒にどこかを回るわけではなく、<推理作家の的場郁賢(まとば ふみたか)が、廃墟となった図書館に閉じ込められて、挑戦状を突き付けられた>というストーリーに沿って謎を解く企画。通常開館中の図書館のなかに問題やヒントがあり、それを見つけて解いていく、周遊型の謎解きイベントです。

東部図書館の建物に入り、左手の図書館エリアへ行こうとすると、最後まで解けた人の名前と感想メッセージが入口脇に貼りだされています。私が挑戦した8月6日時点で、貼りだされていた人数が19名。この面々に加わることができるか、いざ謎解きに挑戦です。ちなみに、名前はペンネームでも構いませんし、カウンターの職員さんに感想メッセージを書いて渡さなければ貼りだされることもないので、名前を出したくない人も安心して参加してください。

§ スタートは2階のTeens' Cafe

問題用紙は、2階の「Teens' Cafe」コーナーに置いてあります。お茶が飲めるカフェではなく、ティーンズ向けのイベント告知や広報誌、新刊情報などを置いているコーナーです。東部図書館が、というより、江戸川区立図書館全体が、中高生に図書館を利用してもらうための工夫や企画に力を入れており、手を伸ばしたくなる本・CD、参加したくなる企画の情報が満載。年齢ではティーンズの倍以上の私も、面白い本や企画の情報を求めて、東部図書館に来るたびに覗いています。

誰でも自由に手に取れるかたちで問題用紙とえんぴつが置いてあるので、参加申し込みなどの手間なく、いつでも謎解きを始めることができます。時間制限もないので、うまく解けなかったら中断して、実施期間内の別の日にまた来て続けてもOK。配布場所には「この謎解きは中学生以上の人が対象です 小学生はおとなの人といっしょに参加してください」と書いてありますが、難易度的に小学生にはやや難しいというのと、謎解きに夢中になって大声を出したり走ったりしないよう注意できる大人がいた方がいいという意味合いでしょう。貼りだされていた正解者の筆跡を見るに、小学生もたくさん挑戦しているようなので、親子で参加するのもいいと思います。

問題用紙と書きましたが、実際には12ページに渡る冊子です。主人公が推理作家という設定だけあって、謎解きに至るまでのストーリーもしっかり書かれています。ストーリーなんてどうでもいいから問題を、と読み飛ばすことなかれ。物語の中にさりげなく入っている情報が、謎解きのヒントになっているような…。

§ 図書館のなかをじっくり探索

的場郁賢が挑戦状を突き付けられたシーンでプロローグが終わり、3つのミッションが出題されます。ミッションクリアに必要なものは、全て2階の図書館エリア内にあります。最初のミッションは、館内のどこかにある4つの問題を見つけて解くこと。どうしてもわからないときに見ることができるヒントが問題のそばにあるので、全く解けないことにはならないと思います。ただ、2つ目のミッションからはひらめきも必要で、気付いてしまえば何ということはない、でも、気付くまでは何をどうするミッションなのかもよくわからない内容。参加者の頭の柔らかさが問われます。

問題を解く際に、男女4人のキャラクターが登場しますが、こちらは東部図書館ティーンズコーナーのキャラクターで、ふだんからティーンズ向けの広報誌や展示を彩っています。これまで各キャラクターの名前まで意識していなかったけど、女性キャラは「かなこ」「みさき」と下の名前なのに、男性キャラは「吉田」「金沢」と苗字で呼ばれているのが不思議。この違いには意味があるのか?これは今回の謎解きには関係ない疑問ですが、気になるので引き続きティーンズコーナーキャラに注目していこうと思います。

謎解きの内容は、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、この企画のために用意したものだけでなく、ずっと前から東部図書館にあるものが謎解きのカギになるところなど、さすがだと思いました。 東部図書館は、2013年10月27日に「ミステリークエスト~東部図書館からの脱出~」という劇場型謎解きイベントを実施していて、私が知る限り、これが東京都内の図書館で最初に行われた謎解きイベントです。今でこそ、あちこちの図書館で謎解き企画が開催されていますが、東部図書館はその先駆者といえる存在なのです。いつも東部図書館を利用している人こそ、それの存在に慣れていて見逃してしまいそう。じっくりと館内を探索して、正解に辿り着いてください。ちなみに私は、この記事を書くために館内に掲示されている問題文を書き写す時間も含めて、40分かかりました。

§ 答え合わせは金庫で

全てのミッションをクリアすると数字が導き出され、それが1階のカウンター脇に置かれた金庫の暗証番号になっています。正しい暗証番号を入力すれば金庫は開きますが、間違っていたら当然開きません。実際には、正しい暗証番号を押した後に、右下の「B」を押すと開くようになっているのでご注意ください(私はこれをわかっていなくて、エラー音を響かせてしまいました)。

暗証番号が合っていて金庫が開くと、正解者だけがもらえるプレゼントが入っています。何が入っているかは、正解してからのお楽しみということで、内緒にしておきましょう。私としては、出題冊子の最後に綴られたエピローグも金庫に入れて、正解者だけが読めるようにして欲しいと思いましたが、よく考えると、エピローグが何に注目すべきかというヒントになっている面もあるので、これはこれでいいか。

そうそう、正解者の名前が貼りだされているところをよく見ると、おまけの問題がもう一つ出題されています。謎を解いた勢いのまま解けるか、おまけが解けなくて謎解きクリアで盛り上がった気持ちが打ちのめされてしまうか、最後にもう一度腕試しです。

§ 的場郁賢とは何者?

ところで、この謎解き企画で挑戦状を突き付けられた推理作家・的場郁賢とは何者でしょう。東部図書館では、2017年の夏休み期間にも「的場郁賢のクイズな日常」というミステリ企画を行っていましたが、このときも今回も、推理作家だということ以上のキャラクター説明はありませんでした。東部図書館が謎解き企画用に作ったキャラクターでしょうか。

ネットで「的場郁賢」を検索すると、江戸川区立東部図書館のイベントに関する記事のほかに、北区が創設している内田康夫ミステリー文学賞の第16回の大賞受賞者の情報が出てきます。ということは、実在する作家さん?内田康夫ミステリー文学賞の受賞作は、受賞決定後に発行される月刊ジェイ・ノベルに掲載されていて、2017年4月号に掲載されている的場郁賢氏のプロフィールを見ると、東部図書館との関わりが想像できます。でも、東部図書館が何の説明もしていないのに、私があれこれ書くのは野暮なのでやめておきましょう。

それより、更に的場郁賢氏の世界を知るべく、その受賞作を読んでみるのはいかがでしょう。残念ながら、江戸川区立図書館では月刊ジェイ・ノベルを購読していませんが、相互貸借を利用すれば、北区立図書館が所蔵している月刊ジェイ・ノベルの内田康夫ミステリー文学賞受賞作掲載号を、江戸川区立図書館で取り寄せて借りることができます。的場郁賢氏の受賞作は、「内田康夫ミステリー文学賞の大賞受賞作は、授賞式の際に舞台化される」ということを知った上で読むと更に楽しめる内容なので、それを踏まえてぜひ読んでみてください。

§ 同時に子ども向けクイズ企画も開催

ここまでティーンズ向け企画「推理作家・的場郁賢の謎解きツアー」を紹介してきましたが、同じ時期に、子ども向けのクイズ企画も2つ実施しています。まず1つは「オリンピック パラリンピック クイズ」で、オリンピック・パラリンピックに関するちしき問題10問が、1階の児童エリアのあちこちに貼ってあり、それを探して答えるというもの。もう1つは「なぞ絵の書」で、5つの判じ絵が掲載された冊子を入口で配布、その答えが載っている「こたえの書」も児童エリアのどこかで配布しているので、自由に取って楽しんでくださいというものです。

東部図書館は、このようにクイズや謎解き企画をよく実施しており、利用者にとってワクワクする空間です。クイズで出題されていることを知らなかったら本で調べてみたり、館内を回っているうちに見つけた本を借りるなど、読書にも繋げて楽しみましょう。