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文京区立千石図書館

文京区立千石図書館 訪問記

last visit:2014/04/19

文京区立千石図書館は、千石駅のすぐそばにある、広い庭が特徴の図書館です。個人宅を改修して、住民の手によって開設された歴史を持っており、広い庭もその名残りです。

§ 図書館の場所

千石図書館は千石駅のすぐそば、徒歩で2分ほどの場所にあります。駅から地上に上がると広い旧白山通りが通っているので、交通の激しい街中のようにも見えますが、路地へと一歩入れば静かで落ち着いた雰囲気の住宅地です。

私が好きな外国小説に、『雨の牙』という、日米ハーフの殺し屋が活躍する小説があるのですが、その主人公ジョン・レインが住んでいたのがここ、千石なんです。駅を出て地上にあがった辺りは、小規模のビルばかり並ぶ変哲もない町なのですが、ちょっと歩けば小石川植物園や六義園などがあるような、実は緑の多い場所。ジョン・レインシリーズの著者は日本滞在経験のあるアメリカ人なのですが、よくぞこんな渋い場所を小説の舞台にしたと感心してしまいます。

§ 図書館内の様子

図書館に入る前に目に留まるのが大きな前庭。季節にもよりましょうが色とりどりの花が咲いていますし、手前右の藤棚は開館当初からのものだそうです。窓を覆っているグリーンカーテンも、これからますます成長しそう。庭のあたりを見る限りでは、公共施設というより個人宅みたいにも感じられますが、千石図書館は実際に個人宅を改造して開設された図書館なのです(詳しくは後述)。但し、建物自体は途中で改築しており、当初の建物のままではないのですが。門から図書館入口までの通路では、本をたくさん持っている広いお宅へお邪魔するような感覚になってしまうかもしれません。

建物は地上2階地下1階で、1階が児童コーナー、小説、家事関連本、芸術・スポーツ関連の本など。地下が新聞・雑誌コーナー、CD・ビデオ・DVD、辞典類、芸術・スポーツ以外の本。2階には書架はなく、おはなしの部屋と生涯学習施設「アカデミー千石」があり、住民によるサークルなどが使用するほか、図書館イベントにも使われます。

§ 1階の児童エリア・小説・家事関連・芸術等

1階は、図書館エリア入って左にカウンターがあり、図書館入口から見て右の窓際が児童コーナー、カウンター前が小説・家事関連・芸術などの一般書架です。建物にかかるグリーンカーテンを窓を通して中から見ることができ、天気がいい日などは特にさわやかな雰囲気。児童コーナーの柱にかかっている大きなからくり時計も必見です。

児童コーナーには靴脱ぎスペースがあり、赤ちゃんや小さな子どもが座り込んで絵本を広げることができます。絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、出版社の五十音順に並んでいます。窓際のコピー機のすぐそばの棚には、外国語絵本もあります。ほぼ全ての外国語絵本の背に、邦題がラベルで貼ってあるので、それをたよりに同じ作品の原作と邦訳を借りて、易しい英語の勉強に使うこともできます。

それら入口や靴脱ぎスペース付近に絵本が並んでおり、奥や一般書架に近い辺りにちしきの本や児童読み物が並んでいるかたちです。児童向け読みものは、日本人作家の作品も外国人作家のものも一緒にして、タイトルの五十音順に並んでいます。

文京区立図書館は各館に重点的に収集する担当分野を割り振っており、文京区立図書館公式サイトの千石図書館の説明によると、千石図書館の担当は「総記・映画・演劇・スポーツ・外国文学」とのこと。それらのジャンルがものすごく多いわけではないけど、比較的多めというところでしょうか。スポーツは野球やサッカーのようなメジャーなスポーツだけでなく、「モータースポーツ」「プロレス」「ボクシング」「卓球」「キャンピング」「サイクリング」などにも項目見出しをつけているくらい。映画の本も充実していて、アジア・アメリカ・ヨーロッパ等々、世界各地の映画に関する本が棚にたくさん並んでいますし、日本映画についても映画そのものについての本、監督に関する本、俳優に関する本など多数揃っています。

外国小説は、担当といえども印象としては「やや多め」くらいかな。日本人の書いた小説は、著者姓名の五十音順に並んでいて、アンソロジーなど複数の著者による小説・随筆集は、「合集」として小説・随筆の並びの前にまとめて置いてあります。外国人の書いた小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」等の国・地域別に分類された上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

新書の棚には新書の目録がぶらさがっており、カウンター向かって右の検索機の脇には文庫の目録が並んでいます。千石図書館にないものや貸出中のものも含めて、目録から本を探したいという方はぜひ目録を使ってください。

§ 地下の新聞・雑誌、CD・ビデオ・DVD、辞典類など

1階から地下へ行く階段の踊り場には、朝日・読売・日経・毎日・産経・東京の各新聞の書評欄のコピーが掲示してあります。単に書評をコピーして貼っているだけでなく、文中に登場する書籍全てについて、ISBNコード、図書館での請求記号、文京区立図書館での所蔵館を記入してくれているんです。文京区立図書館にない場合も、単にないのか、発注中なのかまで書いてくれるという丁寧さ。資料としては1階にあるものを中心に利用している方も、ぜひ書評を見に地下への階段を下りてみてください。

踊り場から地下へ降りる階段の壁にも、大学や博物館で行われる展示や講座のポスターが貼られています。美術館・博物館のポスターは多くの図書館でよく見かけますが、大学の展示・講座の情報を集めたコーナーは珍しい。興味ある講座を見つけたら、ぜひ行ってみたいです。

地下の配置は、階段・エレベーターの近くに、ジュニアコーナーと新聞・雑誌コーナーがあり、その右先にカウンター、カウンターの向かいにCD・ビデオ・DVD、その先に1階にあるもの以外の一般書架や辞典類があります。地下で借りた本を1階のカウンターに返却するのは構いませんが、視聴覚資料の返却は地下のカウンターで行う必要があります。

新聞・雑誌コーナーでびっくりしたのが、当日の日経新聞の閲覧を番号札を使って管理していて、1回20分程度の利用としていること。当日の新聞は図書館の中でも利用が高い資料ですが、時間制を設けている図書館は初めて見ました。それだけ千石図書館の日経新聞閲覧者が多いんですね。

映像資料は、ビデオもDVDも一緒にしてパッケージをコピーした紙を固いクリアシートに入れて並べており、クリアシートをカウンターに持っていくと、それを借りることができるという仕組みです。DVDとビデオが混在して内容でジャンル分けしていますが、DVDタイトルには金色テープを上部に貼ることで、ビデオなのかDVDなのかがわかるようにしています。ただ、どうでしょう、どちらか一方のデッキしか持っていない人にとっては、自分が見られるタイトルにはどんなものがあるかというのが、ぱっと わかりにくい分類にも思えます。ビデオデッキの利用率も減っていることを考えると、媒体で分類した上でジャンル分けしてくれた方が、自分が見られるものにどんなものがあるのか見やすいように思います。

カウンター対面の壁には、小さな「東洋文庫コーナー」があります。千石図書館から歩いていける場所(千石図書館を出て右へ進み、不忍通りへ右折して650mほどいったところ)に東洋文庫ミュージアムがあることから設置されたコーナーで、ミュージアムの図録のほか、雑誌『東京人』『ラジオ深夜便』の東洋文庫に関する特集を組んだ号も並んでいます。東洋文庫ミュージアムに行くときは、その前にミュージアムに関する情報を千石図書館で知っておけば、更に楽しめそう。

§ 千石地域の人によってできた図書館です

千石図書館地下の一番奥の壁沿いの棚、図書館の分類でいうと0類に、図書館に関する本が並んでいます。ここに、もし別の誰かが借りていなかったら、『図書館をつくった!』という青と白の表紙の本があります。この本、千石地域に図書館が欲しいという住民の活動から始まって、千石図書館が実際にできるまでの過程をまとめた本なのです。

図書館を愛する皆さんの強い思いが伝わってくる本で、区に要望を出すだけでなく、用地・建物も確保したり(建設途中で家主が亡くなって放置状態になっていた木造住宅を図書館に改造)、図書館設立への推進力が強い。と同時に、千石図書館が開設されるまでの間に、著者の自宅で「かたりべ文庫」という地域文庫を運営したりもしているんですよね。要望だけ出して任せきりにするのではなく、こうした積極的な活動こそが今の千石図書館を生んだのだと思います。

今の千石図書館だけ見ると、やけに庭が広く、中に入ると閲覧席が少ないので、これだったら庭を削って図書館を広く作ってくれればいいのにと思う人も多いと思うのですが、木造から現在の建物に建て替える際に、庭を残してほしいという意見が出たのかもしれません。これもユニークな歴史があってこそですね。地域の方々はご存じの話かもしれませんが、最近越してきたなどで昔の千石図書館を知らない方には、ぜひ読んで欲しい本です。

図書館って、蔵書や座席、その他設備が充実しているに越したことはありませんが、その地域の特性に合わせることや、地域のニーズに合わせた図書館であることも重要だと思うんです。設立当初の庭を残している千石図書館は、まさにそうした施設。ぜひ、これからも千石らしい、千石にしかない図書館であり続けて欲しいと思います。

文京区立千石図書館 特集・行事・図書館だより感想記

 
文化講座 豊崎由美氏講演会「炭坑のカナリアとしての読書」
―2015年9月21日のイベント
社会がこれからどうなるか、現在進行形で進んでいる社会問題を考える際の危険の予知となる「炭坑のカナリア」的な読書ができる本を書評家の豊崎由美さんが紹介してくれる講演会。読書の可能性などについてもお話してくださいました。
  千石図書館ビブリオバトル ~文京区ゆかりの文人たち編~
―2013年9月21日のイベント
千石図書館にとって初めての開催となるビブリオバトルに発表者として参加してきました。文京区ゆかりの文人たちをテーマにしたビブリオバトルを2ゲーム行いました。
  文化講座5「ガイブンなんて怖くない! ~広くて深くて面白い海外文学の世界案内~」
―2013年7月20日のイベント
ライター・書評家の豊崎由美氏が外国文学の魅力やお薦め作品を語る講演に行ってきました。

文京区立千石図書館 データ

住所東京都文京区千石1-25-3 →Google Mapで見る
Tel03-3946-7748
開館時間
月~土曜9:00~20:00
日曜・祝日、12月29日9:00~19:00
定休日第4月曜(祝日の場合は開館し、翌日を休館)
12月30日~1月4日
最寄駅 都営三田線 千石駅から徒歩2分
都営三田線JR山手線 巣鴨駅から徒歩13分
駐輪場建物入口手前右に駐輪場あり
駐車場一般用駐車場はなし。建物入口手前に障害者用駐車場1台あり。
所蔵資料
図書所蔵数136,040冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
ありあり(閉架)なし

映像資料
DVDビデオLD
ありありなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポストなし
自動貸出機なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PC1階の図書館エリア入って右にネット閲覧PC2台あり。利用は1回1時間、次に待っている人がいなければ30分のみ延長可能。
持参PC利用不可
LAN接続
  • 文京区公衆無線LAN「Bunkyo_Library_Free_Wi-Fi」の利用可能。利用は1回2時間、開館時間内は何回でも利用可能。利用の際は、メールまたはSNSアカウント(Google、Facebook、LINEのいずれか)での認証が必要。利用方法の詳細はこちらをどうぞ。
  • 1階コピー機周辺に「docomo wifi」「au wifi」「ソフトバンク wifi」のアクセスポイントあり。1階にいるとつながりますが、地下1階までは届いていません。
飲食設備等着席時の蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)からの飲料摂取はOK。飲むとき以外は、机の上に置かず、鞄の中へしまってください。