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閉鎖前の墨田区立あずま図書館

あずま図書館は2013年1月31日の通常開館を最後に窓口業務だけに縮小し、3月20日を最後にその窓口業務も終了しました。その後、あずま図書館と寺島図書館を統合したひきふね図書館が2013年4月1日に開館しました。

以下は、閉鎖前の墨田区立あずま図書館の訪問記です。

閉鎖前の墨田区立あずま図書館 訪問記

last visit:2012/09/28
§ 図書館の場所

あずま図書館の最寄り駅は東武亀戸線の小村井駅です。駅改札を出たら、目の前を通る明治通りを亀戸方面(右)に進み、「立花二丁目」交差点で右折してしばらく進み、170m先の五叉路で斜め右に延びている「曳舟たから通り」に進みます。200mほどいくと左に公園があり、その先にすみだ中小企業センターという建物があります。その3階が墨田区立図書館の中央館であるあずま図書館です。

小村井駅からあずま図書館までの道のりでは、間近に聳え立つ東京スカイツリーが、建物の合間が見えるたびに顔を出します。墨田区のコミュニティバスの北東部ルートを使うと、押上駅からすみだ中小企業センターまで1本で行けますし、徒歩 ルートでも1km少し越える程度の距離、でも図書館から東京スカイツリーまで直進できる道はないので、あずま図書館の帰りに頭をのぞかせている東京スカイツリーを目当てにくねくね歩いてみるのも楽しいと思います。

§ 図書館内の様子

建物の3階全体が図書館フロアとなっています。エレベーターで3階へ行くと、正面にカウンター、右が参考図書コーナーと学習室。カウンター左に長~い一般書架があり、一般書架の奥に新聞・雑誌コーナー、その左に児童コーナーという配置です。一半書架のうち一番カウンターの近いあたりには、CD・カセット・DVDやネット閲覧PCもあります。

図書館で自習(図書館の資料を使わない勉強)をしてもいいかどうかというのは、図書館によって方針が異なるのですが、あずま図書館は、勉強していい閲覧室などではなく、明確な「学習室」が設置されています。墨田区はあずま図書館に限らず、図書館で自習できる方針のところが多いです。逆にいうと、ずっと墨田区立図書館を利用していて、図書館で自習できるのが当たり前だと思っている人は、他自治体の図書館を利用するときに気を付けた方がいいかもしれません。

パソコン持ち込みについては、一般書架の窓際の席と学習室で使用することができます。但し、電源があるのは一般書架窓際席のうち4席のみ、埋まっていることも多いので、ご利用の際は事前にフル充電してきてください。

§ 一般書架

一般書架は、さすが中央館とあって充実しています。ただ、その蔵書量に対して、椅子席がないのがちょっと不便です。窓際にある机席は使用率が高く、学習室の方がむしろ空いていることもあるので、ちょっと読みたいだけの場合もちょっと離れた学習室まで本を持っていった方が、ゆったりと読書できると思います。

日本の小説とエッセイは一緒にして著者姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は頭文字が「わ」の作家の後にまとめられています。外国の小説は、中国文学・英米文学・ドイツ文学…と国・地域別に分かれた上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

カウンターの前の視聴覚資料は、CD・カセット・ビデオ・DVDと揃っており、点数も多いです。DVDのタイトルも増やしつつ、カセットも開架に並べて続けているんですね。朗読のカセットも多いです。

新聞・雑誌コーナーの一画から、雑誌ラックの裏に当たる言語の棚の左端にかけては、外国語図書もずらり。言語は、英語・中国語・ハングル・ドイツ語・フランス語・スペイン語とあり、本の背の部分に国旗のラベルが貼ってあります。全ての本にではないのですが、邦題もラベル印刷して貼ってあるので、原作と翻訳を一緒に借りて語学の勉強をする際にも便利です。

奥のおはなしコーナー手前のティーンズコーナーは、書棚に中学生自身が書いたお薦め本のカードがたくさん貼ってあります。文章でお薦めする人だけでなく、イラスト入りで本を紹介したり、手描きカードなので文字のレタリングに凝ったり、ホラー小説を薦めるカードのしたたる血を描いている人もいたり…書いている人の個性が出ています。大人から「中学生にお薦め」と本を薦められて、何かピントがずれているなと思ったことのある中学生もいると思うのですが、中学生自身が実際に読んで面白かった本ならあなたも面白いと思える可能性が高いかもしれませんね。

ティーンズコーナーの中央の棚には「フウガすみだコーナー」があり、墨田区をホームタウンに活動しているフットサルチーム「フウガすみだ」を紹介するコーナーがあります。紹介の仕方も図書館らしく、各選手のお薦め本や監督の名言などを紹介してくれているんです。プレーを見て気になった選手のお薦め本を読んでみたり、逆に自分が好きな本をお薦めしている選手がいたら注目してみるというのもいいですね。

§ 賑やかな児童コーナー

新聞・雑誌コーナーの隣が、児童コーナー。奥の窓際には「おはなしコーナー」という、子供が靴を脱いであがれるスペースがあります。おはなしコーナーから近い棚に漫画も多数あるので、くつろいで漫画の世界に入る子どもも多いのでは。

漫画の棚のには、漫画雑誌と鉄道雑誌・航空雑誌があります。鉄道雑誌や航空雑誌は大人でも読む人がいるかもしれませんが、新聞・雑誌コーナーでなく、児童向け雑誌コーナーに置いているので、ご覧になりたい方はご注意くださいね。

絵本は日本のおはなしと外国のおはなしを別にして、おはなしの作者の姓名五十音順に並んでいます。児童読み物も、著者姓名五十音順に並んでいますが、日本or外国という二分類ではなく、アジアのおはなし、英米のおはなし…といった具合に、外国作家の本は更に国・地域別に分けたうえで著者姓名五十音順になっています。

児童コーナーの柱には、「迷路で遊ぼう」という、迷路をたどりながら正解の道に書いてある文字を読んでいくとお話になっているものや、「しりとりで迷路」みたいな感じの、単語がたくさん書かれていて、しりとりでスタートからゴールまでたどれるようなものなどがあります。しりとりの方なんてすごい数のことばが書かれているから根気が要りますよ(笑)。

また、2008年8月に行ったときには「貝クイズ」という実際の貝を6つ置いたコーナーがあって、その貝の名前を図鑑で調べてカウンターに持っていくと何かプレゼントがもられるようになっていました。こういう遊び要素を入れたものを用意してくれていると楽しいですよね。

§ 王貞治寄贈コーナー

さて、おそらく全国の図書館でも、あずま図書館にしかないであろうものがあります。それは、エレベーター向かって右の一画の王貞治寄贈コーナー。王さんの生まれは向島区、現在の墨田区で、現在は墨田区名誉区民でもあるんです。そのゆかりで、2010年9月7日からこのコーナーができました。

壁の説明には「このコーナーは墨田区名誉区民である王貞治氏によるご寄付と読売巨人軍の協力により設置されました」とありますが、墨田区立図書館の図書館だより2010年9月号には、「9月7日、墨田区名誉区民であり、通算本塁打の世界記録を持つ王貞治氏の寄贈図書コーナーがあずま図書館で開設されました。これは、王氏のご厚志により読売巨人軍から本区に図書を寄贈されたことから設置されたものです」ともあります。二つの文面から察するに、王さんの蔵書が直接墨田区に寄贈されたのではく、一度王さんが読売巨人軍に寄贈したものを、墨田区に移譲した形なのかもしれません。

寄贈を受けた図書は全部で215冊だそうで、棚を見ると、王さんのことを書いた本や写真集はもちろん、イチローや稲尾和久など他の野球選手のことを書いた本、スポーツ栄養学・スポーツ心理学の本もあれば、障害者スポーツの本もあるし、少年野球のコーチングについての本もある。王さんや野球を中心として、広い範囲の本が並んでいます。『タッチ 完全版』『キャプテン 完全版』などの漫画もありますよ。これら全ての資料が貸出できます。

§ あたらしい墨田区の行く末はいかに

今、墨田区と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やはり東京スカイツリー。旅行ガイドコーナーの通路寄りでは、スカイツリーを中心に墨田区を取り上げた本が並んでいます。例えば、『スカイツリー 空へ未来へ』という冊子は、読売新聞のスカイツリー関連の連載記事を冊子にまとめたもの。今は閉室してしまった、読売新聞社社会部江東支局東京スカイツリー前分室で販売していたもののようです。単に、スカイツリーのいい話題や技術などを取り上げるだけでなく、地元への説明会で出た建設工事の騒音対策や建設中・開設後の交通渋滞の問題点など、スカイツリーに関連する地元の様子も伝わってきます。そのほかにも、スカイツリー周辺のコミュニティ誌『東京スカイツリータウンプレス』や、東京スカイツリーが日々建設される様を近所の住民が冊子にまとめた『スカイツリーReport』など、市販の書籍でない資料もたくさんあるのでぜひ見てみてください。

もちろん、昔ながらの墨田を伝える資料もいろいろ。エレベーターに接する壁一面が地域資料コーナーで、国技館・相撲の 本、葛飾北斎の本、花街の本など、墨田区は実にさまざまな文化が詰まっているんだなあと、この棚を見ていると実感します。

さて、このあずま図書館、2013年3月末に寺島図書館と統合して、新しい図書館へと生まれ変わります。統合するいうことで館の数としては減ってしまうのですが、利用者が運営に参加する新図書館プロジェクトリーダーという仕組みを作ったりするということで、墨田区ならではのユニークな図書館になりそう。地域資料の棚を見てもわかるように、昔からさまざまな文化があって、更に新しいものも作られていくというのが墨田区の面白さだと思います。これからの墨田区立図書館の行方はいかに。私も楽しみにしています!

閉鎖前の墨田区立あずま図書館 特集・行事・図書館だより感想記

―2012年10月20日のイベント
新図書館開設を控えた墨田区のユートリア(すみだ生涯学習センター)で、新図書館プロジェクトリーダーの皆さんと東京図書館制覇!管理人の私が一緒になって、講演会&パネルディスカッションを開催しました。