トップ図書館訪問記墨田区 > 墨田区立ひきふね図書館

墨田区立ひきふね図書館

墨田区立ひきふね図書館 訪問記

last visit:2014/02/11

墨田区立ひきふね図書館は、あずま図書館寺島図書館が統合するかたちで、2013年4月1日に開館した図書館です。

§ 図書館の場所

ひきふね図書館の最寄駅は、京成曳舟駅や東武線の曳舟駅。現時点で京成曳舟駅は高架化工事の途中ですし、曳舟駅は駅前が開発中。今まさに街の様子が変わろうとしているところです。

東京スカイツリーまでも歩いてすぐですが、こうして再開発されてビルが建つと死角に入ってしまい、近いのにスカイツリーが見えないという状態になりがち。曳舟を歩いていると、スカイツリーが見えたと思ったら隠れ、また見えたと思ったら隠れ…と、意地悪されているような気分になります(笑)。

§ 図書館内の様子

ひきふね図書館も曳舟地域再開発の一環で統合移設された図書館で、高層ビルの上層がマンション、下層が図書館や店舗というフロア構成です。2階から5階を占める図書館フロアの内訳は、2階がこどもとしょかん、予約資料ルーム、自動貸出機、総合カウンター。3階が新聞・雑誌コーナー、CD・DVD、小説・エッセイ、文庫本、家事関連本、医学の本、パソコン関連本、旅行ガイドなど。それ以外の一般書架やティーンズルームは4階になります。5階は会議室やボランティアルームがあり、誰もが自由に入れるエリアではなく、図書館で活動しているボランティアさんなどが使うエリアのようです。

2階のこどもとしょかんは一般エリアとは入口が別になっていますが、エレベーターでこどもとしょしつから3,4階の一般エリアへ上がっていくこともできるので、目を離せないほど小さなお子さんでなければ、親子一緒にこどもとしょしつ側に入り、お子さんはそこで読書、親御さんはエレベーターで上に上がって自分の本を探す、といったこともできますよ。

一般エリア側入口を入ると、頭上のランプシェードや振り返った入口の上を装飾など、墨田区の伝統工芸品がロビーを彩っています。3階への階段壁面や3,4階の書架にも、壁や柱をくりぬいて作られた展示コーナーにさまざまな工芸品が展示されています。スカイツリーで一躍脚光を浴びている墨田区ですが、伝統芸能の良さもアピールしたいというところでしょうか。

§ 一般書架

3,4階の一般書架は、L字状の区画に本棚がずらっと並んでいます。3,4階のカウンターは、閉架資料請求などのためのカウンターで、貸出や返却は受け付けていないのでご注意を。現時点では配架図が充実しておらず、請求記号から棚の場所がわかるような図が館内に掲示されていないのが残念。そうした図をあちこちに貼ってくれると便利なのですが、現状ではフロア端にあるカウンターで請求記号が書き込まれた配架図を配布しているので、それを手に書架を回ってください。

一般書架を回って感じるのは、本棚の奥行きの少なさです。一般書架の棚は、裏表両面から背中合わせに本を並べるようになっており、裏表を隔てる間仕切りが下段にしかないタイプの棚なのですが、裏表合わせた奥行きが39cmしかありません。つまり、A4縦サイズ(幅21cm)の資料を裏表両方から入れると、表側の本を奥まで入れたら裏側の本が飛び出す、裏側の本を奥まで入れたら表側の本が飛び出すということになってしまいます。実際の書棚を見ても、単行本がほとんどの小説の棚などは大丈夫ですが、雑誌バックナンバーの棚は、表を奥まで入れているところは裏に本を入れていなかったり、裏表入れているところは棚板から本がはみ出しています。

そして、そうした棚でも本が落ちないためということなのか、本棚の棚板は斜めに固定されています。棚板の高さが1.5cm間隔で調整できる本棚なのですが、棚板の固定位置を手前と奥で一つずらして、奥に向かって下がるように傾けているわけです。手前を上に傾けることで地震の際の落下対策にもなっているのかもしれませんが、小さい本が奥に沈むことになり、大きいムック本とA5判くらいの単行本が混在するパソコン関連本の棚などは少し見づらいです。本を探す際には、奥まった本を見逃さないようご注意ください。

日本の小説・エッセイは一緒にして著者姓名の五十音順で並んでおり、著者が複数いる本は頭文字が「わ」の作家の後にまとめられています。外国の小説は、中国文学・英米文学・ドイツ文学…と言語別に分かれた上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

日本の小説・エッセイのうち、墨田区ゆかりの文学者の作品は、壁沿いの予約席エリアの仕切りになっている棚にまとめてあります。どんな作家がいるのか見てみると、墨田区出身の舟橋聖一・小杉健治もいれば、墨田区に住んだことのある谷崎純一郎、両国の学校に教師として勤めたことのある夏目漱石、区内の玉乃井を描いた『ぼく東綺譚』の著者である永井荷風など、さまざまなかたちで墨田区に関わっている作家が並んでいます。お馴染みの作家も、墨田区との関わりがあると知ったら、親近感が湧くかもしれませんね。

墨田区の情報については、4階のL字の曲がり角にあたる「情報サービスコーナー」にも展示されています。ここには、芥川龍之介・永井荷風といった、墨田区ゆかりの作家の中でも著名な人物の著作や、葛飾北斎・大相撲など墨田区に関わりのあるものに関する資料、墨田区が協賛しているフットサルチーム「フウガすみだ」に関する展示など、あらゆる角度からの墨田区の情報が集まっています。

ただ、あずま図書館からひきふね図書館に受け継がれた「王貞治寄贈コーナー」などは明らかにあずま図書館時代より縮小しており、とても残念。王さんから寄贈していただいた本は、ひきふね図書館の同コーナーに並んでいる本の5倍以上はあったはず。図書館の中の展示コーナーですし、パネル展示などもいいけど、ぜひ墨田区への興味が読書につながるような展示にしてくれたらなと思います。

4階には別室になっているティーンズルームもあります。四方を本棚に囲まれていて、絨毯もふかふか。雑誌のうち、「ファインボーイズ」「セブンティーン」といった中高生向けの雑誌は、一般書架の雑誌コーナーではなくティーンズルームにあります。他とは仕切られた空間なので、友達と連れ立って話しても大丈夫そうだけど、集団で占有している人達がいたら後から入りにくい面もあるかも。友達と一緒に図書館に行くのは楽しいことですが、図書館は皆の場所なので、この部屋を使う中高生にはぜひ集団で独占することなく皆で共有してもらえればと思います。

§ さまざまな面でシステム化

蔵書はこうして開架の棚で見ることができる分以上にあり、棚に出ていない残りの資料は自動書庫に保管されています。見たい資料を検索したときに、「資料の状態」が「[ひきふね図書館]の書庫にあります。職員におたずねください」という表示が出たら、資料確認票を印刷してカウンターへ持って行ってください。すると、職員さんがレシートのバーコードを読み取り、機械を操作して、1分ほど待った後にカウンターの後ろにその本の入った箱が届きます。1分程度だと別の棚を見たりして時間をつぶすほどではないし、かといって何もしないと長く感じられるのが微妙なところです(笑)。

そうやって手にした本を図書館のなかで読むなら、座席を確保しましょう。館内の机席のうち2/3は予約席で、使用したいときには館内の座席予約機で墨田区立図書館のカード番号・パスワードを入力して席を確保するようになっています。予約席を使えるのは墨田区立図書館に登録している人のみです。

墨田区立図書館に登録している人のうち、墨田区在住・在勤・在学の人は、館内の予約機や墨田区立図書館公式ホームページから予約することもできます(予約できるのは当日分のみ)。座席の「予約」と「確保」は違うものだそうで、「確保」は直近の時間帯の使用を申し込むこと、「予約」は先の時間帯の使用を仮押さえすること、と説明するとわかりやすいでしょうか。「予約」をしただけだとあくまでも<仮押さえ>しただけで、実際にその時間帯が来て使用する前に「確保」手続きをすることが必要となります。また、今すぐ空いている席を使いたい場合は、「予約」なしに「確保」すればいいというわけです。

予約席は「3階窓側」「3階内側」「4階窓側」「4階内側」の4エリアに分かれており、エリアの指定はできますが、個別の座席の指定はできません。時間帯は2時間ごとで、「1人1日何回まで」などの制限はありません。予約や確保の操作は、IDとパスワード入力→座席種別(4つのエリアのどれか)指定→登録という流れで取り立てて難しくはないので、くれぐれも「予約」と「確保」を混同しないよう気を付けてください。

3階に8台あるネット閲覧パソコンの利用も、インターネットコーナー手前の予約機で確保するかたち。パソコン利用は「確保」だけで予約はできません。また、予約席は確保の際に印刷されるレシートを座席のホルダーに入れればいいだけですが、ネット閲覧パソコンは確保票に印刷されたパスワードを入力しないと使用できないようになっています。

こうしたシステムは、墨田区では初めての導入であるのものの、他の自治体では同様のものを見かけるのですが、私がひきふね図書館で初めて目にしたものがあります。3,4階にある検索機にICタグ読取装置がついていて、何だろうと思って操作してみたら、図書館の蔵書のICタグを読み込んで、その資料の詳細情報を表示・印刷することができるんです。

表示・印刷の内容としては検索結果として表れたときの詳細情報と同じなのですが、条件を入力して検索でひっかかった資料の内容を詳しく知るための表示・印刷はわかるとして、資料の現物が手元にあるのにその詳細情報を表示・印刷するニーズがどれほどあるのかなという気もします。思いついたところでは、何かの理由で今は読めないけど後で読みたいときのメモ代わりにするとか、ひきふね図書館で館内閲覧になっている資料が他館で貸出できないか調べる、といったところでしょうか。

書架を回って借りる本が決まったら、2階の自動貸出機で手続きします。図書館カードを読み込ませた後に、借りたい本を機械の上に載せれば、本についているICタグを読み込んで貸出処理されます。墨田区のいくつかの館では、ICタグが導入される前からバーコード読取式の自動貸出機を導入していたので、それらをご利用だった方は「本のバーコードを読み込ませる」が「機械に本を乗せてICタグを読み込ませる」に変わったと思えばすんなり使えると思います。

予約資料ルームは、予約した資料を利用者が自分で棚からとって貸出手続きをする仕組みです。予約資料コーナー入口手前左にある機械に自分の図書館カードを読み込ませるとレシートが出てきて、「C-2」といった具合にアルファベットと数字の組み合わせが印刷されています。それが届いている資料が置いてある棚番号になので、予約資料ルームに入って棚番号を手掛かりに自分の予約資料を探し、予約資料コーナー内にある自動貸出機で貸出手続きすれば予約受取が完了です。

ちなみに、こうして借りた本を返す際にも、2階の総合カウンター手前側に返却ボックスに入れればいいだけで、職員さんに手渡しする必要はありません(但し、CD・DVDは返却ボックスではなく、職員さんに手渡しで返却)。従来の職員さんに返す仕組みだと、本の中にメモなどを入れたまま返却しても職員さんがチェックして気付いてくれましたが、利用者が自分で投函する仕組みだと発見されたときには誰のものかわからないので、返却前にそうしたものがないか利用者側が気を付ける必要がありますね。

§ こどもとしょしつ

2階のこどもとしょしつは、他のフロアの半分程度の面積になりますが、それでも十分広い空間。本棚の高さも低いので開放感があり、率直に言って、ひきふね図書館の中で一番居心地がよく、本に親しめる空間です。こどもとしょしつ内にカウンターや自動貸出機もあるので、わざわざ総合カウンター側までいかなくてもこのエリアだけで貸出・返却を済ませることができます。

こどもとしょかん入口には船の形をした本棚があったり、一番奥の「はだしのコーナー」も広々。はだしのコーナーの隣に多目的ルームという部屋があり、多目的ルームとはだしのコーナーを仕切る壁に窓がついているのですが、この窓を舞台、はだしのコーナーを観客席にして人形劇などをできるようにしているのだそうです。観たいお子さんもたくさんいそうだし、この仕掛けを見たら演じる側として参加したくなる大人もいるんじゃないかな。

赤ちゃん連れの方には便利な授乳室もありますし、カウンター向かって右にある除菌BOXで借りる本を除菌することもできます。紫外線をあてて除菌する機械なので、除菌されるのは光があたる表面だけですが、気になる方は利用してみてはいかがでしょうか。

絵本は日本のおはなしと外国のおはなしを別にして、おはなしの作者の姓名五十音順に並んでいます。児童読み物も、著者姓名五十音順に並んでいますが、日本or外国という分類ではなく、中国・韓国のおはなし、アメリカ・イギリスのおはなし…といった具合に、外国作家の本は更に国・地域別に分けたうえで著者姓名五十音順になっています。外国語で書かれた絵本や布絵本などもあるので、広~いこどもとしょしつの中からお気に入りの本を選んでくださいね。

§ 利用者と本をつなげる工夫、求む!

施設としては新しくて広いひきふね図書館ですが、使いやすい図書館かどうかというと、やや首をひねってしまう点もあります。フロアがL字状に長く伸びている3,4階で検索機の場所は片側に集中しており、奥の書架で本を探しているときに検索機が使いたくなったときには、いちいち検索機がある端まで歩かないといけません。借りたい本が決まっている場合は、検索機で場所を調べて、その本棚に行って本を手にして貸出処理へ、で済みますが、調べものなどで、本を読む→それで得たキーワードをもとに更に本を探す…といった具合に資料と検索を繰り返して活用しようとすると、無駄に歩かされてしまう配置になっています。

棚番号も誤解を招きやすくて、3階の棚の番号が301から始まる3桁表示、4階の棚の番号が401から始まる3桁表示になっています。検索機の結果から本を探そうとわかるのですが、図書館の分類記号も基本は3桁、つまり棚番号と分類記号を間違えやすいのです。例えば、探している本を検索機で調べたら請求記号が「303.4」だったとしたら、その請求記号の本がある棚を見ないといけないのですが、棚番号が3桁だと「棚番号が303」のところにあるんじゃないかと勘違いしてしまいそう。この勘違いをしなくても、どの請求記号がどの棚にあたるのかがわかる表示はなく(上に書いた配布版配置図のみ)、検索機で見つけた本のありかを探すのにまた歩かされる…。

これらを解消するためにも、ぜひ配置図を館内のあちこちに貼ったり(これもフロア端だけにあるのでは不十分)、棚側面に請求記号の範囲を載せるなど、表示を工夫して解決して欲しいです。更に言わせてもらえれば、座席予約機と検索機1台の場所を入れ替えれば、検索機を求めてフロアの端まで歩かされる状態が少しは解消できるようにも思います。

とはいえ、開館当時に椅子席がほぼゼロだったのが現在は椅子を設置してくれていたり、その椅子によって棚番号の表示が隠れたので、副次効果的に棚番号と分類記号を間違えにくくなったり、少しずつ改善している気配を感じます。この勢いで、図書館としての肝心要である「本を探す」「本を読む」という機能をもっと強化して欲しい。今後に期待しています。

墨田区立ひきふね図書館 データ

住所東京都墨田区京島1-36-5 2~5階 →Google Mapで見る
Tel03-5655-2350
開館時間
月~土曜こどもとしょしつ9:00~18:00
こどもとしょしつ以外9:00~21:00
日・祝日9:00~17:00
定休日第3木曜(祝日にあたる場合は開館し、翌日休館)
12月29日~1月4日
最寄駅 京成押上線 京成曳舟駅から徒歩3分
東武伊勢崎線東武亀戸線 曳舟駅から徒歩6分
駐輪場建物地下に駐輪場あり。駐輪場入口は建物北東側。自転車91台分、バイク5台分。
駐車場建物東側に有料駐車場への入口あり。一般用駐車場4台、障害者用駐車場1台で、最初の30分間は無料、以後は30分ごとに150円。利用の際は、ひとまず駐車場ゲートの奥に車を停めてからインターホンで職員を呼び出してくださいとのこと。
所蔵資料
図書所蔵数343,425冊(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
CD所蔵数5,330点(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
カセット所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
レコード所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
DVD所蔵数1,464点(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
ビデオ所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『令和4年度 墨田区立図書館事業概要』)
設備
ブックポスト1階のエレベーター向かって左(2階へのエスカレーター向かって左)の壁面にブックポストあり
自動貸出機ICタグ式自動貸出機が、2階一般書架エリアに5台、こどもとしょしつに1台あり
図書の除菌
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PC3階にネット閲覧PC8台あり。利用は30分単位で、次の予約がなければ延長可能。
2階こどもとしょしつ内にネット閲覧PC2台あり。利用は小学生以下のみで、30分単位、次の予約がなければ延長可能。
持参PC利用3,4階の閲覧机で持参PCの使用可能。ティーンズルームを除く3,4階の机席全てに電源あり。
LAN接続館内で専用無線LANの利用可能
飲食設備等
  • 1階に店内飲食もできるベーカリーショップ「オットボン」あり。平日8:00~19:00、日曜祝日8:00~18:00。
  • 2階の一般エリアとこどもとしょしつを繋ぐ通路の端に飲料自販機1台あり
  • 蓋付き容器(ペットボトル・水筒など)の飲料に限り、館内での利用可能
その他設備
  • 2階の総合カウンターを回り込んだ奥にコインロッカー10個あり
  • 3,4階の(カウンターに近い方の)エレベーター出てすぐ左に携帯電話ブースあり
  • 3階にミーティングルームあり。中学生以上で3名以上のグループで、グループの誰かが墨田区立図書館に登録していれば利用可能。部屋の定員は8名で、利用は1時間単位で2時間まで、1グループ1日1回まで。