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北区立滝野川図書館

北区立滝野川図書館 訪問記

last visit:2014/01/18

北区立滝野川図書館は、旧古河公園のそばにある図書館で、北区では中央図書館に次ぎ2番目に蔵書数が多いです。住所としては北区西ヶ原になることから、西ヶ原在住のドナルド・キーン氏や西ヶ原生まれの内田康夫氏のコーナーがあります。

§ 図書館の場所

滝野川図書館の最寄り駅は南北線の西ヶ原駅か京浜東北線の上中里駅。この2駅より少しだけ遠いですが、利便性でいうとJRも地下鉄も通っている駒込駅が便利でしょう。個人的には、平塚神社の敷地に沿って坂を上がるかたちになる上中里駅からの道のりが風情があって好きです。

滝野川会館から「西ヶ原」交差点を挟んだ向こう側にある旧古河庭園も、梅の時期、春・秋のバラの時期、紅葉の季節と、1年中楽しめる庭園で、しかも入園料はたった150円!来園者の少ない平日昼間などは独り占めできるといっても過言ではありません。手前の洋館の周りにはバラ園があって、庭園の奥には池を中心とした日本庭園があるという和洋折衷なところも面白いんですよね。滝野川図書館に行くときに時間があったら旧古河庭園もぜひお薦めです。

§ 図書館内の様子

本題の滝野川図書館は、滝野川会館の地下1階です。建物の本郷通り側に弧状になった地下への階段があり、そこを下ったところの入口から入ると、左先が滝野川図書館エリアです。もちろん、建物1階から入って階段・エレベーターで降りても入れます。ただ、ブックポストが外からの階段を下った地下入口脇にあるので、車椅子の方など階段で降りられない人は建物が閉まった後にブックポストを利用できないかもしれません(または、建物閉館時に1階にブックポストを出したりしているかも)。

図書館エリアに入ると、すぐ右にカウンターがあり、カウンターの裏手が児童コーナー、入口左手から右奥へとカウンターを取り囲むように一般書架が並んでいます。新聞・雑誌コーナーは入口入って左手前にあり、その一画にはパソコン優先席もあります。そして、一般書架の左には閲覧机がずらっと並ぶエリアが配されており、座席は番号が割り振られているので一見申込席かと思いますが、自由に使えます。片側3人ずつ計6人座るタイプの大きい机で、隣の人とは仕切りがありませんが、向かい合う人との間には仕切りがあります。

上の閲覧エリアのうち、新聞・雑誌コーナーに近い付近は中高生優先席、また新聞・雑誌コーナーのうち入口に近い付近には小中学生専用席があります。これら専用席や児童用、パソコン優先席もあわせて、机席の総数が152席。長時間じっくり調べものをするのにも向いている図書館です。

滝野川図書館は、北区では中央図書館に次いで、蔵書数が多い図書館です。といっても、中央図書館の蔵書数は滝野川図書館の約4.5倍なので、1位と2位の差はかなりあるのですが。北区立図書館は、一番大きい中央図書館が北区の中心付近にあり、地域館の中で大きめの滝野川図書館と赤羽図書館が、それぞれ区の南東寄りと北西寄りに配置されている。南東から北西へと斜めに広がるの北区の形に、バランスよく図書館を配置しています。

§ 児童コーナー

カウンターの裏手にある児童コーナーは、入って右に絵本の棚と靴脱ぎスペースがあり、左側の壁沿いの棚に児童読み物、区画の中に配されている棚にちしきの本が並んでいます。小学生向けの雑誌や「たまごクラブ」「ひよこクラブ」といった育児雑誌も、雑誌コーナーではなく児童コーナーにあるので、それらを読みたい方はこちらへどうぞ。

絵本は、日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にして、絵を描いた人の姓名五十音順で並んでいます。児童読み物も著者姓名五十音順に並んでいますが、日本or外国という分類ではなく、中国のおはなし、英米のおはなし…といった具合に、更に国・地域別に分けたうえで著者姓名五十音順になっています。絵本の作者見出しには、その作者の絵を小さくコピーしたものが貼ってあり、棚から絵本を取り出さなくてもその作家がどんな絵を描く人なのかわかるので便利。絵のタッチだけ覚えていて作家名がわからないときにも探しやすいし、好みの作風の絵本を見出しの絵を頼りに探すこともできます。

靴脱ぎスペース向かって左には英語絵本も多数あります。英語の読み聞かせができないという方にも、英語の仕掛け絵本がお薦め。貸出はできず館内閲覧のみですが、ページを開くと飛び出してきたり、ひっぱると動いたりする仕掛けは、言語を問わずに楽しめます。また、最下段に並んでいる、番号が振られた赤テープがついている英語絵本は、カウンターに日本語版を用意しているとのこと。同じ作品の原書と邦訳バージョンを一緒に借りれば、英語の勉強にもなりますね。

布の手触りを楽しんだり、部品を取り外すなどの仕掛け要素がある布絵本も所蔵しており、貸出もできます。布絵本のうち、小さいものは奥の壁中央付近にぶら下げるかたちで収納、大きいものは赤ちゃん絵本の棚上にあるので、ぜひ両方とも手に取ってみてください。

§ 一般書架

一般書架は、分類番号順に何気なく並んでいるようで、実は工夫された配置です。入口から見て奥のやや左寄りに「シルバーコーナー」があり、大活字本や闘病記などが集められているのですが、ちょうどここに接している一般書架の棚が「49 医学」の棚なんです。図書館の通常の分類では闘病記はエッセイに分類されることが多いのですが、この配置のおかげで病気に関する本と闘病記が近くにある。ここは、「くらし家事コーナー」のそばでもあり、完治しないような病気とのつきあいを綴った闘病記もあることを考えると、絶妙な配置という気がします。

「闘病記」コーナーの棚を詳しく見ますと、「がん」「脳」「心臓」「その他」と病気の種類で分類されています。それぞれの項目を見ると、病気に罹ったご本人による手記もあるし、患者さんを支えた家族の方が書いた手記もあるというかたち。著名人の闘病記もあれば、一般人の闘病記もあるので、こうしたさまざまな本のなかから自分の求めている本を選ぶことができます。

パソコン関連の本は、一般的な日本図書分類法では、 ExcelやWordなどのマニュアル本は「007」、インターネット関連は「547」と分類が分かれてしまうのですが、滝野川図書館ではそれらを「パソコン」でひとまとめにして入口入ってすぐ左の棚に並べています。古い時代に作られた分類法では別々になってしまう本を、今の感覚に合わせて一緒にしているのは嬉しい工夫。が、日本図書分類法に沿って並べている一般書架にも少しパソコンの本があるんです。パソコン関連の本を探していいる場合は、まずはこの「パソコン」の棚で探し、これぞというのがなかったら一般書架の「007」「547」の棚も見てみるという探し方がよさそうです。

日本の小説・エッセイは一緒にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に五十音順の並びに入れられています。例えば、小杉健治(コスギ ケンジ)が書いたの本の次に、13人の作家のアンソロジーである『午前零時』(ゴゼンレイジ)という本が並び、その次に五代ゆう(ゴダイ ユウ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国の小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」のように国・地域別に分類したうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。

上で、小説とエッセイが一緒になっていると書きましたが、小説は「913.6」、エッセイは「914.6」とラベルの番号が違うので、「エッセイではなく小説が読みたい」というときなどにはラベルを元に本選びができます。たとえば、群ようこさんのように小説もエッセイも多数書いている方の棚を見ると、小説もエッセイも一緒になって並んでいるわけですが、「今日は群さんの小説が読みたい」という場合は、群さんの著作のうち「913.6」のラベルがついているものを選べばいいというわけです。

また、これは滝野川図書館だけでなく北区立図書館全体で行っている表示ですが、小説本の背に北区のコミュニケーションマーク(桜の花びら3枚で「K」の文字をかたどっている)が貼られているものがあり、このマークがついている小説は作中に北区が登場します。滝野川図書館の蔵書の中では、折原一『倒錯のオブジェ』や畠中恵『いっちばん』、中島京子『小さいおうち』などに北区マークが貼られています。宮尾登美子『蔵』と津本陽『異形の将軍』は上下巻あるうち、上巻のみにシンボルマークが貼られているので、上巻だけに北区が登場するのかな。読む本が決まっていないときには、北区が登場する本を探して読んでみるのもいいですね。

カウンター向かって左奥には、英語の図書がたくさん並んでいます。ジャンルも、小説、パソコンに関する本、哲学、歴史、地理など、幅広い図書を揃えています。英語で書かれた漫画もとても充実しており、『鋼の錬金術師』『よつばと!』『バガボンド』『花より男子』『オトメン』『けいおん!』『美味しんぼ』『NARUTO』『BLEACH』『FAIRY TAIL』『のだめカンタービレ』『ONE PIECE』『ゴルゴ13』『銀魂』『新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画』『ドラゴンボールZ』『クレヨンしんちゃん』『20世紀少年』といった人気漫画がずらり。これらの人気漫画の英訳本があるということは、世界中で日本の漫画が読まれているということであり、滝野川図書館の英語漫画の棚を見ていると世界の書店でこれらが並んでいるところを想像してしまいます。

外国語といえば、カウンターからみて右先の柱には、「ようこそ東京へ」という観光者向けのハンディガイドのいろんな言語のバージョンが並んでいます。日本語版に始まって、中国語の繁体字、中国語の簡体字、ハングル、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語と、全部あわせて8種類。これ、蔵書バーコードが貼ってあるので貸出できるのかと思いきや、残念ながら館内閲覧のみの資料。参考になるところをコピーするなどして活用してください。

ハンディガイドのある柱に接している棚は、地域資料コーナーです。このコーナーにある昔の東京の写真集やタウン誌なども面白いですが、私のお薦めは「ようこそ東京へ」の裏側に掲示されている明治44年の北豊島郡滝野川村の地図と、昭和16年の滝野川区の地図です。上下に並べられている二つの地図を見比べると、明治44年の地図で海軍の火薬製造所だったところが、昭和16年の地図では外語大になっている。その外語大も今は移転してしまってますよね。旧古河庭園も大正6年に作られたと言われているので、昭和16年の地図の方にはあるけど、明治44年の方の地図にはありません。じっくり見比べるのが楽しいです。

資料ではありませんが、ユニークなのが入口入ってすぐ左の「文庫本匿名寄贈箱」。最近出版された、あるいは購入した文庫本は、この箱に入れることで手続きなしで寄贈できるそうです。"最近"というのは、2013年10月時点で「平成18年以降」とのこと。図書館に本を寄贈する場合は、ちょっとした手続き(用紙への記入)などが必要なことが多いですが、こういう箱があると気軽に寄贈できますね。

§ 西ヶ原ゆかりの人物、実在する人もいれば架空の人まで

西ヶ原にある滝野川図書館には、西ヶ原ゆかりの人物のコーナーがいくつかあります。まずは、北区西ヶ原在住で、北区の名誉区民でもあり、北区アンバサダー(大使)でもあるドナルド・キーン氏のコーナー。入口入って左に折り返した、出窓のようになっているところの中央にドナルド・キーン氏の著作を集めているのですが、今更ながらこんなにたくさんの日本語の著作物を出しているのかとびっくり!

キーン氏に関しては、北区中央図書館にキーン氏からの寄贈書を閲覧できる「ドナルド・キーン コレクション」があり、キーン氏の書き込みも見られるということでとても貴重な資料ですが、滝野川図書館というキーン氏がお住まいの地域にある図書館でキーン氏の著作を閲覧・貸出できるというのもまた違う味わい。図書館からみて駒込方面の商店街には喫茶店もあるので、地域の雰囲気にひたりながら読書するのもいいですね。

そして、もう一人の西ヶ原ゆかりの方が、小説家・内田康夫氏。内田氏は、現在のお住まいは長野県軽井沢町だそうですが、西ヶ原のご出身であり、内田氏も北区アンバサダーを務めていらっしゃいます。北区と内田氏が協力して北区内田康夫ミステリー文学賞を創設したり、中央図書館建設前に予定地で行った赤レンガまつりに内田氏を呼んだりと、北区立図書館にいろいろご尽力していただいている方なので、それらのイベントで内田さんにお会いした図書館利用者さんも多いのでは。滝野川図書館では、キーン氏のコーナーのとなりに内田氏のコーナーがあり、著作がずらっと並んでいます。

そして、もう一人の西ヶ原在住の有名人が、内田氏の作品で活躍する名探偵・浅見光彦氏。内田氏の小説で活躍する架空の人物ですが、北区西ヶ原3丁目に住んでいるという設定で、北区では浅見光彦氏の住民票も発行しているんです(浅見光彦住民票は、郵送を通じて購入することも可)。この住民票は内田康夫コーナーの右の壁に貼ってあるので、滝野川図書館にお越しの際はぜひご覧ください。よくみると、住民であることを証明しているだけでなく、名探偵であることも北区から証明されています(笑)。

私は、個人的には浅見光彦のような優男は好きではないのですが(フィクションの世界で選ぶなら、ゴルゴ13のような、超硬派?が好みです 笑)、毎年5月に行う「名探偵★浅見光彦の住む街ミステリーウォーク」(謎が記されたミステリー手帖を片手に、周辺の街角や商店街店先などにあるヒントを探し歩き、謎を解くというもの)のようなものは好き。このイベントの際には、滝野川図書館もミステリー手帖の配布場所になっています。

そういうイベントがないときも、滝野川図書館から西ヶ原駅へ向かえば、浅見光彦シリーズでおなじみの平塚亭(和菓子屋)や平塚神社の前を通るので、浅見光彦ファンはもちろん、食いしん坊の方にもお薦めです(笑)。滝野川図書館利用の後に周辺散策するもよし、浅見光彦散歩の際の休憩地点として内田さんの著作を手に取るもよし。滝野川図書館と同じフロアにある喫茶店「けやき」では、巣鴨や王子までカバーした名所周遊イラストマップを販売しているので、それも参考になるかも。図書館も西ヶ原地域もともに楽しんでください!

北区立滝野川図書館 データ

住所東京都北区西ヶ原1-23-3 滝野川会館地下1階 →Google Mapで見る
Tel03-3910-9092
開館時間
火~土曜9:00~20:00
日曜、祝日、12月28日9:00~17:00
定休日月曜
3,12月を除く毎月第4木曜(祝日の場合は開館し、翌日休館)
3月31日(土・日・月曜の場合は直前金曜休館)
12月29日~1月4日
最寄駅 JR京浜東北線 上中里駅から徒歩8分
東京メトロ南北線 西ヶ原駅から徒歩8分
東京メトロ南北線JR山手線 駒込駅から徒歩12分
駐輪場建物西側(西ヶ原側)に駐輪場あり
駐車場建物地下に一般用駐車場40台分あり。入口は1階建物入口向かって右にあり。利用料金は30分毎150円。
所蔵資料
図書所蔵数119,713冊(2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』)
CD所蔵数8,849点(2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』※北区図書館共通資料(所蔵館がない資料で、返却された館の書架に配架される)の数字は、各館の所蔵数に比例するよう配分して加算
カセット所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』)
DVD所蔵数238点(2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』)
ビデオ所蔵数なし(2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』)
設備
ブックポスト建物地下入口向かって左の壁面にブックポストあり
自動貸出機なし
音声試聴設備CD試聴・ビデオ視聴兼用機3台、CD試聴機1台あり
映像視聴設備CD試聴・ビデオ視聴兼用機3台あり
ネット閲覧PCカウンター向かって左の試聴機の並びにネット閲覧PC2台あり。利用は1回30分、次に待っている人がいなければもう30分使用可能。
持参PC利用新聞・雑誌コーナーの奥にパソコン優先席(6席)あり。電源あり。
LAN接続なし
飲食設備等
  • 建物地下1階にレストラン・喫茶「けやき」あり。営業は10:00~18:00。
  • 建物1階エレベーターから見て右先に飲料自販機2台あり