北区立赤羽図書館
北区立赤羽図書館 訪問記
北区立赤羽図書館は、赤羽駅の近くにある赤羽会館内の図書館。北区立図書館の中では中央図書館に次いで二番目に施設面積が広く、天井が高い児童エリアや閲覧席は開放的です。
赤羽図書館は赤羽駅から徒歩5分の赤羽会館の中にあります。南北線の赤羽岩淵駅や志茂駅からも歩いていける距離です。赤羽会館のすぐそばには西友もあり、買物のついでに図書館に来る人も多そう。周辺住民にとって生活圏内にある便利な立地といえそうです。
赤羽会館の5階全体が図書館エリアになっており、まず階段・エレベーターから右に進んだところが新聞・雑誌エリア。そこを左に曲がると、右手にカウンター、左手に児童エリアがあり、更に進むと右に書架、左に閲覧室があります。エリア分けがきっちりされた配置で、それぞれのエリアが広く、蔵書も閲覧席数も多いです。
北区で一番大きい中央図書館は、北区立図書館の中心であるだけでなく、北西から南東に細長いかたちを作る北区の真ん中付近にあります。そして、地域館のなかでも北西部の真ん中にある赤羽図書館と南東部にある滝野川図書館が、他の地域館よりも規模が大きい。「大きい中央館と小さな地域館」という二層構造ではなく、「大きい中央館、中程度のエリア基幹館、小さな地域館」という三層構造のようなかたちになっていて、赤羽図書館はその中程度の図書館というわけです。
児童コーナーは階段を数段下がる構造になっています。スロープもあるので、小さいお子さんはそちらで降りた方が安全かもしれません。赤羽図書館は2014(平成26)年から翌年にかけて約1年間休館して改修工事をしたのですが、改修前には靴を脱いであがれるスペースがあったのが、改修後にはなくなってしまいました。図書館の児童エリアにあるこうしたスペースは、絵本を手で持てない小さい子どもも床に広げて楽しめるので、なくなってしまったのは残念です。
絵本は、日本人作家と外国人作家を分けたうえで、絵を描いた人の姓名五十音順で並んでいます。児童読み物も著者姓名五十音順に並んでいますが、日本or外国という2分類ではなく、アジアのおはなし、アメリカ・イギリスのおはなし、ドイツ・スイス・オーストリアのおはなし…といったように、外国を更に国・地域別に分けたうえで著者姓名五十音順になっています。
児童エリアへの階段下がって右手前の棚には、英語絵本がたくさん。実は英語絵本は、一般書架の外国語図書の棚にもたくさんあり、児童エリアにあるのが赤ちゃん向け絵本と小さな仕掛け絵本、外国語図書の棚にあるのがそれ以外の絵本となっています。収納の都合などもあると思いますが、英語絵本が2つに分かれてしまっているのはわかりにくく、利用もされにくくなるように思うので、どうにか工夫してもらえたらと思います。
一般書架は椅子席がほんの少しある程度で、書棚がずらりと並んでいます。以前は、書架の中にソファ席があったのですが、今は書架エリアには全く座席がないので、ちょっと読みたいときには立ち読みするか、閲覧席エリアまで行って席を探すかしないといけません。
日本の小説・エッセイは一緒にして、著者姓名の五十音順に並んでいます。但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に五十音順の並びに入れられています。例えば、鳥越碧(トリゴエ ミドリ)が書いたの本の隣に、3人の作家のアンソロジーである『TROIS』(トロワ)という本が並び、その隣に内藤みか(ナイトウ ミカ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国の小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」のように国・地域別に分類したうえで、著者姓名の五十音順に並んでいます。
小説とエッセイが一緒になっていると書きましたが、同じ棚に並んでいるものの、小説は「913.6」、エッセイは「914.6」と分類記号が違うので、「エッセイではなく小説が読みたい」というときなどにはラベルを元に本選びができます。たとえば、群ようこさんのように小説もエッセイも多数書いている方の棚を見ると、小説もエッセイも一緒になって並んでいるわけですが、「今日は群さんの小説が読みたい」という場合は、群さんの著作のうち「913.6」のラベルがついているものを選べばいいというわけです。
ちょっとした工夫として嬉しいのは、いくつかの文学全集の本の背に収録作品を書いたラベルを貼っていること。全集は、索引・目次だけで1巻をなしているものもあれば、そうでないものもあり、慣れていないとどの作品がどの巻に収録されているのかわかりにくいのですが、こうして本の背に収録作を示してくれると、棚に入った状態のままでどの本にどの作品が収録されているのかがわかります。
また、これは赤羽図書館だけでなく北区立図書館全体で行っている表示ですが、本の背に北区のコミュニケーションマーク(桜の花びら3枚で「K」の文字をかたどっている)が貼られているものがあり、このマークがついている本は作中に北区が登場します。赤羽図書館の蔵書の中では、奥田英明『空中ブランコ』などの小説のほか、『東京坂道散歩―坂道上れば昭和がみえた
』『東京「夜」散歩―奇所、名所、懐所の「暗闇伝説」
』といった東京の地理・紀行などの本にも北区マークが貼られています。「北区」が登場する本のリストを見ると、どの本のどの辺りに北区が登場するのかが書いてありますが、自分で読んで見つけるのも楽しく、この本を借りると決めずに北区立図書館に行くと、ついつい北区マークの本に手が伸びます。
外国語図書も多いです。中国語・英語・ドイツ語・フランス語の図書がありますが、特に英語図書はジャンルも幅広く、政治家の自伝、実用書、小説などいろいろ。小説は、三島、太宰、漱石などの「英訳された日本人作家の小説」と、「英米の作家が書いた小説の原書」が分類されて並んでいます。また、「名探偵コナン」「ひかるの碁」「リアル」などの漫画作品の英訳本も充実しており、英語を勉強したい日本人や外国人在住者にとっては、フィクション作品を楽しめるラインナップとなっています。
一般的な図書館の分類では、同じパソコン関連の本でも、 WordやExcelの使い方に関する本は「007 情報科学」、ツイッターやFacebookなどのネット上のサービスの使い方に関する本は「547 通信工学」に入ってしまい、わかりにくいのですが、赤羽図書館ではそれらをまとめて、閲覧席エリアへの階段向かって右の「パソコン関連図書」コーナーにまとめています。検索機で探したときに分類記号の先頭に"P"がついている本は「パソコン関連図書」コーナーにあるので、ご注意ください。
また、棚を見ている限りではわかりにくいですが、DVDの館内閲覧・貸出もあります。カウンターに所蔵DVDのパッケージをコピーしてファイルがあるので、利用したいときには職員さんにそのファイルを見せてもらってください。館内閲覧はカウンターを左に回り込んだ壁際の視聴機で見るかたち、借りる場合は1週間借りられます。私も先日利用しましたが、DVDのパッケージコピーだと出演者やあらすじなども載っているので、選ぶのに便利。外国映画もありますが、松本清張作品を映画化したものなど、昭和の渋い日本映画の方が目立つラインナップでした。
閲覧席エリアにも棚があり、中高生コーナーや漫画本、辞典類がこちらにあります。閲覧席にも中高生専用席があります。
外国語の絵本は児童コーナーと一般書架の外国語図書の棚と両方に置いてあります。外国語図書の棚の最下段が絵本になっていて、そちらの方が冊数も多いですが、児童コーナーの外国語絵本は靴を脱いで上がれるスペースの中にあるので、お子さん連れかどうかなどに応じて両者をうまく利用してくださいね。
そして、閲覧室。ここも児童コーナーと同様、数段下がったところに、机がずらりと100席分以上並んでいて、一般書架からだと見下ろすような形になっていて圧巻。一番奥にパソコン優先席もあるのですが、それも12席と他の図書館と比べて多いです。
ここは大きい机に6人や4人で座る形になっているのですが、6人(両側に3人ずつ)だとちょっときついですね。そういえば新聞閲覧用の机も同じように片側2.5席分のところに3席座る形でした。もうちょっとゆったり座りたいけど、こう座らないといけないくらい利用者数はいる感じ。利用者数が多い図書館はこういう点は悩ましいですね。
さて、この赤羽図書館、注意事項等の掲示がなかなかユニークで、私はかなり気に入ってしまいました。
雑誌コーナーでは、他の図書館でもよくあるように切り抜きの被害にあいやすい雑誌の最新号がカウンター保存になっているのですが、そういった雑誌の棚にある文言「最新号はカウンターにあります。ご利用の際はカウンターの職員にお申し出ください。」とあるところに後付けで「気軽に」という文字を付け足してあるのです。この「気軽に」はカウンターの最新号保存棚にも書かれていて、本当に気軽に来てくださいね~って感じが伝わってくる。カウンターってあまり図書館を利用しない方は行きづらい気もすると思うのですが、ここまで言われたら気軽に行ってみたくもなりますね。
そして一番気に入ったのは、閲覧席手前に書いてあった注意書き。「異臭がするとの苦情が寄せられています。恐れ入りますが、お心当たりのある方は、シャワー等済ませてから、再度ご来館くださるようお願いいたします。」(これは2006/7/7訪問時の文言で、現在は同じ趣旨ですが文言は変わっています)
図書館の利用者に関する懸案事項の一つとしてホームレス等の利用がありますね。異臭がする方の近くで本を読むのはいい気分はしませんが、だからといって簡単に来るなとは言えない。どの程度の臭いがよくて、どの程度でダメかという判断もさることながら、日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」にも「すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。」という一文があります。そんな差別を図書館自ら行うようなことがあっていいはずがない。
しかし、実際問題として他の利用者が異臭で迷惑しており、その人のために他の方の利用に支障があるのを放っておくわけにもいかない。だから、多くの図書館では、注意書きや女性専用席の設置などで、ホームレスが利用しづらい雰囲気を作っています。暗に来ないでくれと言う感じで。
でも、赤羽図書館は来ないでくれなんてことは言わないんですよ。周囲に気を遣った姿でまた来てね、って言っているの。これってすごくいいと思いませんか?私はもともと、選書のセンスがいいなぁと北区立図書館がお気に入りだったのですが、これを読んでますますファンになってしまいましたよ。
異臭はともかく、携帯の音などついうっかり周囲に迷惑を掛けてしまう可能性なら誰にでもありますよね。ちょっとの気配りで自分も周りも気持ちよく利用できる空間を皆で作りましょう!
北区立赤羽図書館 データ
住所 | 東京都北区赤羽南1-13-1 赤羽会館5階 →Google Mapで見る | ||||
Tel | 03-3901-1992 | ||||
開館時間 |
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定休日 | 月曜 3,12月を除く第4木曜(祝休日の場合は開館し、直後の平日を休館) 3月31日(土・日曜の場合は開館し、直前の金曜を休館。月曜の場合は、直前の金曜も休館) 12月29日~1月4日 | ||||
最寄駅 |
東京メトロ南北線 志茂駅から徒歩14分
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駐輪場 | 建物西側(赤羽消防署側)に駐輪場あり | ||||
駐車場 | 建物地下に駐車場33台分あり。利用は8:15~22:15で、30分ごとに150円。駐車場入口は建物南側(赤羽郵便局に面している側)にあります。 | ||||
所蔵資料 | |||||
図書所蔵数 | 121,971冊 2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』 | ||||
CD所蔵数 | 4,542点 2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』、北区図書館共通資料(所蔵館がない資料で、返却された館の書架に配架される)の数字は、各館の所蔵数に比例するよう配分して加算 | ||||
カセット所蔵数 | なし 2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』 | ||||
DVD所蔵数 | 100点 2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』 | ||||
ビデオ所蔵数 | なし 2023/03/31現在、出典『北区の図書館 令和5年度』 | ||||
設備 | |||||
ブックポスト | 赤羽会館北側(SEIYU側)入口の両脇にも薄緑色の箱型ブックポストあり。開館中の使用については明記なし。 | ||||
自動貸出機 | なし | ||||
自動返却機 | なし | ||||
セルフ予約受取 | なし | ||||
音声試聴設備 | CD試聴機1台あり。利用は1人1日1回15分程度。 | ||||
映像視聴設備 | DVD視聴機1台あり。利用は1人1日1タイトルまで。 | ||||
ネット閲覧PC | カウンター前にネット閲覧PC2台あり。利用は1日1回30分、次に待っている人がいなければもう30分利用可能。 | ||||
持参PC利用 | パソコン優先席(12席)で持参PCの利用可能。電源あり。 | ||||
LAN接続 | なし | ||||
飲食設備等 |
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