「みんなの日本文学」&「ビジネスの計画力、実行力を強化しよう!」
visit:2008/06/11
方南図書館、2008年6月の特集は「みんなの日本文学」、そして「ビジネスの計画力、実行力を強化しよう!」です。
まずは、一般書架入ってすぐのミニ特集コーナー「方南図書探偵団!」の「ビジネスの計画力、実行力を強化しよう!」から。と言いたいところですが、毎回20~30冊ピックアップして補充はしないしくみのこのコーナー、6月11日にして取り上げた本全て貸出中!ついでに、その隣にある新着図書コーナーも全て貸出中でした。この特集コーナーは毎回人気があって、月の初めに行っても貸出中の本が多いのですが、1冊もないというのは初めて見たように思います。今回のテーマ、それほどニーズがあるんですね。
実際の本が1冊もなくても、取り上げた本の表紙コピーと資料請求番号が展示してあるので、それをもとに本を予約することができます。コーナーを見ると『「計画力」を強くする』『一流の行動力』など、バリバリ仕事をしそうなタイトルの本が並んでいます。そんな中、気になったのが『始業前に「昨日の仕事」をすます人が成功する』という本。昨日の仕事を始業前にするってことは、昨日の仕事が昨日のうちに終わっていないってことですよね。それで本当に成功するのでしょうか(笑)。参考にするためというより、どういう意味でこんなことを書いているのか、ちょっと読んでみたいです。
『女は見た目が100パーセント』『デキる!男の「見た目」塾』といった本も取り上げられていて、まあ100パーセントは言い過ぎとしても、見た目って侮れないですよね。実はこの日、前月の特集を担当なさった職員さんに声を掛けていただいたのですが(閉館間際であまりお話できませんでしたが、ありがとうございます!)、私は普段は方南図書館に来ても特別ご挨拶させていただくこともなく利用している(前に図書館だより「方南BOOKステーション」のバックナンバーをいただいたときにお話した職員さん以外は私のことをご存じないかと思っていたこともあって)ので、かなり適当な格好をしていたんですよ(笑)。一緒に洗濯したものの色が移った服着てて(一応、そんなに目立ってはいないと思うんだけど…)。お馴染みの図書館に行くにも、せめてもうちょっとマシな格好をしようと思ったこの日の出来事でした。って、これは次元が低すぎか(笑)。
今号の「方南BOOKステーション」の同名の特集ページにはセレンディピティの話が書いてあって、これも面白いです。セレンディピティとは、Wikipediaを引用すると「何かを探している時に、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力・才能を指す言葉」だそうですが、確かに同じものを見ていても何も感じずに流してしまう人と、あれ?と考える人といると思います。私もいろんなものを見逃していそうだなあ。
それとはちょっと違うけど、私が最近心掛けているのは、「そんなことできないよ」と思っちゃったことに対して、もう一度「本当にできない?」と考えるようにしていること。できないと判断した根拠が何かしら変化すれば、判断結果も変わる可能性ありますもんね。このサイトに関してだったら、先日「何で23区以外の都内の図書館は回らないのか」というメールをいただいて、私も未熟者ですので最初は「どんなに大変か考えずに気軽に言ってくれるよな」と思ってしまったのですが、今は何かしら実現する方法を考えてみています。ただ、このサイトの情報は、一度訪問して終わりではなく、できる限り現状を追っていきたいので(と言っても、既に現状と合致していない古い訪問記が散在していますが)、今を追いつつ対象を広げるというのをどうやって実現するかが課題ですね。
それはさておき、書架奥の大きい特集コーナーの方は『みんなの日本文学』。図書館の図書で一番利用が多いのは小説・エッセイなどの読み物だと思うのですが、今回のテーマは図書分類番号900番台で小説・エッセイ以外の本。それを「スター(人気実力兼備の文豪)」「女性(文学はいつも女性のそばに)」「笑い(伝統あるマイナー)」「ヴァラエティ(広がる文学の世界)」というキーワードで紹介しています。
「スター(人気実力兼備の文豪)」は、夏目漱石や村上春樹に関する本など。「人気実力兼備の文豪」って書かれちゃうと、人気だけで実力がない文豪もいるみたいですね、な~んて意地悪なこと言ったりして(笑)。柴門ふみの『恋する文豪』という本も、柴門ふみが「舞姫」「痴人の愛」「不如帰」などの作品を斬りたいように斬っています。言い方を変えると、人気漫画家がツッコミを入れるという体裁で、文学作品のあらすじを読めてしまうという本でもありますね。お目当ての本が決まっているわけではないけど何か読もうと思っているときは、900番台の棚でこういういろんな作品のあらすじがさっとわかる本を読んで、面白そうな本を探すというやり方もいいかもしれません。
「女性(文学はいつも女性のそばに)」は紫式部、樋口一葉など古典の女性が多く取り上げられていました。そういえば、2006年にリニューアルされた台東区の一葉記念館ってまだ行っていないんだった。今の建物を建てている間、台東区立中央図書館のある台東区生涯学習センターの一室に一葉記念館が一時移転していたのですが、そこに行ったときに職員さんが「お札になったおかげで注目されて、館をリニューアルする予算もできた」とご機嫌だったのがとても印象に残っているのです(笑)。古い作品は文体なんかもとっつきにくいけど、『一葉のきもの』『紫式部―人と文学』のような、作家を取り上げた本を読むと親近感が湧いてきて読みやすくなるかな。
「ヴァラエティ(広がる文学の世界)」は『作家の値うち』『小説修業』『あの名作の舞台―文学に描かれた東京世田谷百年物語』など。『あの名作の舞台』が面白そうと思って手に取ったのですが、これは著者が世田谷文学館で、世田谷文学館の常設展をピックアップして本にしたんですね。持ち歩けるという利点はあるけど、内容は実際の常設展の方が面白い、ってのは当然か。
特集コーナーには、同じく文学散歩の本で『東京の文学風景を歩く』という本があって、こちらの方が断然面白かったです。東は深川・千住、西は三鷹・玉川上水付近までのいろいろな地域を取り上げていて、文章も行けばわかるようなことは簡単に触れる程度、それより作家の人物像、その場所で何があったか、ゆかりの作品の詳細などにたくさん触れているので、知っている場所についての文章も知らない場所についての文章も楽しめました。
残る「笑い(伝統あるマイナー)」は、私自身は手に取らない狂言の本や狂歌の本が並んでいました。狂言の本は、正直に言うと手に取ったもののやっぱりとっつきにくくて、また棚に戻してしまったのですが(苦笑)、狂歌ならどうにかわかる。特に『蜀山人 狂歌ばなし』は、落語家の著者、春風亭栄枝の文章が楽しいので、借りてしまいました。この本を読んでいると、落語と狂歌って近いものがある気がしますね。落語をすごく短くしたのが狂歌みたいな。
今号の「方南BOOKステーション」に「900番台:文学の棚を眺めていると、単なる解説、評論書の域にとどまらない魅力を持った本があることに気が付きます」とあるのですが、こうして見ると本当にそうですね。これらの本は、図書館で小説・エッセイの隣に続けて置かれていることが多いので、そうした読み物を中心に図書館を利用している方も、たまには隣の棚まではみ出して本を探してみるのはいかがでしょうか。