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台東区立中央図書館

台東区立中央図書館 訪問記

last visit:2014/02/13

台東区立中央図書館は、合羽橋商店街の北の端にある図書館。もともと地域資料がとても充実していたのに加え、2012年11月からは浅草文庫コーナーも開設されました。また、1階の「池波正太郎記念文庫」では、台東区出身の池波正太郎の自筆原稿、絵画、復元された書斎なども展示しています。

§ 図書館の場所

台東区立中央図書館は、位置としては浅草寺や花やしきから500mほど北西に行ったあたり。最寄駅でいうと、つくばエクスプレスの浅草駅と日比谷線の入谷駅の中間あたりにあります。

飲食店で働いている人などにとっては、かっぱ橋道具街の北端と言うとわかりやすいでしょうか。かっぱ橋道具街というと業者向けの商店街と思うかもしれませんが、普通に小売りもしているんですよね。店を覗くだけでも楽しいし、土日はかなり賑わっています。もう少し足を伸ばせば浅草散歩もでき、それもお薦め。台東区中央図書館は毎年年始は1月3日からオープンしているのですが、その日はやっぱりお参りの後に図書館に来た風の人もちらほら見かけます。

§ 図書館内の様子

地下1階から6階まである台東区生涯学習センターのうち、1階の大部分と2階の2/3程度が台東区立中央図書館です。各階の配置は、1階が児童エリア、一般書架、新聞・雑誌コーナー、2階が中高生コーナー、CD・ビデオ・DVD、地域資料コーナーです。

1階の一般書架エリア入った左には「池波正太郎記念文庫」があります。文庫といっても貸出できる資料があるのではなく、浅草生まれの池波さんに関する貴重資料の展示や閲覧のみができる書籍を並べている施設で、言わば池波正太郎記念館のようなものが区立図書館の中にあるようなかたちです。池波さんは東京市浅草区(現台東区)生まれなんですよね。図書館と一続きになっていて無料で入れるのも嬉しいし、展示をみて読みたくなった本を図書館で借りることもできていいですね。

§ 児童エリア

1階の設備のうち児童エリアだけは離れた区画にあり、児童エリアとそれ以外の区画は貸出手続きなしに本を持ち出すことはできません。児童エリアは低い棚が並ぶ開放的な空間で、手前に読みものやちしきの本、奥に絵本があり、右奥には靴を脱いであがれるコーナーがあります。児童エリアらしい賑やかな飾りつけはあまりありませんが、窓際の棚上に絵本が表紙を見せて並んでいて、この区画に彩りを与えています。たくさん本を借りる場合は、入口入って左に本を入れる小さなカゴ(スーパーマーケットのカゴの子ども版みたいなもの)があるので、ぜひお子さん自らそれに入れてカウンターまでどうぞ。

絵本は、日本のおはなしと外国のおはなしを別にして、それぞれ絵を描いた人の姓名の五十音順に並んでいます。児童読みものも著者姓名の五十音順に並んでいますが、日本 or 外国という2つの分類ではなく、アジアのおはなし、アメリカ・イギリスのおはなしといった具合に、国・地域別に分けたうえでの姓名五十音順です。読みものの棚の中で、シリーズもの読みものが入っているところには、そのシリーズの全タイトル名とその所蔵場所(当館 or 閉架 or 他館)を記した紙をクリアホルダーに入れて棚に差しています。クリアホルダーが本より手前に飛び出しているので見出し代わりにもなっているし、この表を見ればそのシリーズが全部で何冊あって、どんなタイトルなのかもわかっていいですよね。

また、児童エリアといっても子ども向け資料だけでなく、例えば雑誌ラックには「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などの親御さん向けの雑誌や「日本児童文学」といった雑誌もあります。ただ、平日・土曜は一般エリアが20時まで開いているところ、児童エリアは18時で閉まってしまうので、これら児童エリアにある大人向け資料を利用する方は気をつけてください。

面白いと思ったのが、奥の絵本の棚。板が抜けているところがあって、子どもなら充分、大人でも這っていけば(笑)向こう側にくぐれるようになっています。デザイン的な遊びですね。また、読み聞かせコーナー寄りの地球儀のある棚には、しかけ絵本や点字絵本など、立体的に楽しめる絵本が集まっています。点字絵本を特別な場所に分けておくのではなく、しかけ絵本のそばにこうして置くと、子どもたちがいい意味で垣根なく点字というものを理解できそうです。

§ 一般書架

1階の一般書架エリア側も広く、中央館だけあって全てのジャンルの資料が充実しています。中でも地域にちなんだ資料は多く、地域資料は2階に集められているのですが、1階でも例えば大衆演芸の棚は浅草との関係が深いせいか所蔵数が多いように感じます。また、上で池波正太郎記念文庫があると紹介しましたが、図書館エリアでも小説の書架に池波正太郎コーナーがあり、漫画の棚にも池波正太郎コーナーがあり、2階のDVDの棚にも池波正太郎コーナーがあり…と、館内のあらゆるところに池波さんが出没しています(笑)。

日本の小説とエッセイは一緒になって、著者名の姓の頭2文字+名の頭1文字を五十音順に並べてます。例えば、黒岩研(クロイワ ケン)なら「クロケ」、黒川鍾信(クロカワ アツノブ)なら「クロア」、黒須紀一郎(クロス キイチロウ)なら「クロキ」となり、その3文字が五十音順になるように並べてあるので、黒川鍾信→黒岩研→黒須紀一郎という順になるんですね。単純な名前の五十音順とは少し違うのでご注意ください。また、複数の作家の作品集は書名の頭文字で分類され、一人の著者の本より前に並んでいます。小説の「ク」の棚に行くと、最初に書名が「ク」で始まる作品集があり、その後、上に書いたような順で、分類記号が「ク○○」となる作家の本が並ぶという形です。

外国の小説は、「東洋文学」「英米文学」「ドイツ文学」といった形で国・地域別に分類した上で、それぞれの中で著者の姓名の五十音順。こちらは日本の小説と違って、姓2文字+名1文字のようなことはなく、純粋に姓名の五十音順です。

広い一般書架ですが、気軽に座れる椅子席がないのがちょっと難点。新聞・雑誌コーナーには椅子がありますが、書架の奥の方からはかなり離れているし、利用者が多く混雑しています。一般書架窓際に並ぶ机席はカウンターに申し込む必要のある席で、区切られた時間帯で利用する仕組みになっています。ある程度の時間を過ごすならこちらに申し込んだ方がいいですが、こちらも埋まっていることが多いので、利用したい場合は本を探す前に座席を先に申し込むなどするのがいいと思います。

ちなみに座席でのパソコン利用については、以前は持参PC利用席のためのビジネスルームが2階にあったのですが、震災以降の節電対策(その部屋を別途空調管理する電気を節約する)で現在は書庫になっており、その代わりに2階の視聴覚資料コーナーと郷土資料コーナーにPC利用席を設置しています。利用するにはカウンターへの申込が必要で、3時間ごとの時間枠(9時から12時まで、12時から15時までといった具合)での利用になります。また、地域資料コーナーの中にネット閲覧PCも6台設置されていて、こちらは1人1時間以内の利用となっています。

§ 外国語資料

外国語の資料も、雑誌や図書が充実しています。外国語雑誌は過半数が英語の雑誌で、残りの大部分はイタリア語のファッション誌です。外国語資料の過半数が英語というのは、どの図書館でも大抵そうですし、実際にそれだけのニーズもありそうなので納得なのですが、それに次ぐイタリア語雑誌の多さはかなり珍しいです。しかもそのイタリア語雑誌は全てファッション誌。率直にいうと偏りすぎという印象さえ受けるのですが、何か理由があるのでしょうか。

外国語図書は、大半を占める英語図書に加えて、中国語・ハングル・ドイツ語・フランス語・スペイン語・ロシア語などがあります。英語の一般書は、図書分類に応じて見出しをつけて並んでいますし、英語の小説も、トム・クランシー、アガサ・クリスティ、パトリシア・コーンウェル、スー・グラフトンなどの人気作家には見出しがついているくらいです。

§ 日本で最初に導入されたCD・DVDケースロック対応自動貸出機

近年、職員さんの手を介さずに利用者が自ら貸出・返却・予約受取ができる仕組みを導入する図書館が増えていますが、台東区立中央図書館もそうした設備を導入していますが、そのうちの自動貸出機は他の自治体で導入されている機器よりやや大きめ。というのも、CD・DVDの貸出に関する新機能を備えており、この仕組みを導入したのは台東区立中央図書館が最初なのです。

図書の貸出に関して、書籍にICタグを取り付け、自動貸出機の上に乗せるICタグと情報をやりとりして貸出処理をするというのは、他の図書館で使われている自動貸出機の大勢と同様の仕組み。このICタグを視聴覚資料に取り付けば同じことができ、そうしている図書館も少なくありませんが、ICタグは薄いとはいえ多少の出っ張りがあるので、CD・DVDを再生するときに傷つく可能性があります。利用者にとっても再生機側が傷付く可能性があるし、何より図書館のCD・DVDはレンタル用で一般販売用より高いので、もしICタグを傷つけて弁償することになったらその金額も高い。一度CD・DVDに貼り付けたICタグは剥がれないので、ICタグだけが傷ついたとしてもCD・DVDごと弁償することになってしまい、実際に弁償で揉めるケースもあると聞きます。

で、そうした問題を避けるために台東区中央図書館に導入された新方式は、CD・DVDそのものではなく、CD・DVDケースにICタグを取り付ける方式。仕組みを説明すると、図書館の棚に並んでいるときにはCD・DVDケースがロックされていて開けられず、自動貸出機での貸出処理の過程でロックが解除されます。台東区立中央図書館で2011年11月から導入されたこの仕組み、現在、都内では立川区立中央図書館でも導入されています。

このCD・DVDの自動貸出に対応しているのは1階の予約コーナー内の1台と2階の2台の自動貸出機で、この3台には右に何やら長い溝があります。借りたいものを自動貸出機に乗せたとき、その中にCD・DVDが含まれていると、「この資料を溝に通してください」というメッセージが出ます。言われた通り溝にケースを通すとあら不思議、今までロックされていたケースが解除され開けるようになっています。

このケース通しは意外とコツがいるようで、私は何度も失敗しました(笑)。溝の上から下に向かって通すのですが、上に入れるときにしっかり底をつけないとエラーになってしまうようです。もう一つ難点を挙げるとしたら、ライナーノーツもケースの中に収められているので、解説文を読んで借りるものを選ぶということができない点ですね。

逆に、いい点を挙げると、上に書いた破損や高額賠償を避けられるメリットがあるほか、やや幅広の同一ケースに統一されるので、棚を見るときにタイトルが見やすい。特にCDは市販のケースのままだと、細いスペースに細かい字でタイトル・アーティスト名が書かれていて見づらいですが、このケースに変わってからはぐっと探しやすくなりました。総合的にも、高額弁償の危険をはらんだ「CD・DVD表面へのICタグ取り付け方式」よりは、台東区立図書館のような「ケースへのICタグ取り付け方式」の方が安心して利用でき、ぜひ多くの図書館に広まって欲しいです。

他のセルフ化設備もご紹介しておくと、自動返却機は1階一般エリアカウンターにあるブックポストのようなものです。この中に入れられた資料のICタグを読み取って、自動的に返却処理するようになっており、利用者としてはブックポストと同様に資料を入れるだけです。職員さんが返却処理をしない分、うっかり大事なものを挟んで返してしまっても気が付いてもらえないので、投函前に自分で何か挟んでないかの確認をすることもお忘れなく。また、自動返却機に入れられるのは図書や雑誌のみで、CD・DVDなどの視聴覚資料は従来通りカウンターで職員さんに渡して返却処理をします。

予約コーナーは、1階一般エリアカウンター向かって右の小部屋。棚に並んだ取り置き資料の中から、自分が予約したものを探して、自分で貸出手続します。自分で探さなければならないのが面倒でもありますが、悩み事に関する本など、他人に見られたくない本を借りるときなどはこちらの方が気兼ねなく予約できますね。

予約コーナー利用の際には、まず予約コーナー手前左にある機械に自分の図書館カードを読み込ませます。すると、届いている資料の名前と場所が表示されます。場所は「A-2」といった具合に、アルファベットと数字の組み合わせです。表示されたものを覚えて予約コーナーの中に入ってもいいし、必要ならば図書館カードに印刷することもできます。

予約コーナーの周囲には棚が並んでおり、アルファベット+数字のラベルが貼られているので、それを手掛かりに自分の予約資料の場所を探します。アルファベットが棚の縦列を示していて、入って右から反時計周りにAから順に並んでおり、数字が上から何段目かを示しているという単純な区分けなので、すぐ見つかると思います。資料が見つかったら予約コーナー内の自動貸出機で貸出処理をすれば、予約受取が完了。手続自体は大して難しくないけど、予約コーナー内に自動貸出機が1台しかないので、他に待っている利用者がいると早くしなきゃとあせっちゃうかも。

§ リライト式図書館カード

予約コーナーの説明で「図書館カードに印刷することもできます」と書きましたが、台東区中央図書館では検索機での検索結果印刷なども紙ではなく図書館カードにするんです。中央図書館で自動貸出機、自動返却機、予約コーナーが導入されるにともなって、その少し前から台東区立図書館全体で、図書館カードがリライト式に変更したんですね。で、それまでは貸出の際に貸出資料のタイトルと返却期限が印刷された貸出票が渡されていましたが、その内容が図書館カードに印刷されるようになりました。ミスタードーナツのポイントカードって、その時点でのポイント数を毎回磁気印刷しますよね。あんな感じのカードで、ちょうど色もミスドのカードっぽいです(笑)。

中央図書館以外の台東区立図書館では、そのように貸出情報が図書館カードに印刷されるだけですが、中央図書館では、予約コーナーの資料の場所や、検索機の印刷にも図書館カードが使われます。検索機の印刷についてはどちらかというと不便で、利用したい資料が複数ある場合、紙印刷だったら必要分を全て印刷して、それを持って書棚を巡ることが可能でしたが、図書館カードの印刷では毎回前の情報を消して印刷することになり、検索結果を手掛かりに何冊も本を探したときには非常に不便です。また、図書館カードは小さいので、資料情報が多いときには、全てが印刷されません。ちなみに、検索機はタッチパネル&キー入力式とマウス&キー入力式の2種類がありますが、印刷できるのはタッチパネル&キー入力式だけですのでご注意を。

また、そんな風にいろんなものが印刷できるようになっているため、貸出処理のときに更新した「現在借りている資料とその返却日」も他の何かを印刷したら消えてしまう。そこで、中央図書館の検索機では、最新の貸出状況を図書館カードに書き込む機能がついています。タッチパネル&キー入力式の検索機で、「貸出予約状況」をタッチし、利用者Noと暗証Noを入力して、図書館カードをカードリーダーの中に入れてから「カード印刷」をタッチすると、最新の貸出状況が印刷されます。実は資料返却の際にはカードは使わないので、返却しても次に何も借りなければリライトもされず、カードの印刷は最後に借りた資料の情報がいつまでも残ってしまうんですよね。もしそれがイヤな場合は、中央図書館の検索機のこの機能を使えば、最新状態に更新できます。

§ CD・ビデオ・DVD

訪問記も長くなってきたので、そろそろ2階へ進みましょう。2階にある視聴覚資料はCD・ビデオ・DVDを所蔵しており、点数も多いです。視聴覚資料コーナーにも自動貸出機があるので、いちいち1階まで行かなくても貸出できます。CD試聴機も2台あり、1人1日3枚まで試聴できるとのこと。

また、AV資料コーナーの奥にはマルチメディアコーナーというのがありまして、100円のチケットで2時間利用できるそうです。ネット閲覧、DTP、ビデオ編集などができる施設で、1階の総合受付(図書館の受付ではなく)の脇にチケットの販売機があります。図書館施設というより、公営マルチメディア利用サービスって感じでしょうか。外から眺めたところ、小綺麗なオフィスといった様子でした。

このマルチメディアコーナーではDVDの視聴もできます。なので、図書館でDVDを借りて、マルチメディアコーナーで視聴することもできますね。図書館とマルチメディアコーナーは別施設なので、DVDの視聴をしたい方は図書館で貸出手続きをしてからマルチメディアコーナーを利用することになります。

§ 中高生コーナー

中高生向けの「グリーンコーナー」は、2階の視聴覚資料がある区画の隅にあります。小説から各ジャンルの本まで、中高生向けの内容のものをそろえているほか、「進路コーナー」では学校案内やいろんな職業について書かれた「なるにはBOOKS」「しごと場見学」といったシリーズなどもあります。中高生コーナーといえども、就職活動する人なども活用できるコーナーだと思います。

座席も細長くて高い机で、飲食店のカウンター席を思わせるようなテーブルなんです。そして、そのテーブルの周りに椅子がやけに密集して並んでいます。一人一人で利用するよりは友達と連れ立って利用するのに向いている感じの設備で、図書館にはなかなかないタイプで面白いです。テーブルの上にお薦め本を投稿するポストもあるので、友達同士で話題になっている本などあったらぜひ投稿してください。

§ 郷土資料・地域資料

2階の地域資料こそは、台東区立中央図書館の真髄と言っていいでしょう。浅草や上野をはじめとした台東区の資料や東京都の資料がずらっと揃っています。資料の種類も、市販の書籍、行政の発行物、タウン誌などなど実にさまざま。おそらくタウン誌の中には廃刊になってしまった貴重なものなどもあるのではないかと思います。

数ある地域資料の中でも、閲覧しやすくて、老若男女を問わず楽しんでもらえるいう点でお薦めなのが、5番の棚のカウンター寄りにある「高相嘉男コレクション」。アマチュアカメラマンの高相嘉男さんが、昭和30年代から平成初めにかけて撮影した浅草・上野などの写真がファイリングされています。昔の街の姿を知る人には懐かしいし、知らない人も今の街の様子との相違点を楽しめると思います。

また、こちらは申請して閲覧する資料ですが、中央図書館が昭和49年から(途中、中断した時期もあり)台東区内の約60箇所で定点撮影を行っている記録資料もあります。台東区は早稲田大学メディアデザイン研究所と共同で、区所蔵の写真の整理・活用を進める「台東区写真アーカイブス」プロジェクトを行っていて、ネット上にも「文化探訪」というサイトを作ったりしているのですよね。最近、他の区でも、昔の風景写真や映像を図書館が収集・整理する動きがありますが、整理や公開の進捗度では台東区がかなり進んでいると言えると思います。

地域資料コーナーの奥にある「台東区ゆかりの文学コーナー」や「浅草文庫コーナー」も、台東区立図書館に来たならぜひ寄って欲しいコーナーです。まず、「台東区ゆかりの文学コーナー」は、幸田露伴、高村光太郎から、唐十郎、よしもとばななまで、台東区にゆかりのある作家の作品が多数収集されています。やはり、古くから賑わっていた土地だから、作家も賑わいに引き寄せられたり、生まれた人物が台東区の土地柄に育まれて作家への道へ進んだりしているのでしょう。こういうコーナーを作っても、ゆかりの作家がそれほどいない区市町村の方が多いですから、何人か分けて欲しいくらいです(笑)。

これに加えて、2012年11月からは「浅草文庫コーナー」が設置されました。これは浅草観光連盟によって設立された、浅草に関する本を収集している文庫で、2011年まではテプコ浅草館に展示されていたのですが、おそらく東京電力の経費削減の一環でしょう、テプコ浅草館が閉館することになり、その資料が台東区へ寄贈されたのだそうです。このコーナーは浅草の芸能資料が充実していてとても楽しいですよ。棚の上には尾上松之助、マキノ輝子、市川百々之助の写真が飾られています。 私も昔の俳優・女優さんは詳しくわかりませんが、マキノ輝子は長門裕之や津川雅彦のお母さんだそうで、説明を読みながらへぇ~と眺めたりして。

棚を見れば、吉原関連の本や、浅草周辺の年中行事に関する本、昔の街なみを撮影した写真集、浅草寺刊行物まで、浅草の今と昔を見ることができる資料が並んでいます。ちょっと面白かったのが、浅草寺で毎年行われる浅草観音文化芸能人節分会の芳名帳などもあるんです。浅草寺で保管しておくのではなく、ここにあっていいのだろうかと思ったのですが、現にあるのだからいいんでしょう(笑)。私、図書館巡りをしていて、晩年たっぷり時間ができたときに通い詰めて片っ端から本を読みたいと思っている図書館がいくつかあるのですが、台東区立図書館の浅草文庫もその一つです。浅草の雰囲気が好きな人は必見です。

§ 池波正太郎記念文庫

後回しになりましたが、1階「池波正太郎記念文庫」についてもあらためて紹介しましょう。東京市浅草区生まれの池波さんの年表や書斎の再現などの常設展示のほか、期間ごとに内容を入れ替えて自筆の原稿や絵画を展示しています。書斎は以外にも(?)洋室で、再現書斎に添えられたエッセイの引用によると、書斎を作る際に和室にしてしまうと寝そべってしまうと思い洋室にしたのだとか。本棚の一画に煙草の箱がずらっと並んでいるのも、池波さんらしいです。

展示エリアの奥にはゴージャスな読書空間といった趣の「時代小説コーナー」があります。棚を見ると池波さんの著作に限らずさまざまな時代小説があり、どうやら池波さんの蔵書を元に追加で収集したものも加えた文庫のようです。この部屋にある本は、貸出はしていませんが職員さんにお願いすれば閲覧ができます。

§ 浅草観光の寄り道スポットとしてぜひ

図書館というと読書のイメージしかない人もいるかもしれませんが、観光地である浅草のそばに、昔の浅草がわかる資料が揃っている図書館があると、観光の際に寄ってみたくなりませんか?浅草に観光に来る人なら、目新しさより懐かしさや人情を求めていると思うのですが、今の浅草を歩くだけでなく図書館資料で昔の浅草にも触れることで、更に楽しさが増すと思います。

また、冒頭にも書きましたが、この台東区立中央図書館は新年3日から開館しています。今はついに葛飾区中央図書館が元旦から開館し、1月2日になると更にいろんな館が開館するので、3日というのは特別早くはなくなってしまいましたが、台東区立中央図書館の1月3日開館はかなり前から行っているので、浅草寺に初詣→台東区立中央図書館を1月3日の定番コースにしている人もいるのでは。というか、私自身がそうです(笑)。

上野・浅草といった古くから賑わっている街を知りたかったら、まずはさておき台東区立中央図書館へどうぞ。もちろん、地域以外の研究や読書のニーズにもしっかり応えてくれる図書館です。溢れんばかりの台東区の資料を堪能してください!

台東区立中央図書館 特集・行事・図書館だより感想記

  リレートーク「台東図書館のあゆみ」
―2014年2月16日のイベント
1962(昭和37)年1月から2001(平成13)年8月まで存在していた台東区立台東図書館について、当時勤務していた図書館職員さんがスライドやDVD映像を交えながらお話してくださいました。今とはまた違った図書館の様子など、とても興味深いお話でした。

台東区立中央図書館 データ

住所東京都台東区西浅草3-25-16 台東区生涯学習センター1,2階 →Google Mapで見る
Tel03-5246-5911(代)
開館時間
月~土曜児童コーナー9:00~18:00
児童コーナー以外9:00~20:00
日曜・祝日、12月29,30日9:00~17:00
1月3日10:00~17:00
定休日第3木曜(祝日は開館し、翌日休館)
12月31日~1月2日
最寄駅 つくばエクスプレス 浅草駅から徒歩9分
東京メトロ日比谷線 入谷駅から徒歩10分
駐輪場建物正面入口手前と正面向かって左(北)側に駐輪場あり
バイク置場は建物向かって左(北)側奥にあり
駐車場建物地下に一般用駐車場あり。利用時間は8:00~翌2:00。最初の30分は200円、それ以降は15分ごとに100円。
建物正面向かって左側(北側)に障害者用駐車場2台分あり
所蔵資料
図書所蔵数365,456冊(2017/03/31現在、出典『台東区の図書館 平成29年度事業報告』)
音声資料
CDカセットレコード
ありなしあり(閉架)

映像資料
DVDビデオLD
ありありなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物正面入口手前左のバーミヤンへの階段の下にブックポストあり
北側入口の右脇にもブックポストあり
自動貸出機ICタグ式自動貸出機8台(1階6台、2階2台)あり。1階予約コーナー内の1台と2階の2台が、CD・DVD貸出対応。
自動返却機1階一般エリアカウンター向かって左端に自動返却機あり
セルフ予約受取1階一般エリアカウンター向かって右に予約コーナーあり
音声試聴設備CD試聴機2台あり。利用は1人1日3枚まで。
映像視聴設備なし
ネット閲覧PC2階郷土・調査資料室にネット閲覧PC6台あり。利用は1時間まで。
持参PC利用2階の視聴覚資料コーナー(7席)と郷土・調査資料室(2席)の電子機器持込閲覧席で持参PCの利用可能。電源なし。座席の利用は、9:00~12:00、12:00~15:00、15:00~18:00、18:00~20:00(但し土日は17時まで)の時間枠での利用で、各回30分前より利用申込受付。延長は1回可能で制限時間30分前より受付。18時以降は空いていれば再延長・再利用可能。
LAN接続2階の視聴覚資料コーナー(7席)と郷土・調査資料室(2席)の電子機器持込閲覧席で無線LANの利用可能
飲食設備等
  • 建物1階のエレベーターからみて右先の一画に喫茶店「香逢」あり。平日9:30~18:00、土日祝9:30~17:00。月曜と第3木曜は休み。
  • 建物2階にバーミヤンあり。営業時間は10:00~24:00、年中無休。
  • 建物3階のエレベーターからみて右先に持込飲食ができる飲食コーナーあり