「絵本を考える」&「心の旅路 ― 建築探訪」
visit:2008/05/19
方南図書館、2008年5月の特集は「絵本を考える」、そして「心の旅路 ― 建築探訪」です。
まず、一般書架入ってすぐ左の棚にある小さい特集コーナー「方南図書探偵団!」のテーマが「心の旅路 ― 建築探訪」。図書館という建物だけをとっても、外部や内部の設計って本当に各館様々で、公共施設といっても意匠が凝らされていたり、建てられた時代に図書館に求められていたものが窺えたりと、建物としても面白いんですよね。最近23区内で新しく建てられた図書館は、残念ながらあまり凝ったデザインのものはありませんが、バリアフリー面についてはやはりかなり配慮されています。これも今の時代の反映なのでしょうね。
展示本は、『アパートメント―世界の夢の集合住宅』『木造校舎の旅』のように同じ形態の建物をいろいと取り上げたものから、『屋根』『階段―カイダンっておもしろい!』のように建物の一部をテーマにした本までいろいろありますね。このうち、『階段―カイダンっておもしろい!』を手にとってみたのですが、建築家・デザイナーが設計した日本の家の階段の写真を集めた本で、どれも素敵な階段なんです。居間の中に作る階段は、圧迫感がないようにでしょう、両脇の枠と水平板だけでできている(垂直板がない、梯子に近い形)ものが多かったり、階段の下部や側面を収納や飾り棚として使っていたり、見えにくい足元に凝ったデザインをあしらっているものもよかったなあ。本の帯にも書いてあったけど、これから家を建てる人の参考になりそうです。
あと、『棟梁たちの西洋館―文明開化の夢とかたち』という本も面白くて、これは借りちゃいました。明治の棟梁達が西洋建築を見て、それを参考に建てた建物が集められていて、それらは和洋折衷なんですけれども、意図して和洋折衷にしたものもあれば、建てた方は西洋風にしたつもりでも結果的に和洋折衷になっちゃったものもあると思うんですよね。紹介されている建物のうち、開智学校や水街道小学校なんかは「和」「洋」以外に「中華」の要素さえ入っているようにも見えるし、表紙にも使われている済生館病院は色も独特。制作費の都合もあったのでしょうが、全写真がカラーであったら尚よかったのにと思ってしまう写真集です。
一般書架奥の大きい特集コーナーの方は「絵本を考える」です。方南図書館の図書館だより「方南BOOKステーション」5月号の編集後記に、「休日には方南図書館・児童コーナーにある「おはなしのこべや」でもお子様に絵本の読み聞かせをされているお父様を拝見します。」と書いてあるのですが、確かに私もあちこちの図書館の児童コーナーで子供に読み聞かせをするお父さんってよく見かけます。
お子さんがいる大人に限らず、自分が読むものとしても絵本や児童書ってなかなか面白いんですよね。私も最近は児童コーナーに入って面白そうな絵本があったら手に取ってみたり、JPIC読書アドバイザーの児玉ひろ美さんのブログを定期的に見て、面白そうなものを見つけたら読んだりしています。
特集コーナーはやはりお勧めの絵本を紹介する本が多いですが、個人的には最初はこういう本で「子供の教育のためにいい絵本を探そう」と頭であれこれ考えるよりも、図書館の児童コーナーに行って気に入った表紙のものを見てみるくらいの気軽さでいいような気がします。で、いくつか馴染みの絵本ができたところで、たまには違うものをというときに絵本の紹介本を読んでみる。本が好きな人間としては、「読むべきだから、読むのがいいから読む」のではなく「読みたいから読む」から始まってくれたらいいななんて思うわけです。そういう意味では、江國香織の『絵本を抱えて部屋のすみへ』は、「読ませたい絵本」ではなく「読みたい絵本」を紹介する本ですごくいいです。
大人向けの小説を書く作家が書いた絵本もいろいろあるんですよね。最近はタレントが描いた絵本も珍しくないし。このコーナーに川本三郎の『浜辺のパラソル』という絵本があって、「何と、川本さんも絵本を!」とびっくりしたのですが、中学生時代のことを書いたエッセイに絵をつけた本でした。そう一言で「絵本」といっても、児童向けにひらがなだけで書かれたものから、最初から大人を対象に、漢字も言葉も難しいものを遠慮なく使っているものまで様々なんですよね。
そうそう、このように大人が絵本を読むために図書館に注文したいことがあって、図書館の中には児童コーナーを17時で閉めちゃうところがあるんですね。あれは、絵本や児童書を読むのは子供だけって決めつけてるようなもので、図書館側が大人による絵本の利用を妨げていると思うんです。仕事帰りに子供用の本を借りたいというときも、17時で閉まっちゃったらできない。この方南図書館は児童コーナーも閉館時間まで利用できるし、23区内でも半分以上は閉館時間まで児童コーナーを利用できるようになっていると思うのですが、児童コーナーだけ早く閉めるようにしている図書館はぜひその運用を変えて欲しいと思います。
さて、絵本には、そうやって読むばかりじゃなく、作る楽しみもありますよね。「方南BOOKステーション」5月号にも五味太郎の『絵本を作る』が紹介されています。私も布絵本作りに興味があって、市販のキットを使った布絵本は作ったことがあるのですが、次はぜひストーリーも絵柄も自分で考えたものを作ってみたいんです。その参考としても、図書館の児童コーナーを利用したいところ。そう、図書館の児童コーナーは児童だけのものではないのです!