「新宿区立中央図書館 1972-2013」
visit:2013/06/14
新宿区立中央図書館(と、その中にある新宿区立こども図書館も)は、旧戸山中学校の校舎へと移転するため、現在の建物では2013年6月14日が最後の開館日となります。建物の閉館前に、中央図書館の思い出を振り返る展示を行っており、私も見に行ってきました。
中央図書館の展示コーナーは、3階の盗難防止ゲートを入ってすぐ左の一画です。「新宿区立中央図書館 1972-2013」と題された展示は、新宿区が発行している図書館年報などの資料に加えて、図書館や周辺地域を写した写真や職員さん手描きのイラストで昔の様子を伝えていて、へぇ~を連発してしまうような面白い展示でした。
展示のタイトルにもあるように、新宿区立中央図書館は1972年に開館したのですが、最初に2階の児童室だけを2月にオープンして、その後4月に中央図書館がオープンするというかたちをとったのだそうです。新宿区立図書館の沿革も、1949(昭和24)年7月に新宿区文化会館に児童向けの図書室が開設されたことから始まっているので、児童向けの図書館が強く求められていたなどの背景があったのかもしれませんね。
建物については、職員さんの手描きイラストで、ピロティ式の入口や側面の羽板などが開設されており、「上野の国立西洋美術館のようです」とのこと。何度も来ていたけど、そうとは思ってもみなかった。失礼いたしました(笑)。でも確かに、この日あらためて見たら側面部が羽みたいなデザインになっているのに気付いて、でも高田馬場側から来ると隣の建物で見えなくなってしまっているなあと思っていたんです。中央図書館は、最寄駅が下落合駅で、その次に近いのが高田馬場駅なのですが、デザインをじっくり見る意味では下落合駅からのほうがいいんですね(下落合方向の西側は道路に面しているので建物側面が見える)。
そう、この展示では、昔を知る職員さんが描いたイラストが、当時の図書館の仕組みやエピソードを伝えてくれていて、これがとっても面白かったんです。昔のエピソードや今とは違う姿は、掘り出せばまだまだたくさんあるはずなので、できればもっともっと描いて欲しいくらい(笑)。
例えば、1980年代までは水害で道路が水浸しになり、来館者が階段途中で水がひくのを待ったこともあったのだとか。そう言われてみれば、この場所は北に妙正寺川(の暗渠)、南に神田川が流れており、1kmほど東でその2つが合流するという、水害が起こりやすい場所でもあるんですね。そうか、だから1階には何もなくて(事務室などバックヤードスペースしかない)、2階より上に図書館施設があるという設計なのか。最後の最後にして、この図書館のことをあらためて知った気分です。
逆ブラウン方式やレコードのかかる視聴覚室などの様子を伝えるイラストも、時代を感じます。時代を感じますといっても、中央図書館に図書館システムが導入されたのは1991(平成3)年なので、そんなに大昔ではないんですよね。レコード試聴風景を描いたイラストには、Emerson Lake and Palmerと思われるレコードジャケットが。イラストを描いた職員さん、プログレ好きなのかな。
といったかたちで、開館からこれまでを振り返ったこの展示、(おそらく)図書館が撮った写真と職員さんが描いたイラストだということで著作権の点でも問題がないからでしょう、展示コーナーに限って写真撮影可能になっていました。せっかくだからと撮ってきたのが下の写真。


クリックすると拡大しますが、いかんせん古いガラケーで撮った写真なので、拡大してもそれほど鮮明ではなくて申し訳ないです。でも、特に職員さんのイラストのほうなど、味があっていいですよね。もっと描いてほしいという私の気持ちもわかるでしょ。このイラストは冊子にして配布もしていたので、私もしっかりいただいてきました。
こういう、歴史がある図書館の思い出を振り返る企画って、わりと喜ぶ人は多いんじゃないかと思います。昔を知る人には懐かしいし、知らない人もそんなことがあったのかと面白く見ることができるし。また、建物が閉まるのは残念ですが、この企画でイラストに起こしたことで、建物が解体された後も記録として残るわけですから。できることなら、もっと早くこうしたエピソードを知っていたら、それを踏まえて図書館を利用できたのになと思ってしまうくらい、最後の最後に愛着心を湧き起こされた気分です(笑)。
新宿区立中央図書館さん、これまでありがとうございました。今後の仮施設、更には新中央図書館も楽しみにしています!