本のぷち袋

―2015年10月27日から11月8日まで(用意したぷち袋がなくなったら期間中でも終了)の企画
visit:2015/10/27
本の中の一文だけをヒントに選んで借りる「本のぷち袋」

図書館の好評企画の一つとして、「本の福袋」などと呼ばれる企画があります。本を袋詰めにして何が入っているか見えないようにして、中身のヒントだけを見せ、そのヒントを頼りに借りる袋を選ぶ企画で、中身は開けてのお楽しみというワクワク感や、自分からは手に取らないような作家・ジャンルの本との出会えるのが楽しく、私もこの種の企画があるとできる限り見に行き、借りています。2015年の読書期間の企画として、練馬区立南大泉図書館でそのような企画「本のぷち袋」を実施しており、どんな様子か見にいってきました。

同種の企画で中身のヒントとなるのは、キーワードのような単語だったり、中身を選んだ人のお薦め文だったり、それぞれの企画ごとにさまざま。今回の「本のぷち袋」の場合は、本の中の一文がヒントになっています。小説っぽいもの、ハウツー本っぽいもの、中には意味不明なものもあったりして、どんな本かは全くの謎。ビジネス書のように見えて実は小説、というパターンもあるだろうし、この辺は一文を選んだ図書館職員さんのセンスの見せ所ですね。

南大泉図書館に行ってみると、「本のぷち袋」は一般向けと青少年向けに分かれており、一般向けは返却カウンターと貸出カウンターの間、青少年向けは図書館エリア入ってすぐ右の青少年コーナーにあります。いずれも、本の入った袋そのものは置いておらず、中身の一部が書かれたはがきサイズのカードが展示されており、それを元に借りたいものを選んで、カードに添えられたしおりをカウンターに持っていくと、ラッピングされた状態でその本を貸し出してくれる仕組み。一般向けは数が多いので、ファイル状のハガキホルダーにまとめられています。

では、具体的にどんな一文があるのか。メモしてきたものを下に並べてみます。青少年向けは、中高生を想定して本を選んでいますが、貸出自体は中高生以外の人もOKとのことです。1

一般向け
1お金の悪口を絶対にいわない。お金に嫉妬してもいけない。
21秒でもいいから早く帰ってきて ふえるわかめがすごいことなの……
3復興とは家屋や道路や防波堤を修理して済む話ではない。人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、一生十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ。
4遊びだからこそいい加減にしない
5イルカと目を合わせ顔を寄せて泳ぐとき私の視界はイルカの顔だけとなる。
6「親が偉大だとしたらそれは反面教師としてでしょうね」
7まもなく幾千の少女らが降った。ある者はまっすぐに、ある者は壁にぶつかり弾けながら、ビルの底へ呑まれていく。そのうちの一人と目が合った気がした。
8お尻がわかったくらいで興味が半減する本など最初からたいした価値はないのである。
9親は自分の人格以上のものを口先で子供に伝えることはできないし、口で伝えられるようなことは、黙っていても伝えてしまっているのが親子というものではないか、、
10「夢」や「やりたいこと」に拘泥するような、キャリア教育にいったいどれほどの価値や意義があるのか
11何かあったら、そのときはそのときでね。戦争を通ってきた人間って、そういうところがあります。いつ死ぬか、わからなかったんですから。
12老いて立派に生きる
13[笛吹き]はやはり「ダイヤのジャック」ではなかったのである
14
一文なし。カードには鶴、梅、松などのお正月っぽい図柄の消しゴムはんこが押されている
15のぶちゃん、雪のぎょうさん降るとこで暮らしてみたないか
16あなたの経験や技能などの「能力」を、あなたにはない誰かの「能力」と交換いたします。
17年代や性別問わず活用できます
18そして彼女たちの宮仕えの中から「枕草子」「源氏物語」が作られるのですが、では、その両方の作品をどう読むか。
19台所には台所の、五官総動員した味の至福がある。
20―片想い許されるのはギリギリ二十歳 二十八歳の片想いはストーカーとほぼ同じよ―
21くまにさそわれて散歩に出る。
22“好きな服が似合わなくなった”と気づいたときがワードローブを変えるとき。
23この本がなかったら、その本に出合えなかったら、確実に、私の見る世界には一色足りないまんままだろう。
24でか肉焼き
25
一文なし。カードにはバナナを持つサルの切り紙が貼られている
26
一文なし。カードにはシンデレラの馬車のような切り紙が貼られている
27「ぼく、秘密の場所にいくよ」少年はそうささやいた。そこはいつも二人が隠れんぼをして遊ぶ場所だった。
28不幸せの量はみんな同じ 幸せの量はその人それぞれ
29溶き卵を熱したフライパンに流し、続いてざく切りのレタスを放りこんで卵が半生のうちにドレッシングで味を整えた一品を、サラダといってはばからないのは~
青少年向け
31わたしを食べて終わりっていうのもありますけど」「ハハハ、それができりゃ簡単だ」
32ふたりでコンビ組んで、やろう
33「レオナルド」モナ・リザが口を開いた。「出来上がるころにはしわくちゃのおばあさんになってしまうわ」
34「素直に『助けて』って言える人間のほうが、ほんとは強いの」
35菜穂子ちゃん、ぼくは死んだんじゃないんだ。M78星雲に帰っただけなんだよ。
36「なぜサンタクロースは男性だと決めてかかるのかね」
37拝啓、十五年後の自分へ。
38もう少しだけ、がんばってみよう。
39「俺が入ったのが気に入らなくて辞めるくらいなら、もともと本気でやってなかったってだけだろ。」

一文から推測する限りでも、小説、エッセイ、実用書、経済書、社会問題本など、いろいろな本が入っているように思います。更に気になるのは、文字のないカード。一文が書かれているカードも、文字部分からして職員さんの手書きでイラストが入っていたりして、それも中身のヒントになっているように思いますが、一文がなく思わせぶりな図案だけとはこれいかに。例えば、消しゴムハンコが押された14番のぷち袋は、単純に消しゴムハンコの本ということなのか、それとも図案のようなイラストが挿絵として入っている本なのか、謎を呼び興味が湧いてきます。

借りられていたら、予約ができます

更にユニークなのは、もし先に誰かに借りられていたら予約ができるようになっていること。カウンターに持っていくのは、一文が書かれたカードではなく、それに添えられたしおりなので、一文カードは借りられた後も残っています。本の福袋企画は、期間後半に行くと他の人に借りた分選択肢が少なくなってしまうのが難点ですが、この方式だと誰かが借りてしまった後もどんな福袋があったかがわかる。既にしおりがなければ誰かが借りてしまったという意味で、現に私が行った時点でも3冊は貸出中でした。

しおりが入っているポケットに「こちらは貸出済です。資料の予約をご希望の方はカウンターまでお越しください。(袋等は付属しません)」と書かれているので、もし既に貸し出された一文の本を読んでみたい場合は、「何番のぷち袋が貸出中だけど予約したい」とカウンターに言えば、予約してくれるのだと思います。私は図書館巡りを通じて、いろいろな図書館が実施した本の福袋企画を見てきましたが、誰かが借りてしまった袋を予約できるようにしているのは、この「本のぷち袋」が初めて。期間後半に行って少なくなった選択肢には好みのものがない、というケースもあったので、この工夫は嬉しいです。この企画は、2015年10月27日から11月8日まで、但し用意したぷち袋がなくなったら期間中でも終了ということなのですが、この方法なら全て貸出中になっても期間中はカードを展示し続けていいように思います。

私も、4,16,36などが気になり、どれか借りてみたかったのですが、残念ながら私の在住・在勤条件では練馬区立図書館に利用登録できません。練馬区立図書館を利用できる方はぜひ借りてみてください。また、南大泉図書館分館のこどもと本のひろばでも、大人向けの「本のぷち袋」(こちらは予約できる仕組みはなく、早い者勝ち)を実施しているので、合わせて楽しんでください。

この種の企画は「こんな本があることを知らなかった」という本に出会えることが多く、膨大な本が出版される中で自分の知っている本が一部に過ぎないことを感じます。実際、図書館に行くとたくさんの本が並んでいますが、そのうち読んだことがある本なんてほんの一部ですよね。未知の本を手に取るきっかけを作ってくれる「本のぷち袋」、練馬区立図書館をご利用の方はぜひ楽しんでください。