旅する図書館

―2013年10月27日から11月15日までの企画
visit:2013/11/15

江戸川区立篠崎図書館は、毎年秋の読書週間の際に目隠しで本を借りられる企画や、書架全体を回遊する展示をしています。2013年の読書週間には「旅する図書館」と題して同様の企画を行っており、私も行ってみました。

§ 川柳を頼りに本をセレクト

入口入った正面の自動貸出機の左にある22番の棚に行くと、大きな世界地図が棚を覆っています。地図の上には飛行機の搭乗チケットを模したカードが点在しており、何やら川柳が書かれている。説明をよむに、ここから好きなカードを選んでカウンターに持っていくと、引き換えに本1冊を貸し出してくれるとのこと。引き換えの本は地図上の場所や川柳の内容に関連した内容のもので、実際にどんな本なのかは借りてみてからのお楽しみというわけです。

私は最終日に行ってみたのですが、世界地図全体に散らばるカードのなか、他の人に貸し出されて抜けているのはヨーロッパとアメリカに集中していました。本の上での旅行先人気は、これらの地域ということでしょうか。中には「Another World」と題して、宇宙などに関する本と引き換えできそうな川柳もありました。

具体例を挙げると、南アメリカ大陸に「奇跡じゃない 世界が見つめた 救出劇」というカードがあります。これはおそらくチリのコピアポ鉱山落盤事故についての本なんじゃないかな。また、北アフリカ付近に、とんがり帽子が云々といったカードがあったのですが、私が思うにこれはタジン鍋を使った料理本ではないかと。こんな風に場所と川柳を手掛かりに推理するのも面白い。

推理できないカードもかえって興味をそそれられるんですよね。私が特に興味を惹かれたのは、以下のカード。

日本で心配性の作家って誰なのか(日本付近に貼られていたので、韓国人作家などの可能性もあり)、気になりますね~。「心配性の作家」だけで推測できてしまったら、その作家さんには申し訳ない気もするので、わからないくらいでちょうどいいかもしれません(笑)。Another Worldの<行かずにすませたい場所>というのも、実在する場所なのか、非現実的な場所なのか気になります。行かずにすませたい場所も覗けるというのが、<本での旅>のいいところともいえますね。

私自身は江戸川区立図書館の登録要件に適っていないので借りられないのが残念。2年前の同様の展示「ひと言選書」では、企画後に答えあわせ(各カードが示していた本が何だったのか)を掲示していたので、ぜひ今回も答えが知りたいです。この企画で本を借りた人も、「これを選んだけど、あのカードも気になっていたんだよなあ」というのがあると思いますし、篠崎図書館さん、ぜひお願いします!

§ 書架内を旅する

篠崎図書館の「旅する図書館」企画は、これだけではありません。書架のあちこちで「旅」に関する展示をし、それを回ることで書架の中を旅する仕掛けも作っています。「旅する企画」Mapとして配置図に線路を描いたものを配布しており、駅となっている場所にミニ展示をしています。Mapに書かれたサルのキャラクター(Shinozaki Airline→SAL→サルという発想のよう)も可愛らしいです。

たとえば、展示されている本は、エッセイの棚では紀行文、語学の棚では英会話、料理本の棚では世界各国の料理のレシピ本といったように、異国の地にいった気分になれそうな本がいろいろ。CD棚でも、各地の民族音楽を集めたCDなどが展示されており、こんな機会がなかったらあまり手に取るジャンルではないけど、面白そう。希望をいえば、単に本が面陳されているだけだったので、職員さんからの紹介文なども添えてくれると更に手に取ってみようという気が起こったかも。

ただ、この企画は書架内に点在するミニ展示を見ることだけでなく、あちらの展示からこちらの展示へと回る途中で別の棚の本が目に留まったりするのも含めて楽しむといいと思います。図書館って常連になればなるほど、自分が読みたいジャンルがどこにあるか覚えてしまうので、それ以外の棚には行かなくなってしまったりしてしまう。で、たまに必要があってあまり行かない棚に行ってみると「こんな本もあるんだ」という発見があったり。こうした書架を巡らせる企画は、そうした出会いを作ってくれるように思います。

目隠しで本を選べる企画と、書架を巡る企画の両輪からなる「旅する図書館」。旅って日常とは違う世界を味わえることが魅力ですが、本を通じても日常とは違う世界を覗くことができるんですね。この企画を巡ってみて、自分はいつも同じジャンルの本ばかり読んでいるのではと、ちょっと反省してしまいました。これからも図書館愛好家として、あらゆる書架を旅してみたいと思います。