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ビブリオバトル in 篠崎図書館

―2014年1月12日のイベント
visit:2014/01/12
§ 篠崎図書館ではじめてのビブリオバトル

ビブリオバトル」というゲームをご存知ですか。面白いと思った本を持って集まり、本の紹介5分間+発表に関する質疑応答2~3分間を繰り返したあと、「どの本が一番読みたくなったか?」を基準に参加者全員が投票し、最も多く票を集めた本をチャンプ本とするというコミュニケーションゲームで、図書館、学校、カフェ、会社など、さまざまな場所で楽しまれています。

そのビブリオバトルが、2014年1月12日に江戸川区立篠崎図書館で開催され、私も発表者として参加してきました。3階の講義室に5名のバトラーと20数名の観覧者が集まり、更に篠崎図書館の館長さんもバトラーとして加わって、6名のバトラーからなるビブリオバトルが行われました。

§ 「学校」をテーマに、尾木ママの本から小説まで集結

ビブリオバトル自体はどんな本を紹介しても構いませんが、テーマを決めてそれにあった本を紹介するやり方もあり、今回のビブリオバトルでは「学校」がテーマ。篠崎図書館と同じフロアにある「企画展示ギャラリー」で、江戸川区内の小学校の歴史から最新の様子を紹介する展示「熱中!えどがわスクールグラフィティ」が開催されているのに合わせて、このテーマにしたのだそうです。

「学校」というテーマで共通しているものの、バトラーさんが持ち寄った本のジャンルは様々。小説としては、『23分間の奇跡』と『1リットルの涙』の2冊が紹介されました。『23分間の奇跡』を発表した女性はご自身も小説を書いているのだそうで、怖さを秘めた紹介本を静かな語り口で紹介する様子に、発表を聞くだけでもぞっとしてしまったくらいです。『1リットルの涙』を紹介した男性はご自身が学生だった頃の反省も交えて、思い入れたっぷりに本を紹介。私も子どもの頃は学校を面倒臭がっていたほうなので、学校に行きたくても行けない少女を主人公とした小説の話を聞いて、耳が痛くなってしまいました。

「本当の学力」は作文で劇的に伸びる』を紹介した男性は図書館を使いこなしている方で、図書館で除籍した本を利用者が自由に持ち帰れるようにしている「リサイクル本」をもらうことも多いのだとか。今回の紹介本もリサイクル本で、いつも図書館を利用している恩返しの意味も込めて、今回のビブリオバトルに参加したのだそうです。発表によると、子どもの学力だけでなく大人の仕事にも効果がありそうで、自分のために読んでみたいと思った参加者の方もいたのでは。

私の紹介本は『藝大生の自画像』。東京藝術大学の卒業課題である自画像コレクションをもとに、卒業生達の人生やその中における自画像の意味を探る内容で、5年前にブログ読者の方に教えていただいた本を紹介しました。残念ながらチャンプ本には選ばれず、本を教えていただいた方や著者の河邑厚徳さんには申し訳ない思いです。

そう、『1リットルの涙』を紹介したバトラーさんもイベントの最後におっしゃっていたけど、チャンプ本に選ばれなかったときの気持ちって、がっかりとか悔しいなどの思いより、本に申し訳ないという思いの方が強いんです。ただ、投票は1票だけですが、実際には全ての紹介本を読んでもいい。参加者の方々には、少しでも気になった本をぜひ手に取ってもらえたらと思います。

トリを務めたのは館長さんで、尾木ママこと尾木直樹氏の『子どもの危機をどう見るか』を紹介。この本は岩波新書から出ていますが、館長さんは電子書籍で読んだそうで、タブレットPCを手にしての発表でした。この日は館長さんが司会を務めていたので、自分で5分間計測のタイマーを動かし、発表もして、その後の質疑応答の仕切りも自ら行うという慌ただしい状態に(笑)。館長さんのお人柄も相まってのコミカルな様子に場が和みました。

そして、今回のチャンプ本に選ばれたのが、『たった独りの引き揚げ隊』。コサックの血が入っていて顔立ちが日本人離れしているために引き上げ隊にも入れてもらえず、10歳にして1000kmを独りで踏破して満州から引き上げた男性の話をまとめた本で、そう聞くと悲惨な内容だと思いがちですが、ご本人がその事実をカラッと語っていることもあり、むしろバイタリティを感じる本なのだそう。彼が生き抜いたうえで役に立った知恵(戦地での安全な眠り方など)こそが「学校」だという発表は、バトラーさんご本人がややこじつけかもとおっしゃっていましたが、そうしてでもこのビブリオバトルで紹介したという熱意が、多くの参加者さんに読みたいと思われた所以だと思います。

というわけで、紹介本と投票結果をまとめると、以下の通り。

1番手 『「本当の学力」は作文で劇的に伸びる
2番手 『藝大生の自画像
3番手★『たった独りの引き揚げ隊
4番手 『23分間の奇跡
5番手 『1リットルの涙
6番手 『子どもの危機をどう見るか
★がチャンプ本
§ 誰でも参加できるイベント

ビブリオバトルの面白さは、講演会のように特別な人が講師になるのではなく、図書館利用者という同じ立場の人が本を紹介するところ。考えてみれば図書館利用者はいろいろな本を読んでいるはずで、図書館はそんな情報を持った人が集まる場所なのに、その情報をやりとりする機会もありません。でも、ビブリオバトルのようなイベントがあれば、互いに面白い本の情報を交換できる。図書館こそこうしたイベントの場にふさわしいように思います。

今回は「学校」というテーマを設定してのビブリオバトルでしたが、次回はテーマなしで開催するようなので、今回観覧して楽しんだ方も発表者としてぜひ。江戸川区では、2013年12月に小岩図書館でもビブリオバトルを開催しており、そのときはテーマなしで多くの発表者さんが集まったんです。また、上にも書いたように館長さんが堅苦しくなくコミカルな方なので(館長さん、コミカルを強調してすみません! 笑)、かしこまらずに参加できます。

篠崎図書館の蔵書数は8万冊以上、江戸川区立図書館全体では100万冊以上の蔵書を有していますが、その中から面白い本を探すにも、一人の力では限界がある。利用者同士で面白い本を紹介し合えば、もっと多くの本に出会えると思います。ビブリオバトルはそんな情報交換ができるいい機会。私も篠崎の皆さんとまたビブリオバトルでお会いするのを楽しみにしています。