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うめだビブリオバトル入門講座

―2016年1月31日のイベント
visit:2016/01/31

足立区立図書館では今年度辺りからビブリオバトルへの力の入れようが目立っており、ビブリオバトルイベントを開催しているほか、既存のイベントにもビブリオバトルを取り入れています。そんななか、2016年1月31日に「うめだビブリオバトル入門講座」と題したイベントが足立区立梅田図書館で開催され、私も参加してきました。

会場である3階会議室に着くと、イベント開始時刻まで参加者を飽きさせず、かつ、図書館の宣伝という意味もあるでしょう、梅田図書館のキャラクター・梅田うさおくんが図書館総合展の図書館キャラクターグランプルにエントリーしたときの動画が流れていて、イベント開始を待っていた私たち参加者も興味深々。職員さんが顔だけウサギのかぶりものをして、首から下は図書館内で職員さんがつけているのと同じエプロンをしているのですが、「かぶるだけでうさおくんになれる手軽さがいい」「外は見えているのか」「ある日図書館に行ったらカウンターの中にうさおくんがいたら面白い」など、イベントが始まる前から職員さんと参加者で話が弾んでいました。梅田うさおくんのtwitterアカウントもあり、参加者の一人はうさおくんのつぶやきで今回のイベントを知って参加したそう。うさおくん、イベント開始前から盛り上がりに大いに貢献しています。

§ まずはビブリオバトルの説明・職員さんによるデモバトル

イベントは、前半でビブリオバトルについての説明・これまで梅田図書館で行ったビブリオバトルの紹介・職員さんがバトラーになるビブリオバトル、後半に参加者がバトラーになるビブリオバトルという構成です。

ビブリオバトルについての説明は、ビブリオバトル公式サイトの方が詳しいのでここには書きませんが、面白かったのがこれまで梅田図書館で行ったビブリオバトルの紹介。「絵本deビブリオバトル」というイベントでは、絵本の読み聞かせの前にビブリオバトルを行い、チャンプ本になった絵本をその後読み聞かせしたのだそうです。イベント後にはチャンプ本に選ばれなかった絵本も貸出され、参加者にとってはいつもの絵本読み聞かせに加えて、お薦め絵本をゲーム形式で紹介してもらえたかたち。このときは小さい子どもも楽しく参加できるよう、「読みたい!」という旗を配ってそれを挙げてもらうかたちで投票したそうで、楽しくて二票以上投票してしまう子どももいたそうです。

説明と過去のイベント紹介が終わったら、いよいよビブリオバトルの実践。まずは、参加者の前で3人の職員さんがバトラーとなって本を紹介します。若い職員さんが昔書かれた文章を読んで感じたことを聞いたり、学生時代の経験とともに本を紹介してくれたり、「図書館としてのお薦め本」ではなく個人として面白かった本を紹介されるので、聞いていて本に対しても職員さんに対しても親近感が湧いてきます。

前半のビブリオバトル紹介本
1人目 『東京オリンピック 文学者の見た世紀の祭典』講談社編
2人目★『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン
3人目 『真夏の方程式』東野圭吾
★がチャンプ本

チャンプ本になった『おおきな木』は、昔は本田錦一郎訳で出版されていたのが、2010年に村上春樹訳で出版し直された絵本で、ディスカッション時間では二人の訳の違いについても話題になりました。その際、発表者さんとこの本を読んだことのある参加者さんで「この訳にはこういう意味があるのでは」という考えが違っていたのですが、聞いているとどちらの解釈もありそう。私はイベント後にこの絵本を読んでみたのですが、木に思いを寄せて読むのと少年に思いを寄せて読むのとでも感じ方が違ってくるし、自分が何歳のときに読むかでも感想が変わりそう。こういう本こそ、自分以外の人の感想を聞くのが面白いです。

§ 休憩時間も盛り上がりました

次は参加者同士でビブリオバトル、でもその前に10分間の休憩です。これまでの梅田図書館でのビブリオバトル紹介本の展示を見ている人、梅田うさおプロフィールを見ている人など、それぞれの過ごし方をしている人がいるなか、ビブリオバトルのタイマーの作り方を聞いている人がいました。というのも、職員さんによるビブリオバトルの際に使われていたタイマーが、ビブリオバトル公式サイトタイマー情報にあるような一般的なものではなく、梅田うさおくんのイラストが入ったオリジナルのタイマーだったんです。

私もそれを一緒に聞いていたところ、マイクロソフトのパワーポイントを使える人なら誰でも作れるものだったので、こちらに紹介いたしました。また、梅田うさおくんタイマーがどんなものかというのは、梅田うさおくん自身がこちらのつぶやきで紹介してくれています。

この日の参加者は全部で5人だったのですが、それくらいがちょうどよかったということか、休憩中に参加者同士での話が弾み、結果的に休憩時間が10分をオーバーしてしまったくらい。ちなみに、参加者は一番お若い方が大学生、上はおじいちゃまと呼んでも怒られないかなという年齢の方まで、老若男女が集まったかたちでした。

§ 参加者は2グループに分かれてバトル

休憩に入る前にくじをひいて2グループに分けていたのですが、それぞれでジャンケンして順番を決め、会場前のタイマーに合わせてゲームスタート。参加者は5名に職員さん1名が加わって、3人ずつ2グループでのビブリオバトルです。先に、紹介本をご紹介すると、以下の通り。

後半のビブリオバトル紹介本
第1グループ第2グループ
1人目★『しょうぼう馬のマックス』サラ・ロンドン、 アン・アーノルド 『黒冷水』羽田圭介
2人目 『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター 『空ノ鐘の響く惑星で』渡瀬草一郎
3人目 『「笑」ほど素敵な商売はない』萩本欽一★『2.43 清陰高校男子バレー部』壁井ユカコ
★がチャンプ本

私は第2グループだったのですが、3人という少人数だと、男性発表者さんが個人的な女性キャラクターの趣味のような大勢の前では話しにくいかもしれない話をしたり、兄弟同士の憎しみがエスカレートしていく『黒冷水』を私自身が紹介した際は、他の2人に兄弟がいるかどうかをお聞きしてから発表したりと、この日初めてお会いした人なのに、いろいろお話して本当に楽しかったです。

また、自分が第2グループなのに、なぜ第1グループの紹介本を知っているかというと、イベント後に「そちらのグループの紹介本も教えていただけますか」と声を掛けたら、また一通り本の紹介をし直すような勢いで話が弾んでしまったからなのですが(笑)、絵本、児童文学(発表者さんは『あしながおじさん』を恋のバイブル(特に、男性が女性の気持ちを知るための)として紹介していました)、純文学、お笑いの本、青春小説、ライトノベルと、実にバラエティ溢れる紹介本となりました。

§ ビブリオバトルはコミュニケーションゲーム

今、いろいろな図書館でビブリオバトルを開催していますが、その多くは少数のバトラーの紹介を多数の観覧者が聞くスタイルです。この方法もビブリオバトルの一つですが、あまり観覧者が多すぎて質問もせずに投票するだけ人が多いやり方では、ビブリオバトルがコミュニケーションゲームではなく書評コンテストのようになってしまうのではないかと心配しています。

お互いに面白いと思う本を紹介しあい、好みや考えを披露し合ってこそコミュニケーションゲームとなりえるわけで、その意味でこのうめだビブリオバトル講座は、参加者全員とお話しできる規模だったこともあり、そのビブリオバトルの楽しさが実感できるイベントでした。

個人的には、こんなふうにイベントの中で参加者の皆さんとお話しただけでなく、この日ご一緒した方の数名とSNSで友達になったり、お一方とはこのイベントの後、梅島駅近くのマクドナルドで1時間ほど話し込んでしまったり、本の話からそれ以外の話まで交換できた楽しい時間でした。梅田図書館さん、うさおくん、ご一緒した皆さん、ありがとうございました。

ちなみに、梅田図書館ではこのときと同様のワークショップ形式ビブリオバトルを、但し次回はビブリオバトル普及委員会理事の粕谷亮美さんをお迎えして、2016年3月6日に開催する予定で、私も既に申し込み済み。ご興味ある方はぜひ、梅田図書館へお問い合わせください。