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八雲中央図書館見学ツアー

―2010年11月15日のイベント
visit:2010/11/15

2010年11月15日、目黒区立八雲中央図書館の休館日を利用して、八雲中央図書館見学ツアーが開催され、私も参加してきました。ツアーは、私の記憶によると、10時から、13時から、15時からの3回だったかな。私が参加したのは15時からの回です。

応募者多数の場合は目黒区民を優先するとのことだったので、目黒区民ではない私は参加できるかどうかと心配していたのですが、応募締切後に八雲中央図書館から「15時からの回の応募者が2人しかいないので、よかったら他の回に振り替えられないか」という話がきたくらいでした(笑)。ツアーの開催が月曜なので、参加したいけどできないという人も多かったのでしょうね。

当日行ってみると、大人4名と子ども1名が参加しており、ちょうどいい人数。子ども1名は大人とは別に職員さんとマンツーマンでのツアーとなって、私達は大人4名で、公開書庫→閉架書庫→事務所→開架→検索機「さんまくん」の説明 というツアーを回りました。

§ 公開書庫

スタートは、八雲中央図書館の入口入って左に回りこんだエリアの公開書庫です。普段から利用者が入れる場所で、もちろん私も入ったことがありますが、ずらっと並ぶ参考資料の棚を回って興味があるものを手にとってみるくらいで、「使いこなす」からはほど遠い状態です。そんな資料の中からいくつかピックアップして、「こんな資料からはこんなことがわかる」などの説明をしてもらいました。

例えば、『朝日年鑑』は中身の統計や広告も資料価値が高いですが、各年並べて行くと戦中の刊行分で急に本の厚みが減るんです。書かれていることはもちろん、書籍というモノ自体も刊行当時を表す資料なんですね。また、大正13年の終わり頃に大正14年版が発行されるという形なので、『朝日年鑑 大正16年版』というものが存在するんです(1926年12月25日までが大正15年で、1926年12月26日からが昭和元年)。こういうのって、雑学としてどこかで披露したくなりますね(笑)。

昔の教科書がわかる資料としては、講談社の『日本教科書大系』や昔の教科書そのものを綴じた資料が紹介されました。ちょっと面白かったのが、『日本教科書大系』の中に、国語の教科書で横書きになっていたのがあったんです。いつの時代のものだったのかなど、詳しいところまでは見られなかったので、いつかじっくり見てみよう。

それら、あらかじめ机に広げて準備されていた資料の紹介のほか、ざっと公開書庫の棚を回りながら、「これはこんな資料で、あれはこんな資料で…」と説明してもらいました。タイトルを見れば、何に関する資料なのかはわかっても、「こうしたことを知りたい場合はこっちの資料、そうしたことを知りたい場合はあっちの資料」というのは、やはり専門の人でないとわからない。自分で探してみるのもいいけど、図書館のレファレンスも活用した方が目当ての資料に早く辿り着けそうです。また、そんなものが資料化されているの?!という資料もあったりして、私は心密かに「仕事を引退できる日が来たら、毎日図書館に入り浸ろう」と誓いました(笑)。

そうそう、公開書庫には入ったことがあるのに、説明してもらって初めて知ったのですが、公開書庫入って左の壁沿いの、『台湾日々新報』がずらっと並んでいる下の棚に、新聞の折込チラシが1998年分からずっと保存しているのです。『朝日年鑑』などを見た後に説明していただいたので、これらがいかに貴重な資料かがよくわかりました。モノの値段や求人募集の時給などが載っているチラシは、後になってその時代を知ろうとしたとき、すごく有益な資料になりますよね。ここは参加者皆が「おぉ、素晴らしい」といった反応をしていました。

§ 閉架書庫

公開書庫の次は、普段は職員さんしか入れないバックヤードへ。まずは閉架書庫に案内されたのですが、手前の方の棚には中高生向けのYA(ヤングアダルト)文庫がずらり。職員さんの説明によると、目黒区は各出版社のYA向け文庫の収集に力を入れており、欠番なく揃えているのだそうです。私、初めて知りました。目黒区立図書館さん、もっとその事実を宣伝した方がいいです(笑)!

その次には、“目黒区ならではの資料”ということで、昔の地図などをあれこれ広げて見せていただきました。江戸の町の古地図なんかだと、残念ながら目黒区は圏外になってしまうのですが、伊能忠敬の実測図とか、 陸地測量部が作成した地図とか、江戸時代の同じ場所の違う時期の地図を並べた資料とか、目黒区や東京の地図をいろいろと。近年の区画だけが書かれた地図を広げたときには、皆で「ここが目黒通りで、ここが駒沢通りで…」等々言いながら見たりして、楽しかったです。銅板の地図などは、絵としての美しさみたいなものまで感じました。

§ 事務所

お次は、職員さんが作業や事務仕事などを行う事務所です。入ってすぐ左に配送車の駐車場につながるドアがあり、その近くに他の目黒区立図書館へ配送する資料や、他の自治体と貸借している資料が、箱に仕分けされていました。目黒区立図書館のどこかで目黒区にはない資料を他の自治体から取り寄せる場合や、他の自治体が洗足図書館大橋図書館など八雲中央以外の目黒区立図書館にある資料を借りる際も、配送の窓口として八雲中央図書館を経由するので、配送用の箱もたくさん。

その先では、書籍の表紙をくるむフィルムを貼る台や、修理を終えてプレス機にかけられている書籍などを見せてもらいました。目黒区立図書館では、雑誌なども八雲中央図書館でフィルムを貼ってから、各館に持っていくのだそうです。そう、目黒区は各資料の蔵書館が決まっていない管理方法で、貸出・返却に使うバーコードを見るとよくわかるのですが、他の図書館では「江東区砂町図書館」のように所蔵館が書かれているところ、目黒区立図書館の資料は全て「目黒区立図書館」という表記です。こういう仕組みをとっている分、目黒区は中央館での作業量が多いのかもしれません。

事務室は、「あまりいろいろ見られると恥ずかしい」とのことで、この程度でした(笑)。そして、この後開架エリアに戻ってからも、中高生コーナーを説明した程度で終わってしまったので、その辺で予定時間が来てしまったのかな。公開書庫と閉架書庫で、結構盛り上がってしまいましたし(笑)。

§ 検索機「さんまくん」の使い方

見学ツアー部分が終わったのが16:10ほど、それから5分の休憩を挟んで、後半は図書館資料の検索機「さんまくん」の使い方です。あっ、今思ったけど、検索機に「目黒」を想起させる「さんまくん」という名前をつけているのも、目黒区立図書館の面白いところですね。他の区では、そもそも愛称がなかったり、”シラベルくん”(板橋区)、”はてなくん”(葛飾区)、”けんさくくん”(渋谷区)など、「探す・調べる」を想起させる愛称なんです。

他の参加者の方々も、普段からさんまくんをよく使っている様子だったので、ツアー内容としては基本編を飛ばして応用編とでも言いましょうか、“意外と知られていない便利な使い方”みたいな内容に。

さんまくんの「タイトル 巻次」は、実際には書誌情報の「タイトル」以外の部分も含めて検索するのだそうです。例えば「タイトル 巻次」に「松本清張」と入力して検索すれば、「松本清張が著者である本」も「タイトルに“松本清張”が含まれている本」も「内容に“松本清張”が含まれている本」も表示されます。また、松本清張が読みたいけど単行本は重いので文庫本がいいときなどは、「タイトル 巻次」に「文庫」、「著者」に「松本清張」と入れれば、松本清張の文庫本が表示されます。

検索条件に適う資料が複数ある場合、さんまくんは既定では出版年の降順、つまり新しい資料から順に表示するんですね(検索結果の画面から、「タイトル」順・「著者等」順などで並べ替えもできる)。たぶん、多くの図書館ではタイトル順の表示のはず、と思って、帰宅してから23区の図書館のネット検索をしてみたら、目黒区以外で既定が出版年の降順だったのは品川区・新宿区・文京区、それ以外は全てタイトル順でした。

また、図書館内のさんまくんは、目黒区立図書館の所蔵資料だけでなく、未所蔵の資料も検索できるのですが、インターネット上のさんまくんは所蔵資料だけを検索します。未所蔵の資料も検索できる仕組みは、杉並区立図書館などもそうなのですが、杉並区立図書館の方は館内検索機もネット上の検索も、未所蔵の資料を含めた検索ができる仕組みです。

目黒区立図書館で館内とネット上の検索をそのように分けている理由は、ネットには目黒区立図書館所蔵資料検索の他にも様々な検索手段があるので、広く検索した場合はそうしたものを使えばいい、むしろいろいろあるネット上であえて目黒区立図書館所蔵資料検索するということは、目黒区の資料こそが検索したいのだろうから、それに絞った検索をする。それに対して、館内での検索手段はさんまくんしかない(厳密に言えば、八雲中央図書館内にもネット閲覧PCがありますが)ので、探しものの手掛かりをたくさん提示できるよう、所蔵資料だけでなく未所蔵資料も検索するようにしたのだそうです。

この説明会では、単なる検索機の仕様だけでなく、「なぜこうした仕様にしたか」という話も聞けたのがよかったです。目黒区の検索システムは、どちらかというと「入力内容を元に、厳しく絞り込んでいく」というより、「入力内容を元に、関連する資料を広げて提示する」という考えて作られており、検索結果が多い場合でも使い勝手がいいようにしたとのこと。ただ、この点については、家に帰ってから23区立図書館のネット検索を全て試してみたところ、検索結果の1ページ表示最大件数に関して、さんまくんが100件のところ、大田区・墨田区・豊島区が300件、江東区では500件表示ができ、更に「全件表示」を選択して501件以上の表示もできるので、さんまくんが他の区立図書館に比べて抜きん出ているわけではないと思いますが。ともかく今回、システム設計の裏にある方向性を知ることができたので、たぶん私のさんまくん活用度も上がると思います(笑)。

§ 図書館ならではの資料の面白さ

今回のツアーは、“中央館である八雲中央図書館の充実した資料”を中心としたツアーで、あらためて「古い資料や希少な資料も揃えている」という図書館の特性を実感しました。これこそが書店やネットにはない、図書館ならではの面白さですよね。

個人的にも、ここのところ図書館滞在時間がとれず、このサイト用に館内の様子を見るので時間いっぱいで、じっくり資料を見る時間がなかったりしていたのですが、やっぱり図書館の主役は資料ですよね。しかも、閉架の館内閲覧ものにこそ、面白い資料がある。

また、最後おみやげ(?)に「目黒区の図書館 50年のあゆみ」をいただきました。なるほど、こういう資料は、図書館や区の資料として関係施設に備えておくだけでなく、こうしたイベントで配布するんですね。「目黒区の図書館 50年のあゆみ」は、守屋図書館に始まる目黒区立図書館の歴史はもちろん、それ以前の私設図書館や、図書館令による「図書館」の要件を満たしていない「文庫」のことも書いてあり、読み物としてもとても面白くてお薦めです。

あと、閉架書庫の中で紹介していただいた資料について、さんまくんでの検索結果の印刷(所在確認票)をホッチキスで留めて、各参加者に渡していただいたのもよかったです。たぶん私以外の参加者の方々も、次々と出てくる資料に目を奪われて、後でゆっくり閲覧しようにもタイトルをメモしたりはしていなかったと思うのですが、これを見せればすぐに請求できます。

終わってみて振り返るに、もっともっと図書館資料を楽しまなきゃもったいない!と思わされたツアーでした。とりあえず、このツアーに関するアンケートの回答を出しに、また八雲中央図書館に行くので、そのときに公開書庫の資料を堪能したいと思います。