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世田谷区立深沢図書館

世田谷区立深沢図書館 訪問記

last visit:2013/07/10

世田谷区立深沢図書館は、駒沢と等々力を結ぶ、駒沢公園通り沿いの深沢区民センターの中にある図書館。経営管理や商業経営の棚が書籍の出版年で分類されていたり、深沢在住の中川李枝子さんの作品を集めた「ぐりとぐら」コーナー、駒沢公園やオリンピックのことをまとめた「ふかふかコーナー」など、特色あふれる図書館です。

§ 図書館の場所

深沢図書館は、駒沢公園通り沿いにある赤いレンガの建物、深沢区民センターの地下1階です。最寄り駅の等々力駅からも1km以上あるので、歩くのが嫌いな人はバスで行った方がいいですね。「深沢区民センター」停留所を通る東急バスは、自由が丘から出ている自01、自02で、昼間でも10分に1本程度の割合で通っています。東急バスの「深沢不動前」停留所も、深沢区民センターから近くて、そちらですと、渋82(等々力~駒沢大学前駅~渋谷駅)、等11(等々力~世田谷駅~祖師ヶ谷大蔵駅)、等12(等々力~用賀駅~成城学園前駅)、恵32(用賀駅~恵比寿駅)が通っています。

また、深沢区民センターの北東に駒沢オリンピック公園があるので、お散歩を兼ねて図書館に来るのもいいと思います。駒沢公園に行く際、駒沢大学への通う学生の行き帰りの時間帯にかかると、正門付近が込み合いますのでご注意を。ちなみに、この駒沢オリンピック公園が昔はゴルフ場だったというのはご存知ですか?私は深沢図書館の「ふかふかコーナー」で知りました。図書館で東京オリンピックについての本を読んで、駒沢公園を歩きながら回想したりしても楽しそうですね。

§ 図書館内の様子

深沢区民センターは、上から見たときに扇形と長方形がくっついたような変わった形をしているので、図書館エリアもそのまま不思議な形になっています。世田谷区は、粕谷図書館なんかも図書館エリアが変わった感じになっていて、面白いですね。

階段を下って地下1階にいくと、右に家事関連本や育児本を集めた生活と暮らしコーナーがあり、左先にカウンター。カウンターの正面にCDコーナーや一般書架が広がっていて、左側が児童コーナー、一般書架の奥に新聞・雑誌コーナーと中高生コーナーがあります。扇形の弧の部分が児童コーナーの窓になっていて、新聞・雑誌コーナーと中高生コーナー辺りが扇形にくっついた長方形部分。でこぼこしていて面白い区画です。

カウンターの中に「ブックポストの誤返却本です」という棚があるのもユニークです。この棚にある本は、図書館の蔵書ではないのに間違えてブックポストに入っていた本なんですね。図書館にお勤めの人に聞いた話だと、寄贈本をブックポストに入れて済ましてしまう人もいるそうですが、それでは寄贈本なのかどうかもわからないので、本を寄贈する場合はきちんとカウンターに持っていきましょう。また、本当にうっかり自分の本を入れてしまった人もいるかもしれませんね。普段深沢図書館のブックポストをご利用で、持っていたはずの本がなくなってしまった人は、職員さんに聞いたら見つかるかもしれませんよ。

§ 一般書架

一般書架を見ると、そこに入っている本のジャンルを示す見出しが棚によって様々で、統一感がないと言えばその通りなのですが、そこにかえって歴史の長さを感じます。小説の棚では著者名が大きく書かれた見出しを使う一方、壁際の閲覧席に近い棚では小さくて謙虚な見出し、また場所によっては代本板のような厚みのある板を使って、棚を正面から見たときにもジャンル名がわかるような見出しを使っていたり。正面から見える厚みのある見出しというのは、23区の図書館を回った私も深沢図書館でしか見たことがないユニークな見出しです。

一般書架でユニークなのは、「336 経営管理」「338 金融・銀行・信託」「673 商業経営」の棚。このジャンルは更に小分類されているのですが、「2010年発行の本」「2011年発行の本」「2012年発行の本」といった具合に発行年で分類されているんです。発行年ごとに並んでいるビジネス書を見ると、「この頃これが流行っていたなあ」と振り返ることができて面白い。書店の棚と比べて最新の本ばかりではないことが図書館の面白みですが、その面白みを際立たせる分類ですね。

日本の小説とエッセイは一緒にして著者名の姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後にまとめられています。外国の小説は、国別分類はされておらず、“外国文学”でひとまとめにして、日本の小説と同様に、著者名の姓名による五十音順。日本の小説と同様に、複数作家による作品集は「ン」に分類されます。文庫本の小説も著者名の姓名の五十音順で並んでいて、複数作家による作品集は「わ」の後に出版社ごとに分類されています。

新書は、中公新書と岩波新書は文庫棚向かって右隣にまとまっていますが、それ以外の新書は単行本などと一緒にジャンルごとに分類されているのでご注意を。少し前から新書ブームで新書がたくさん発行されているので、新書の冊数に対して新書サイズが収まる棚が少なくなってしまったのかもしれませんね。

世田谷区の図書館は地域の特性を活かした棚を設置しているとのことで、深沢図書館では深沢の地域にちなんだ「ふかふかコーナー」を設置しています。CDコーナー内の落語カセットの上に、「深沢、駒沢公園そしてオリンピック」と題して、この地域のことを調べてまとめたコーナーがあって、これがなかなか読み応えあり。上で書いた“駒沢公園が昔ゴルフ場だった”という話も、私はここで読みました。東京オリンピックについても、ただその成果をまとめるだけでなく、円谷さんのオリンピック後のことも書いていたりして、じっくり読んでしまいます。

「ふかふかコーナー」という名前は「深沢」から来ているのでしょうが、おそらくこの「ふかふか」からの連想で、深沢図書館はヒツジを図書館のキャラクターとしています。児童コーナーの紙芝居や絵本の見出しはヒツジのマークですし、東京オリンピックなどに関連する書籍がまとめた「ふかふかコーナー」にもヒツジのマスコットがちょこんと置いてあります。ふかふかコーナーの資料としては、オリンピック全般や深沢地域に関する地域資料などもあります。駒澤大学への進学で上京した人なども、地域にちなんだ本をぜひ手に取ってみてください。

§ 児童コーナー

児童コーナーは大きな窓がある区画で、建物と周囲の間に空間があり、地階だけど外の光が入ってくるようになっています。窓沿いの棚に入っている絵本は、本の大きさによって青ラベル(小さい本)と赤ラベル(普通~大きい本)に分けたうえで、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、絵を描いた人の苗字の頭文字で分類されています。

児童読み物の並べ方は少し複雑で、著者の苗字の頭1文字と名前の頭1文字で分類記号が作られています。たとえば、「宮澤賢治」(みやざわ けんじ)なら「みけ」、「ミヒャエル・エンデ」なら「エミ」となります。それが、苗字の頭文字が「ア」の外国人作家の本→苗字の頭文字が「あ」の日本人作家の本→苗字の頭文字が「イ」の外国人作家の本…という順に並んでおり、頭文字と日本or外国が同じ人の中では分類記号順に並びます。たとえば、石井桃子(分類記号「いも」)が書いた本といぬいとみこ(分類記号「いと」)が書いた本はともに、苗字の頭文字が「い」の日本人作家の本の中に入り、順序としては「いも」と「いと」を五十音順に並べて、いむいとみこさんの本が前に並ぶようなかたちです。

文章で説明しようとしているから余計そういう印象になりますが、この分類方法は子どもには複雑で探しにくいように思います。学校の名簿なども五十音順なんだろうし、小さい子どもには姓から一文字、名から一文字なんていう凝ったことをせず、単純な五十音順の方がわかりやすいのではないでしょうか。外国人作家ともなると苗字が後になるのを姓・名に直すのでさえ子どもには難しいし、その上さらに一字ずつ拾うとか余計な作業が加わるとわかりにくくしているだけのような気が。児童コーナーでは、「読めと言われた本を読む」のではなく、「自分で読みたい本を読む」ことを促すためにも、子ども自身が本を探しやすい棚づくりが大切だと思うし、そういう意味では単純な五十音順の方がいいように思います。

児童コーナーの中でカウンターに一番近い辺りには、「ぐりとぐらコーナー」があります。『ぐりとぐら』シリーズの絵本のほか、『たんたのたんけん』『いやいやえん』といった本もあるので、実質的にはそれらの作者の中川李枝子さんコーナーという感じですね。この「ぐりとぐらコーナー」には説明がないので、どうして深沢図書館にこうしたコーナーが設置されたのかわからなかったのですが、深沢区民センター入口入ってすぐ左の掲示板にその理由が書いてありました。中川さんが深沢在住なのだそうです。深沢図書館さん、建物入口だけでなく、ぜひこのコーナー自体にその旨の説明を書いてください!

「ぐりとぐらコーナー」には中川さんの作品だけでなく、中川さんの色紙も飾ってあります。1990年9月29日と書かれた色紙はたぶん講演か何かで深沢図書館にいらしたときに書いたのかな。2010年4月に書かれたものもあって、これは「ぐりとぐらコーナー」設置にあたってお願いした色紙なのではないかと思います。『ぐりとぐら』シリーズの絵本は同じものを複数所蔵しているので、友達同士で同じ本を借りたくなっちゃっても大丈夫です。

§ 工夫を凝らしても、派手に宣伝はしない、シブい図書館

深沢図書館って一見すると普通のよくある図書館なのですが、よく見るといろいろ特徴があって面白い。「ぐりとぐらコーナー」も「ふかふかコーナー」も色使いなどがそれほど派手ではないので、下手すると見逃してしまいそうなくらいなんです。謙虚に工夫を凝らす、シブい図書館です(笑)。

書籍の出版年による分類方法もユニークで、これは私は深沢図書館以外では世田谷図書館のパソコン関連の棚でしかみたことありません。私の勝手な推測では、世田谷図書館から深沢図書館へと異動した同一人物がこの分類をしたのではないかと睨んでいます。

深沢図書館って、2008年に行ったときはそんなことはなかったのですが、2011年に行ったときにはカウンターの職員さんが立って対応しているのですね(たぶん、利用者がカウンターに立って向かうのだから、職員も立って対応すべきだという発想なんだと思います)。で、世田谷図書館は昔行ったとき(2008年以前)、職員さんが立って対応していたのですが、今は普通に座っている。そこで、私の推理として、出版年分類の職員さんと立って対応推進派職員さんは同一人物で、その方が世田谷図書館から深沢図書館に異動したのではないかと。まあ、同一人物がそれをもたらしているという証拠は何一つないのですが…(笑)。

ちなみに、この出版年分類も、むやみに導入するわけではなく、「経営管理」「金融」「商業経営」などの時代による流れが速いジャンルを選んでいるところがさすが。書籍の中身だけでなく、本の並びが時代の流れを表す情報になっているというのは面白い。これらのジャンルの本を読む際は、本を手に取ってすぐ棚を去ってしまうのではなく、ぜひ棚を眺めてみてください。

派手に宣伝していない工夫を凝らしてくれる図書館って、何とも図書館マニア心をくすぐるんですよね(笑)。次に行くときも、何か新しくなっているところがあるかなと楽しみだし。実は個人的にも、深沢図書館が23区の公立図書館制覇を達成した最後の図書館なので、ちょっとした思い入れがあります。私が発見できていない工夫もまだまだありそう。深沢図書館をご利用の皆さん、工夫あふれる書棚をたっぷり堪能してください!

世田谷区立深沢図書館 データ

住所東京都世田谷区深沢4-33-11 深沢区民センター地階 →Google Mapで見る
Tel03-3705-4341
開館時間
火~日曜9:00~19:00
祝休日、12月28日・1月4日9:00~17:00
定休日月曜(祝日は開館し、翌日を休館)
12月29日~1月3日
最寄駅 東急大井町線 等々力駅から徒歩24分
東急田園都市線 駒沢大学駅から徒歩26分
駐輪場建物北側(入口向かって左側)に駐輪場あり
駐車場建物北側(入口向かって左側)に一般用駐車場3台分、障害者用駐車場1台分あり
所蔵資料
図書所蔵数80,021冊(2021/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和3年度版』※団体貸出センターの図書数は中央図書館の図書数に加算
音声資料
CDカセットレコード
あり落語のみありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物入口向かって左に、上部が白、下部が水色の箱型ブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機自動貸出機2台あり
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用壁際の机席のうち手前の6席で持参PCの利用可能。電源なし。
LAN接続館内に「docomo wifi」「ソフトバンク wifi」「フレッツスポット」のアクセスポイントあり
飲食設備等なし