足立区立やよい図書館
以下は、休館前の足立区立やよい図書館の訪問記です。
足立区立やよい図書館 訪問記
足立区立やよい図書館は、五反野駅の北にある、足立区中央本町センター内の図書館です。毎月2回のビブリオバトル開催は、東京都内で最も開催頻度が高い図書館の一つです。足立区立図書館の中で「詩」を担当しており、詩集が充実しています。
やよい図書館は東武伊勢崎線の五反野駅から歩いて約10分の足立区中央本町センターの3階にあります(詳しい道のりはこちら)。公立図書館の中には、現在の地名ではない名前が付けられているものがいくつかあり、やよい図書館もそのうちの一つです。ただ、やよい図書館の500m西には足立区立やよい保育園があったり、300m北西にやよい公園があったりと、施設名としては「やよい」が点在しています。
ちなみに、最寄駅名の五反野も現在の地名とは関連がありません。東武鉄道公式サイトの五反野駅ページによると、「江戸時代には綾瀬村の一部である新五郎新田の小字で「五段野」ともいわれ」というのが駅名の由来だそうで、やよいも昔の地名なのかな。いつか調べてみたいと思います。
足立区中央本町センターの3階全体、L字状の区画がやよい図書館となっています。階段・エレベーターから図書館エリアに入ると、正面にカウンターがあり、カウンターの前に児童コーナーが広がり、その先が新聞・雑誌コーナー。その奥の一般書架の途中から区画が右へ曲がり、一番奥に読書室があるという並びです。
L字型というシンプルな区画である上に、棚の見出しも大きいので、何がどこにあるのか把握しやすいです。新聞・雑誌コーナーにソファが20席、読書室に机席が64席、そして書棚の脇にも小さな椅子があり、図書館規模に対して座席が充実しているのも過ごしやすい。使い勝手のいい地域図書館です。
やよい図書館のキャラクター「にゃよい」も可愛いです。本を帽子のようにかぶった猫(だと思う)で、ぬいぐるみにもなっています。イベントや展示に登場しているので、やよい図書館にお越しの際にはぜひチェックしてみてください。
カウンター前に広がる児童コーナーは、窓寄りに絵本や児童読み物、通路寄りにちしきの本が並ぶという配置になっています。カウンター側の角は靴脱ぎスペースになっていて、子どもが床にぺたんと座って絵本を広げることができます。
一般向けの本のうち、育児雑誌は新聞・雑誌コーナーではなく、児童エリアの靴脱ぎスペースの0~2歳向け絵本の裏側に、妊娠・出産や育児に関する本も、一般書架ではなく、靴脱ぎスペースの端(図書館事務室入口向かって右)にあるので、これらの本・雑誌が読みたい人はご注意ください。妊娠・出産や育児に関する本の下段には、「読み語りおすすめ絵本」「パパ・ママおすすめ絵本」というコーナーがあり、「パパ・ママおすすめ絵本」とは、パパ・ママにお薦めの絵本なのか、パパ・ママからのお薦め本なのか、一体何だろうと思って見てみたら、出産に関する絵本でした。コーナー名はややわかりにくいですが、「生まれる」ってどういうこと?とお子さんが聞いてきたときなど、親子で一緒に読んでみたい絵本です。
児童エリアの棚を見ていて思ったのが、児童向けノンフィクションの棚の分類が細かいこと。ノンフィクション読み物で一括りにして、著者名順にしている図書館もあると思いますが、やよい図書館では「犬」「動物」「仕事」「病気」「障がい」「災害」「その他」と細かく分類されています。「動物」とは別に「犬」だけの項目があることに、犬にまつわる児童向けノンフィクションの本の多さを感じます。
児童向け読物の本は、日本人作家・外国人作家ごとに著者名順に並んでいる棚とは別に、朝読書向けの本を集めたコーナーがあります(新聞・雑誌コーナーの雑誌ラックの裏の棚)。少し古い資料ですが、第二次足立区子ども読書活動推進計画によると、足立区の小・中学校の半数以上が学校全体で朝読書の時間を設けているそう。朝読書に読む本に迷ったときは、この棚から選んでみるのもいいでしょう。また、児童向け読物のうち、推理もの・冒険もの・こわい話も、著者名順に並んでいる棚とは別になっているので、読みたいときはご注意ください。
シンプルに本棚が並ぶ一般書架は、配置図が点在していることもあり、何がどこにあるのかわかりやすいです。日本の小説は著者名の姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後に並んでいます。外国の小説は、国・地域別に分類したりせず、“外国小説”でひとまとめにして、著者の苗字の頭文字で分類しています。
本選びの際に見ておきたいのが、本の購入時についてくる帯。図書館で本の表紙をコーティングするときに、購入時についてくる帯はとってしまいますが、本選びの参考になる情報が書いてある帯については、本の表紙を開いた見返し部分に帯を貼ってくれているんです(全ての本に貼ってあるわけではありません)。文庫本小説は裏表紙にあらすじが書いてあったりしますが、単行本はキャッチコピーや推薦文が帯に書いてあることが多く、それを除いてしまうと本選びの手がかりがかなり失われてしまう。それをきちんと本に関する情報として、貼っておいてくれているというわけですね。書棚の中からどれを読もうか迷ったときには、ぜひ本の見返しをチェックしてみてください。
一般書架の法律などがある棚の一画には「ビジネスコーナー」があり、「企業・経営」「経営管理」「労働問題」「資格を取る」という項目で本を分類しています。これとは別に、一般書架の該当ジャンルの棚にも本があるので、これらのジャンルの本を読みたい方は、両方の棚を見るのがいいと思います。この手のビジネスコーナーはよくありますが、私の意見としては、どういう本をビジネスコーナーに置き、どういう本を一般書架に置くのかはっきりしないと、探すべき棚をむやみに増やすだけのように思います。
また、ビジネス関連で行っている足立区立図書館のユニークな活動は、図書館に「ビジネス相談 カード投書箱」を設置し、相談内容を書いた用紙を入れるとあだち産業センターに回送されて対応するというもの。やよい図書館は、カウンター向かって左端にこの投書箱があります。特に相談事がないという方には、産業情報室が隔月で発行しているビジネス関連図書情報小冊子『ほんナビ!』。B5用紙1枚両面に本の紹介やビジネス本に書いてあることの実践例などが詰まっており、やよい図書館でも検索機やコピー機がある辺りで配布しています。
パソコンやネットに関する本は、従来の図書分類法ではいろいろな分類に分かれてしまいます。それを補うために、独自のパソコンコーナーを作って1か所にまとめてくれている図書館もありますが、やよい図書館では従来の分類に従って、Word・Excelなどのソフトやプログラミングに関する本は007、インターネット・SNSに関する本は547、スマートフォンに関する本は694と分かれています。これらのジャンルの本を探すときには、ご注意ください。
足立区立図書館には、各館ごとに特に収集しているテーマがあり(そのテーマにどれくらい注力しているかは、館によってまちまちですが)、やよい図書館のテーマは「詩」です。以前は、児童向けの詩集も大人向けの詩集も一緒にした詩のコーナーがありましたが、今は児童向けの詩集は児童エリアに、一般向けの詩集は、読書室へと通路が右に曲がる角の辺りにあります。一般書架にも詩という分類がありますが、ざっくり言って、詩について書かれた本が一般書架、実際の詩集が通路の角の棚という分け方をしています。見たところ、詩だけでなく短歌や俳句についての本も、地域館にしては多い気がします。
詩集の棚には、谷川俊太郎、中原中也、まどみちおといった、著名な詩人の作品のほか、「詩とファンタジー」のような詩の雑誌や、海外の詩集も揃っています。個人的にお薦めなのが、『空が青いから白をえらんだのです』『世界はもっと美しくなる』の2冊。どちらも奈良少年刑務所の受刑者による詩集で、少年刑務所の更生プログラムで書かれた作品を集めた本なのですが、淋しさがびんびんと伝わってくる。涙もろい人は館内で読まずに借りて読んだ方がいいくらい、心が掴まれます。
奥の読書室は、2017年まで指定席制でカウンターへの利用申込が必要でしたが、2018年から申込不要で自由に利用できます。正式には2018年1月から3月までが申込不要制の試行期間で、4月から本格的な申込不要制にするそうですが、既に皆さん自由席として利用しています。2人ずつ並んで座る長机が部屋いっぱいに並んでおり、机の中央には2席の境界線がテープではっきり区切られているので、知らない人と隣り合わせになってもトラブルは起きにくいかもしれません。1人分の机面積も比較的広いです。
この読書室は、図書館の資料を閲覧するための席で、図書館資料を使わない自習はできません。2階の地域学習センターで、使われていない教室を学習室として開放していることがあるので、自習をしたい方はそちらをご利用ください。
「ビブリオバトル」という本の紹介コミュニケーションゲームをご存知でしょうか。「人を通して本を知る.本を通して人を知る」をキャッチコピーに全国的に広まっているゲームで、仲間内で楽しまれたり、書店や図書館で参加者を広く募って開催されています。詳しいルールはビブリオバトル公式サイトをご覧いただくとして、やよい図書館では毎月2回のビブリオバトルを開催しています(開催日は、足立区中央本町地域学習センターウェブサイトのページ下方の「ビブリオバトル」に掲載)。
この月2回という頻度は、東京都内の図書館では最も開催頻度が高く、図書館以外の主催者を入れてもかなり高い方だと思います。ちなみに、足立区立梅田図書館でも月に2回のペースで開催していますが、開催方法が微妙に違います。やよい図書館では、基本的には参加者全員が本を紹介するバトラーとなって楽しむかたち(見学も可能)で開催、参加者が2名以下だったら職員さんもバトラーとして加わってゲームを行うやり方をしている一方、梅田図書館では基本的に職員さんがバトラー、その場に集まった人が観覧参加者になってゲームを行い、参加者の中にバトラー希望の人がいたら職員さんに代わってバトラー参加をするというやり方で行っています。
やよい図書館では、いつもは2階のフリースペースで開催しているところ、偶数月の第3土曜は、五反野駅とやよい図書館の中間付近にあるカフェ・絵瑠座に場所を移すなど、工夫を凝らした開催をしているので、ぜひ参加してみてください。
やよい図書館の書架を巡っていて楽しいのは、棚のあちこちに「やよいBook Garden」と題したミニ展示コーナーがあること。書棚の中の小さなスペースを活用して、それぞれテーマに沿った本を数冊紹介してくれています。雑誌ラックの空きスペースにも新書の展示をしているのも目を惹きます。雑誌を利用する来館者は多く、そうした場所で小さな展示をすれば、特に展示を見ようというつもりがない人へもアピールできますね。
児童コーナー付近の通路沿いには、中央本町センターの情報誌「オアシス」内の「読書の窓」コーナーと連動した展示スペースもあります。センターの情報誌にやよい図書館からのお薦め本紹介コーナーがあり、その掲載本を展示しているので、「オアシス」を読んで気になった本があったら、ぜひこのコーナーへ。最新号の紹介本だけでなく、過去数か月分の紹介本を揃えています。
ティーンズコーナーでは、中高生による手描きのPOPが棚を飾っています。POPを書いたのは図書館のティーンズボランティアで、募集要項をみると、POP書きに限らず、これがやりたいということを申し出て参加できるとのこと。こんな企画はどうかなというアイデアをお持ちの中高生は、ぜひ応募して私たち大人の利用者も楽しませてください!
ティーンズコーナーの脇にある回転棚には「教科書に出てくる本」とあり、棚の上下がそれぞれ回転する棚の下段に中学校の教科書に登場する作品が集められています。現役の中学生には、一部だけ教科書に抜粋されている作品の全部が読めますし、大人にとっては「今はこんな作品が教科書に載っているのか」という発見があるコーナー。太宰治、三島由紀夫のような文豪もいれば、あさのあつこ、角田光代、三浦しをんといった最近の人気作家の作品も並んでいます。私が挙げた例もそうなってしまいましたが、昔の作家には男性が多く、最近の作家には女性が多く掲載されているということも感じます。
もう少し大きい展示スペースもあり、L字の曲がり角の内側の壁でテーマに沿った本を並べているほか、入口から児童コーナーへ入る付近にも小さい棚にテーマに沿った本を多数並べています。人がよく通るところに設置されているのですが、やよい図書館は通路が広いので、立ち止まって見ていても他の人の邪魔になりにくいのが嬉しいです。
図書館に来たなら、これを読みたいと決まっている本以外にも、何か面白い本に出会いたい。やよい図書館は、そんな気持ちにたくさんの展示コーナーで応えてくれています。本棚のあちこちに寄り道して、たくさんの本と出会いましょう。
足立区立やよい図書館 データ
以下は、休館前の足立区立やよい図書館のデータです。
住所 | 東京都足立区中央本町3-15-1 足立区中央本町センター3階 →Google Mapで見る |
Tel | 03-3852-1433 |
開館時間 | 9:00~20:00 ※12月28日・1月4日は9:00~17:00 |
定休日 | 月末日(土・日曜・祝日の場合は開館し、直前の金曜に休館) 毎月1回施設点検日 12月29日~1月3日 |
最寄駅 | 東武伊勢崎線 五反野駅から徒歩11分 |
駐輪場 | 建物向かって右奥に駐輪場あり |
駐車場 | 建物向かって右に、一般用駐車場18台分、障害者用駐車場1台分あり |
SNS等 |
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所蔵資料 | |
図書所蔵数 | 61,658冊(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』) |
CD所蔵数 | なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』) |
DVD所蔵数 | なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』) |
ビデオ所蔵数 | なし(2023/03/31現在、出典『足立区の図書館 令和4年度事業報告書』) |
設備 | |
ブックポスト | 建物入口向かって右に、上部が白、下部が水色のブックポストあり |
自動貸出機 | なし |
自動返却機 | なし |
セルフ予約受取 | なし |
図書の除菌 | 書籍消毒機「デンネツ殺菌ブッククリーンCOCOCHI」あり |
音声試聴設備 | なし |
映像視聴設備 | なし |
ネット閲覧PC | 図書館エリア入って右手前にネット閲覧PC1台あり。30分ごとの区切り(x :00~x:30、x:30~y:00)を1回として利用する仕組みで、次に待っている人がいなければ延長可能。利用は19:30まで。 |
持参PC利用 | パソコン利用席で持参PCの使用可能。電源あり。 |
LAN接続 |
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飲食設備等 |
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