ブラインドブックフェア 2015
visit:2015/11/04
図書館には膨大な本がある。それなのに、好きな作家の本は全部読んでしまった、この図書館にあるこのジャンルの本は全部読んでしまって読む本がない、と思ってしまうことはないでしょうか。せっかく図書館にいろいろな本があるのに、いつも見る棚は同じで、図書館全てを使いこなしていない人も多いと思います。そんな人にふだんは手に取らない本を読むきっかけを作ってくれる「ブラインドブックフェア」という企画を、杉並区立阿佐谷図書館で実施していると知り、どんな企画なのか見に行ってきました。
阿佐ヶ谷図書館の入口を入ると、すぐ右に可愛いカバーのかかった本が並んでいます。これがブラインドブックで、カバーは阿佐谷図書館と同じ杉並区の成田図書館との共同オリジナルカバーだそう。このブラインドブックとは別に、カバーだけ使いたい場合は、カウンターに言えばいただけるようです。
それぞれのカバーの表紙部分には、職員さんによるその本のお薦めコメントが貼られており、借りたい人は中身を見ずにコメントで本を選ぶというわけ。杉並区は蔵書バーコードによる貸出管理をしているので、よく見ると裏側はバーコード部分だけカバーがくり抜いてあり、そこをスキャンすればカバーをかけたまま、つまり書名が秘密のまま貸出ができるようになっています。
こうなると、気になるのはどんなコメントの本があるのか、ですよね。私が行った、2015年11月4日(実施2日目)の時点でコーナーに置かれていたブラインドブックのお薦めコメントを挙げていきましょう。
このお話を知らなくても、登場人物たちの言葉を読めば、きっと勇気がわいてくる。 |
啄木くん。褒め称えたくはないけど、魅了的だわ君の生き様。 |
幸せな家族を作ったあの人の素顔が新鮮であり、昭和時代の懐かしさがこみあげる。 |
ちょっとおしゃれなおもしろ雑貨に、心ときめきます。あちこち旅にもでたくなりました。 |
女子高生マジシャンが推理します。女子高生って大変なのね(いろんな意味で) |
昔ながらのものだけど、この本を読んだらさらにお茶漬けの幅が広がりそうです。 |
生き辛そうな性質と、特別な能力を持った青年の手配。見えない世界が見えてくる。 |
若者の愛情→情熱→熱気が詰まった小説。伝統芸能の舞台に引き込まれます。観劇あれ。 |
夢を追うこと。それを支える家族の想い。愛のつまった天使のケーキの味は? |
ノー天気な若当主と彼の執事。皮肉とユーモアを含んだ数々の作品は超オススメです。 |
無くてもこまらない、でも知っているとちょっとホッコリ。 |
大文豪○○○の66の言葉。作者から○○○へのラブレターのような1冊。 |
語られる意外な職業が魅力的。そして不思議。独特の時間が味わえます。 |
本を読む→自分を省みる→生活の中で活かす⇒東京五輪での「おもてなし」になる |
女性偉人達の転職は、やっぱりドラマティック。自分と比べてもよし、伝記としても楽しめます。 |
推理小説の定跡に当てはまらない、冒険活劇。読後感は爽快です。 |
がんばってもがんばってもだめ。そんな時そっとよりそってくれることばと出会えます。 |
人類として我がDNAの足跡をたどってみようと思うのです。 |
季節を表す言葉や色の名前は繊細で美しくイラストと共に楽しめます。 |
自分一人。決断の連続。「生きて帰れた…。」生死を感じても挑みつづける冒険は人生。 |
女性として共感しつつ、時折頭をガツーン☆とされました。 |
日本神話とSF(サイエンスフィクション)の融合。カッコいいSFを堪能できます。 |
読み終わり、ふと気づいたらこの本を片手に見物に行きたくなっている自分がいました。 |
数の不思議、旅先でのでき事、飼い犬の愛らしさなど、細やかにえがかれたエッセイです。 |
だれもが知る作家について書かれた本。ざっと読むもよし。いま手にして外に出よう。 |
知性と感性を磨くエステサロン。頭と心をほぐし、ちょっと栄養補給しに行きませんか。 |
こんなに可愛いコたちに見つめられたら恋に落ちてしまいそうです。 |
七十歳。余命二年。しかし涙も絶望もない。辛辣に生き生きと死に向かうエッセイ。 |
人それぞれ「何をしてきたか」より「何をしたいか」「どう生きたいか」ですよね。 |
誰もが耳にしたことのあるあの名曲は、こんな小さな奇跡によって生まれていたんです。 |
人間と犬をめぐる悲しくせつない物語。誰でも聞いたことのある古典がモチーフのお話です。 |
数が限られているので、ブラインドブックの貸出は1人2冊までとのこと。中学生以上を対象とした企画だそうで、確かにあまり小難しそうな本はなさそう。私個人は杉並区立図書館に利用登録できる在住・在勤条件ではないので借りられませんが、ふだんの図書館利用に加えてプラス1冊中身がわからずに借りるのにちょうどいい感じ。本そのものが展示されているので、厚みや大きさがわかるのも借りやすさに繋がっています。このブラインドブックフェアは2015年11月3日から11月9日までですが、用意したブラインドブックがなくなったら、11月9日を待たずに終了するので、借りてみたい本がある人はお早めに阿佐谷図書館へ。
ただ、一つ種明かしをしてしまうと、阿佐谷図書館のブラインドブックフェアは、カバーをかけて表紙を覆っているだけなので、本を開いてしまうとタイトルがわかってしまうんです。こうした「中身を秘密にして本を貸し出す」企画は、いろいろな図書館で実施しており、大抵の場合は、袋に入れる、本全体をラッピングするなどして中を開けないようにしているのですが、阿佐谷図書館の場合は中を見ようと思えば見ることができてしまいます。実際、私がいたときも、中学生くらいの女の子が気になるブラインドブックを次々開き、中を確かめたうえで1冊借りていきました。
まあ、借りたい人が企画の趣旨を楽しみたければ、中身を見ずに選べばいいだけですし、借りる2冊を決めたうえで更に気になる本があったら、中身を見て企画の後で借りるのもよし。実際、本を選ぶときは、表紙デザインや色褪せ具合など、中身以外の要素にも大きく左右されるところ、それを隠して選ぶといつもと違う本を読むきっかけになります。図書館の幅広い蔵書を更に使いこなす導きとなる企画、ご興味ある方やぜひ借りてみてください。