第52回読書会『クロティの秘密の日記』
visit:2014/06/07
北区中央図書館で毎月第1土曜に開催されている読書会、2014年6月に開催された第52回の課題本は『クロティの秘密の日記』でした。「秘密の日記」という言葉にそそられて読んだところ、南北戦争以前のアメリカで奴隷として働かされていたクロティを主人公にした物語で、重くもあり、でも、勇気をもらえる素敵な本です。
読書会のスタイルとしては、皆で輪になってテーブルにつき、一人ずつ感想を言っていくかたちです。今回は作品への評価が皆高かったですが、回によっては面白かったという人とつまらなかったという人に分かれることもあります。でも、そうした意見がそれぞれ尊重される、いい雰囲気なのです。ときには、本を最後まで読み切れずに参加する人もいたりする、いい意味で自由な読書会です。ただ、皆の感想の中でネタバレはしてしまうので、最後まで読み切れずに参加する場合は、そこは覚悟して来てください(笑)。
>読書会の魅力は、自分と違う世代、違う仕事をしてきた人、違う興味を持っている人の感想を聞くことで、視野が広がること。自分と本とが1対1の関係で向かい合っているのが、皆の感想を聞くことで、横から、斜めから、裏からと、いろんな視点から本を読み解くことができるのです。今回は11人の参加だったので、 11の視点で本をとらえることができるというわけです。一例を挙げますと、クロティは文字を覚えることを禁じられた奴隷でありながら、ぼっちゃんの勉強の際にうちわで煽いであげる仕事を命じられていることを利用して、勉強の内容を盗み見しながら文字を覚えていきます。文字を覚えることを禁じられているということは、知識・情報を与えないということであり、私はそのひどさに憤慨ながら読んでいたのですが、別の方の感想を聞くなかで、白人側にとってのメリットがほかにもあることに気づかされました。その方は物語が日記形式であることに注目して、物語の様子をカレンダーにまとめるという手の込んだ読み方をしていたのですが、文字にはこうした「記録」という側面もあるんですよね。読書会に参加することで、文字を禁じることは、記録を禁じることでもあるということに気づかされました。
その他にも、ご年配の方からは、ご自分の人生のなかで実際に接したことのある字が読めない人の話を聞かせていただき、この社会で字を読めないということがどんなに可能性を狭めてしまうかを教えていただきました。また、別の方からは、差別を扱った本のなかでも日本人が加害者とならない物語だと安心して読めるという指摘もあり、こうした物語の感想を覚えておきながら日本が関係する物語を読む必要性も感じました。
いつもは、こうして本の感想を言い合った後に、今後の課題本の候補を話したりするのですが、今回はお一人の感想がきっかけで、8月に通常の読書会とは少し異なるイベントを行うことが決まりました!こちらの読書会は子どもへのおはなし会に携わっている参加者が多いこともあって、児童文学が課題本になることが多く、私にとっては自分では手に取ることのない本を読むきっかけになっています。で、その方も普段は純文学を読むことが多くて読書会のおかげで他のジャンルを読むようになった、その「他のジャンル」を何と呼べばいいのかという話から純文学とは何かという話にもなり、それが膨らんで8月にいつもと違う読書会をすることになったのです。
この読書会は、主催が北区中央図書館、企画・運営が北区図書館活動区民の会ということで、こうして参加者のアイデアから企画が生まれることがある。図書館が提供してくれるものを受動的に楽しむのではなく、本の楽しみ方を自ら考えて実現させていく、また、こうした新しい企画で新しい参加者さんへの門戸も意識しているところがこの会の素晴らしさで、北区民ではない私が毎月参加するのも、そうした会の雰囲気に惹かれているからだと思います。
さらに、図書館のやりやすいかたちで企画運営したほうが図書館にとっては楽で、実際にほとんどの館ではそうしているところ、こうして利用者の企画を実現させてくれる北区立中央図書館の気概も感じます。23区ではここ数年の間に中央館・中心館の新築ラッシュで、それに伴う図書館の方針などを読むと区民との協働を謳っているところが多いのですが、北区はそうした文言を建前ではなく実現させています。
イベントの詳細については、図書館からの公式発表(7月の図書館広報誌に載ることになるはず)があるまでは控えておきますが、課題本を設定するのとは違う方式で、どんな会になるのか私も楽しみ。聞いたところによると、以前も8月はいつもと違うスタイルの読書会をしてい多層で、普段とは違う参加者も来るかもしれないなとわくわくしています。
と、次の次の話を先にしてしまいましたが(笑)、7月にも読書会は開催する予定で、そちらの課題本は『ビーバー族のしるし』です。今回の読書会の終わりに本の推薦者さんから、「本当に面白いのでぜひ読んで欲しい!」という一押しがあったので、いつもに増して読むのが楽しみ。また、児童文学ということもあり、中高生や小学生の感想も聞きたいです。一つの物語に対する見方を広げることができる読書会、少しでも興味を持った方はぜひご参加ください。