怪盗iの挑戦状(2018年)

―2018年7月20日から8月31日までの企画
visit:2018/08/01
§ 謎解きとビンゴゲームが合体した子ども向け企画

稲城市のiプラザ図書館で夏休み期間(2018年7月20日から8月31日まで)に実施している「怪盗iの挑戦状」に行ってきました。図書館での謎解き企画には、休館日の図書館を舞台に友達とワイワイ相談しながら解ける劇場型や、通常開館中の図書館に隠されたヒントを探して解く周遊型がありますが、こちらは周遊型の謎解きと、図書館利用によってマスが埋まるビンゴが混ざった企画です。内容としては子ども向けで、夏休み期間に子どもたちが図書館利用を楽しむアイデアが詰まっています。

iプラザ図書館の児童エリアに行くと、児童読み物の棚のうち一番絵本コーナーに近い棚で、怪盗iの挑戦状を配布しています。シルクハットとマントでキメている怪盗iが描かれた表紙を開くと、「青いレシートを手に入れる」「怪盗iの挑戦状 おたより編を解く」「おはなし会に参加する または 怪談えほんシリーズ原画展を見にいく」「iプラザとしょかんの展示に参加する」などのミッションが書かれたビンゴがあり、カウンターでミッションをクリアしたことを示すとそこにシールを貼ることができます。

内容を見ると、特定の曜日しかクリアできないミッションもあり、1日で挑戦状を解いてしまうのではなく、夏休みを利用して図書館に通って欲しいという職員さんの思いを感じます。実際、私がiプラザ図書館にいた30分ほどの間にも、後述する「怪盗iの挑戦状としょかん編」を解いている子どもを何人か見かけました。全てのミッションをクリアしなくても、クリアした数によってプレゼントをもらえるのですが(プレゼントをもらえるのは小学生以下)、ここはぜひ全ミッションクリアを狙って欲しいです。

§ iプラザ図書館に通う子どもにはお馴染みの「おたより編」

ビンゴに書かれたミッション「怪盗iの挑戦状 おたより編を解く」は、iプラザ図書館の児童向け広報誌「iプラザとしょかんだより」の2018年7月号に掲載された問題3つを解くことです。推理力や論理力が必要な問題で、難易度としては小学校中学年から高学年向けくらいかな。低学年以下のお子さんの場合、保護者の大人が手伝ってあげないと難しいかもしれません。

児童エリアで配布しているiプラザとしょかんだよりバックナンバーを見ると、この号に限らず、全ての号に「怪盗iの挑戦状」が掲載されていました。いつもは1問だけの出題で、間違い探しやアイテム探しなど、小さいお子さんでも解ける問題のところ、今回は問題数を増やし、難易度を高くしたかたちです。私は、稲城市立図書館ウェブサイト稲城市立図書館twitterアカウントでこの企画を知って来てみたのですが、iプラザ図書館に通っている子どもにとっては、<図書館だよりでいつも見ているコーナーの夏休みスペシャルバージョン>だったというわけ。稲城市立図書館全体の広報誌を見ると、去年も同様の企画を行ったようです。

逆に、今まで本そのものに目が奪われて、図書館だよりがあることを知らなかった子にとっては、この謎解き企画をきっかけに、図書館だよりにも目を通すようになるかもしれません。普段から児童向け広報誌に簡単な問題を掲載しているのも、新刊情報やイベント情報の掲載だけでは手に取らない子どもの目を惹く工夫だと思います。

§ 館内に隠された星を探す「としょかん編」

ミッション「怪盗iの挑戦状 としょかん編を解く」は、ヒントをたよりに図書館の中に隠された7つの星を探して、それぞれの色を答える問題です。例えば、「宇宙について調べてみよう!宇宙人っているのかな?」というヒントを手掛かりに、宇宙に関する本がある棚に行って、その近くにある星を探すといったかたち。大人には見つけづらい場所にある星も多いので、このミッションは子どもの腕の見せどころです。

これは大人・子どもに共通することですが、図書館によく行く人でも、自分が好きな本がある棚ばかり見ていて、それ以外の本には目も留めなかったりしませんか。謎解き企画をきっかけに、いつもは見ない棚を見てみると、「こんな本もあるんだ」「読んでみようかな」という発見に繋がります。

また、ヒントの一つが青い鳥文庫なのですが、iプラザ図書館では、著者名五十音順に並んでいる児童読み物の棚とは別に、青い鳥文庫や岩波少年文庫など、児童向けの文庫を集めた棚があります。図書館にはこういう「同じジャンルでも、特定のシリーズだけ別の場所に置く」ケースがよくありますが、その棚の存在を知らなければ見逃しがち。謎解き企画をきっかけに、どの本がどの棚にあるかを知れば、本との出会い広がります。ミッションは1日でクリアする必要はないので、星を探しているうちに面白そうな本を見つけたら、積極的に本を開いて欲しいです。

§ 図書館設備を活用したミッション

ミッションのなかで面白いと思ったのが、「黄色いレシートを手に入れる」「青いレシートを手に入れる」など、色のついたレシートを手に入れるというもの。挑戦状には、

色付きレシートを手に入れるヒント
月・・木・・土・日
(かようび、すいようび、きんようび にとしょかんに来てみよう)
というヒントがあるのみ。思えば、図書館にはレシートを出すものがいろいろあります。指定された曜日に行くと、そのうちのどれかが色付きのレシートを出すようになっています。

レシートの色を曜日で変えて、それを集めると何かがあるいうアイデアは、私は初めて見ました。これって、イベントなど特定の日だけでなく、何度も図書館に来てもらえる仕掛けで、かつ、前日の閉館後か当日の開館前にレシートを変えればいいだけで、職員さんの手間もそれほどかからない。図書館に通ってもらう仕掛けとして、とてもいいアイデアだと思います。

この企画は曜日で色を変えていますが、週によって変えるとか、もっと長期的に月によって変えるなど、色を変える期間もアレンジできそう。貸出票なら貸出点数も絡めた企画、検索票なら本を探すクイズなどと絡めた企画なども面白い。他の図書館も活用して欲しいアイデアです。

§ 図書館利用を広げる謎解き企画

その他、イベント参加のミッションもあり、ビンゴにあるミッションをクリアすることで、夏休みのiプラザ図書館をたっぷり利用できます。iプラザは子どもが遊べる施設も併設された複合文化施設で、普段から子どもの利用が多いのですが、こうした企画で更に楽しく過ごせるはず。

私は図書館の謎解き企画に興味があって、可能な限り参加しています。過去に参加したものの中には、解き応えがある謎解きにすることに重きを置きすぎて、図書館を謎解きの場所としか使ってないように感じたものもありました。でも、私としては、図書館の予算を使う企画なのだから、謎解きを通じて、知らなかった本に出会えたり、図書館に関する知識が増えるなどして、図書館利用に繋げて欲しい。その点、この企画には参加した子どもの図書館利用を広げるアイデアが詰まっており、これぞ図書館の謎解き企画だと思います。

楽しみながら図書館利用が広がる企画なので、この企画に参加するのに適したお子さんがいる人は、ぜひiプラザ図書館へ。稲城市立図書館の中では一番新しく(2009年開館)、広々としている稲城市立中央図書館と比べたら蔵書数は少ないですが、たくさんの本がぎゅっと集まっている印象で、あれこれ読んでみたい気分になります。