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中央図書館新館開館10周年記念企画「ぶっくんからの挑戦状~君はこの謎を解けるか?」

―2017年12月8日から28日までの展示
visit:2017/12/08
§ 府中にちなんだクロスワードに挑戦

80万冊以上の蔵書を誇る府中市立中央図書館は、2007年12月1日に現在の建物へ移設オープンしました。それまでは現在の宮町図書館の入っている建物(ふるさと府中歴史館)が中央図書館、といっても、写真を見ると昔は建物1,2階の一部がピロティ(柱だけの吹き抜け空間)になっていて、図書館の延床面積としては現在のふるさと府中歴史館よりも小さかったんです。それが現在の充実した中央図書館にリニューアルした当時、利用者の皆さんがどんなに驚いたかと想像してしまいます。

それから10年経った2017年12月、中央図書館新館10周年企画として、「ぶっくんからの挑戦状~君はこの謎を解けるか?」という企画を行っていました。子ども向けには物語の内容を3択クイズにした問題、一般向けにはクロスワード問題を4つ配布していて、子ども向けは比較的よく知られた物語に関する問題が多いのですが、一般向けは府中についての知識がないと全てのマスを埋めるのは難しいような問題で、解き応えばっちり。充実している地域資料コーナーを歩き回りながら、クロスワード問題を解くのを楽しみました。

この後の文章で、クロスワードのカギについてもいろいろ紹介しようと思いますが、ここまで読んで自分も挑戦してみたいと思った方は、私の文章を読むよりぜひご自身で挑戦してみてください。企画実施期間は終わってしまいましたが、府中市立図書館ウェブサイトに問題用紙と解答がUPされているので、今でも挑戦することができます。

§ 府中に関する豆知識が学べます

クロスワードに取り組む前、府中に関することが出題されるらしいということしかわからなかった時点では、何も見なくてもほとんど解けるかなと思っていたんです。私は実家が多摩市で、少し前に数年実家に戻っていた時期があり、その頃に府中市立図書館を全館訪れました。しかも、ダイエットを兼ねてしばしばウォーキングで各館に行っていたし、大國魂神社以北に行く際にはお参りに大國魂神社に寄っていたので、府中についてはそこそこ知識があるつもりでした。

が、甘かった。もちろん、クロスワードなので府中に関する言葉だけでマスが埋まっているわけではなく、あるカギの言葉がわからなくても、そこと交差する文字を埋めることでわからなかった言葉が解けることもあるのですが、なかにはマスが埋まっても、これ何のこと?とわからないものさえあるんです。

私にとって一番難しかったのが、クロスワード④のたて2「奈良時代、相模国と武蔵国を結ぶ経路に○○○駅がありました。相模国のこの駅から下総国まで4駅。」というもの。まあ、答えである駅は相模国、つまり、府中ではない地域に関することなので、私の府中知識に対するプライドはそれほど傷つかないのかもしれませんが(笑)、この言葉を聞いても何のことだか全然ピンと来ない。答えがわかってから『府中の風土誌』を見て、やっとどんな漢字なのかもわかりました。

また、クロスワード①のたて10「府中市には○○の木が沢山あります。禅師丸○゛○も有名です」というのも、禅師丸が付くことで推測はつきますが、府中市にこの木が多いなんて全然知りませんでした。府中に関する資料を読むと、今でも民家にはこの木が植えられていることが多いそうで、次に府中市の住宅地を歩くときには気を付けて見てみようと思います。

一方、府中市の図書館を足で回った人間の知識の見せどころとなる、クロスワード②たて1「府中市の中で一番西にある図書館は○○○○○○○○」という問題も。この図書館に行くときは、中河原駅近くのCafe anselmoに寄るのが私の定番だったなあと、道のりの記憶が思い出されます。

問題文に教えられることもあって、クロスワード①よこE「ふちゅこまのモデルは木造○○○○」という問題で、ふちゅこまというキャラクターがいつの間にか作られていることを知りました。しかも、その後ネットで調べたらふちゅこまはホリプロに所属しているそうで、今や市のキャラクターが芸能事務所に所属する時代なんですね。各種メディアに登場して市のアピールをすることが役割のキャラクターの在り方としては、そういう方法もありなのか。

§ 府中市立中央図書館の地域資料コーナーの豊富さを実感してください

先に挙げたように、問題用紙と解答が図書館ウェブサイトにUPされているので、府中市立中央図書館に行かなくても問題への挑戦はできます。でも、この問題を解くのに、府中市立中央図書館の地域資料にあたることで、この図書館の地域資料コーナーのラインナップの豊かさを実感することができるので、ぜひぜひ府中市立中央図書館に行って解くことをお薦めします。

府中市の地域資料がバラエティに富んでいることこそ、府中市がさまざまな顔を持っていることの表れ。名前の通り、武蔵国の国府だった歴史を持ち、遺跡もたくさんあります。武蔵国の頃からある大國魂神社は、今も多くの人が参拝に来る神社で、資料も豊富。その境内の中に宮町図書館がある、現在の前の中央図書館があった、という市立図書館との関わりという意味でもユニークですし、宮町図書館と同じフロアにある公文書史料室もお薦めです。ここには、毎日その日のちょうど100年前の新聞を展示する「100年前の今日の新聞コーナー」もあり、前述のように私がウォーキングで府中に行っていたときには、よくここに寄り道していました。

東京以外の人にも多く知られている府中のものといえば、東京競馬場でしょうか。地域資料コーナーにも競馬に関する本が多数揃っています。府中市には多摩川競艇場もあるのに、それに関する資料があまりないのは、多摩川競艇場が府中にありながら府中市は開催に関わっておらず、その代りというわけではないけど、大田区に平和島競艇場が府中市による運営という、ねじれたような状態になっているからでしょうか。いや、そもそも書籍の出版数として、競艇に関する本より競馬に関する本の方が圧倒的に多いからか。

棚を見ていると、安部譲二の「塀の中の懲りない面々」シリーズもあり、そうか安部さんが入っていたのは府中刑務所だったかと気付かされます。そのそばには、府中刑務所のそばで起きた三億円事件に関する本もたくさん揃っており、もし犯人が生きて時効を迎えたなら、こうして多くの人が真実に迫ろうとしているのをどう思っているだろうかと思いを馳せてしまいます。

キリがないのでこの辺でやめておきますが、棚を眺めているだけでも、これも府中か、あれも府中かという発見がありますし、更にそれらの本を開いて詳しい話を読むのも面白い。私は、クロスワードを解くのに大國魂神社に関する本を読んでいて、大國魂神社の七不思議なる伝説があるのを知りました。紙資料を使って調べ物をするとしたら、目次や索引を活用することになりますが、そこで面白そうなキーワードや見出しを見つけたときに、どんどん寄り道するのがお薦め。電子辞書やネット検索のように、目的のものに直接アクセスできてしまうものと違って、そういう寄り道が楽しめるのが紙資料の面白さだと思います。

府中市立中央図書館の地域資料コーナーは資料が豊富すぎて、どの本を調べたらいいか途方に暮れてしまいそうですが、問題用紙それぞれに「ヒントになる資料」が挙がっているので、その心配は無用です。ただ、これについてはこの本に載っていそうと思っても載っていないことがあり、どの本に何が載っているかは自分で探っていく必要がある。クロスワードで楽しみながら、どの本に何が載っているという知識が身に着くのもこうした企画のいいところで、どの本に何が載っているかという勘どころを磨くことは、府中以外の何かを調べるときにも役に立ちます。

§ 館内では10周年企画の展示も

私が府中市立中央図書館に行った2017年12月8日には、「府中市立図書館 今むかし展」と題して、図書館だよりのバックナンバーや昔の図書館の写真を展示していました。こちらは「ぶっくんからの挑戦状」より早く、12月18日で終了してしまいましたが、こちらも面白かったです。

昭和52年の号に掲載されていた、「進駐軍の命令によりつくられた府中行在所図書館」は戦争が終わった後、進駐軍の誰か(メモするのを忘れました)が図書館がないことを憂いたことをきっかけに設立された図書館について紹介する記事には、そんな歴史があったことに驚きました。昭和49年に府中市・日野市・狛江市・西宮市の市立図書館館長さんが一緒になってアメリカの図書館を視察して見聞きしたことを綴った連載「アメリカ・レポート」は、図書館はどうあるべきか、何を目指すべきかを模索している図書館員の様子が伝わってきて、新しい技術やニーズに対面している今の図書館にとっても参考になります。

これらは展示用に拡大したもので、古い図書館だよりを合本したものが図書館の蔵書として保管されています。昔の牧歌的な図書館でのエピソードなども面白いので、私もいつかまとめてじっくり読んでみたいと思っています。

というわけで、実はどちらも、実施期間終了後でも参加や閲覧が可能な企画。府中市立中央図書館をご利用の際には、お時間があればぜひ楽しんでください。多摩地域での大きな図書館の一つであるこの図書館には、単に行ってみるだけでも蔵書の多さを堪能できますが、図書館の歴史や府中の多面性に触れることで、より深く蔵書を利用できると思います。