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府中市立宮町図書館

府中市立宮町図書館 訪問記

last visit:2015/01/18

府中市立宮町図書館は、大國魂神社境内にあるふるさと府中歴史館2階の図書館です。2007(平成19)年12月に現中央図書館が開館するまでは、この建物が中央図書館として活躍していました。公文書史料室も併設されています。

§ 図書館の場所

宮町図書館が入っているふるさと府中歴史館は、大國魂神社の境内の中というユニークな立地です。まだ多摩地域の図書館を全て回ったわけではありませんが、「神社の境内に図書館がある」というのは東京都内では宮町図書館だと思います。最寄り駅はJR府中本町駅か京王線の府中駅ですが、大國魂神社への案内に従えばいいので初めて行くときも迷う余地がないくらいです。府中本町駅の方から行くと直接ふるさと府中歴史館に入れますが、府中駅側から行くと鳥居をくぐって100mほど歩いてからふるさと府中歴史館に着くかたちになり、せっかくなら参拝もしておきたいところ。

また、立地がユニークなだけでなく、建物も独特の形をしています。横から見ている限りではわかりにくいのですが、上から見ると二つの正方形が45度回転してくっついているようなかたちになっており、Googleの航空写真を見るとそのデザインがよくわかります。ただ、南側の建物は資料庫で、一般の人は入れません。宮町図書館が入っているのも、北側の建物です。

§ 図書館内の様子

ふるさと府中歴史館は3階建てで、1階が国府資料展示室、2階が宮町図書館と公文書史料室、3階が国府資料室となっています。博物館的施設の中に市立図書館が入居しているようなかたちですね。2階は西側半分が宮町図書館、東側半分が公文書史料室で、窓からは境内が見下ろせます。

図書館エリアはほぼ長方形に近い形で、長い辺の真ん中から図書館エリアに入ると、左手前にカウンター、左奥が児童コーナー、右手前が新聞・雑誌コーナー、右奥が一般書架という配置です。規模は小さいですが、右端の閲覧席が並ぶ辺りに境内を見下ろす大きな窓があって、いい景色の中で本を読むことができます。

§ 児童コーナー

児童コーナーは、一般書架に一番近い辺りがちしきの本で、奥に絵本や紙芝居などがあり、壁沿いの棚に児童読み物が並んでいます。一般書架のうち中高生コーナーが児童コーナー寄りにあるので、全体的に年齢順に本棚が並んでいるようなかたちになっています。児童コーナー内には読み聞かせスペースがなく、おはなし会も3階の部屋を使って行っています。

絵本の棚は、日本人作家と外国人作家を頭文字ごとに交互にして、絵を描いた人の姓名五十音順になっています。どういうことかというと、苗字の頭文字が「あ」である日本人作家の作品を五十音順に→苗字の頭文字が「ア」である外国人作家の作品を五十音順に→苗字の頭文字が「い」である日本人作家の作品を五十音順に…という並べ方で、言葉にするとわかりにくいかもしれませんが、日本人作家の見出しがベージュの色紙、外国人作家の見出しが緑色の紙、と色でメリハリがついているので、実際の棚をみるとわかりやすいです。

絵本棚のうち、奥にある児童用机席・紙芝居棚の手前の棚には、「よみつがれてきた本(ベストブック)」「よみきかせに向く本」が集められています。紙芝居のそばにあるので、紙芝居を選ぶついでにこの棚を見ていく人も多いのではないでしょうか。絵本に貼られているラベルをみると、ベストブックでもありよみきかせ向きでもある絵本も多数あります。

児童向け読み物は、日本人作家の作品と外国人作家の作品に分けたうえで、下の方の段は1,2年生向けの黄色ラベル(請求記号にYがつく)の本、上の方の段は3年生以上向けの緑色ラベル(請求記号にGがつく)の本と二層にして、それぞれで著者姓名の五十音順に並んでいます。もちろん、この分類は目安ですので、低学年の子どもが緑ラベルの本を読んでもいいし、高学年の子どもが黄色ラベルの本を読むのもOK。

絵本と同様に児童読み物にもお薦めを集めた棚があり、児童読み物が並ぶ壁際の真ん中付近には「とっておきの本 100冊 (小学生)」、中高生コーナー棚脇に「とっておきの本 30冊 (中学生)」があります。私は図書館巡りを通じて児童文学も読むようになりましたが、大人になってから読んでも結構面白い。こうしたコーナーを通じて、いろんな本に出会いたいです。

§ 一般書架

一般書架は冊数が少ない…というより、宮町図書館自体が所蔵数が少なく、全部で13館ある府中市立図書館のうち、図書所蔵数でいうと下から3番目です。ただ、これが必ずしもデメリットとはいえないようにも思います。というのは、府中駅の北側にあり、宮町図書館からも歩いていける府中市立中央図書館には膨大な図書があり、「ちょっと●●のことが知りたい」という軽い気持ちで行くと、本がありすぎて迷ってしまう面もある。府中駅近くにお住い・お勤めの方は、専門的な本が読みたいときや細かいことについて調べたいときには中央図書館、大まかに「このジャンルが読みたいな」という程度だったら宮町図書館と使い分けるのがいいと思います。

日本の小説は著者名の五十音順、但し、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に、五十音順の並びに入れられています。例えば、比留間久夫(ヒルマ ヒサオ)が書いたの本の隣に、6人の作家による『Field,Wind』(フィールドウィンド)という本が並び、その隣に深田祐介(フカダ ユウスケ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国の小説は、英米文学・ドイツ文学・フランス文学…と地域別に分かれた上で、著者姓名の五十音順に並んでいます。

棚を見ていると、「494 外科学」の棚に「家庭医学関係は、分類記号598にあります」、「007 情報・コンピュータ」の棚に「コンピュータ関係は、分類記号547にもあります」といった具合に、図書館の分類だと離れた棚になってしまう項目についての説明があり、図書館の分類に詳しくない人にもわかりやすいです。専門的な本より一般向けの本が多いので、未知のジャンルについて知りたい・調べたいときには、まずは宮町図書館の棚から本を選んで、詳しくなってきたら中央図書館の蔵書で専門的な知識をという順序を辿るのもいいと思います。

§ 公文書史料室

宮町図書館に来たなら、同じフロアの公文書史料室も足を伸ばしたいところ。「公文書史料室」なんて聞くと、お堅い資料ばかりで自分には関係ないと思う人もいるかもしれませんが、史料室に入った正面付近に100年前のその日の新聞が展示されていると聞いたら、興味が湧きませんか。ニュースや読みものだけでなく広告も世情を反映していて面白いし、毎日ちょうど100年前の日付の紙面を展示しているので、100年前の時間の流れを追体験できるのがいい。

私、2013年に何度か宮町図書館に来てこの展示を見て、しばらく間が空いて2015年1月に行ったんです。そしたら、2013年には何やかんやあっても平和だった100年前の紙面が、2015年には第一次世界大戦の戦局が書かれた紙面の展示になっていて、しばらく遠ざかっていた間に100年前がこんなに変わっていた!と驚きました。この驚きって毎日ちょうど100年前の新聞を展示しているから体験できることで、府中に来たついでに寄りたくなる大好きな展示です。

公文書史料室の所蔵物としては、府中市が発行した資料がずらっと並んでいます。公文書史料室では資料の貸出はしていませんが、府中市立中央図書館にはない資料などもあるので(私も、この後に書く、この建物の以前の様子がわかるパンフレットを公文書資料室でコピーさせてもらいました)、府中市について調べている方は図書館だけでなく公文書史料室も活用してください。史料室内に府中市立図書館の検索機もあるので、館内閲覧ではなく借りたいという場合は、貸出できる図書館資料として所蔵があるかどうかを調べることができます。

また、本来の史料室の用途とは違いますが、大きな窓から見える大國魂神社参道の眺めもお薦めです。資料を見ずに外を眺めていても特に何も言われないし、景色を見にくる人も珍しくないのかも。大國魂神社に関する府中市発行の資料もあるので、大國魂神社に参拝に来て神社のことを詳しく知りたいときなども、ぜひお立ち寄りください。

§ こう見えて(?)、ボスだったんです

今では、ふるさと府中歴史館がメインで、それに宮町図書館が付属しているようにも見える施設ですが、少し前までこの建物が府中市立中央図書館だったんです。府中市立図書館は、1961(昭和36)年4月6日に旧府中町役場庁舎に開設したのがスタートで、その市立図書館が1967(昭和42)年3月2日に宮町3-1(現ふるさと府中歴史館)に移設されました。

翌1968(昭和43)年3月には、市立図書館に併設される形で、市立郷土館も開館。北の棟が市立図書館で、南の45度回転した正方形の棟が郷土館でした。史料室の職員さんから聞いた話によると、建物としては北棟南棟同時に完成していたのですが、展示の準備のために郷土館部分の開館が1年後になったのだそうです。

その後、地区図書館が次々と開設されるにともなって、この府中市立図書館は中央図書館として運営されていきますが、1987(昭和62)年4月に現在の「郷土の森博物館」が開設されて、こちらの郷土館は閉鎖。南棟はその後現在に至るまで、図書館の保存庫として使われています。その後、中央図書館も移転することになり、2007(平成19)年8月31日をもって休館、その後3ヶ月の準備期間を経て、2007年12月1日に現中央図書館が移設オープンします。旧中央図書館であるこちらの建物は、2008年2月1日に宮町図書館が開館。当時の図書館だよりによると、開館当時は建物1階に宮町図書館があったようです。その後、改修工事を経て、1階に国府資料展示室、2階に宮町図書館と公文書史料室という現在の形になりました。

今の中央図書館と比べると、この建物は確かに手狭、しかも昔の建物の写真や見取り図を見ると、3階は今と同じ面積なのですが、1,2階は3階の面積の半分しかないような構造で、現在の建物よりさらに延床面積も小さかったんですよね。そんな図書館が、現在のあんなに大きい中央図書館に生まれ変わったなんて、利用者の皆さんはさぞ喜んだのではないでしょうか。

ちなみに、旧中央図書館がふるさと府中歴史館としてリニューアルされる際には、全面改築ではなく、昔の構造を活かして1,2階を増床する形をとったようです。史料室の職員さんに教えていただいてなるほどと思いましたが、昔の写真と現在の建物を見くらべると、旧建物で屋外から支えるかたちになっていた円柱が、今では建物内に取り込まれているのがわかります。

今では図書館は2階の半分に縮小されたような形になっていますが、その分ふるさと府中歴史館ができ、古い時代の府中の様子がわかる施設になっています。1階の国府資料展示室は、発掘された瓦を手に取ることができたり(結構重いです)、国府を巡って出会った人に話しかけたりできるロールプレイングゲームのようなバーチャルツーリングがあったりと、歴史を体験できるような展示でお薦めです。中央図書館を大きな建物に移して、府中の歴史をクローズアップした施設として生まれ変わったんですね。

宮町図書館自体は、歴史に特化しているわけではない普通の地域図書館ですが、建物全体としては、バーチャルで昔の人と話したり、100年前の新聞を読んでみたりと、歴史旅行を楽しめる施設です。図書館を通じて古代を扱った本を読めば、更に面白さが増すでしょう。タイムマシンがなくとも、想像力で歴史の世界へ旅立ちましょう!

府中市立宮町図書館 データ

住所東京都府中市府中市宮町3-1 ふるさと府中歴史館2階 →Google Mapで見る
Tel042-364-3613
開館時間9:00~17:00
定休日月曜(祝日・振替休日の場合は開館し、直後の平日を休館)
5月3日~5日
12月29日~1月3日
最寄駅 JR南武線武蔵野線 府中本町駅から徒歩7分
京王線 府中駅から徒歩8分
京王競馬場線 府中競馬正門前駅から徒歩9分
駐輪場建物西南側に駐輪場あり
駐車場なし
所蔵資料
図書所蔵数37,685冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
なしなしなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト西側入口の自動ドア向かって右にブックポストあり。開館中の使用は不可。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCなし
持参PC利用不可
飲食設備等なし