本の貸出福袋
visit:2015/10/29
「福袋」というと年始にお店で商品を詰めて売られるお得な袋。最近は中身を公開して売ることが多いですが、昔は何が入っているかわからないまま買い、中身は開けてのお楽しみというかたちが多いものでした。その後者の意味合いを込めて、図書館で行われる「本の貸出福袋」は、袋詰めにした図書館の蔵書を中身がわからない状態で貸し出す企画です。ただ、全く中身がわからないのではなく、中身のヒントを袋に書き、それをヒントに利用者が好きな袋を借りるかたちで実施されることが多いです。自分が知らない本やあまり読まないジャンルの本を読むきっかけになり、図書館イベントの中でも私が特に好きな企画の一つです。
そんな「本の貸出福袋」企画を、2015年読書週間に合わせて江戸川区立東部図書館で実施すると知り、私も中身は開けてのお楽しみを味わおうと、借りに行きました。東部図書館は1,2階それぞれに貸出カウンターがありますが、本の貸出福袋は2階のカウンター脇にあり、3冊入りの紙袋が所狭しと並んでいます。
それぞれの袋には中身のヒントとなるテーマが書かれており、推測するに、小説、ノンフィクション、歴史、芸術など、いろいろなジャンルの本が入っていそう。具体的にどんなものがあったか、袋に書かれたテーマをメモしてきたので、一覧にします。
- ワルに学べ
- 短歌もたまにはいいんじゃない?
- 『深夜特急』をもう一度
- 昭和へようこそ
- 愛の行方が気になる本
- 背筋がゾクッ
- 何でも手作り(ガーデニング編)
- めざそう、川柳名人!
- これから始める???
- むむ●むの本
- O・MO・TE・NA・SHI
- あえてネガティブ 落ち込んだ時はどん底まで気分を下げてみよう。違う景色が見れるかも?
- 孫育を楽しむ
- 羊
- お家で美術館
- 失敗から学ぶ
- いぬ
- 東西城比べ 伝統と格式の日本の名城と、きらびやかなヨーロッパの古城・宮殿。あなたはどちらがお好みですか?
- 家族に好かれるヒント
- 図書館が舞台
- 読む「音楽」 あなたの好きな音楽はなんですか?あなたの興味を広げるこの福袋で音楽の趣味も広げてみませんか?
一単語だけのものもあれば、文章付きのものもあるし、中身の見当がつきそうなものもあれば、全くつかない袋もある。中身の見当がつくと思っているものだって、借りてみたら想像とは違うものかもしれません。中身が気になる貸出福袋はある方は、他の方に借りられないうちに東部図書館へ!
私が気になった袋は、「ワルに学べ」「愛の行方が気になる本」「むむ●むの本」あたり。迷った結果、「ワルに学べ」を借りてみました(写真)。写真を見るとわかるように袋のテーマは印刷されている、となると、「むむ●むの本」も書き間違えなどではなく、あえて「●」を入れているわけで、そちらもかなり気になったのですが、この日の気分的がやさぐれていたのか、結局「ワルに学べ」にしてみました。
ちなみに、東部図書館には自動貸出機がありますが、中身がわからないお楽しみのために、貸出本のタイトルが印刷されてしまう自動貸出機での福袋貸出は不可ということにしています。また、多くの人に本の貸出福袋を楽しんでもらうために、借りられるのは一人一袋まで。カウンターに貸出をお願いすると、本のタイトルが印刷された貸出票は手渡しされず、袋の中に入れてくれます。あくまでも中身は開けてのお楽しみというわけです。
そして、家に帰ってから開けてみたところ、『悪魔の処世術』『悪の交渉術』『生きる悪知恵』の3冊でした。『悪魔の処世術』のなかには、「図書館を使い慣れている風を見せることで知的な人と思わせる」というワザも紹介されており、確かに、図書館ってこうしたワルい本もあるのに、世間的には「本を読む人」「図書館を利用する人」=「真面目な人」「しっかりした人」というイメージがある。いろいろな悪知恵が身に付きそうな3冊です(笑)。貸出福袋の説明も兼ねた栞もおまけでついていました。
実際、私はこの3冊を読んだことがないし、もしこの貸出福袋を借りなかったら、本の存在さえも知らないままだったと思います。こんな風に知らない本を手に取るきっかけを作る貸出福袋、ご興味ある方はぜひ借りてみてください。借りてみてもし好みに合わなくても、図書館の本だから返せばいいだけ。買う福袋より断然ハードルが低いです。3冊を期限内に読むのが難しいという人は、貸出延長したり、タイトルを覚えて置いて一度返して読む余裕があるときにまた借りればいい。この企画の肝は、何と言っても、自分からはなかなか手に取らない本との出会いだと思います。
今の図書館は予約機能が充実している分、図書館では予約受取と返却のためにカウンターに行くだけになっている人も少なくないと思います。でも、たくさんの本が並んでいて、それらを手に取って見られることや、知らなかった本に本棚で出会えることこそ、図書館のよさ。図書館システムが発達した今こそ、思わぬ本と出会えるこうした企画が楽しいです。