秋の夜長のやみ鍋Book
visit:2015/10/28
食材を他のメンバーには内緒で持ち寄り、暗闇で鍋にして食べる「闇鍋」。実際にしたことがある人は少ないかもしれませんし、事実私もしたことはありませんが、言葉としては多くの人が知っているのではないでしょうか。口に入れないとそれが何なのかわからないところが、楽しくもあり怖くもあり…。そんな闇鍋よりはきっと楽しく気軽に楽しめる「やみ鍋Book」が2015年10月27日から江戸川区立松江図書館で実施されています。
闇鍋のBook版とはどういうことかというと、中身がわからないように図書館の蔵書が包装されており、利用者は包みに書かれたヒントを頼りに選んで借りるというもの。中身は借りてからのお楽しみというわけです。少なくとも選ぶヒントがありますし、わからないものを食べることに比べたら、わからないものを借りる方が断然ハードル低いですよね。私も楽しんでこようと松江図書館に行ってきました。
松江図書館はカウンター前に展示コーナーがあり、そこに英字新聞で包装された包みが十数個置いてあります。それぞれ2冊の本が入っており、大枠となるテーマと中身のヒントとなるお薦め文が書かれた紙が貼ってあります。例えば、どんな包みがあるのか、下に挙げてみましょう。
テーマ | お薦め文 |
趣味 | 普段、興味のない日本にふれてみるのも良いかと存じます。 |
趣味 | インド料理は薬膳だ!からだにやさしいスパイスたっぷりのインド料理を、おうちで使ってみませんか?意外とカンタンなんですよ! |
趣味 | やみ鍋といえば、必ず誰かがこういうものを入れたがるよね!それならば、私も入れよう。イ~ヒッヒッヒッ!! |
趣味、くらし | 自然なくらしを愛するひとへ。 |
怖い | ①ハロウィンが近いのでホラーっぽい(?)ものを…。 ②文章にクセがありますが、面白いと思います。暴力描写もあるのでご注意です。 |
図書館学 | 本と人はどのように結び付いていくのか。今の図書館でできること、やっていることが詰まった本です。あなたの図書館に対する考え方が変わるかも。 |
??? | ①生き方について面白おかしく書かれている。 ②人間の本能が出ていて面白い。 |
不思議 | (お薦め文なし。テーマのみで勝負ということでしょうか) |
笑い | 自分もうっかり、してしまってるかも?!そんな〇〇の本です。何も考えず、ただ笑って下さい。但し、電車等での読書は厳禁です! |
近未来SF | どちらもSFですが、けして絵空事、フィクションではなく現実にもありうる、起こりうる世界観の内容です。 ※1冊は、アニメ映画にもなるそうですよ! |
青春 | 高校3年生が主人公の小説2冊です。未来に向かっての挑戦、卒業までにやっておきたいこと…など、登場人物それぞれが高3という短い時間を過ごしている姿にキュンとします。 |
純文学 | 落選作だって面白い!をテーマにして、芥川賞・直木賞の候補作になったけど惜しくも落選した作品の中で、私が読んで面白かったものを1冊ずつ選びました。 1冊は現実には起こらないはずだけど、本当に起こったら恐ろしい話。 もう1冊は、人間の暗くて嫌な、でも誰もが持っているかもしれない感情と向き合わされる作品です。 |
①②とある説明は、中に入れた2冊の本それぞれを説明しているのだと思います。真面目な本が入っていそうなヒントもあれば、いろんなジャンルがあてはまりそうな可能性を持つヒント、まさに闇鍋のようの怪しげなヒントなど、いろいろなタイプのヒントがあり、それを借りようか迷ってしまいます。
私は、「やみ鍋といえば~」というヒントの袋か、「自分もうっかり、してしまってるかも?!~」というヒントの袋かで迷った結果、後者の方を借りてみました(写真)。このような、中身を見せずにヒントなどで本を選ぶ企画はいろいろな図書館で実施しているのですが、松江図書館のように本が入った包みそのものを展示コーナーに置く場合は、本の大きさがわかり、それも選ぶ際の参考になります。「やみ鍋といえば~」の方は大きいサイズの包みで、持ち帰りやすさも考慮してこちらを選びました。
ちなみに、ヒント右上のイラストは松江図書館のキャラクター・まつにゃんです(写真をクリックすると縮小前の写真が表示されます)。松江図書館の館内や配布物に登場し、子ども向けイベントではまつにゃんグッズをもらえることもあったりと、大活躍しています。
中身を明かす前に、もう一つだけご紹介したいことがあります。江戸川区の図書館システムでは、貸出処理をしたときのレシートに借りた本を印刷するので、通常の貸出票を渡してしまうと包みを開ける前に中身がわかってしまいます。そこで、松江図書館には自動貸出機もありますが、やみ鍋Bookはカウンターで貸出手続きするようにし、更にやみ鍋Bookを借りた人専用に、貸出期限だけが書かれた貸出票を用意してくれています(写真)。
中身を秘密にすることが楽しい企画なので、こうした工夫は嬉しいです。よくみたら、右下のイラストではまつにゃんが鍋の中に入っていますが…まつにゃん、闇鍋を食べるほうではなく、食べられる方なのか?!
さて、お待たせしました。気になる中身はどんな本なのか。開けてみると、『ゆかいな誤変換。』『言いまつがい』の2冊でした。思えば、このサイトでも誤変換をしてご覧いただいた方からご指摘メールをいただくこともあり、「してしまっているかも」ではなく、確実に私もしてしまっています。私にとっては、笑えるとともに、私だけじゃないと思える本かも(笑)。松江図書館さん、ありがとうございます。
上にもさらっと書きましたが、松江図書館のこの企画では図書館職員さんだけでなく、利用者も中身の本を選んでいます。この企画に先だって、9月に「秋の夜長のやみ鍋Book 食材募集のお願い」という企画を行っており、そこでお薦め本2冊とお薦め文の投稿を募っていました。展示コーナーにある包みのなかには、そうやって利用者の方が松江図書館の蔵書から選んだものも入っています。
実は私も投稿しており、上のヒントリストの下2つが私が選んだものです。私、確か、テーマは書かずにお薦め文だけ長々と書いたので、テーマは職員さんがつけてくれたように思います。お手数おかけしました。この作業はとても楽しく、合計で4セット投稿してきたくらいです。
というわけで、やみ鍋食材を提供した私からも、ぜひやみ鍋Bookを借りて楽しんで欲しいです。いつまで実施しているかメモするのを忘れてしまったのですが、読書週間に合わせた企画なので、たぶん読書週間(10月27日から11月9日まで)と同じような期間展示してくれていると思います。おいしい食材(本)をぜひ味わってください。