図書館探偵 石川啄木~消えた「一握の砂」~
visit:2012/10/31
10月後半から11月前半にかけての読書週間は、各図書館がいろいろなイベントを開催する期間。真砂中央図書館では、2012年の読書週間イベントとして、文京区にゆかりのある歌人・石川啄木のクイズラリーを開催し、私も参加してきました。

文京区立図書館公式サイトでの告知では、石川啄木に関する問題が出題されるという程度しかわからなかったのですが、行ってみたら予想以上に趣向を凝らしたイベントでした。カウンターで問題用紙(左写真)をもらって見てみると、真砂中央図書館で選んだ啄木の歌をまとめた「一握の砂・真砂選」という資料が消えてしまい、その代わりにローマ字のメモと図書館の地図が残されていたという設定でクイズがスタートしています。問題用紙には、そうした設定を記した文章や石川啄木の生涯をまとめた文章と、クロスワードのマスのみが載っています。
つまり、問題用紙には問題は書いてないんです。ではどうやってクロスワードを解くかというと、ローマ字のメモがヒントになります。ローマ字のメモには図書館内での行動が書いており、その通りに動いてみると、館内に掲示されている問題を見つけることができて、それをもとにクロスワードを解いていくという趣向です。実際に館内をまわっていかないと、問題が解けない仕掛けになっているわけです。
私は図書館巡りの一環で図書館イベントもいろいろ体験してきましたが、問題を解くイベントというのは、参加者を増やすために簡単な問題を出題したり、ヒントを多く出したりしていることが多いんです。でも、この石川啄木の問題はきちんと調べないとわからないような問題が多く、とっても解き応えがありました。
例えば、こんな問題。
石川啄木の名前の由来であるこの鳥の仲間がする、乾いた木を連続してくちばしでたたく行為は何でしょう?
鳥や動物が好きな方は調べなくてもご存じかもしれませんが、私はわからなかったので図書館資料で調べました。しかしこれがなかなか曲者で、この問題は動物に関する本がある棚のそばに掲示されていて、一見その棚から探すのが近道と思うけど、読みものっぽい本もあれば、専門的な本もあり、どの本を読んだらいいか迷うところなんですよね。さてどうやって探すか、その方法は人によって違うと思いますが、私はこの棚ではなく辞典類がある棚へ向かい、大きな鳥類事典で「キツツキ」の項を探しました。そのキツツキの説明に、あの動作を「ドラミング」と呼ぶと書いてあり、それで答えが判明。
石川啄木の好きな色です。
「馬鈴薯の[ ? ]の花に降る
雨を思へり
都の雨に」
この問題も、有名な歌なので知っている人も多いと思いますが、私は恥ずかしながらわからないので調べないとわかりません。いつの作品か、どの歌集に収められているのかもわかりませんが、いろんな全集が揃っている棚に行って啄木全集を見れば解決です。小説の一節とかだと大変ですが、短歌なので全集から探すのもそれほど苦ではないですしね。
ユニークなところでは、古い駅の写真からどの駅か当てるというものもありました。写真だけで当てるのは難しく、クロスワードなので既に埋まっている文字から推測して、地域資料の棚から昔の写真が載っている本を見つけて、見当を付けた駅の写真を見たら、そこだとわかりました。こうやって振り返ると、やはりも問題の難易度は高かったなあ。
難しくてどうしてもわからないときには、職員さんにヒントを聞くこともできるので大丈夫です。職員さんのうち、このイベントのバッジをつけている人がヒントを持ち歩いているようで、その方に聞けばヒントをもらえたみたいです。私は、問題については頑張って自力で解きましたが、1問だけ問題が掲示してある場所を発見できず、それを聞きに行きました。職員さんにとっても想定外の質問だったようで、1階のカウンターに聞けばわかるかもと言われて行ってみたら、ちょうど1階のカウンターの足元で出題されていたというオチ(笑)。
岩手では でんぴ 東京では ?
ヒント:小学校時代からかわれたものです
上の問題も、方言に関する本が並ぶ棚で出題されていた問題ですが、私の場合はこれも辞典類のコーナーに行き、方言事典で答えを確認しました。ものを調べる方法っていろいろあると思いますが、やみくもに関連本を探すよりまずは事典を見るという私がやった方法もその一つで、こういうのって調べものをしていくうちにコツをつかんでくるものなんですよね。そういう意味で、この企画は単に楽しいだけでなく、ものを調べるという図書館の本質に触れることができる、とってもいい企画だと思います。
そんなこんなで、3時間ほどかけてクロスワードが無事完成。といっても、問題を解くのに時間がかかったというよりは、上で書いたように問題の掲示場所が1問だけ見つからなくて、最後の30分ぐらいはその1問の場所を探すのに費やしていたような…。真砂中央図書館さん、タテの7のヒントの場所もローマ字メッセージの中に入れて欲しかったです(笑)!

クロスワードを埋めて指定されたマスの文字をつなげると、失われた「一握の砂・真砂選」のありかになるということで、言葉を繋げてカウンターへ。無事正解し、プレゼントとして石川啄木のしおりをいただきました(左写真)。この啄木のイラスト、おそらく真砂中央図書館の職員さんが描いたのではないかと思うのですが、いい味出してますよね。上の問題用紙の裏面に印刷されている凛々しい写真より、このイラストの方が啄木の暗い感じが出ていて、結構気に入っています(笑)。表面のイラストは共通ですが、裏の啄木の和歌はそれぞれ違う歌が印刷されていて、好きなものを選ばせてもらいました。
でも、本当のご褒美は、調べもののコツを掴むことや啄木に関して知識が増えたことかな。啄木って、お金がなくて借金してもそのお金でお酒飲みに行ったりして、苦労しながら真面目に歌に邁進したというのとは少し違うんですよね。このイベントに参加して問題を解くためには、いろいろな本にあたらないといけないのですが、それぞれの啄木関連本で焦点をあてているところが違ったりして、そんなあれこれを読むのもとても楽しかったです。
真砂中央図書館さんには、こんな楽しい企画を開催してくれて感謝。ぜひぜひ来年もやって欲しいです。文京区ゆかりの文学者はたくさんいるので、毎年開催してもネタは尽きないはず。真砂中央図書館さん、ぜひよろしくお願いします!