ブックポーカー
visit:2018/03/17
2018(平成30)年3月17日に足立区立保塚図書館で開催されたブックポーカーに参加してきました。ブックポーカーとは、NPO法人・ツブヤ大学さんが考案したゲームで、参加者が本を持ち寄り、その本を伏せたまま持ち寄った本について話し、最後に寄せられた本を並べて、誰がどの本を持ってきたかを当てる遊びです。東京都内の図書館イベントとして開催されたのは、私が知る限り今回が初めてではないかと思います。
会場である学習室に行ってみると、予想以上にたくさんの人が集まっていてびっくり。6人×2グループのゲームを想定して会場が用意されてましたが、実際には1人参加者が上回り、6人と7人のグループを作ってそれぞれでゲームを行いました。司会進行は足立区にある東京未来大学の学生さんが中心となっているNPO団体・Book Linkさんが行ったのですが、最初にブックポーカーをしたことがあるかどうかを参加者に聞いたところ、半分以上の人が初めてとのこと。私は今回が2度目で、1度目の反省をもとに、私らしくなさそうな本を用意しての参戦です。
まずは、各自が持ち寄った本を他の参加者には分からないようにしてイベントスタッフに渡します。皆の本を回収したらゲームスタート!ゲームの流れは、以下の4つのフェイズを順に行います。
- 自己紹介フェイズ
- 会話フェイズ
- 推理フェイズ
- 判定フェイズ
「自己紹介フェイズ」は、参加者が輪になって順に簡単な自己紹介をする時間。でも、ここで話したことも推理の手掛かりになるので、要注意。普段どんな本を読むかなどを話したらヒントになってしまいますが、逆に余計なことを話して惑わすこともできる。そう、ここから勝負は始まっています。
一通り自己紹介が終わった後は「会話フェイズ」。ここでは席を立って、自由に他の参加者と質問をしあい、相手が持ってきた本を推理する手掛かりを集めます。誰か1人と長く話してしまうと、その分他の人と話す時間が減るので、時計を見ながらしっかり全員と話をしないと推理のときに困ってしまいます。
会話の最初を「あなたの本の魅力はなんですか?」という質問ではじめることがルールで決まっていますが、その後は自由に話して構いません。とはいえ、もちろん書名や著者を直接聞くのはNGで、例えば私がよく聞いた質問は「喜・怒・哀・楽などの言葉でその本を表すとしたら何ですか」や「その本を読んだきっかけは?」など。他には「その本を擬音で表したら何になる?」という質問もよくされていました。
答えたくない質問には、「ノー・アンサー」と言って回答を拒否することもできます。ただ、ここで使える「コスト」というツールがあり、コストを渡しながら質問した場合、渡された相手は必ずその質問に答えないといけません。コストはゲームの最初に1人3つずつ配られていて、もらったコストを他の人に対して使うことも可能です。コストを使える質問は、「作品のジャンル」「著者性別」「著者国籍」のどれかに限られます。
会話フェイズで難しいのは、どんな本が集まっているのかを全然知らない状態で聞きまわらないといけないということ。例えば、会話フェイズで「主人公は男性?女性?」と一生懸命聞いて回っても、集まった全ての本の主人公が男性だったら、この質問は全く手掛かりになりません。ちなみに、持ち寄った本は小説とは限らないので、例えば、平野レミさんの料理本を持ってきた人が、料理本の主人公を料理人の著者と解釈して「女性」だと答えても嘘にはなりません。質問を柔軟に解釈し、ときには一ひねりして答えられる人のほうが、ブックポーカーが強いかもしれませんね。いずれにせよ、会話フェイズで交わされる情報が勝負を大きく左右します。
聞き取りが終わったら、テーブルに戻って「推理フェイズ」に入ります。最初に集めておいた本をテーブルの上に並べて、会話フェイズの内容を手掛かりに、誰がどの本を持ってきたかを推理し、回答用紙に記入します。但し、並んだ本の中にはスタッフさんが用意したダミー本が混ざっており、参加者数より1冊多くなっています。参加者はダミー本に惑わされないように、他の参加者の本を推理します。その際、並べられた本を開いて、どんな本かを確認しても構いません。
では下に、私がいたグループで並べられた本と、私が聞き取った内容を挙げてみます。お時間がある方は、誰がどの本を持ってきたか推理してみてください。実際には、自分の本はわかっているので、自分以外の人の本を推理することになりますが、皆さんは私の本も含めて推理していただければと思います。
並べられた本 | |||
A | B | C | D |
『人類最強のときめき』 西尾維新 |
『探偵が早すぎる』 井上真偽 |
『劇場』 又吉直樹 |
『映像メディア論』 辻泰明 |
E | F | G | |
『日本滞在日記』 レザーノフ |
『或るろくでなしの死』 平山夢明 |
『サバイバルファミリー』 矢口史靖 |
会話フェイズで得た手掛かり | |
① |
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② |
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③ |
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④ |
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⑤ |
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⑥ |
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実際に集まった本のうち、『サバイバルファミリー』は保塚図書館のバーコードが貼ってある図書館蔵書で、こうしたこともヒントになりえます。また、ここでの行動、つまり、どの本をよくチェックしているか、していないかなどもヒントになってしまうので、自分の持ってきた本を知らない本かのように眺める演技もしたりして。推理が終わるまで油断はできません(笑)。
実際には、会話で得られた情報のほか、年齢やその人の雰囲気から想像される「こんな本を読みそう」というのも手掛かりになります。もちろん、そうした想像の裏を突いて、真面目そうな雰囲気の人がハチャメチャ系の読み物を持ってきたり、ノリが軽い人が本格的専門書を持ってくる可能性もある。そう、このゲームは会場に入ってから始まるのではなく、どの本を持ってくるかというところから勝負が始まっているのです。
更に、これは終わったあとにBookLinkのメンバーさんと話したときに出たのですが、本の帯はその本に関する情報がかなり載っているので、本を持ってくるときに帯を付けてくるか、外してくるかはよく考える必要がある。同じように、本の表紙も、付いた状態と外した状態とでは印象が変わります。それで思い出しましたが、確か『人類最強のときめき』だけに栞が挟まっていたんです。栞を入っているか、入っているとしたらどんな栞にするかも、ヒントにもなるし、罠にもできそうです。
推理フェイズの制限時間がきたら「判定フェイズ」、つまり、答え合わせを行います。参加者が順番に、自分も持ってきた本はこれだと発表していきます。その結果は、以下の通り。推理していただいた方は、当たっていたでしょうか。
①…A『人類最強のときめき』 |
②…G『サバイバルファミリー』 |
③…E『日本滞在日記』 |
④…B『探偵が早すぎる』 |
⑤…D『映像メディア論』 |
⑥…C『劇場』 |
会話フェイズで得た手掛かりを見ていただけるとわかりますが、今回の私のグループでの一番の曲者は、⑤ 番の方です(笑)。「その章ごとに主人公がいる」「登場人物の多くは男性」という回答に、私は東野圭吾の『新参者』のような、章ごとに別の登場人物をフォーカスしていく凝った小説を想像していたのですが、それが多様な映像メディアのこれまでとこれからをまとめた学術書だったとは。答えがわかってから会話フェイズでの回答をふりかえると、「この本の魅力は?」の返事「私にとってのバイブル」も、「どんな人に読んで欲しい?」の返事「全世界の人にお薦め」も、漠然としすぎて手掛かりにならない、とても上手い答え方です。
更に言うと、私は⑤番さんとブックポーカーをするのは今回が2度目で、1度目は会話をしなくてもその人の持ってきた本がわかってしまうくらい、その方の趣味真っ只中の本を持ってきていたんです。今思えば、1度目にあんなバレやすい本を持ってきたのも、前振りだったのか…。まんまと騙されてしまいました。あー、悔しい!
ただ、ブックポーカーは、勝つポイントは推理が当たっているかどうかだけではありません。配点には公式なルールが決まっているわけではなく、主催者さんによって違うようですが、今回下のような配点で計算しました。
正解数 | …1つ10ポイント |
手持ちのコスト | …1つ3ポイント |
評価(読みたい本の投票) | …1票5ポイント |
正解数は、誰がどの本を持ってきたかという推理の正解数。自分の持ち寄った本は正解して当然なので、それを除いて計算します。手持ちのコストは、最初に配られたコスト3つを会話フェイズでやりとりして、最終的に手元に残ったコストの数です。最後の「評価」は、答え合わせをするついでに1人1冊一番読みたいと思った本を決めて投票し、自分が持ち寄った本に入った票数がポイントになるというもの。この3つの要素を全て足した合計ポイントが高い人がゲームの勝利者となります。今回は正解数の多かった③番さんが勝利者となりました。
実はこの「評価」がブックポーカーを面白くするもう一つの要因で、本について詳しく話し過ぎるとどの本を持ってきたかバレやすくなりますが、だからと言って隠しすぎると、読みたいと思われにくくなり、評価ポイントを得られなくなってしまいます。例えば、私は、ゲーム内では『日本滞在日記』に1票入れたのですが、ゲームが終わった後に『サバイバルファミリー』の内容を詳しく聞いて、この本も読みたいと思いました。本の魅力を伝えるには詳しく説明したい、でも、当てられないためには説明しすぎてはいけない。この反する気持ちの兼ね合いは、ブックポーカーならではの面白さです。
こんなかたちで楽しむブックポーカー、ややルールが複雑ですが、それだけいろいろな要素が含まれていて奥が深く、とても楽しい時間でした。他の参加者から話を聞きださないといけないという部分で、コミュニケーション要素も大きいし、その一方、自分の本がバレないように話す点では、頭脳戦でもあり心理戦の要素もあります。ちなみに私は、ビブリオバトルの参加が多いせいか、必要以上に話し過ぎる傾向があり、今回も1人を騙せただけで残り4人には当てられてしまいました。ブックポーカーに参加するときは、もっと意地悪な人にならなければ。
本を使って遊ぶゲームなので、もっといろんな図書館で開催されたらいいなと思います。何より今回の私の得点が、正解数1問×10ポイント、手持ちのコスト3つ×3ポイント、評価0票で、合計19ポイントと不甲斐なさすぎる結果だったので、リベンジする機会が欲しくてたまりません。ゲーム後には、図書館スタッフさんとBookLinkのメンバーさんを捕まえては、ぜひまた開催して欲しいとリクエストしまくってしまいました。また開催される際には、この記事でブックポーカーを初めて知った方もぜひ一緒に楽しみましょう!