ティーン向け広報誌「ぐるぐるぐる」Vol.8
visit:2012/03/30
江戸川区立図書館では、ティーン向け広報誌「ぐるぐるぐる」を隔月で発行しています。A3の紙を1/8の大きさに折り畳んでいて、小さい記事がたくさん載っている、遊び心いっぱいの広報誌です。江戸川区内の各図書館のティーンズコーナーはもちろん、人目につきやすい階段の踊り場などでも配布していたりするので、見かけたことがある方も多いと思います。
この広報誌のユニークな点は、ティーンに向けた広報誌であるだけでなく、広報誌の制作にティーン・スタッフとして江戸川区在住・在学の高校生・大学生・専門学校生が参加していること。記事を書いたり、たぶんどんなテーマにするかといった企画から参加しているのではないかと思います。今の中高生は反抗期があまりないとも聞きますが、それでもやはり、大人に押し付けられた「中高生向けお薦め本」などより、中高生自身が読みたいと思う記事を読みたいですよね。私なんかは、今でも親の言うことをあまり聞きませんが…(笑)。そんなかたちで作られている広報誌なので、本に関することのほか、面白いもの、気になるものをいろいろ掲載している、楽しい広報誌なんです。
例えば、いつもほのぼのとした写真を掲載している「青山羊写真館」コーナー。今回の写真はチェンマイの仏像です。パンチパーマのような頭の上に、金色の三角錐がついているのが、日本の仏像と違うところ。タイのお寺って、お線香を買うと偽物のお札(燃やす用)と金箔が一緒についてくるんですよね。あぁ、思い出していたら、また行きたくなりました!
「ぐるぐる旅する」のコーナーでは、ユース・スタッフのかほさんが、中学三年生の修学旅行で行った京都・奈良の話を書いています。たぶん、記事と一緒に掲載されている金閣寺と清水寺の写真も、修学旅行のときに撮った写真なんじゃないかな。金閣寺って、三島由紀夫の『金閣寺』を読んでから行くと、気分が盛り上がりますよね~。この記事では、京都つながりで万城目学の『鴨川ホルモー』を紹介しています。
図書館の広報誌なので、もちろん本に関する記事もありますよ。例えば、今号の「江戸川区立図書館のyouth staff 図書館なんでもRanking」では、単なる貸出ランキングではなく、一捻りして、「よみもの以外で人気のある本」の上位5位を紹介しています。ランキングを見ると、1位に『この世でいちばん大事な「カネ」の話』、3位が『14歳からのお金の話』。日本の家計貯蓄率は年々下がっていますが、2011年は前年と比べて少し上がったんですよね。中高生のときからおカネの大切さがわかっていれば、日本の家計貯蓄率はこの先また上がるかも?!
そうした記事の中で、今回一番のお薦めが「編集者さんに会いに行こう!」のコーナー。この記事は、おまけのA3半分の裏表を使って掲載されています。冒頭でA3の紙を折った広報誌だと書きましたが、前号と今号(そして、ユース・スタッフの座談会記事によると、次号も)は、A3の紙を細長い向きに半分にした記事もついてて、それが「編集者さんに会いに行こう!」。ユース・スタッフが実際に出版社の編集者さんにインタビューし、記事にしているのです。
今回インタビューをした染谷誠さんは、『夕凪の街 桜の国』という漫画の担当編集者さん。私が篠崎図書館の中高生コーナーで「ぐるぐるぐる」をいただいたとき、『夕凪の街 桜の国』自体もそばに置いてあったので読んだのですが、ほのぼのとしたタッチで描かれている内容は原爆被害者の人生。原爆が投下されて時がたち、一見普通の暮らしを送っているように見えるけれども、結婚などで差別されたり、主人公自身もあの日自分が生き抜くことが精一杯で、倒れている知り合いを見捨てることになってしまったことを心に抱えて生きている。すごく考えさせられる作品です。
漫画がそうした内容なので、インタビュー内容も、そんなテーマを取り扱うことになった経緯、漫画が世に出たあとの国内外の反響のほか、染谷さんが編集者になったきっかけや、出版業界のこと、電子書籍のことなど、幅広い内容にわたっているのですが、それをとてもよくまとめています。深くて濃いのにしっかりまとまっていて、高校生が書いたとは思えないくらい質の高いインタビュー記事で、大人にもお薦め。『夕凪の街 桜の国』はAmazonで単行本総合部門第1位になったことがあるそうですが、このインタビューも江戸川区民だけでなく、全国の『夕凪の街 桜の国』読者に読んでほしいくらいです。このページは、便宜上、江戸川区中央図書館のページからリンクを貼っていますが、実際には2012年5月14日まで江戸川区内の図書館ならどこでも配布している(2012年5月15日になったら次号が出てしまう)ので、ぜひ読んでみてください。
そんな読み応え十分な「ぐるぐるぐる」では、新年度のユース・スタッフを募集しています。活動期間は2012(平成24)年5月から2013(平成25)年3月までで、募集人数は5名。応募資格は、江戸川区在住、あるいは、在学の高校・大学・専門学校生であること。募集期間は2012年4月30日までですが、定員に達したら4月30日を待たずに募集終了です。2011(平成23)年度はできなかったようですが、広報誌の制作だけでなく、ティーン向けの行事にも参画できるようです。
参加してみたいけど、どんな雰囲気で行われるかが気になるという方は、ぜひ今号掲載の座談会を読んでみてください。ユース・スタッフとして広報誌の編集に携わってから、「編集者さんに会いに行こう!」でプロの編集者さんにお会いしたことで、「編集」ということに関する思いがより深くなった話など、ユース・スタッフの体験によって視野が広がった様子が伝わってきます。将来、雑誌や書籍の編集者さんになりたい人、図書館職員になりたい人だったら、参加したい手はないですよ!特に、2011年度のスタッフは女子ばかりだったみたいなので、男子もぜひ。読者としても、新年度のユース・スタッフによって、誌面がどう変わるのか楽しみです。