移転前の旧・港区立男女平等参画センター(リーブラ)図書室
旧・男女平等参画センター(リーブラ)図書室は2014年11月30日で移転のための休館に入りました。その後、現在の男女平等参画センター(リーブラ)図書室が2014年12月22日に移転開館しました。
以下は、移転前の旧・港区立男女平等参画センター(リーブラ)図書室の訪問記です。
移転前の旧・港区立男女平等参画センター(リーブラ)図書室 訪問記
港区の男女平等参画センターはJR田町駅のすぐそば、ホームから見えるくらい近いです。田町駅のホームの浜松町寄りの端に立って斜め右を向くと、線路の向こうに「リーブラ」と書いてある薄いレンガ色のビルがある、それが港区の男女平等参画センター。「リーブラ」はこの施設の愛称です。
田町駅のすぐそばなので、三田駅からも当然歩いていける距離。この辺りは三田側に三田図書館が、芝浦側に男女平等参画センター図書室があり、お住まいや通勤・通学先がどちら側でも港区立図書館を便利に使えるという状態です。
リーブラがある田町駅東側は埋立地で、散歩するとやたらと橋に出くわします。水路を渡って歩くのも楽しいですが、私が好きなのは東京モノレールから見下ろす眺め。浜松町駅を発ってしばらくしたこの辺りから段々と海に浮かぶ島を縫っていく感じになるのがいいです。
この建物には、男女平等参画センターのほかに港区の総合支所や消費者センターも入っていて、男女平等参画センターがあるのは建物の3~5階です。そのうち、図書室があるのは3階で、階段・エレベーターで上がると、左先に男女平等参画センターの受付があり、その奥に図書室があります。
図書室内は、カウンターのそばに閲覧用テーブルが3つ置かれ、その奥に書棚が並ぶというシンプルな配置。男女平等参画センターの図書室という存在ですから、面積も小さいです。設備としては、ネット閲覧PCやビデオ・DVDの視聴機もあります。図書室の脇に印刷・製本などができる作業室がありますが、図書室の設備というよりは男女平等参画センターで活動をする人やサークルのための設備です。
港区立図書館の検索機もありますが、ふだんは電源を落としていて、使いたいという人がいたら電源をつけるかたちです。机下の鍵がかかるボックスに電源があり、検索機を使いたいと申し出ると、職員さんが事務所に鍵を取りに行き、鍵を開けて、電源を入れて検索機が立ち上がるのを待つことになるので少し時間がかかります。職員さんに声を掛ければすぐに対応してくれますが、ちょっとした検索だけで時間はかけたくないという場合は、貸出用の端末で職員さんに検索してもらう方が早いです。
書棚に並ぶ本は、男女平等参画に関する本が中心…といっても、「男女平等参画」って何だろうと思う人もいると思いますが、性別による差別なく暮らせる社会や女性・男性の生き方を考える本というとイメージが湧くでしょうか。例えば、小説の棚にあるのは不倫相手の赤ん坊を誘拐して逃げる女性が主人公の『八日目の蝉』、農村で生まれた女性の人生を描いた『おしん』、時代に翻弄されながら生きる中国人一族について女性を中心に描いた『ワイルド・スワン』など。
漫画もいろいろあり、著者自身の子育てを描いた『毎日かあさん』、男性として育てられた女性・オスカルを主人公とする『ベルサイユのばら』、自閉症の子どもを育てる家庭を描いた『光とともに…』など。『八日目の蝉』や『ベルばら』などは普通に読んで楽しめるけど、社会的に割り振られた「女性の役割」・「男性の役割」について考えさせられるものとしても読めますよね。そんなかたちで、専門的な本から広い意味で男女の生き方を考えさせる本までいろいろ収集しているのが、この図書室です。
児童書や絵本も少しあり、活躍した女性の伝記や児童向けのジェンダーフリーの本、将来について考える本など、施設の趣旨に沿った内容のものが揃っています。例えば、世界の偉人の伝記を漫画にしたシリーズのうち、ヘレン・ケラー、ナイチンゲール、キュリー夫人など女性の伝記が並んでいるというかたち。
DVD・ビデオもそういった内容のものを収集しており、分類も「一般映画」「生き方」「しごと・働き方」「家族・パートナー」「こころとからだ」「女性ヘの暴力・DV」「男女平等・共同参画」「社会・まちづくり・環境・防災」「音楽・アート」「その他」となっていて、一般的な図書館のDVD・ビデオとは少し違ったラインナップです。「一般映画」に分類されているものの施設の趣旨に沿っており、例えば、女性がサッカー観戦できないイランで女性たちが男装をしてサッカー観戦に行く「オフサイド・ガールズ」や、中国から米国へ移住してきた女性たちとアメリカ国籍を持って生まれたその娘たちの様子を描いた「ジョイ・ラック・クラブ」など。映画館といえばシネコンばかりになってしまった今、そうしたところでは上映されにくい映画を所蔵しているという意味でも貴重な図書室です。
行政資料として、港区の男女平等参画事業に関する資料や、同様の都の資料、都内の他の区市町村の資料なども揃っています。男女平等参画に関わるNPO団体の資料もあるし、窓際の小さな棚には大学の女性学研究所などが発行した資料もあります。この小さな図書室に、暮らしの中の身近な問題から、自治体としての取り組み、専門機関による研究までがギュッと詰まっているというわけです。
現在のリーブラ図書室の様子とは話が逸れますが、このように特定のテーマで収集した資料をどう整理すれば利用者がわかりやすいかというのは難しい問題で、リーブラ図書室も分類法を途中で変えています。2014年11月25日現在は一般的な図書館の分類法・日本十進分類法(NDC)で分類されていますが、2013年1月に訪問したときにはNDCとは全く別の独自の項目で分類していました。「子どもの人権」「アダルトチルドレン」「児童虐待」「主婦論 家事労働」「家族に関する法律」などの項目に「F+数字」の分類記号をつけて、私の当時のメモを見る限り「F81」まであったのは確実で、実際には90項目か100項目くらいあったかもしれません。
その前に訪問した2010年4月にはNDC分類だったので、2010年4月から2013年1月までのどこかで独自分類を導入し、そこから2014年11月までに戻した模様。私個人は2013年1月に使われていた独自分類は高評価していましたが、残念ながら廃止されたのには何らかの理由があったのだろうと思います。
現在のリーブラ図書室の様子に話を戻しましょう。階段・エレベーターからカウンターの方へ向かって行くと、職員さんのほうから明るい挨拶をしてくださいます。男女平等センターは講座を開いたり、サークル活動を行ったりできるほか、生き方・ 働き方、夫婦・親子関係、子育て、離婚、ドメスティック・バイオレンス、セクハラなどに関する相談を行ったりもできるのですが、こういう雰囲気の施設なら入っただけでも気分が少し明るくなります。
そういう意味ではこの図書室も、本を借りるためだけでなく、図書室にいながら施設の雰囲気に馴染むクッションになれるように思います。例えば、相談しようと窓口まできたものの、直前でおじけづいてしまう人もいるかもしれない。そんなときに受付の脇にこうした図書室があれば、そこでちょっと気分を落ち着かせたり、数回図書室を利用しながら施設の様子を見て、馴染んでから相談したりもできますね。
港区立図書館の窓口として利用したりして“こんな施設がある”ということを頭の隅に覚えておけば、困ったときに頼りになる面もあると思います。図書館としても、男女平等参画センター本来の機能も、ぜひ活用してください。