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改築前の文京区立本郷図書館鴎外記念室

文京区立本郷図書館鴎外記念室は、2008年3月31日を最後に閉室しました。その後、改築したうえで名称を変え、森鴎外記念館が2012年11月1日に開館しました。

以下は、改築前の文京区立本郷図書館鴎外記念室の訪問記です。

改築前の文京区立本郷図書館鴎外記念室 訪問記

last visit:2006/06/28

千駄木駅を降り、団子坂を上がって右に曲がると本郷図書館ですが、そこで曲がらずさらに坂を上って道沿い左に現れるのが本郷図書館鴎外記念室です。

ここは2006年3月まで「鴎外記念本郷図書館」があった場所なんですよね。図書館としての施設の充実を図って本郷図書館を移設し、こちらの方は鴎外記念室として改修後2006年6月1日からニューアルオープンしています。

というのも、ここは森鴎外がその生涯で何度かくらした観潮楼の跡地なのですよね。なので図書館として手狭になっても、鴎外の資料を所蔵・展示する施設として利用しているわけです。

入口を入って右に事務室、その奥に資料が少しと閲覧席。入口左がちょっとしたロビーのようになっていて、椅子があちこちにある中、鴎外邸の模型や「観潮楼幻影」なるものがあります。展示室はそのさらに左の小部屋で、展示室の左からは庭に出ることができます。お天気にもよるのでしょうが、私が行ったときには庭への扉が開放されていていい眺め。

まずは、「観潮楼幻影」なる正体不明のボックスを物色してみます。のぞき窓の奥に楼の一室の模型があり、スイッチを押すと立体映像で当時の様子が再現されるのですが、、、う~ん、微妙。演劇風のセリフ回しのせいか、軍服姿の森鴎外がシベリア超特急に出てくる水野晴郎に見えてしまった(いや、これはさすがに言い過ぎか 笑)。

その後、展示室へ。展示室の壁沿いと中央に展示棚があり、壁沿いが常設展示、中央が企画展示の棚となっています。

2006年6月にいったときの企画展示は「森鴎外の文房具 -文化を生んだ道具たち-」。鴎外記念本郷図書館時代に図書館が発行した「鴎外愛用の品々」という本をもとに企画した展示なのだとか。

硯や水滴(硯にさす水を入れておく容器)、筆置きなど、使いこまれた文房具が展示してありますね。ともに展示されている表をみると、学生の頃の文筆には筆を利用、その後ペンや鉛筆を使うようになったけど、後年はまた筆を利用していたみたいです。いろいろ試しても筆が一番だったのかな。

文房具以外の愛用品もあって、葉巻切りなんかは犬の形をした可愛いものです。葉巻切りなんて使ったことないからわかんないけど、たぶん尻尾の部分で切るようになっている。

また、自家製本版「坊っちゃん」なんてものもありまして、鴎外は雑誌から必要部分だけを抜き出して綴じて保存したりしていたそうですね。これもそういった本の一つのようです。見た限りしっかり製本されていました。

閲覧室の方は、開架で置かれている資料はほんの少しで、ほとんどは閉架の資料をカード目録で調べて取り出してもらうようになっています。ここは閲覧だけで貸出はしていないようですね。鴎外の資料はもちろんのこと、タウン誌の「谷中・根津・千駄木」や「千住」などもずらっと並んでいました。

入口とは反対側にある庭は観潮楼時代から庭だったところです。そちらにも門があり、そこから出入りすることもできますね。森鴎外、幸田露伴、斎藤緑雨がここで写真を取ったことから知られている「三人冗語の石」も残っています。銀杏の木は包帯でぐるぐる巻きにされていてちょっと痛々しいのですが、これも観潮楼時代からある木かな。

この庭は広さもちょうどよく、すごく落ちつけるんですよね。「鴎外記念本郷図書館」だったときよりも利用者が少なくなったので、独り占めできる感じもいい。本郷図書館で本を借りて、この庭で読むのもいいですよ。

さて、私、リニューアルオープン初日に行ったのですが、非常に閑散としていました。ちょっと淋しいですね…。しかし、その閑散さの利点というのもあるわけで、自分のペースでゆっくり見れた上に、職員さんと少しお話できました。閲覧室の使い方などを閲覧室のカウンターにいた方にちょっと聞いていたら、他の職員さんから「いかがでしたか?」と声を掛けられて。

思わず第一声が「常設展示って変わっていませんよね~」だなんて、なんて意地悪な私(笑)。展示室が結局以前のまま(拡張されることを期待していたので)だとか、今振り返るといい点の一つも挙げればいいのに、欲ばかり言う来館者ですね。

まあ、おそらく展示室として利用するにはそれなりの温度・湿度管理が必要で、ロビー部分が空いているからとそう簡単に展示スペースにはできなかったりするのでしょう。それでもまぁちょっと言ってみたかったのですよ。ごめんなさいね。

その後、ちょっと確認したかったので、この記念室の場所が観潮楼のどの辺りなのかをこちらから質問(観潮楼の跡地のうち、人手に渡ってしまった部分もあるので記念室になっているのは跡地の一部なのです)。庭の形から推測していた通り、南東部分が記念室であることを丁寧に教えていただきました。

それと、本郷図書館のオープン初日に比べたら空いていますね~、なんて話をしていて聞いちゃったこぼれ話がありまして、本郷図書館の開館時に間違って閉館の放送を流してしまったそうです(笑)。まぁ、それもご愛嬌としましょう!

そして最後に、沙羅の開花した頃に来るとまたいいですよ、と教えていただきました。私、狙って6月後半に行ったのですが、既に散った後でした…。電話で花の開花の様子を問い合わせたら教えていただけるそうなので、来年はちゃんと電話して行こうと思います。

という感じで、この閑散さ加減はかえっていいのではないかと思いました。展示も自分のペースで観られるし、庭でものんびりできるし、学芸員さん(かな?)とお話もできたりして。もちろん、いつでもお相手してもらえるとは限らないでしょうが、また機会があったらもっといろいろお話を伺ってみたいものです。