移転前の文京区立鴎外記念本郷図書館
鴎外記念本郷図書館は2006年3月5日を最後に移転のための休館に入りました。その後、名称を変えて、現在の本郷図書館が2006年4月11日に移転開館しました。また、鴎外記念本郷図書館跡地にて、森鴎外記念館が2012(平成24)年11月1日に開館しました。
以下は、移転前の文京区立鴎外記念本郷図書館の訪問記です。
移転前の文京区立鴎外記念本郷図書館 訪問記
千駄木駅から団子坂を上ったところにある鴎外記念本郷図書館は、森鴎外が住んでいた観潮楼の跡地に建てられています。
入口は団子坂に面しているのですが、裏に庭園があり、そちらからも出入りできるようになっています。庭園は鴎外がいた頃のものを一部利用していて、そんじょそこらの図書館の庭とはちょっと違った趣き。ベンチもあるので、座ってのんびりすることもできます。
図書館に入ると、左にカウンター、右に児童室とCD、一般書架。書架は左のカウンターの周囲にもありますね。それよりさらに左に鴎外記念室。記念室入口の左横に、庭園へのドアがあります。これが1階。
書架は地下にもありますね。上の階はというと、2階が事務室で、3階が閲覧室と新聞・雑誌・行政資料。行政資料と地域資料は近くの棚にある図書館が多いですが、ここの図書館は行政資料は3階、地域資料は1階カウンターの前と、別のフロアにあります。
まず図書館部分から見ていきましょう。書架は棚と棚の間が狭く、他の方とすれ違うのに一声掛けずには通れません。面積がそんなに広くないので、まぁしょうがないのかな。
地下は上の足音が聞こえるときがあって(普通だとそんなに聞こえないのですが、サンダルを引きずって歩く方がいたりしたときなど)、ちょっと大田区の馬込図書館の地下を思い出すような心許なさが(床が薄いような感じがしてしまう)。でも、心許なさで言ったら馬込図書館の方が断然上ですね(笑)。
1階の書架はかなり上の方まで積んであって、ちょっと地震のときなど大丈夫なのかなぁなんて気も。でも、その甲斐あって、面積が小さい割には書架も充実しています。
特に文学研究・作家研究の棚はかなり充実。文学研究は研究書の著者ごとに、作家研究は対象の作家ごとにずらっと並んでいます。
眺めていて感じたのが、村上春樹研究本の多さ。棚一段分くらいの本があった作家は他にもあれど、現代の作家で棚一段弱あったのは村上春樹ぐらい。研究本が作家によってどれくらい出されているかなど、研究本を研究するのも面白そう。
鴎外記念室の近くの書棚には、当然鴎外関連本があります。文京区教育委員会発行で、鴎外記念室の所蔵物の本などもありますね。壁には鴎外の横顔が掲げられています。
そして、鴎外記念室。入口右から順に鴎外の生涯を展示しているので、順路通り右回りで回ってくださいね。逆に行っちゃうとデスマスクから始まってしまいます(笑)。
やっぱりドイツ留学時代とか、エリート然な雰囲気を感じてならないのですが、そう感じた上で子供達への手紙を読むと何とも微笑ましい。自分のことを「パパ」って書いていたり、書いている内容も普通の親子の会話です(当たり前か)。まぁ、「パパ」という言葉の感覚は今とは違うのかな。子供に西洋風の名前をつけるのと同じような感覚で使っていたのでしょうか。
また、私が行ったときには企画展で「鴎外宛の年賀状」という展示をしていました。この企画は今までにも何度かやっているようですね。漱石や谷崎潤一郎からの年賀状が展示してあります。
これが意外にシンプル。特に漱石のはそっけない印刷で、見ているこっちが「それで大丈夫なの?」と思ってしまう。その点、宛先を書く面の方が絶対自筆なので面白かったりして。
まず、今の世に生きている身からすると、郵便番号がないのが当たり前なのでしょうがちょっと面白い。それでもって宛先が「本郷千駄木 森鴎外先生」しか書いてなかったりするんです。これって、鴎外のような人だからこそこれで届くんですよね。それとも当時はこれくらいで届いてしまっていたのでしょうか。
ここでは数枚しか展示されていなかったのですが、文京区教育委員会発行の「鴎外をめぐる百枚の葉書」という本には年賀状以外のいろいろな葉書が掲載されています。販売もしていますが、図書館の蔵書としても所蔵されていますよ。
記念室以外にも1階から2階への階段の壁には、鴎外ゆかりのドイツの場所の写真が展示されています。
話は変わりますが、カウンターそばの新着本コーナーでしばし本を立ち読みしていたら、カウンターの辺りから何とも懐かしい音が聞こえてきまして、、、何と、この図書館の電話、ダイアル式なんです。予約本が来たという利用者への連絡を職員さんがその電話でなさってまして、そのダイアルを回す音が聞こえてきたと。ダイアルの電話なんて、私、おそらく10年以上ぶりです。何だか嬉しくなっちゃった!
さて、この鴎外記念本郷図書館、近々図書館部分を移転するようです。現在の場所は鴎外記念館として利用。図書館だけを近くに移転して本郷図書館とするらしい。
その移転に伴う休館がいつまでたっても公表されなかったので、計画が予定通り進んでいないことを危惧していましたが、2006/3/6~4/10までを移転による休館とするようですね。よって、4/11が新館のオープンとなるようです。
その件について、文京区ホームページを検索して議事録など読んでいたら、『千駄木なのに何故「本郷」図書館なんだ』という議論があったりして面白いですね。今の鴎外記念本郷図書館のある場所が旧本郷区、昔本郷図書館という図書館があったこともあって、歴史を大事にして本郷の名を使うということで「本郷」だそうですが、現文京区内の他の場所に「本郷」という地名があるから紛らわしいと言えば確かに紛らわしい。
でも、結局は「本郷図書館」で落ち着きました。何で本郷じゃないのに本郷図書館なんだろう、という疑問から始まって、昔のことに興味を持つきっかけになったりすれば面白いですね。
「鴎外記念本郷図書館」という状態はもうすぐ見られなくなってしまうので、今のうちにぜひ一度行ってみてください。