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改築前の旧・豊島区立巣鴨図書館

旧・豊島区立巣鴨図書館は2014年2月2日を最後に改築のための休館に入りました。その後、現在の巣鴨図書館が2015年4月4日に開館しました。

以下は、改築前の旧・豊島区立巣鴨図書館の訪問記です。

改築前の旧・豊島区立巣鴨図書館 訪問記

last visit:2014/02/02
§ 図書館の場所

巣鴨図書館の最寄駅は、JR巣鴨駅や大塚駅。とげぬき地蔵で有名な高岩寺の南西300mほどのところにあります。「お年寄りの原宿」などと呼ばれる巣鴨地蔵通商店街ですが、和菓子などのお店もいろいろあって、実際には老若男女問わず楽しめる通りです。図書館の行き帰りに時間があれば、心や身体に刺さった「とげ」を抜いてくれるというとげぬき地蔵もお薦めです。

住宅地の中にある巣鴨図書館ですが、目印となるのが図書館前の噴水。現在は稼働していないですが、2005(平成17)年までは噴水が稼働していたとのこと。でも私、2008年5月に噴水から水が出ていたのを見たことがあるんです。あれは掃除か何かで特別に動かしていたのかな。レアな姿だと知っていたら、もっとじっくり見ていればよかったです(笑)。

§ 図書館内の様子

巣鴨図書館は2階建てで、1階にカウンター、児童エリア、一般書架の大部分、2階に新聞・雑誌コーナー、図書分類300番台(社会科学)の本、文庫、中高生コーナー、地域資料、閲覧室というフロア構成です。1階には児童エリアを除くと椅子がないので、1階にある本を座って読みたい場合は2階に上がることになります。

もし1階にある本を読まずに借りるだけの人も、時間があればぜひ2階に上がってみてください。というのも、2階の窓に備え付けられているのが、カーテンでもなく、ブラインドでもなく、障子なんです。障子を使っている図書館と言えば、都立図書館時代から障子を使っていた千代田区立日比谷図書文化館も有名ですね。図書館としては変わった趣きで、そんな空間にいるだけで少し楽しくなってきます。

§ 児童エリア

児童エリアは、図書館入口を入ってすぐ左の部屋です。小さい空間に棚が並んでおり、手前左には靴を脱いであがれる木の床のスペースもあります。座席も1つのテーブルに椅子が4席あるだけという、コンパクトな空間です。少し変わっているのが、靴脱ぎスペースの壁沿いにあるのが児童読み物だということ。靴脱ぎスペースは、小さな子どもが床に絵本を広げて読むことを想定してか、棚には絵本が入っていることが多いので、最初はあれ?という印象。でも、くつろいで読み物を読みたい子どもには、嬉しい配置かもしれませんね。

絵本は、日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にして、絵を描いた人の姓名五十音順に並んでいます。児童読み物は、日本人作家と外国人作家を交互にして、著者の苗字頭文字で分類されています。交互というのは、まず苗字が「ア」で始まる日本人作家の本が並び、次に苗字が「ア」で始まる外国人作家の本が並び、その次に苗字が「イ」で始まる日本人作家の本、「イ」で始まる外国人作家の本…といったかたちの並び順です。

注意すべきは、図書館お薦めの絵本や絵本ガイド・読み聞かせに関する本などが、児童エリアの中ではなく、児童エリアに入る手前両脇の棚にあること。入るときは中に目が行くものなのでこれらの棚は見過ごしがちですが、どんな絵本がいいか迷ったときの参考になるので、どうぞお見逃しなく!この棚には外国語絵本もあるので、日本とはタッチの違う絵を楽しむのもいいですね。

また、「798 あそび・パズル」の棚の右脇を見ると、「かるた」と書かれた袋があり、中にカルタの種類が書かれたダミーカードが入っています。おそらく、このカードをカウンターに持っていけば、カルタが借りられるのだと思います。アンパンマン、かいけつゾロリといった一般的なカルタのほかに豊島区の郷土カルタもあるので、図書館を利用していろいろなカルタで遊んでみましょう!

§ 一般書架

1階奥の一般書架も、空間に並べられる限り棚を並べたといった様子で、棚同士の間も狭いし、棚の側面の通路も狭いです。2014年2月からの改修工事前の展示によると、巣鴨図書館がオープンした1968(昭和43)年8月1日時点では書庫だった場所だそうで、この狭さにも納得です。当時は、一般書架入口にあたるところにカウンターがあって、この本が読みたいと資料請求すると職員さんが書庫から本を取り出す仕組みでした。巣鴨図書館は区内で2番目に開設されており、利用の仕組みの変化も乗り越えてきた図書館なんです(ちなみに、最初に解説された「豊島区立豊島図書館」は中央図書館として生まれ変わるために昭和54年3月で閉館)。

日本の小説・エッセイが壁沿いにずらっと並んでいるのも、わかりやすくもあり、わかりにくくもあるような面白い配置です(笑)。小説のような冊数の多いものが複数の棚に渡って収納されていると、棚の裏側に続いているのか、隣の棚に続いているのか、一瞬迷ったりしますよね。巣鴨図書館では壁沿いに続いている棚に小説を入れているのですが、1面では足りずに3面に渡る、つまりコの字型に小説が並んでいる状態です。

並べ方としては、著者姓名の五十音順で並んでおり、複数の著者による作品集は、タイトル名を元に五十音順の並びに入れられています。例えば、鏑木蓮(カブラギ レン)が書いたの本の隣に、5人の作家による『蝦蟇倉市事件1』(ガマクラシジケン1)という本が並び、その隣に上坂冬子(カミサカ フユコ)が書いた本がある、といったかたちになります。外国小説は、「中国文学」「英米文学」「ドイツ文学」など、国・地域別に分類したうえで、著者姓名五十音順に並んでいます。

小説の棚をよく見ると、直木賞受賞作・芥川賞受賞作に「直木賞」「芥川賞」という文字を印刷した黄色いラベルを貼っていたり、北原亞衣子さんの慶次郎縁側日記シリーズ(表紙だけではどの本がシリーズ何作目かわかりにくい)にはシリーズの番号をシールで貼ってくれていたり、ちょっとしたことですが本選びの参考になる工夫をしてくれています。

1階の階段手前には漫画の棚があります。巻数の多い漫画は、1冊ずつではなく「x巻~y巻」と複数巻セットで貸出管理をしており、漫画タイトルと巻数が書いてあるマグネットを棚から剥がしてカウンターに持っていけば、それと引き換えに借りられる仕組みです。マグネットがないものは貸出中ですが、マグネットを剥した棚面にタイトルと巻数が書いてあり、貸出中のものも含めて何を所蔵しているのかわかるようになっています。

§ 2階の様子

2階へ上がる手段は階段のみで、階段上がった正面に新聞閲覧席があり、その左に図書分類300番台(社会科学)の本、右に中高生コーナー、文庫、文学全集、復刻本、地域資料があります。また、手前左右にそれぞれ閲覧室があり、閲覧室と書架エリアの境目となる壁沿いに雑誌ラックが設置されています。

閲覧室の座席は、片側3人ずつ両側合わせて6人で大きな机を使うタイプの座席です。階段から見て右側の閲覧室には、10代専用席もあります。この10代専用席の机には元素記号表や地図などが敷いてあり、まるで勉強机のよう。この机で読書すれば、潜在意識で元素記号などを覚えられるかも(笑)?

§ 巣鴨関連コーナー

巣鴨図書館ならではの所蔵本としては、2階の階段から見て左の雑誌ラックの隣にある「巣鴨関連コーナー」。巣鴨に関連する本が集められているのですが、ただただ本が並んでいるだけで、巣鴨とどう関連するのかパッと見ただけではわからないのがやや難点。でも、それを調べるのも面白かったりします。

たとえば、 お地蔵さまに関する本や商店街に関する本は、巣鴨地蔵通商店街との関連。中山道関連の本があるのは、巣鴨駅の目の前を中山道が通っているから。これくらいはすぐに見当がつきますよね。

では、聴覚障害に関する本や手話に関する本があるのはなぜか。わからなくて職員さんに聞いてみたら、近くに都立大塚ろう学校があるからだそうで、地図で確認すると巣鴨図書館から北に250mほどのところにあります。また、明治女学校関連の本もあり、これは麹町区下六番町(現・千代田区六番町)の校舎が火事で焼けた後、明治女学校が移転した先が東京府北豊島郡巣鴨(現・豊島区西巣鴨2丁目)だったから。関連本には当時の写真なども載っています。

私にとって巣鴨との関連が一番わかりにくかったのが映画関連本だったのですが、所蔵本をあれこれ開いてわかりました。現在の西巣鴨4丁目辺りに巣鴨撮影所があったんですね。1919年に開設されて、1942年に閉鎖されたそうで、巣鴨にそんな施設があったのかとびっくり。こうしてみると、江戸時代には五街道の一つとして、近代には撮影所がある場所として、現代は有名な地蔵通商店街でと、昔から今に至るまで賑わいのある場所なんですね。

こんなかたちで、巣鴨を深く知ることができるのが巣鴨図書館。図書館を出て巣鴨関連コーナーで知ったスポットに足を運ぶのもいい散歩になりそう。周辺散策とともに楽しみたい図書館です。