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改築前の旧・港区立麻布図書館

旧・麻布図書館は2009年2月28日を最後に改築のための休館に入りました。その後、現在の麻布図書館が2014年7月1日に開館しました。

以下は、改築前の旧・港区立麻布図書館の訪問記です。

改築前の旧・港区立麻布図書館 訪問記

last visit:2009/02/18

麻布図書館は、都営大江戸線麻布十番駅から歩いてすぐ。7番出口を出て、左に折り返すようになっている道を歩いていくと、ジョナサンの先に麻布図書館が見えてきます。かなり地味な建物で、かつ、たぶん港区立図書館の中で一番狭い図書館だと思うんですよね。麻布や六本木に近いということで、あしゃれな図書館を期待して行こうものなら、予想を裏切られてしまいますが、古い図書館が好きな人には貴重な図書館と言ってもいいでしょう。

図書館は3階まであり、1階が児童コーナー、カウンター、新聞・雑誌コーナー、CDコーナーに、外国語図書と中高生コーナーのある「ピーターのへや」、新着図書コーナー、「麻布・六本木地域に関する資料」コーナー、大活字本。こう並べると、広いところだと思うかもしれませんが、そんなことは全くありません(笑)。その奥に、半地下と中2階へつながる階段があり、この2つのフロアが一般書架となっています。2階は閲覧室と事務室。3階は通常は閉まっていますが、視聴覚室があってときどき映画会などをやっているようです。

児童コーナーは、狭いスペースにわりと本棚が詰まっている感じ。新しい図書館によくある、広々として開放的な児童コーナーとは対極的で、靴を脱いで絵本を広げられる読み聞かせスペースもありませんが、本に囲まれているのが好きな子供は、こういう児童コーナーの方が気に入るかも。私が外国語絵本の棚を見ていたときも女の子が隣に来て、本当に読めるのかわかりませんが私と一緒に棚を見つめていたんですけど(笑)、こういう背伸びしたがる子っていますもんね。

その外国語絵本は300冊強あります。ほとんどが英語で、1冊だけスペイン語の絵本を見つけたのですが、図書館が貼った蔵書票のようなものに「英語」と記入してあったので、手違いで紛れ込んでしまったのかもしれません(笑)。外国語絵本の棚には、ディズニーの絵本はCD付きの絵本が並んでいたり、文章中心の児童書もありますよ。外国語絵本の左下の棚には、布絵本も12点あります(2008/10/13現在)。外れるパーツがなくならないよう、半透明の袋に入れて、パーツの数を書いたラベルを貼っています。

児童コーナーに雑誌ラックがあるのですが、児童向け雑誌だけでなく「オレンジページ」や「すてきな奥さん」などの主婦向け雑誌もここにあるので、これらの雑誌を読みたい人は要注意。親子がそばで本を読めるようにこの配置にしたというのもあるだろうし、狭い図書館に1冊でも多くの雑誌を置けるように、児童雑誌ラックの空きスペースも無駄にしないということなのかもしれませんね。

カウンターの前が新聞・雑誌コーナーとなっていますが、カウンター前のスペースではおさまりきらず、奥の一般書架への通路まで雑誌ラックが延びています。この通路の真ん中辺、コピー機に向かって右の柱には「大江戸麻布十番商店街MAP」なるものの貼ってあるので、ぜひこれを参考に寄り道したいところ。私もこのMAPを見つけた後、寄ってしまいました(笑)。

入口から見て、そのコピー機の手前左には、別室になっている区画があり、「ピーターのへや」という札が立っています。英語図書と中高生コーナーのある部屋なのですが、ピーターって誰なんでしょう。適当につけた名前かと思ってたけど、「ピーターのへや」の奥にある「麻布・六本木地域に関する資料」コーナーを見ると、昔から外国人の多かった場所であることがわかるし、図書館設立にピーターさんという人が尽力してくれたみたいな由来があったりして…って私の考えすぎでしょうか(笑)。

ご紹介が前後してしまいましたが、コピー機のあるところから2,3歩一般書架の方に進むと、「麻布・六本木地域に関する資料」コーナーがあります。地域紙、というより商店街の広報紙なのかな、「十番だより」「ザ・AZABU」というタブロイド紙が置いてあって、これは自由にもらっていいそうです。「ザ・AZABU」の方は日本語版と英語版の2種類がありますよ。

このコーナーの書籍資料としては、六本木ヒルズや東京ミッドタウンのデザインに関する本や、『ヒュースケン日本日記 1855~1861』などの地域にゆかりのある人の本、近くにある学校ということで『東洋英和女学院120年史』もあるし、『他を抜く!老舗の意地っ張り商い道―麻布十番「たぬき煎餅」親子三代奮戦記』なんて本も置いてあります。

童謡 赤い靴―The Images Of “AKAIKUTSU”』という本があったので、童謡の「赤い靴」は横浜の話じゃないの?と思いながら見てみたら、歌のモデルの岩崎きみちゃんは、結核にかかって麻布十番の鳥居坂教会の孤児院で亡くなってしまったんですって。その縁で麻布十番商店街にもきみちゃん像があるので、時間があったら麻布図書館のついでにぜひ寄ってみてください。場所は商店街のちょうど真ん中辺りで、「大江戸麻布十番商店街MAP」を見ればわかります。結構小さい像なのでお見逃しなく。

その先の一般書架は、上にも書いた通り、半地下と中2階の2つのフロアに分かれています。階段しかないので、バリアフリー度は低いと言わざるを得ませんね。図書館入口にはスロープがありますが、2階へも階段でしかあがれないし。麻布図書館は改築の計画があるので、その際にはバリアフリー面にも配慮した造りになると思いますが、半地下と中2階を使う少し風変わりな今の構造は面白いと思うので、改築と聞いて個人的には複雑な気分です。

2階は閲覧室があり、その中に過去の新聞と地域資料・行政資料・辞典類が置いてあります。言い方を変えればそれしかないので、一般書架から本を選んで借りるだけの人の中には、2階に上がったことがない人もいるかもしれませんね。1階と2階をつなぐ階段の踊り場には、美術館のポスターや講演会のチラシが掲示してあって、港区や東京都主催のものだけでなく、民間の美術館のお知らせも貼ってあるので、お好きな人は踊り場の掲示物もご利用ください。

閲覧室は1人分ずつ仕切られている4人掛けのテーブルが8つ置いてあります。ここの椅子って、床が結構つるつるなのにキャスター付きの椅子なんですよね。一度利用したことがあるのですが、油断するとずるっと滑ってしまいそうです(笑)。姿勢よく、変な力を入れないように座ってください(笑)。

閲覧室一番奥の地域資料の棚上には、図書館手作りの資料が掲示してあります。「麻布十番の彫刻案内」「麻布七不思議」「麻布六本木歴史散歩」など、地域のことを職員さんが調べてまとめたものですね。「麻布六本木歴史散歩」は継続して発行しているものっぽいのですが、2008年10月13日訪問時に貼られていた号が2006年度発行のものでした。この号でやめちゃったのかな。ちなみに「平成18年度3号(7号)」とあったので、平成17年度から始めて、その年度には4号、平成18年度には3号発行したのではないかと思います。この号では、坂特集として植木坂・鼠坂・狸穴坂、その他の施設として島崎藤村旧居跡など地域のあれこれを紹介しています。

近くにお住まいの方はもっと大きい図書館が欲しいと思うかもしれませんが、私はこの華やかな場所にこんなこじんまりした図書館があるのっていいと思うんです。ひっそりと建っているのが、かえって落ち着くような。六本木周辺の華やかな雰囲気に疲れたら、麻布図書館で心を静めてみてはいかがでしょうか。