世田谷区立下馬図書館
世田谷区立下馬図書館 訪問記
世田谷区立下馬図書館は、三軒茶屋駅の南東にある、正八角形の図書館。下馬の歴史をまとめたすごろくや、地名の由来である源頼朝のコーナーを設置しているほか、地元の有志による下馬マップも展示されており、地域に密着している図書館です。
下馬図書館は三軒茶屋の東にある昭和女子大からやや南へ進んだ辺りにあります。この付近は道が斜めに交差しているところが多く、勘で歩くと思いも寄らない場所に辿りついてしまうことも(笑)。
でも、そのおかげで行くたびに違うお店を発見することができ、ふらっと入ってみたりして楽しんでいます。北森鴻さんの人気シリーズの舞台であるビアバー・香菜里屋も三軒茶屋の路地裏にあるという設定で、このシリーズが好きな私は、それっぽい店をつい探してしまいます。細かいことをいうと、香菜里屋は三軒茶屋交差点から世田谷通りを環七へ向かって200mほど進んだ辺りの路地裏なので、下馬図書館からはやや離れているのですが。フィクションの世界だけでなく、現実でも素敵なお店が多い場所なので、図書館の帰りにでもぜひ気の赴くままに街歩きを楽しんでください。
下馬図書館は3階建ての建物です。各階の配置としては、1階が児童エリア、CD、新聞・雑誌。2階が文庫本、小説、大活字本、家事関連本や芸術・スポーツなど一般書架の一部で、残りの一般書架は3階にあります。貸出・返却カウンターは1階にしかなく、閲覧机は3階にまとまっています。
外から見た限りではわかりにくいのですが、下馬図書館は上から見ると八角形の建物で、GoogleMapの航空写真で見るとそれがよくわかります。初めて下馬図書館に来たとき、何だか壁が変わった角度で構成されているなあと思い、配置図を見て八角形であると気付きました。一般的な図書館は、というより、一般的な建物は長方形やL字型など直角に交わる線で構成されていることが多いので、八角形の館内を歩いていると何だか不思議な気分。妙なところに机があったりするのを見ると、図書館職員さんも八角形の構造を持て余しているのかもと思ってしまいます(笑)
1階の大部分は児童エリアが占めています。建物入口を入ると左にカウンターがあり、カウンターの先に新聞・雑誌コーナー。その右に児童エリアがあり、児童エリア脇の通路から階段へと向かう通路付近に過去の新聞があります。図書館全体の規模を考えると、新聞・雑誌コーナーはやや狭い…いや、狭さというより、八角形構造の副作用で雑誌コーナーが奥に向かって先細る三角形になっており、閲覧者が多い日時には奥にある雑誌を取るのに他の利用者にぶつからないよう少し気を遣います。
手狭な様子が考えようによっては便利でもあるのが階段付近。ここは児童エリアの外にあたる通路なのですが、児童向け百科事典がこちらへもはみだして置かれています。で、この奥に過去の新聞があるので、新聞を読んでいてちょっとした疑問が浮かんだときには児童向け百科事典で確認することができます。
ここで児童向け百科事典だからと侮るなかれ。図書館利用のワザとして、社会問題や自然科学のことなど複雑なものごとの概要を手早く知りたいときには、詳しく深いところまで書かれた大人用の本より、児童向け資料が使えます。というのも、子ども向けとはいえ書いているのは専門家、でも内容は子ども向けにわかりやすくまとめているのだから、大人向けの入門書としても使えるのです。下馬図書館で新聞を読んでいて確かめたくなったことが出てきたときは、すぐそばにある児童向け百科事典が強い味方になります。
児童エリアは、入口近くにちしきの本が並び、その奥に児童向け読み物、一番奥には広い靴脱ぎスペースがあり、その壁沿いに絵本がずらっと並んでいます。児童エリア入口のすぐ左には、絵本や子どもの読み物に関するブックガイドが並んでいます。絵本は、日本のおはなしと外国のおはなしを分けて、それぞれ絵を描いた人の苗字の頭文字で分類されています。児童向け読み物は、対象年齢で「どうわ」と「物語」に分けたうえで、更に日本人作家と外国人作家に分けて、著者姓名五十音順に並んでいます。
ちょっとわかりにくいのが、ズッコケ三人組シリーズが児童エリア入って右の棚においてあること。ズッコケ三人組シリーズ(那須正幹著)が本来置かれるべき児童読み物の「な」のところにも特に説明がないので、このシリーズだけがここにあることを知らない人はまず気が付かないのではないかと思います。他にも説明なく別置きになっているものがいくつかあるので、棚を探しても見つからないときは、そこであきらめずに職員さんに聞いてください。
たくさん本がありすぎて、何を読んだらいいかわからないという方は、新聞コーナーとの境目にあるラックが参考になります。世田谷区立図書館では、赤ちゃん向けの「しゅっぱつしんこう」、幼児向けの「たのしいえほんのたび」、子ども向けの「おもしろい本みつけた」「ほしのかがやき」「読書ナビ」「なぜ?なに!しるってたのしい」などなど、お薦め本のリストを多数配布しています。ユニークなところでは、学校での部活を描いた本を集めた「部活物語」という冊子などもあるので、進学前に冊子に載っている本を読んで、一番気に入った部活に入るのもいいかも?!ただ、現実は小説ほどドラマティックとは限らないので、夢を抱きすぎないようご注意ください(笑)。
2,3階にある一般書架は、概ね娯楽的な読み物や生活に密着したもの(小説、エッセイ、料理、裁縫、芸術、スポーツなど)が2階、それ以外が3階という配置です。3階には片側3人ずつ並んで向かい合う6人用の机がたくさん並んでいますが、実際に3人座ったら隣の人と肘がぶつかりそう。また、3階右奥の机のうち4席では、持参PCを使用することができますが、6人用のテーブルのうち4席でだけパソコンが使用できるというのは、中途半端な気もしてちょっと不思議です(笑)。
日本の小説は著者名の姓名の五十音順で並んでおり、複数作家による作品集は「ん」に分類され、「わ」の後にまとめられています。外国の小説は、国別分類はされておらず、“外国文学”でひとまとめにして、日本の小説と同様に、著者名の姓名による五十音順。複数作家による作品集も、日本の小説と同様に「ン」に分類されます。
眺めが面白いのが写真集の棚。写真集は全て「748」という請求記号だけで分類されており、写真集の中での小分類はしていないのですが、たくさんある写真集をどんな順序で並べているかというと、右肩下がりの大きさ順なのです。この写真家の作品が見たいというときには、著者名でまとまっていないので探しにくいけど、サイズ順に並んだ中から気になった装丁の写真集をインスピレーションで選んでみるのも楽しいです。特定の写真集や著者をお探しの場合は、検索機を使って「本の大きさ」という項目でサイズを確認したうえで、本棚から探すといいです。
変わったところでは、2階の階段向かって右に寄贈雑誌の棚があり、ここにある雑誌は蔵書ではないので貸出手続きなしで借りられます。借りる際は蔵書と同様に貸出期間2週間で、返すときもカウンターではなくこの棚に戻すかたちです。図書館にはいろいろな寄贈雑誌が送られてきますが、全ての雑誌を蔵書にするわけではない。その蔵書にしなかった雑誌をどう活用するかということで、この珍しいシステムが生まれたのではないかと思います。広報誌にも読み応えあるものはありますし、気になる雑誌を見つけたらぜひ借りてみてください。
専門的な本が多い3階の書棚を見ると、「490 医学」の棚に「2階にあります→家庭医学:598」、「470 植物学」の棚に「★関連図書 →この階にあります 樹木・森林:650」といったかたちで、関連するジャンルの場所をピンクのラベルで案内してくれています。ジャンルとしては近いけど図書館の分類では離れた場所になってしまう本も、こうした案内があれば見逃さずに利用できます。棚を見ていて「私が読みたい本は、この棚に近いけどちょっと違うんだよなあ」というときには、これらのラベルを参考にしてみてください。
下馬図書館は、1~3階の各階に下馬の歴史がわかるコーナーを設置しています。まず1階の建物入口を入るとすぐ右で源頼朝の関連本を展示しており、2階にも頼朝コーナーがあるとの説明があります。下馬と源頼朝がどう関係あるのかは、2階の階段からみて左奥の頼朝コーナーに詳しく書かれており、何でも下馬という地名を辿ると源頼朝に辿り着くのだそうです。
「源頼朝と下馬」という説明によると、頼朝が蛇崩の激しい沢筋(現在の蛇崩川緑道)を進んでいたときに、馬が突然暴れだして深みに落ちて死んでしまった。よって頼朝が「以後、この沢は馬を牽いて渡るべし」と申し渡したことで、「馬牽沢(馬引沢)」という地名が生まれ、その馬引沢村が江戸時代に上・中・下と分かれ、「下馬引沢村」が「下馬」になったのだそうです。
2階の頼朝コーナーは、率直に言ってここにあると知っている人しか気付かないだろうというくらい地味なので(笑)、もっとわかりやすくしてくれたらとも思いますが、書籍としては源平の争いに関する歴史書や歴史小説などがいろいろ並んでいます。コーナーには源氏と平家の系譜図も掲示しているので、関連本を読む際にはこの系譜図で人間関係を確認できます。
また、3階の階段向かって右には、下馬の歴史がわかるコーナーが設置されています。壁には、写真集『ちょっと昔のせたがや』の中から昭和20~30年代の下馬の写真を抜き出して掲示しており、この頃から下馬にお住まいの方にとっては懐かしいでしょうし、今の下馬しかご存じない方も現在との違いを楽しめると思います。
このコーナーで配布している「下馬周辺今昔物語すごろく」も必見。1189(文治5)年に源頼朝の命によって馬引沢村と呼ばれるようになったときをスタートに下馬の歴史をたどって、2010年の下馬図書館30周年をゴールを目指すすごろくです。周囲の神社やお寺の建立や行政区域の移り変わりのイベントがすごろくのマスになっているので、遊んでいるうちに下馬の歴史を覚えられそう。裏には各イベントの解説もあり、裏表の情報を読むだけでも下馬の歴史通になれます。
また、蔵書でお薦めなのが、『商店街の時間 せたがや昔…今』という横長の本。3階エレベーターからみて右の柱の最下段に展示されている、昭和30年代から現在に至るまでの商店街の移り変わりを横長のイラストで再現した本で、イラストとしてもすごく可愛いし、実際に商店街を使っていらした方なら更に楽しめると思います。
さらに、これら図書館が設置した地域のコーナー以外にも、1階入口入って右先に、地元の有志・せたがや道楽会が作成した下馬の手作り古道地図や下馬の写真が展示されています。この展示によると、下馬図書館の建っている場所や昭和女子大の敷地も含めて、この辺一帯は陸軍の練兵場だったそう。今は暗渠になった蛇崩川のルートを辿ったり、下馬地域だけでも10もあるという庚申塔をまとめたりと、図書館資料をあたるだけでなく実際に足を運んで作られた力作展示で、有志の方々の地元愛が伝わってきます。
図書館ってどれも同じではなくて、やはりその土地についての情報を積極的に集めている。また、すごろくで歴史を振り返っても感じるのですが、「図書館が建てられた」ということ自体がその町に少なからぬ影響を与えていたりもします。地域のことがわかる、地域のための下馬図書館、これからも活用したいです。
世田谷区立下馬図書館 特集・行事・図書館だより感想記
世田谷区立下馬図書館 データ
住所 | 東京都世田谷区下馬2-32-1 →Google Mapで見る | ||||
Tel | 03-3418-6531 | ||||
開館時間 |
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定休日 | 第2木曜 12月29日~1月3日 | ||||
最寄駅 |
東急田園都市線 三軒茶屋駅から徒歩12分
東急世田谷線 三軒茶屋駅から徒歩15分
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駐輪場 | 建物の北西側(入口向かって右に回り込んだところ)に駐輪場あり 2024/09/13に現地訪問にて確認
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駐車場 | なし | ||||
所蔵資料 | |||||
図書所蔵数 | 81,050冊 2023/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和5年度版』、団体貸出センターの図書数は中央図書館の図書数に加算 | ||||
CD所蔵数 | 5,176点 2023/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和5年度版』 | ||||
カセット所蔵数 | なし 2023/03/31現在、出典『世田谷のとしょかん 令和5年度版』 | ||||
設備 | |||||
ブックポスト | 建物入口向かって左に回り込んだところ(公衆電話ボックスの更に奥)の壁面にブックポストあり 2024/09/13に現地訪問にて確認
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自動貸出機 | 自動貸出機2台あり 2021/06/24に世田谷区立図書館ウェブサイトにて確認
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自動返却機 | なし 2024/09/13に現地訪問にて確認
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セルフ予約受取 | なし 2024/09/13に現地訪問にて確認
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図書の除菌 | 入口入って右にLIVA図書除菌機1台あり 2024/09/13に現地訪問にて確認
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音声試聴設備 | なし | ||||
映像視聴設備 | なし | ||||
ネット閲覧PC | なし | ||||
持参PC利用 | 3階階段から見て右奥の閲覧席の一部(4席)で持参PCの使用可能。電源なし。 | ||||
LAN接続 |
2024/10/12に世田谷区立図書館ウェブサイトにて確認
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飲食設備等 | なし |
2011年秋の読書週間記念イベントとして下馬図書館で開催されたクイズに挑戦しました。